「アインだ、宜しく」
「俺はアインのPTメンバーだ、宜しく」
「拙者は《レジェンズ》のリーダーをやっているユウギリです、宜しくお願いします」
早速相手のヘッドと握手を交わしながらも、開幕から結構キャラが濃いのが来たな……とちょっとだけ驚く。視線をレオンハルトへと向ければサムズアップが向けられるのでこういうキャラらしい。まあ、RP勢って結構いるみたいだしおかしくはないか。そう判断してあっさり流しておくことにする。俺も俺で蝶を浮かべてRPみたいな事はしているし。スキルトレーニングを含めているのは事実だが、それはそれとしてこういうエフェクト浮かべるのって特別感があって結構楽しいんだよな。
まぁ、それはそれとして。
「サンクス、レオンハルト。助かったわ」
「気にするな。友人の助けになったら幸いだ。それではな」
手を振るとそのままレオンハルトは去って行く。これ以上は此方の話題には首を突っ込まない、という事だろう。なので改めて感謝しつつ視線をユウギリへと戻すと、略剣の方へと視線を向けてその頭上を見て、ちょっと引いてる様子が見えた―――あぁ、たぶん名前の表示を確認しちゃったのだろう。気持ちは解らなくもない。
「とりあえずここで話をするのもアレだし、どこか座れるところに行かない?」
「では拙者らの”ホーム”へ。そこならば他人の目や耳を気にせずとも大丈夫でしょう」
「んじゃ宜しく頼む」
「というか既にホームを購入してるんだな」
「えぇ、少々高いですが。それでもチームとして活動する以上は必要かと思いまして」
しっかりしてるなぁ、と腕を組んで頷く。
そこからユウギリにエルディアの住宅街へと案内されながら考える。割と真面目に拠点の確保を考えなくちゃいけない時期であるという事を。少なくとも全員集まって話す場所は必要だ。今は王城に間借りしている形になるが何時までもそうしてはいられないだろう。ここは1つ、イェンに拠点の確保を頼むべきなのかもしれない―――というか一番最初に頼む事がそれかなぁ、って感じだ。
ちなみにハウジングもちょっとだけ楽しみだったりする。
エルディアの広大な土地を迷う事無くユウギリが先導し、大通りから路地に入り、中規模なハウジングの前で止まった。3階建てのハウジングだ。どうやらこれが彼らの拠点らしい。
「スポンサーは?」
「いませんね。探すべきかなぁ、って意見はあるのですが全員で金を出し合ったら意外とどうにかなったもので」
「へぇ」
現状、最先端最前線を走るチームは利益を独占できる部分がある。そういう所から金は生まれるのだから意外とこのチーム、金を持っているのかもしれない。俺達もなんだかんだで王家からの支払いと素材アイテムの売却で結構お金がある。これからはイェン達の支援もあるし、そういう意味で金に困る事は少ないだろうとは思うが。
さて、そろそろ乗り込むか。
「それでは中へ案内します。此方へ」
「おっす、お邪魔しまーす」
「お邪魔しまー」
軽く挨拶を口にしながら玄関から中に入る。
まぁ、なんというかまだ装飾品とか家具の類は少ないハウジングだった。別のMMOとかの話になるが、ハウジングは一種のエンドコンテンツだ。プレイヤーが作成する事前提も材料費で数百万という金額が簡単に溶けるゲームなんて腐る程ある。それを考えれば家具を買いそろえるのだって中々難しい事だろう。だが最低限としてマットやソファ、テーブルやいすといった家具は既にハウジング内で揃えられており、談笑する為のスペースも用意されていた。
その内一番整えられていたリビングに案内され、テーブルをはさむ様に置かれたソファに座り込む―――どうやら他のプレイヤーたちは活動中らしく、或いは一時的に外されているのかここにはいなかった。
「良し、面倒な話はスキップして此方からお願いしたいところに入って良いか?」
「えぇ、お願いします。その手の策謀は苦手ですので」
「こりゃあ俺は必要なかったな」
略剣が横で苦笑するのを聞きつつ、俺も笑みを浮かべた。略剣の存在は保険だ。そして同時に円滑に物事を進める為の調整役だ。この手の相談や交渉に関して一番経験を持っているのが年長者の略剣だ。俺が何が失言をしない様に見張る為の人員でもある。そこにいるだけでかなりありがたいのだ。
だからお互いに了承を得た所で話を始める。
「エルディア王家の方から話を貰ってる。北方遠征の話だ。王家からのバックアップ込みで、PC全体を牽引するパワーのあるチームの協力が欲しいって話だ。うちはこれからチームとして活動する為の準備のあれこれで動きたくはない。だからこのクエストを委託できる先を探してる」
「……成程。つまりそのクエストを此方へと頼みたい、という事ですね」
「そういう事」
足を組み、手を膝の上で組みながら視線を正面のユウギリへと向ける。此方の話を聞いてユウギリは悩むような表情を浮かべた。なので此方からの情報提供を続ける。
「現在、エルディア王家は北方のアルスティア帝国を解放する為の動きを作りたい。その理由には俺達がジュエルコーストの方で解放してきた帝国の要人の存在がある。細かい話は色々とあるけど、結論から言えばPC側の立場からすると王国と帝国に恩が売れて顔も売れるって考えてくれれば良い」
「それに名誉も貰える、と」
ユウギリの言葉に頷くと、ユウギリは更に悩む様に顔を伏せる。大きな話を持ち込まれただけに、かなり悩んでいるのが見える。ここで何かを言うのは楽だが、グランドクエスト視点で考えると無理にプッシュして、焦った結果崩壊や失敗させるわけにはいかない事だ。
「……悩ましいですね。メリットが明らかに見えていますが、これを受けると活動の方向性がしばらく固定されますね」
「ま、それ込みでの美味しさって所だな」
ソファによりかかりながら指先を持ち上げ、そこに蝶を止まらせてから霧散させる。ちと慇懃無礼すぎやしないかと思ったが、雰囲気作りの一貫でやっている事だ。それに略剣からは注意が入らないって事は問題のないアクションって事だろう。これからもこういう方向性で仕草とかエフェクトとか調整すっかなぁ、って考えておく。《土魔法》のレベルを上げるとフレーバー範囲の効果で花を咲かせる事だって出来るらしいし。そう考えてみるとエフェクトやフレーバー専用で色々と魔法を開発するのも悪くはなさそうだ。
「俺達は固定メンバーの残りを募集、練度を上げる為に時間が欲しい。だから初期からこのキャンペーンについていく事は出来ないし、時間の方が欲しい。それに正直目立ちすぎてる部分もあるからな。これ以上先導してるとヘイトが凄い事になりそうなんだわ」
「分散先が欲しい、と」
「後は同じようにトップを独走出来る実力のチームとの繋がりも。正直1パーティーだけで攻略できないコンテンツがこの先も出てくるだろうしな」
「拙者たちとしてもアインさんの様な優秀なプレイヤーとのつながりは正直な所、欲しいと思っていました。この間のエアポート攻略は1チームが練度低めだった影響で何度も全滅した部分もあります。この先、大規模レイド型のシナリオボスが出現した場合は拙者らがどれだけ有力パーティーとの連携、連絡を取れるかが攻略のカギになってくる部分もあると思いますしね」
「これはRPGじゃなくMMORPGだからな」
1人で全てを攻略できる訳じゃない。
これがフィクションであれば最弱スキルの最強効果で無双なんてしちゃうんだろう。
だけど違う、ゲームバランスは運営に監視されている。ゲームバランスを崩壊させるような頭の悪い事は起きない。そんな事をしてしまえば他の数万人というプレイヤーが醒めてしまうからだ。”あいつが全部無双してしまう? コンテンツ独占されてアイツ1人で遊んでるなら俺もうやらんわこのクソゲー”ってなってしまう。
プレイヤーってのは特別って言葉に敏感だ。特に自分が手に入らない物に対しては。努力をすれば積み上げられるゲームってジャンルでまでなんで他人の無双を見させられなきゃいけないんだ? って話になる。
だからバランス崩壊している個人での攻略は不可能だ。
だからどれだけ強いプレイヤーを揃えられるかが最終的な攻略のカギになる。
そういう意味ではこの話は、俺達にもユウギリ達にも重要な事だ。
だが俺1人でこれを続けられるわけではない。
他にもそれが出来る奴が必要だ。
そういう意味では早期から人数の多めのトップチームを形成している《レジェンズ》はかなりの有望株だ。というかうちに匹敵、並ぶチームだ。知名度自体は他のVの所とかのが上なんだろうとは思うけども。
牽引できるだけのパワーがあるのは実際にトップとして活躍している所だけだろう、とは思う。
「ま、焦らずに。近日中に返答は欲しいけど今夜答えて欲しいって訳じゃないからな」
「えぇ……今夜、メンバーを集めて全員で相談してみます」
ただ、ユウギリの声の色には肯定的な物が見える。全体の方針としては別に、ユウギリ自身は乗り気だってのを感じる。手ごたえは悪くない。だから笑みを浮かべ、ユウギリの言葉に頷いた。俺達はプレイヤーではあるが、同時にトップチームだ。
何をするか、何をしたかが他のプレイヤーの憧れ、トレンドになるだろう。
そう、今、この瞬間は。
他の誰でもない、この場にいる俺達が時代を作ってるのだ。そして間違いなくユウギリ達も、乗っかってくるだろう。
だから俺はそれを確信し、笑みを浮かべたままこの話し合いを終わらせた。
この章はこれでおしまい。
これで漸くフルパーティー結成の為の最終メンバー探しが始まる。果たしてどんなビルドやキャラになるのやら。