断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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ゴンドワ封鎖領域 Ⅲ

「覚えたわ」

 

「おめでとう」

 

 ついに《火魔法》のスキルレベルが2へと上がった。そして上がると同時に火の範囲魔法を習得した。また、同時に《杖術マスタリー》のスキルレベルも上がっていた。こいつも魔法を使って戦闘する事が条件だったらしく、それであっさりと一緒にレベルが上がった。《時魔法》はもうちょっと使用しなければ伸びず、《二刀流》は装備を2つ装備した上での戦闘なのでまだもうちょいかかりそうだった。《詠唱術》はまだ半分という所。詠唱完了回数がどうやら条件らしいので、空いている時間に虚空へと向かって魔法を連射してれば上げられそうな気配もあるが。

 

 ともあれ、

 

「〈イラプション〉か……半径5メートル以内に爆破範囲攻撃。起点指定、射程は25メートルだな」

 

「おー、結構優秀な性能しているじゃない。半径5メートル範囲なら結構纏められる大きさよね」

 

「うむ」

 

 かなり良い性能だと思う。少なくとも敵を一気に複数巻き込んで戦う事の出来る魔法はそれだけで狩りの効率は上昇するのだから。今まで敵1体を倒すのに2分かかっていたとして、同時に攻撃して5体倒せるのでなら単純に効率は5倍だ。

 

「あー、だけど威力は110しかないのか。んで消費MPも9か……やっぱトループに叩き込まない限りは効率が悪いんだなぁ」

 

「ま、そこはどうとでもなるでしょ。とりあえずこれで軽くまとめ狩りしてみるわよ」

 

「ういうい」

 

 その言葉と共にニーズヘッグが走り出す。白い髪を揺らしながら街道から外れると直ぐに〈挑発〉をラージビートルへと飛ばし、近づく事もなく次のラージビートルへと向かってノンストップで走り続け、再び〈挑発〉を投げる。

 

「そんなに脆くて生きてる事が恥ずかしくないの?」

 

 〈挑発〉が飛ぶ。

 

「もしかしてわざと燃えやすくなってる?」

 

 〈挑発〉がまたまた飛ぶ。

 

「レベルが上の癖に魔法2発で沈むとか糞雑魚耐久で良く格上って名乗れたわね」

 

「その煽りは必要なのか」

 

「ううん、気分的なもの」

 

「そっかー」

 

 ならしょうがないや。そう思いながら〈スロウ〉の詠唱に入る。この魔法は起点指定の範囲魔法なのでトループを対象にできる。範囲の縮小を止めればいいだけなのだから、指定も楽だ。ニーズヘッグが数体のラージビートルを引き連れてきたら〈スロウ〉の詠唱に入る。ビートルを全て巻き込まないといけないので、ニーズヘッグのいる場所だけを外すように範囲を指定して、発動。

 

 範囲内のラージビートルたちの速度が一気に低下する。そしてそこに追加で〈イラプション〉の詠唱に入る。

 

「カウント5!」

 

「オーケイ」

 

 必要な詠唱時間は5秒―――それが《詠唱術》の短縮によって4.75秒まで短縮される。起点指定、範囲指定オッケイ。ニーズヘッグを巻き込む形になっているが、5秒前には離脱をしてくれるだろう―――と、そこであっ、と声を零した。

 

「5秒じゃ巻き込まれるじゃんごめん」

 

「えっ」

 

 5秒経過前に〈イラプション〉が発動する。指定された範囲内の大地に亀裂が走り、地面から炎が飛び散る様に爆発が発生する。〈ファイアーボルト〉の様な炎上効果は存在しないものの、爆破で多数を巻き込み均等にダメージを与える。

 

 そう、巻き込まれたニーズヘッグにさえも。

 

「に、ニグぁ―――!!」

 

 爆発に巻き込まれ空を舞うニーズヘッグ―――あいつ、爆発の瞬間に跳躍して吹き飛ばされたフリをしているなぁ、と芸の細かい所に感心しつつ2発目の〈イラプション〉詠唱に入る。此方が範囲攻撃で焼いても依然、ヘイトはニーズヘッグへと向いたままになっている。そして本人は爆風ジャンプで空を軽く滞空しており、ビートルズの攻撃は届かない。翅を広げて跳躍しようにも鈍足が邪魔で動けなくなっている。

 

 2発目の〈イラプション〉が入るまでの邪魔も散開もなく、ストレートに魔法が発動し、爆破。ビートルズがまとめて処理される。どうやら火力的には足りていたらしい。威力が十分なのか、レベルとしてはビートルズが脆いのか、それとも火属性が弱点なのか。これらの合わせ技かなぁ、と思いながら何時の間にか着地していたニーズヘッグが戻ってきた。

 

 そして迷う事無く、顔面をわしづかみにしてきた。

 

「結構熱かったんだけど」

 

「ごめんって。そういや詠唱短縮してたなぁ、って」

 

「うん、次は使う前に言ってね?」

 

「許せ」

 

「許さん」

 

「がぁぁぁあ―――!!」

 

 痛覚設定オンにしたままだったぁああ―――!

 

 唐突に炸裂するアイアンクローに悲鳴を上げながら軽くのたうちまわると満足されて解放される。そのままごろりと地面に倒れてしばらく痛みが引くまで待つ。痛覚設定、オンにしていたけど消そうかなぁ……なんてことを考えてしまう。でも、まぁ、折角こんなリアルな異世界を遊んでいるんだし、痛覚設定を切ってしまうのはそれで勿体ない気がする。

 

「ニグは痛覚つけてるんだな?」

 

「その方が削り合いをしているって感じがして楽しいのよ」

 

 リアルベルセルクかこいつは。明らかに生まれた世界が違う気がする。

 

「ふぅ……とりあえずイラプ2発で処理可能か。結構楽になったな」

 

 立ち上がり、埃を払いながら先ほどのダメージを確認し、計算する。〈イラプション〉単発でのダメージは大体30~40辺りだ。〈ファイアーボルト〉だと大体単体で50前後。明らかに威力は落ちているが。だがニーズヘッグの蹴り込みで〈ファイアーボルト〉1発で確殺で、〈イラプション〉2発で処理出来ていると考えると、

 

「……大体のHPは60から70ぐらいか?」

 

「私の蹴りが20ぐらい出てるしそれぐらいじゃない?」

 

 ただの蹴りで魔法の3分の1のダメージも出せるというのは恐ろしいなぁ、と思う反面、接近して接触するというリスクを背負った上で手数を繰り出せば大体DPSは遠距離から魔法をキャスト込みで放つのと変わらないか、と判断する。

 

 割とダメージバランス取れてるのでは?

 

「うっし、ここからは纏め進行だ。そこそこ集めて一気に焼いて処理しよう」

 

「了解。次は巻き込まないでね?」

 

「悪かったてば……」

 

 振り返りながら注意してくるニーズヘッグの視線に頷きを返しながら、街道を軽く前へと向かって走って進む。それに合わせて横に走ったニーズヘッグがラージビートルたちのヘイトを取りに行く。しばらくはこの〈スロウ〉と〈イラプション〉のループを重ねて、他のスキルのレベルを2にする事と、自分自身のレベルを5ぐらいにする事を目標にして、街道を進む。

 

 ただし、その前に次のエリアに到達しそうなんだよなぁ、という気はする。

 

 

 

 

Name:Eins

 BLv.3

 CLv.1

 HP:140/140

 MP:50/50

 STR:14

 VIT:12

 DEX:14

 INT:18(14)

 MND:12

 BSkill:■■■■■

 CSkill:□□□□□

 

 レベルアップの舞、再び。1から2までのレベルアップとほぼ同じ速度でレベルアップできたという事実が、纏め狩りの効率の良さを証明している。しかもコレ、他のプレイヤーが存在しないから狩場の独占状態なのが一番の追い風だ。MMOというのはインスタンスダンジョン―――つまりはIDに突入するタイプでもなければ、基本的には狩場の奪い合いだ。長年、MMOはこの狩場でスキルを放って敵を倒す事が主要になっていた為、基本的に他のプレイヤーとの競争や争いとなり、醜い歴史が積み上げられてきた。

 

 このシャレムの世界も、いずれは狩場の奪い合いによる薄汚い争いが発生するだろう。だからこそ他人がいないエリアへと先に移動し、狩場を確保する事が重要だ。多分俺達以外のガチ勢も同じ発想で別の方向に進んでいるとは思う。

 

 まぁ、一気に推奨レベルから離れたエリアに突撃するのなんて俺達だけだろうが。

 

 そしてここでレベルが上がった事に加え、《杖術マスタリー》と《時魔法》のレベルも上がってくれた。これで二つとも2レベルになってくれた。

 

 《杖術マスタリー》は魔法攻撃に対する最終ダメージが+3%されるというパッシブに進化した。これで火力が一気に2%も上昇した。少ない変化かもしれないが、割と長い目や長時間の戦闘で見るとこの1%2%の違いというものはマジで馬鹿にできない。

 

 そして《時魔法》は〈バインド〉を習得した。これは単体を対象に移動不可のバッドステータスを付与するという魔法だ。これ、〈スロウ〉の上位互換では? と思いたくなるところもあるだろう。だが真面目に考えてみると範囲指定できる〈スロウ〉と、単体指定の〈バインド〉では完全に役割が違うだろう。

 

 〈バインド〉は単体指定魔法でありながら、指定方法は他の魔法とは変わらない。だから空間に対して発動する事を選択すると、設定した場所に存在する相手に対して発動する、というシステムを取っている。〈ファイアーボルト〉とは違って射撃タイプの魔法でもないので、相手が横に避けた場合、完全に不発になる。射線を遮られても命中させられるという点は優秀かもしれないが、それは逆に言えば指定した相手しか狙えないという事でもある。

 

 だが〈スロウ〉は範囲指定だ。範囲を多少広く指定すれば、相手が回避動作を取っても指定範囲内であれば引っかける事も出来るのだ。

 

 単純な上位下位とは区別できず、状況によりけり……という感じだろうか? 纏め狩りするなら〈スロウ〉の方が使い勝手が良いという感触だった。

 

「まぁ、このレベル帯じゃ一桁%の火力向上はちょっと解りづらいかな……っと!」

 

 〈イラプション〉で纏めてビートルを焼き、経験値を取得する。再びニーズヘッグを祝福の光が包み、レベルアップの演出が行われた。ぐっと、ガッツポーズを取るニーズヘッグに拍手を送ってレベルアップを祝福すると、

 

「あ……もう、なの」

 

「うん?」

 

「今レベル4なんだけど、虫の名前が橙色になってしまったわ」

 

「あー、4レベにもなると同格扱いされるのか……」

 

 ニーズヘッグレベル4で適正レベルの相手と判断されたとなると、ラージビートルのレベルは大体4~6ぐらいになるだろうか? まぁ、確かに殴った感触そんな感じではあるよな、とは思った。ただもうレベルが追い付いてきたとなると次のエリアでもっとレベルの高い敵を求めたほうが良いのかもしれない。

 

「まだ狩り始めて1時間ぐらいか?」

 

「結構良いペースだと思うわよ。ただ強さ的には物足りなさがあるわね」

 

「そっか……じゃあ、俺のレベルを4に追いつかせて、それが終わったら次のエリアへの移動を優先しようか」

 

「了解。たぶん抜ければ敵も10前後要求されるくらいかしらね」

 

 ラージビートルは動きが単調で、正直強いとは言えない相手だ。簡単に焼き殺せるし、レベルもここまではサクサク上がってきた。それがここから先に通じるかどうかは……まだ不明だが、

 

 もう少し歯ごたえを期待したい所かなぁ、というのが本音だ。

 

 これじゃあ簡単すぎるぞシャレム君。

 

 もうちょっと、難易度上がるよな?

 

 ……な?




 まだ序盤なのでイージーと思われがちだが、序盤から動きが複雑だったり、面倒な能力を行使してくるエネミーはただのストレスチェックのクソゲーだぞ!

 個人的な感覚だけど、ネトゲはカンストしてからが本番と思っている。レベル上げの難度を上げちゃうと作業ゲーになってユーザーが離れちゃうと思う。それがVR環境に適応されるかはかなり怪しいけど。

 たぶん新しい世界を歩き回っているだけで一生飽きない。
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