「よし、良いリアクションをくれたから追加の話もしよう」
まぁ、調べてしまえば簡単に出てくる情報だ。
この大陸の地図は普通に図書館で確認できるのでそのコピー――つまりはスクショなんだが、これを引っ張り出して現在位置、エルディア、メゼエラ、そして俺達のスタート地点であるオワコンの森を示す。そしてエルディアから北へと線を引き、山脈の迂回路を示しながら戦場となった平原をタップ、そこから更に北へ―――雪の積もる地域、そこにある巨大な都市の存在を示す。
「アルスティア帝国、帝都オルベリグ。ここが戦争吹っ掛けてきた先な。北国だから環境は厳しいし山脈が多い。けど飛竜種と共存してるからドラゴンライダーやドラゴンナイトが多く空中戦に秀でている。英雄ユニットは”龍喰らい”のロードレン。ま、戦争の理由はシンプルに土地が欲しかったみたいだな。生産力の高い土地を獲得して国を肥えさせたいって訳だ」
「設定細かいなぁ」
「設定、というよりはそう言う風に歴史が構築されたんでしょ。確か自然構築だったはずだし」
「ワールドはそうだな。たぶん根本の部分で乱世になりやすい様に運営が弄ってるだろうけど」
ここまではオッケーだな? 良し、オッケーと見た。んじゃ今回の話に入ろう。割とエルディア側の動きは解りやすい。自分たちがログインするまでの流れを把握した上でエルディアの動きを見れば、急いで状況を整えようとしているのが解る。これは中断している戦争に対してイニシアチブを取ろうってのが良く解る。だったらプレイヤーを囲い込むための動きか? って言われると、
「違うんだなぁ、これが」
「え、違うんか? だってPCは不死身だぜ? 最強の兵士になるじゃん」
「だと思うじゃん? だけど逆に考えてみろよ。背景不明、不死身、そして凄まじい人口だ。戦争でプレイヤーを運用すればプレイヤーを戦場で使って良いってルールが国家間で出来るぜ? あ、明確な条約とかじゃなくて暗黙の了解としてな? そんな事を始めたら死なない兵士による無限の戦争の始まりだわ」
「あー」
戦場シリーズとか、お仕事の呼び声シリーズとか。その手のFPS好きプレイヤーってのは滅茶苦茶多い。戦えるならそれだけで戦うってプレイヤーもいるだろう。そういう連中を好き勝手させる、という事だ戦争は。誰よりも最初にプレイヤーを見て、そして感じているエルディアなら解るだろう。このプレイヤーという集団を明確な組織として運用してはならない、と。こいつらを好き勝手動かさせてはならない、と。させてしまえば最後、この大陸はボカン! だ。
「だから違うね。俺が見るにエルディア側は
戦争好きのプレイヤーはどう思うかは解らないが、ただ賢い動きだとは思う。プレイヤー達の団結力に関しては既にアビサルドラゴンの討滅で見せられている。エルディアに集結している半分のプレイヤーたち、それもトップ層だけであそこまで派手に暴れる事が出来たのだ。だとしたら全てが揃った時……その熱量が一方へと向かった場合の衝撃は測れるもんじゃないだろう。俺が王様だったら怖い。この稀人とかいう連中、全員死なないように手足切り落としてから傷口塞いで牢屋に繋ぐわ。そうでもなきゃ安心して眠れねぇ。
まぁ、そこら辺は特に心配しなくても良い。流石にAIやら運営が遊べる方向に物事を進めてくれるだろう。
「じゃあエルディアがその前提を構築する為に今動いているんだとして……なんでこんなところに来ているのか解る?」
「ん? 簡単だぜ」
少し考えれば解る。まず地図を確認すれば解るだろうが、このジュエルコースト・リゾートはメゼエラ方面に近い位置にある。だがこの場所はどの国が管理している場所でもない。つまり中立地帯となっている。ただのリゾート地の様に思えるが、こういう中立の場所には意味がある。たとえばほら、リゾートと称して他国の人間と顔を合わせられると便利じゃん? ここは多分そう言う場所だ。そもそもからして動きに迷いがなさすぎる。
「あのパーシヴァルって奴、解放された瞬間にはこっちに向かってくる準備進めてたじゃん? しかも最初は港にいたって話だ。その上で船が出航するまでの準備がほぼかからない―――って事は元々海に出る準備を終わらせた段階で断絶に飲まれたって考えられるだろう?」
王様か他の兄弟を探すってなら事前にそういうだろう。それにそういう人間を連れてくるんだったらもっと戦力とかを連れてくるだろう。だけどここに連れてきた戦力で一番強いのは俺達、プレイヤーだ。おかしくないか? 重要人物の保護に動くなら、国の偉い人間を連れてくるのであればもっと強い奴を、偉い奴を引っ張ってくるだろう、当然の万が一に備えて。
少なくともアビサルドラゴンの時は
だったらなんでこっちでは同じような事しねーんだ? 人を動かせないから?
いや、でも見ろよ。あのAとかいう爺普通にテレポートしてこっち来てるじゃん。しかも話を聞けばアインにテレポートを教えようという話だ。
連れてこられない理由があるんだ。
内密に済ませたい事が。
過剰な戦力を連れてくると警戒されるような事だ。
「ここは中立地帯だし他国の人間もここに違和感なくいられると仮定する。そしてエルディアの軍閥の王子がここに来た。って事は王子本人じゃなきゃ話にならん事があって、それが軍事に関する事になるんだろ。もし保護するだけなら王子本人じゃなくて信用のある奴がくれば良かったしな」
という訳でエルディアの今回の行動は戦争に関連し、他国の人間と会う事。
「ま、俺の予測はエルディアとアルスティアとの密談かな。パーシヴァルの兄さんが出てくるって事はおそらく同じランクの人間が密談に来てる。恐らく停戦の話かねぇ。そこに稀人持ち出して共通認識作って停戦交渉を纏めて……って感じか」
「はあー……良くそんな事考えられるなぁ」
「図書館で歴史を調べようだなんて全く考えなかったしな」
「ま、俺はともかくお前らはそれでいいんじゃないか? こういうのを考えるのが頭脳労働担当って事だしな」
ま、真実はどうなのかは解らんが。ただ交渉事なら略剣と梅☆がいる。あの二人がいる限りは絶対に交渉は失敗しないだろうし、空気の読みに関してはアインが化け物だ。そこで印象を悪くする事は絶対ない。何か不利な事が起きるならその前兆をニーズヘッグが読むだろうから場のリセットも容易だ。良く考えてみるとこれだけ特異な連中をよくもまぁ、アインの奴は集められたと思うよ。集めたというよりは何時の間にか勝手に集まった感じだけど。
……まあ、解らんでもないが。
基本的に能力のある奴はどっかぶっ飛んでいる。だけどアインの奴はそこを気にせず、集団を崩壊させずに綺麗に纏めている。細かい空気の部分は梅☆のおっさんが整えるし、プライベートを無理矢理どうこうしている訳じゃない。出会うべくして出会った感じはある。
まぁ、これからも似たような出会いはあるんだろうなぁ……なんて事は思ったりもするんだが。
「ま、俺の名推理はこんなもんだけど―――」
さてはて、と声を零す。
「あっちの方は楽しくやれてるかねえ」
Aの爺さんどこ行ったかなー、と探す為に歩き出しながら呟く。もうちょい考えを詰める為の情報が欲しい。それも違う視点と事実からのが。そう思いながら自分の役割を果たす為に、歩き出す。
そら不死身の存在を戦争に出したら大陸が終わるわよ。