断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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トップチーム Ⅳ

「そろそろ最後の固定要員の募集と面接をしたいと思う」

 

「だな。時期的にそろそろ最後の3人を揃えて練習し始めなきゃならんよな」

 

 甲板、身内固定の5人で集まっている。話題は当然最後の固定要員だ。俺達は8人のフルパーティーで攻略を予定している。何度もしている話だがこれは絶対だし、その分の人を集めないといけない。残り3枠、ここをどうするかって話になってくる。これまでこの話に関してはちょくちょくチャットで話す事はあっても、本格的に集まって口にするのは初めてだ。そしてそれは必要な事でもある。

 

 片手間にスキルトレーニングをする為、氷の鳥を生み出し、それを腕に停めてから空へと放って言葉を続ける。

 

「俺個人は防御特化型よりもタイムアップを考慮して火力特化型のタンクとDDが欲しいと思う」

 

「んー、確かにタイムアップが恐ろしいんだよなぁ」

 

「トレイター戦は実質的にはTUとの戦いだったしな」

 

「それ」

 

 今回のジュエルコースト攻略における最大のハンデというか問題は俺達のレベルの低さだった。レベルが低いからボスギミックで苦労をする事になった。レベルが足りていれば《決戦技》の事もあり、もっと余裕を持ってクリアできただろう……少なくともそれはレベリング周回で証明されている。だがアレは難易度で言えばノーマルクラスのIDだ。高難易度でもハードでもない。

 

「おーい、フィエル」

 

「はーい? んー、あぁ、はい。難易度に関してですね? IDは単純に誰でもクリアできるように設計されているので難易度自体はノーマルです。この先追加されるであろうコンテンツはハード程度ですが、皆さんが目標としているコンテンツはクリアを想定していないレベルの難易度になります。勿論、強いスキルやすさまじいPSを持ったプレイヤーもいるでしょう。ですがそういう個人が活躍するだけでクリアできるようなものではありませんよ」

 

 お口をばってんにしてこれ以上は喋れませんとフィエルがアピールする。サンキュ、と答えながら片手で引っ張ってそのまま海に突き落とす。遠くでは王族共が恐怖と畏敬の視線を向けてきているがそんなものは気にせずに話を続行するぞ?

 

「実質的にTUとの戦いとなると要求されるのはギミック対処能力のあるPSと火力だ」

 

「クリアタイムに関わってくるしな。既にうちらがかなりの火力に特化してる構築だからな……梅☆が足りないところのサポートを担当してくれてるけど」

 

 視線が梅☆へと向き、梅☆がサムズアップを向けてくる。

 

「戻ったらアインに聞いた工房で銃の購入か作成できないか聞く予定だぜ。クロスボウよりもそっちのが威力出るだろうしな」

 

「或いは短弓か長弓の弓カテゴリーにシフトか。銃とかクロスボウはステの影響受けないらしいしな」

 

 弓カテゴリー用のスキルをクロスボウにも使用できているので、そのままメインウェポンを弓に乗り換えるならそのままスキルを削除する事もなく梅☆はスタイルを続行できるし、レベルが上がってステータスと手段が増えてきた所で火力に集中できるようにもなる。足りない小技や搦め手に関しては俺が魔法のバリエーションを増やせばそれで解決する話でもあるのだ。だから遠慮なく火力に尖らせても問題なし。というか火力が大事なので。マジで。

 

「という訳でキャラクターのビルドとしての優先事項はDPSが高めである事を条件にするか? 俺達のDPSを計測してそこから許容範囲のラインを算出して募集に出すって感じで」

 

「んじゃ、計算は俺の仕事だな」

 

 そこら辺の計測と計算とかは土鍋に任せる。んでタンクとDDが火力を出すとして、相方ヒーラーの話になる。今回の遠征において、土鍋としては相方にバリアヒーラーを置いたことがとても満足だったらしく森壁のビルドやどういう風にバリアを張ったのかを聞き出したり、応用できないかどうかを考えていたらしい。

 

「まぁ、結論から言うとバリアは分担できる。ボスが軽減を持ってるし、俺も出来る。当然略剣も出来る。後はニーズと梅がそれぞれ軽減か攻撃デバフを搭載してくれれば全体で軽減を回してバリア抜きでも行けるとは思ってる。場合によっちゃ全力軽減も必要になる可能性もあるけど。そこ込みでも軽減出来るヒーラーを入れるより、バッファーヒーラーを入れた方が良いと思う。今回の苦しさよりも上のものが要求されるなら全体の火力を更に向上させないと話にならないだろ」

 

「ま、鍋がそういうならそういう事だろう。タンク、DDは火力の出せる奴を募集。ヒーラーはバッファーを募集って形になるな」

 

 略剣の言葉に頷く。やっぱり、この形で落ち着くかー……って感じだ。これでとりあえず、性能として求めるものは決まった。

 

 さあ、残りの募集要項だ。欄干に背を預けながらとりあえず、と言葉を置く。

 

「どこまで許容できるか、って所だよな」

 

「理想は毎日インして、それで私たちに合流して一緒に活動できる人よね。それでいてPSもある。ただここまで要求するのは少し難しいわね……」

 

 ニーズヘッグの言葉にせやなぁ、と声を零す。腕を組みながら空を見上げ、そっから略剣へと視線を向ける。ホロウィンドウを操作していた略剣はそこから顔を上げ、

 

「まあ、言いたい事は解る。だけどイン周りに関してはそこまで心配する必要は無いと思うぞ? そもそもこの第1陣に参戦しているプレイヤーの大半はヘヴィゲーマーだ。接続数は開始から全く落ちる様な事を見せずに、高い接続数を維持してるらしい。つまり大半の連中が遊ぶためだけに長期休暇を取ってるって事だ。ま、俺達と一緒だな」

 

「全体的に私生活投げ捨て傾向かぁ」

 

「その言い方は酷い。間違ってないけど」

 

 PS、時間、そしてコミュ能力が必要だ。どれが一番? というのはない。全部大事なのだから、妥協というのは難しい。でも、まあ、これを叶えられるラインはおそらく大学~社会人レベルになるんじゃねぇかなぁ……とは思ってる。

 

「学生じゃ難しいだろうし……なあ?」

 

 略剣の視線が俺と土鍋に突き刺さる。それを俺達は視線を逸らして無視する。だって、ほら、俺達この為に一時休学してきてるし。

 

「株でヒットすればいいのよ」

 

「他人に真似できる事を提案しろ」

 

「ワンコは社会に出なくていい様にしたのほんと偉いと思うわ俺」

 

 ニーズヘッグがダブルピースを浮かべて煽ってくる。クッソぉ……でも俺、金稼ぐ能力はそんな高くないから対抗できないんだよなぁ……。技術があってもそれが金になるかどうかはまた別の話だし。あぁ、この話は止めよう。考えるのを止めよう。深く考えても特に解決する訳でもないし。とりあえず決議を取っておこう。

 

「近いうち……というか今夜か明日ぐらいには募集要項をSNSではっとくつもりだけどどうだ?」

 

「異議なし。そろそろやるべきだろうしな」

 

「俺も異議なし。審査には俺が立ち会うわ」

 

「異議なし。ただレベルによる足切りラインはつけたいな」

 

「私も異議なし。雑魚かどうかは私が判別するわ」

 

 良し、と呟き頷く。

 

「なら俺と略剣とニグに面接は任せるかな。募集して数日したら軽く送られてきたプロフィールを処理してから呼び出して面接って形になるか?」

 

「ま、そんなもんだろ。後はDPS計測用に訓練所の木人を借りたいな」

 

「王城の訓練所借りればいいだろ」

 

 コネならあるし。俺が口利きすればどうにかなると思う。普段から入り浸って修行しているし。あぁ、それとも拠点をイェンが確保するだろうし、そっちに頼む方が良いのかもしれない。何にせよ、全体の方針として次の目標は決定した。

 

「良し、本土に戻ったら真の仲間探しだ!」

 

「その表現はやめろ。思い出すからマジで止めろ。な?」

 

「うん……」

 

 ゆっくりと風に押されながら船がエルディアへと向かって進んで行く。水平線の彼方では島ほどの大きさの鯨が海を割って進んでいる。それを眺めながらこれから加入するであろう新しい仲間がどういう能力で、どういうビルドか。どういう奴が良いのか。

 

 それを話し合いながら水上の時を過ごしてゆく。




 後ちょっとだけこの章は続くよ。

 終われば次章、仲間探しと帝国のお話。それでこの小説も折り返しですね。
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