断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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パーフェクトコミュニケーション Ⅸ

「悪い、一回解りやすく死んでくれねぇか?」

 

「ええで」

 

 頭吹っ飛ばされてから蘇生アイテムで蘇生する。ちなみに激しい損傷があったり人の形をしないレベルでのダメージが出た場合、脳が耐えられる範囲の痛みを超えるので自動的に痛覚は遮断される―――とてもだが人の精神に対して良い影響を生み出さないと判断されて自動的に痛みが消えるのだ。これ、AI側から痛覚に耐えきれると判断されれば普通に痛覚が再現されるらしいのでこのゲーム絶対おかしいよ! と思う部分の一つだ。なお、蘇生される場合は白い光になってそっから人の形を作って再生される。ファンタジーだなぁ、って思う奴。

 

 とりあえず、パーシヴァルと再会の開口一番で要求されたのが即死だったんで応えてみた。まぁ、デスペナを背負うけどそんなに重くないしなぁ……ってのが本音だし。ただ頭を跡形もなく吹っ飛ばすのはやりすぎじゃない? ニーズヘッグちょっとフルスイングで勢いつけ過ぎてない? ちょっと実は不満溜まってない?

 

 ―――まぁ、それはともあれ案内されてやって来たのはホテルの応接室だった。

 

 そこにはパーシヴァルの姿があったし、同じレベルで顔が整った金髪のイケメンもいた。このクッソ熱い南国の土地だってのに態々長袖長ズボンという真面目な格好をしている上、その整えられた上質な服装を見れば一発でパーシヴァルと同じ様な地位にある人物であるというのが解る。となるとどこぞの王家の人間なのだが、エルディアの王族かなぁ? なんて事を見て考える。まぁ、挨拶や自己紹介の前に頭を吹っ飛ばしたんだが。

 

 結果、物凄いドン引きの表情を向けられた。

 

 解せぬ。

 

 そんな訳で蘇生されている間にパーシヴァルが相手の王子様に向き合っている。

 

「で、どうかな、ルートヴィヒ殿下。これで俺が思っている事は理解できたと思ってる」

 

「……言いたい事は解っている。そして合意する事に異論はない。元々私達の密談も停戦ありきの事で行動だ。だが卿が言う通りの事が今世界で起きているのであれば、この時代の主役となる者達は我らではない。それは間違いなく稀人達になるだろう。となれば、だ……多少話をさせて貰っても?」

 

「そりゃあ勿論……って訳でアイン、頼むわ」

 

「まぁ、俺も別に構わないけどさ」

 

 今回ここに来た事の目的はこの人物と会う事なのだろう。そう思いながら視線をルートヴィヒへと向ければ、座っていた彼は立ち上がりながら手を此方へと出してくる。それに応える様に握手を交わし、ニーズヘッグや略剣達とも握手を交わす。

 

「いきなりの事で済まない。私はルートヴィヒ―――北方にあるアルスティア帝国の第二王子になる」

 

「此方こそ丁寧にどうも、稀人であるアイン、ニーズヘッグ、梅☆と―――」

 

「神空烈滅王神究極超越極絶魔王・剣です、殿下」

 

 略剣の自己紹介にルートヴィヒがフリーズした。パーシヴァルが後ろで笑ってる。ルートヴィヒが首を傾げ、

 

「神空烈……何?」

 

「神空烈滅王神究極超越極絶魔王・剣ですよ、殿下。神空烈滅王神究極超越極絶魔王・剣」

 

「……?」

 

 首を傾げるお偉いさんの姿を見るのは面白いなぁ、と思っている間に名前ショックからルートヴィヒが復帰する。

 

「失礼、ちょっと……あぁ、ユニークな名前に面食らってしまった。だが今のでだいぶ理解できた」

 

 頷きながらルートヴィヒは言葉を続ける。

 

()()()()()()()()()()()()()()()なのだな」

 

「お分かりになりますか」

 

 略剣が眼鏡をキラーん、と輝かせながら笑みを浮かべた。その言葉にルートヴィヒが頷く。

 

「私はエルディアとアルスティアの間の戦争を終わらせる為に停戦交渉の使者としてここに来ている」

 

 停戦交渉? 戦争をしてたんだ……と、今更ながらゲーム開始前の事情を知る。となるとパーシヴァルがここに来たのは北方帝国が解禁される前に、停戦の話を纏めておきたいという意味が強かったのだろう。そりゃあ急いでここまでやってくる訳だ。駄目だ、この手の話は俺向けじゃない。政治とかパワーバランスとか、そこら辺の話考えるのは面倒なんだわ。

 

 面倒な話になったら任せる、と視線を2人に送っておく。

 

「失礼ですが殿下、そうおっしゃるという事はエルディアとアルスティアでは戦争を……?」

 

「あぁ、そうであったな……稀人達は此方へと来てから日が浅いのであったな? ならば多少の説明は必要だろう」

 

 そこからルートヴィヒが説明する。

 

 北方のアルスティア帝国は環境がかなり厳しく、昔からエルディアの土地を狙っていた。作物を育てるのに向かないアルスティアでは作物を輸入しないと国民の食事を賄うのが難しく、それもかなり金が嵩む。その為精強なドラゴンライダーを保有するアルスティアは騎士達を傭兵に出し、或いは派遣して戦う事で稼ぎ、その金で食料を輸入していた。

 

 だがエルディアの王が現王になってからは治安が向上し、他の国とも友好な関係を作る様になってきた。そうなってくるとドラゴンライダーたちは過剰な戦力となり、必要な戦力ではなくなってしまう。そうなると今まで派遣していたドラゴンライダー達が職を失い国に戻ってくる事になる。そうすると別の産業等で金を稼ぐ必要になるが、厳しい大地に囲まれたアルスティアではその手の産業を生み出すのが難しい。結果、生きる為にもアルスティアはエルディア側の土地を切り取らなくてはならなくなった。土地を手に入れればそこで作物を育てたり畜産に力を入れることが出来るという考えだ。

 

 そして始まるアルスティアの侵略戦争。大陸有数の戦力を備えるアルスティア軍は厳しい環境の中でドラゴンたちと争い、そして共に育ってきた事もありエルディアが押される形となった。そこでエルディアは友好国であるマルージャに援軍を要請し、これをもってアルスティアに対して戦況を何とか膠着させた。

 

「だがこの戦いの決着は見えている。戦えば戦うほど国力が疲弊する。大規模な軍を維持し、そして戦い続けるだけの備えが我が国にはない……勝たない限りは」

 

 それが解っているからこそ軍部も皇帝も必死に最前線を押し込み、そしてエルディア相手に再び優勢を握る。そのおかげでアルスティア南部からのエルディア北部地域は切り取れたらしい。そしてここで意見が割れる。

 

「私はここで手打ちにしたい。土地の返却を対価に引き出し、その上で農作物に関する技術者……それもプロフェッショナルを雇いたい。このまま稼いではそれを食料に変える様なやり方では限界が来るのは見えている。必要なのは自国で産業を生み出す事だ。ノウハウや技術がない、と言っていられる場合ではないのだが……」

 

「成程、その感じからしますとお父上が賛成なさってはいない、と」

 

「困った事に、な」

 

 パーシヴァルが応接室の椅子に座りながら話を引き継ぐ。

 

「アルスティアの現皇帝と第一継承者が継戦派なのさ。このまま略奪しながら王都まで進んで切り取る。収支はそこでプラスにすりゃあ良いって考えらしい」

 

「困ったことに父上の判断もあながち間違いではないという話だ。それこそ背水の陣で挑めばそれも可能かもしれない。だがそれは国力を使い潰す戦い方だ。今は良いだろうが、確実に次世代に遺恨が残るだろう。それにそこからは生み出すものがない。故に私はここを手打ちとするべく、停戦交渉を進める為にここに来た」

 

「成程なー」

 

 じゃあこの王子様の行動は皇帝の意思には沿わないのか、と考えると厄介な事実に気づいた。つまり王子のが少数派なんじゃないか、という考えだ。此方の考えを理解したのか、ルートヴィヒは頭を横に振った。

 

「派閥で言えば半々だろう。だが皇帝陛下の考えが変わらない限りは戦争は継続されるだろう。故に私は裏で停戦を呼びかけ、兄上と陛下を殺す為の準備をしていたのだが―――その必要もなくなった」

 

 その視線は俺達へと向けられている。

 

「それにこの状況、戦争を継続すれば自殺にも等しいものだ。陛下も悪戯に国を疲弊させるような事は望まないだろう」

 

「……という訳で、だ」

 

 パーシヴァルから声が来る。視線を其方へと向ける。

 

「俺達としちゃここで手打ちにしたいし、ルートヴィヒ殿下もそう思っている。だからここで終わらせたい所に問題がある」

 

「断絶領域」

 

「正解」

 

 成程な、つまりパーシヴァルは俺達に帝国側の断絶を解除して欲しい、という話なのだろう。まぁ、頼まれなくても次は北と南の探索にプレイヤーが動き出すだろうし、態々依頼してこなくてもどうにかなったんじゃないかなぁ……なんて事を考えていると、略剣の方からアイコンタクトを向けられた。引っかかりを感じる? 時間を稼ぎたい? オーケー、お任せするぜ。

 

 話役を大人組にバトンタッチする。俺は正直裏を考えたり、疑う事は苦手だ。何かを狙っている、求めているというのは伝わるが分野外の領域はどうにもならない。ただ期待されている事と、畏怖されている事実は伝わってくる。だがそれ以上はどうともならない。

 

 なので素直に略剣にバトンタッチする。

 

 という訳で、お手並み拝見だ。




 帝国側も帝国側で割と必死ではある。

 なお軍事力は帝国がこの大陸ではトップ。
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