断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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パーフェクトコミュニケーション Ⅳ

「地に染み渡る星の怒りを知るが良い! 大地は鳴動し全ては飲まれ砕け去らん!〈タイタニック・ロア〉じゃ!」

 

 個別直線範囲必中土属性攻撃。

 

「ぐぎゃああああああああ―――!!」

 

 

 

 

「天より輝ける悠久の熱よ、今こそ地にてその情熱を放つが良い! 〈ホライゾン・フレア〉じゃ!」

 

 ボス周辺半径3メートル範囲安置、それ以外全体攻撃からの範囲反転。

 

「ぬわあああああああ―――!!」

 

 

 

 

「荒れ狂え大気よ! 汝は音さえも喰らう息吹! これはどうかの? 〈ザトラ・ヴォーテル〉じゃ!」

 

 旋回型十字範囲攻撃。

 

「いががががががががが!?」

 

 

 

 

「震えよ! 凍えよ! そして己の無力さを恐怖と共に刻め! 〈ジュデッカ〉じゃ!」

 

 ボス周辺半径3メートル範囲攻撃、それ以外安置からの範囲反転。

 

「死―――ん」

 

 

 

 

「星天の輝きを見よ! 命儚くも輝けるもの! 〈サザンクロス〉じゃ!」

 

 落下地点表示連続頭割り。1個でもミスると割らないダメージがばらまかれる。

 

「にょあああああ―――!!」

 

 

 

 

「じゃ、一通り見終わったじゃろ? 次から同時発動するからちゃんと予兆を見極めて回避するんじゃぞ」

 

「殺すぞクソ爺」

 

「ちょっと何を言ってるか解らないんですけど?」

 

「1踏みしても即死なんだが」

 

「―――」

 

「ニグが凍ったままなんだが」

 

 無論、俺らが殺された。

 

 

 

 

 まぁ、ぶっちゃけ単一属性魔法は余裕だし、複合属性も慣れれば簡単だ。問題はそこに光と闇を混ぜたり、全体ランダム範囲攻撃の中に単体範囲攻撃を混ぜたりする事だ。ランダムと固定を混ぜたりそれを止めたり、色んな攻撃手段を使ってこっちを殺しに来る殺意の高さは普段以上といえるものがあった。まぁ、こっちがパーティー組んでるから当然っちゃ当然なのかもしれないが。それでも片っ端から殺されては蘇生を繰り返され、体に直接ギミックと魔法の特性を叩き込まれてしまった。

 

 ぶっちゃけ何時もの事なんだが。

 

 しこたま魔法をぶち込んで変形した地形を元に戻しつつも、破壊魔の爺は満足げな表情で砂浜に突っ伏している俺達を見下ろしていた。まさしく気分爽快という様子は単にアロハシャツとサングラスが原因ではないと思う。

 

「ボス普段からこんなことしてるの?」

 

「普段は室内メテオだよ」

 

「もっと異次元な事してたな。いや、魔法といえばメテオだけどさ」

 

「レベルアップわーい」

 

 顔面を砂浜に突っ込んだまま俺らは会話してた。HPが0な事もあるが、2時間も殺され続けて流石にちょっと疲れたという部分もある。ただこのA道場、スキルレベリングとしては最高の効率を見せるからなんも文句が言えないんだよなぁ。実際に今回はスキルレベルが全て上がったし。

 

 《結界術》は8へ、《二刀流》《詠唱術》《杖術マスタリー》は9へ、《氷魔法》のレベルも順調に上がり、覚えたばかりの《契約術》も1レベル上がった。この中で目立つ成長をしたのは《契約術》と《詠唱術》だろう。《詠唱術》はついに〈詠唱消去〉のCTが1分に変化したので1分に1回のペースで無詠唱で魔法を発動させる事が可能となり、《契約術》はレベル1で〈分体召喚〉が、2で〈部分召喚〉が可能となった。なんだかんだでマスタリーも基礎魔法ダメージの向上があったし、これで全体的な攻撃手段、バフ手段、火力の向上が担えた。

 

 現在30レベ、習得可能スキル枠は初期の5+10、20、30レベルのボーナス3枠分で合計8枠だ。

 

 ここから更に何かを習得するには魔法スキルを10にして習得し削除するか、それともレベル40に上がる事が条件だ。先に詠唱や二刀が10に上がりそうだが、此方はパッシブ系統のスキルなので削除は出来ない。となると次に新しいスキルを習得するのは《氷魔法》か《結界術》を10にした時だろう。

 

「はー……こんなの毎回喰らってりゃあそりゃあ強くなる訳だ」

 

「効率は良いけど拷問だよなこれ」

 

 どっこいしょ、っと蘇生を終えてぞろぞろと砂浜に起き上がったり座り込んだりする。今日はこの後の予定も特にないし、レベル上げの為に皆で解放されたジュエルコーストIDを周回するのも悪くはないかもしれない。パーシヴァルが此方に関われる時間まではまだまだあるだろうし。その間の時間の有効活用を考えたらレベリングが良い所じゃないだろうか? 効率的にもここのIDに引きこもるのが一番早そうな気配はするし。

 

 此方へと向かって這い寄るニーズヘッグの顔面に蹴りを入れながら突き放しつつ師匠の方へと向かう。

 

「弟子よ、あまり女の顔を蹴るのは感心せぬぞ。儂も若い頃は結構な火遊びをしたもんでのぉ……」

 

「場所を選ばない奴が悪い。って、そういう話じゃなくて」

 

「なんじゃ、儂の若い頃の武勇伝には興味がないのか? 妖精女王を連れ出した話とか必聴じゃぞ」

 

「割と気になってくるチョイスピックしてくるなこの爺……」

 

 妖精女王なんて話を出すからにはたぶん妖精という種族が存在するんだけど、異種恋愛とか成立するのかこの世界? いや、イェンとか見てると割と成立しそうだな……。普通に迫られたり押し倒されたら無理でしょあんなの。

 

 いや、今はそういう事じゃなくて。

 

 よいしょ、と声を零しながら浮かぶ師匠の前に胡坐をかく。

 

「シッショーぶっちゃけさ」

 

「なんじゃデッシーよ」

 

「《深境》システムとして不完全でしょ」

 

「む、解るか」

 

「まぁ、なんとなく」

 

 火力と回復のタームを分けながら戦うのってMPが無限に続くから他のキャスター職よりも火力が出るのは当然なんだが―――ぶっちゃけ、効率悪い部分あるよね? とは思う。そもそも師匠の性格からしてMP消費100%の魔法を常に連打するのを目指そうとするだろうし。そう考えるとこの切り替えながら戦うというのは目指すべき場所とは違うんじゃねぇかなぁ、って戦いながら思ってた。というか管理するゲージがこっから更に増えるという事もあるし、爺さんの超破壊脳筋理論から外れているような気はする。

 

「儂もなぁ、本当ならもっと先を目指したい所なんじゃよ」

 

 ふよふよと浮かぶ高度を下げながら爺が額を掻く。

 

「まぁ、これは儂がなぜお主を弟子にしたかという話に少し戻るんじゃが」

 

「うん」

 

「儂が目指す《深境》、その完成を見たいんじゃよ」

 

 Aは杖を取り出すとそれで六属性の鳥を生み出し、それを空へと向かって飛翔させるとかき消した。

 

「6の属性に2の複合属性、そしてその先には更に束ねた先の属性もある。儂の目標はそこに到達する事じゃった。だがのぉ、儂は最後の最後でその属性の適正にのみ泣かれてしもうての、手にする事が出来なかったんじゃよ」

 

「だからそれをどうにかする為に俺を?」

 

 うむ、と返事が来た。

 

「最後の……最後の属性さえ手に入ればのぉ、《深境》は完成されるんじゃ。さすれば無限の魔力を手に入れる事も出来たのじゃがまぁ、才能に笑われたという奴じゃろうて。ま、そこは弟子の代で完成させる事に期待じゃな。稀人ならなんだかんだで出来るじゃろ」

 

 まぁ、メタ的に考えると血族専用みたいな特殊でもない限り、PCはなんだって出来るだろうなぁ、とは思う。その最後の属性が何かは解らないが、Aの思い描く究極の魔法とシステム、それを完成させる為に必要な属性なのだろう。この拡張の間に完成させる事は……まぁ、頑張れば出来るかなぁ……? って感じだろう。

 

 でもまだ1属性クリアして、残り5属性+追加属性2種って考えると先はまだまだ長い。

 

 いや、1週間で1属性マスターした事を考えるとかなり早いのか? ペースアップすれば1か月で基本属性は抑える事が出来る気がする。

 

 まぁ、なんにせよこれはまだ未来の話だ。今はとりあえず出来る事をやって時間を潰すしかないだろう。

 

 そんな事を考えながら、

 

「わっ!」

 

「ぐぎゃ」

 

 後ろから飛びついてきたニーズヘッグに押しつぶされた。




 鍋「構っての合図だな……」
略剣「構って欲しいんだな」
 梅「求愛してるなアレは」
連撃「あのカップルスキンシップ激しいなあ」
 森「構ってほしそうだなぁ」
剣盾「構ってほしそうにしてるなぁ……」
1様「(これは構って欲しい時の奴だな……)」

 見れば解る奴。

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