断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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トップチーム Ⅲ

「で、それがなんで俺へのアタックになる訳よ」

 

「一目惚れだが?」

 

 横のイェンへと視線を向ければ、イェンの視線が此方へと向けられる。お互い、視線を数秒間合わせる。だがこいつは照れる事もなく真っすぐと目を見てくる。乙女ならそこらへんちょっとは恥じらえ、とは思わなくもない。が、そんな言葉にしない意思が通じる訳もなく―――いや、こいつの場合無視してるな? もっと見つめ合ってやろうか?

 

 なんて事を考えているとダダダダッ、と大地を蹴り飛ばす様な音が聞こえてきた。瞬間的に何が起きるのかを察して完全に諦める。

 

 直後、体が後ろへと向かって一気に引かれた。吹っ飛ぶように体が引きずられ、吹き飛び、ぐわんぐわんと視界が回転しながら掴まれているという感覚を理解する。誰がやっているのかは解るしなー、と思いながらアクションを放置しているとがっちりと掴まれたまま浜辺の上を1バウンドし、回転しながら2バウンド。イェンから距離を取る様に掴まれたまま抱き込まれる。そして聞こえてくるのは、

 

「駄目、私の」

 

 威嚇する犬の声だった。やっぱ感知してログインしてきた。後ろから抱きしめ抱えられる形で砂浜に座り込んでいる。そうやってニーズヘッグがイェンに対して威嚇の表情を浮かべているのだろうが、イェンは楽しそうに近づいてくるとそのまま正面から抱き着いて砂浜に3人諸共転がしてくる。もみくちゃになりながら砂浜に転がるとニーズヘッグとイェンが睨み合い、笑みを互いに向け合い、笑いながら俺の取り合いを始める。あの狼姫、国から脱走してきて相当フリーダムを楽しんでるな?

 

 そんなこんなでラノベみたいな展開が始まっていると、カシャり、と聞きなれたスクショの音がした。

 

 視線を俺を挟む様に争い合っている麗しい美女たちから道路の方へと向ければ、梅☆がパーシヴァルやルートヴィヒと並んでサムズアップを向けていた。

 

 イェンとニーズヘッグを投げ飛ばした。

 

「〈詠唱消去〉! 〈煉獄蝶〉! サモン・フィエル! 〈エレメントチャージ〉!」

 

「あ、アイツ本気で来やがった!」

 

「逃げろ逃げろ!!」

 

「〈コキュートス〉! 〈クリスタルガスト〉! 〈バインド〉! 〈バインド〉! 〈バインド〉! 〈バインド〉! おい! コラ! 大きないたずらっ子共! テメェらそれで何をしようとしてやがる!! おい!! おい!!!!! 〈ストップ・フロウ〉!」

 

「アイツガチじゃん! おま! ちょ! はい、王族シールド!」

 

「がああ―――!」

 

「ルートヴィヒがぁ!」

 

「〈氷獄蝶〉」

 

「はい、王族シールドその2」

 

「ぐあああ―――!」

 

 マテやこら。おぉん?

 

 

 

 

 1時間ほどなんかわちゃわちゃやった。気づけば師匠も参加して砂浜には幾つかのクレーターと氷漬けになった王族が完成されてた。そしてそこに被害を見て怒りに来た地主。全員揃って正座し、説教が終わる頃には何時ものメンバーが揃っていた。こうなるとやる事はID周回ぐらいしかここではない。言ってしまえばそれがメイン活動でもあるのだが。個人的には2日連続でID周回に引きこもってレベリングするというのも悪くはない。

 

 だがその前に話が始まる。

 

 パーシヴァル、ルートヴィヒ、イェンと身内が全員今、怒られた直後なので砂浜に集まっている。その裏で師匠はせっせこと地形の修正を行っている。相変わらず魔法って極めると便利なんだなぁ、と思わされながらもパーシヴァルが此方に視線を向けてきた。

 

「アイン、話し合いの結果今回はお前らに頼らない形で進めようかと思うんだが―――他に全体を牽引できるような強さを持った稀人を知らないか?」

 

 パーシヴァルの問いに頷きを返す。

 

「(略剣が)そう言うと思ってたから、いつでも会えるようにアポ取っといたよ。うち以外にも強いチームはあるし―――まあ、俺達が最強だが? うちよりも数の大きいチームも既にエルディア国内にあるね―――まあ、うちの方が凄いが?」

 

「推すじゃん」

 

「身内が誇らしいかよ」

 

「もっと誇って行け」

 

「外野、煩ぇ」

 

 中指を身内に突きつけながらパーシヴァルに振り返る。

 

「まぁ、そういう訳でエルディアに戻り次第話はつけられるよ。俺も軽く話題として煽っておけば参加するプレイヤーも増えるだろ」

 

「ありがたい。これで北方遠征がどうにかなるな」

 

 やっぱりエルディアの関心は今はそっちかー、って感じがある。まあ、しゃーないが。これで他のチームが目立てば俺達よりもそっちが引っ張りだこになってくれれば色々と嬉しい。そろそろ真面目にメンバー募集しなきゃいけないし、それに関しても身内で話し合わなきゃならないんだよなぁ……と思っている。ちょうどいいし、この後で時間が出来たら話し合う事にでもしようか?

 

 それはそれとして、これで後はエルディアに戻るだけという話になった。実際、ルートヴィヒを回収した時点で此方での用事は終了という事になる。俺達もID周回でのレベリングが美味しいからもうちょっと残っていたいのだが、それでも他のIDを大陸で探せばいいし。それよりも優先度の高い用事もある。ならさっさと大陸に戻った方が良いだろう。

 

 という訳で、

 

 俺達全員の視線が浜辺の、ビーチパラソルの下でトロピカルジュースを飲んでいる爺へと向けられた。

 

「なんじゃ、儂はもうちょっとヴァカンスを楽しみたいから後から合流するぞい」

 

「いや、送ってくれよ」

 

「自分で出来る様になってから頼まれてみろ。面倒じゃぞ」

 

 腕を組み、便利屋扱いされたテレポートの為だけに呼び出される姿をイメージし、溜息を吐く。確かにタクシー扱いされたら面倒だし嫌だよな。ここは仕方がないが、1日かけて船でエルディアへと戻るのが良いのだろう。

 

「仕方がない、か。出航の準備はどうだ」

 

 パーシヴァルが話を近くで待機していた兵士へと向ければ、兵士が敬礼を取る。

 

「は、出航の方は食料の積み込みさえ行えば何時でも可能です。遅く見積もっても2時間後には出航できるかと」

 

「良ーし、早く積み込んで出航するぞ。お前らも忘れ物がないかを確認して乗船しとけ。ルートヴィヒと従者の分の食糧増えるのを忘れずになー」

 

「は!」

 

「再度チェック行えー! 出航するぞー!」

 

 急に騒がしくなる中で、NPC連中が慌ただしく動き始める中、俺達はさっさと乗船してしまい、甲板に集まった所で軽く欄干によりかかる。アレキサンダーは軽く頭を掻くと、少し寂しそうに呟く。

 

「これでこのパーティーも解散かぁ……楽しかっただけに名残惜しいな……」

 

「明日から新しい臨時か固定探しですか……うーん……」

 

「ナチュラルに固定か臨時を探そうと思う辺りが今回の感想というか成果だよな」

 

「うん。俺も新しい固定を探そうと思います」

 

 アレキサンダーと森壁とゼドが頷きながら楽しそうに笑う。今回の臨時は彼らにとっては中々得難い経験となったようだった。俺の方も楽しく一緒に遊ばせて貰ったので、改めて楽しかったと告げておく。ニーズヘッグも腕を組みながら認めてる。

 

「楽しかったわ。縁があったらまた遊びたいわね」

 

「お、アイン以外の事で褒めた。アインの事以外はあんまり興味ないと思ってたのに」

 

「そんな事ないわよ? 興味が薄いのは事実だけど。だけどそれだけ、というのは視野を狭めるし。楽しい事も見過ごしてしまうわ」

 

「道理だ」

 

 それを教えたのは俺だからな! マジで俺頑張ったからな! 超褒めてくれよな! そんな事を考えていると察してくれて梅☆が頭を撫でてくるのはちょっと恥ずかしいので、フィエルを召喚して海の中に投げ捨てる。

 

「なんでですか―――!」

 

 ちゃぽん、と音を立てて海の中へと放り込まれたAIの存在を無視して、しかしどうするかなー、と話を切り出す。

 

「募集マジでどうすっか……」

 

 その言葉に土鍋がうーん、と唸る。

 

「まぁ、そこら辺はきっちりと話し合わないとな。PSとモチベとイン率はマジで関わってくる」

 

 そういう条件を満たせる奴って基本社会人なんだよな。学生は宿題に課題があるし、昼間は学校もあるし。自由に休みの取れる社会人がここら辺の調整とかでは有利なのだ。だから募集条件は社会人限定になるかもしれんなぁ、これ。

 

 略剣が眼鏡を取って、軽くレンズをふき取りながらかけなおす。

 

「ま、細かい条件はこれからゆっくりと話し合うか……どうせ丸1日暇になるし」

 

 それもそうだな、と納得したところで船の出航準備が整ってきた。乗船してくる人達の姿を眺めながら再び海へと繰り出す。

 

 帰り道はサメとか現れないといいなぁ……。




 王族シールド、茶番でなければ絶対に許されない禁断の奥義。
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