第六次聖杯戦争〜偽善者の聖杯〜   作:黒猫街夜

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バーサーカー 戦士

 コツコツと靴音が反響する。夜の暗がりを歩く影があった。深夜であるにも関わらず、とある発電施設で、一人歩く影があった。

 肩まで切り揃えたダークブロンドの髪に、右手に持った大型のトランクケース、そしてそばに控える()()()()。虎のようにも、獅子のようにも見えるが、その本質は変幻自在(へんげんじさい)。特定の形を持たないその獣は、従業員だろうか、灰色の作業着を来た男を咥えていた。意識が無いのか、ぐったりとしている。

 

 「……中々良い霊地だな。召喚には適している」

 

 声は凛とした女のものであるが、それは聞くだけで全身の毛が逆立つような何かを含んでいた。

 そして胸元のポケットから小さな小瓶を出すと、中に入っていた赤い液体を地面にこぼした。

 

 「起きろ(Aufstehen)

 

 液体はドロドロと蠢き出し、魔法陣を形成していく。

 完成した魔法陣の前に、トランクケースを置く。そしてトランクケースを開けると、中には少し大きめの骨が入っていた。

 それを確認すると、女は詠唱を開始する。

 

 「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 はち切れんばかりの魔力に反応して魔法陣が輝き始める。

それと同時に右手に赤い紋様が現れる。

 

 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

 繰り返すつどに五度。

 

 ただ、満たされる刻を破却する

 

 ――――告げる。

 

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 誓いを此処に。

 

 我は常世総ての善と成る者、

 

 我は常世総ての悪を敷く者。

 

 汝三大の言霊を纏う七天、

 

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 膨大な魔力に周囲の空間が軋む。

 現れたのは、青い髪の毛は逆立ち、目は単眼で頬にあった。筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の肉体は、全てを蹂躙(じゅうりん)する暴力性を象徴していた。

 

 「召喚は成功だな。さて、主催者に挨拶でもしてくるか」

 

 「■■■■■■■■■■■■ッッ!!!」

 

 咆哮、同時に右手の槍を音速に迫る速度で放つ。空気すら焼き焦がす速度の槍は、正確に女の顔を捉える……()()()()()

 女はいつの間にか獣の背に乗っており、感心した様子で笑っていた。

 

 「成程、中々いいサーヴァントだな。まぁあの聖遺物を使ったんだ。当然か……貴様はどう思う?」

 

 振り返ると背後の暗闇に向かって話しかける。

 

 「気づいていたのか?」

 

 「当然だ。私を誰だと思っている?」

 

 暗闇から現れたのは実態を持たない影。暗い靄に包まれた影は、そこに(たたず)んでいた。

 

 「知らない」

 

 影は端的(たんてき)に言い放つ。

 

 「そうか、無知は罪だぞ? 学ぶがいい。しかし、私も貴様が何者かは知らん。しかし貴様も招待状に釣られたクチか? であれば即座に諦める事だ。私が参加した以上、貴様に勝ちはない」

 

 「……随分と言い切る」

 

 「■■■■■■■■ッッ!!!」

 

 地面を抉るかのようななぎ払い。

 それを華麗にかわす。

 

 「はぁ……()()()()()()()()()。私の許可なく暴れるな」

 

 赤い光が輝く。右手の赤い紋様。令呪、サーヴァントに対する絶対命令権。たった三画しかないそれを、召喚直後に使う。

 無駄遣いとしか思えないその使い方だが、行使した本人は、何とも思っていない様子だった。

 バーサーカーは命令に従い、大人しくなる。内容が長期的なものであるにも関わらず、たった一画で効果を成したのは、魔術師としての才能だろうか、それとも他者を支配するフラン家としての性質か。

 

 「……こんな序盤に使ってもいいのか?」

 

 「令呪か? こんなモノ飾りに過ぎんよ。例え狂戦士(バーサーカー)であろうと、私であれば制御などたやすい」

 

 傲慢な台詞ではあるが、絶対的な自信を感じた。

 それに呆れを感じたのか、影が嘆息する。

 

 「……今思い出した。そのダークブロンドの髪、そしてその性格、貴様ドイツのフラン家の才女だな?」

 

 「おや、ようやく気づいたのか」

 

 「フラン家の才女、ゴア・フラン。貴様がこの戦争に参加しているとは思いもしなかった」

 

 それを聞くと、ゴアは満足そうに微笑んだ。

 

 「であれば改めて名乗ろう。フラン家七代目当主、ゴア・フランだ。では鼠、立ち去るといい。今なら見逃してやる」

 

 あくまで傲慢な態度に、影は()()()()()眉をしかめるが、ゴアには分からない。面倒に思い、早めに会話を終わらせる事にした。 元々この街の霊地を観察しに来ただけなのだ。悪い意味で有名な女に構っている場合じゃない。

 

 「アイハール・シルヴリン、覚えておけ。貴様を殺す者の名だ」

 

 「やれやれ、貴様話を聞いていたか?」

 

 「そのうえで言っている。こちらもそう簡単に引けない理由がある」

 

 無言の睨み合いの末、影がどこかへ消えた。

 

 「逃げたか……まぁいい。見かけたら殺してやろう」

 

 腰のホルダーに刺さっていた実験用ガラス管を一本取り出すと、地面に叩きつける。中の赤い液体が溢れ出し、鳥に変わる。

 

 「アイハール・シルヴリンという者を探せ」

 

 命令を出すと、鳥が飛び去っていく。

 

 「精々足掻け」

 

 笑うゴアは、誰がどう見ても、悪どい笑い方をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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