断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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固定パーティー Ⅱ

「おーい、アイン。こっち見終わったぜ」

 

「お、マジか。乙乙」

 

 ソファの上でごろりと転がっていると土鍋がやって来た。土鍋の方はヒーラーの整理を担当しているので、ヒーラーの方のリストを見終わった所なのだろう。DDに比べれば数は少ないが、それでも数百人という数を捌いたのだからお疲れ様という言葉以外に言う事はない。ソファから起き上がり、座り直しつつ足をその上で組んで扉から入ってきた土鍋に視線を向ければ、土鍋の方からホロウィンドウが投げられてきた。

 

 それを受け取りつつ残されたリストを確認する。

 

「最終的に5人にまで絞ったのか。かなり絞ったな」

 

「まあな。DDと違ってこっちは応募総数が少ないからな。10人ぐらいにまで狭めようかと思ったけど最終的にはここまで減らせたわ。こっちは近いうちに面接可能かねぇ」

 

「ほーん」

 

 土鍋がチェックした5人を確認してみる。

 

 まず1人目をチェックする。名前はカズデル。ビルドは演奏ベースのバッファーヒーラー。使用するヒールタイプはHoTとバリアで、《演奏》スキルで演奏中の間はHoTか常にバリアを展開し、それによるダメージの軽減か回復を行える。またそれとは別に演奏バフによって火力等を向上させることが出来る。瞬間的なヒール能力が低く、瞬間的なバフ能力も薄い。その代わりに長時間バフと軽減を維持する事が得意で常に全体をサポートすることが出来る。

 

「スイッチヒーラーか……両方取りは危なくないか?」

 

「だけど常に演奏バフで全体の火力を向上できるってのは強みだと思ってる。音の届く範囲がバフ範囲ってのも強いと思う。分断フェーズとかが入る場合、音が聞こえる距離なら分断されてもバフを維持できるって事だからな」

 

「成程なぁ」

 

「ちなみにバフの数値も送って貰ったから火力に混ぜた場合の係数から算出する火力の向上数値を確認してる。計算上は10分経過時点から瞬間バフタイプよりも火力が出る様になるわ」

 

 そこらへん計算できるのがお前の強みだよなぁ、と思いつつ2枚目の人物を確認する。えーと、こっちは女性か。アイドル型ヒーラーで歌と踊りを使ったバフがメインのヒーラー、名前はエクサ。スクショを見る限りは滅茶苦茶きらっきらに輝いているタイプの人だ。そしてメインとなるのは十数秒間維持される歌唱技能によるバフ。演奏が持続型に対してこっちは十数秒間の歌唱タイム中に発生するダメージを瞬間的に引き上げるタイプ。その上でヒールはダメージを軽減するタイプのバリア型。HoTは備えてないらしい。つまりシンプルに見てバフメインのビルドだ。

 

「超王道のバッファースタイルだな。いや、王道っつー割にはかなりキラキラしてるけど」

 

「アイドル願望なんざ誰だってあるもんだろ? 姿さえ偽れるVR空間なんだからどんなプレイしようがそいつの自由だ」

 

 土鍋もキャラクリで褐色肌になっているし、俺も髪を伸ばしてインナーカラーを加えたりで控えめだが姿を変えて遊んでいる。そういうリアルとは違う自分の姿を構築できるのがこういうVR世界での楽しみの一つになるだろう。まあ、MMOお約束のネカマ、ネナベプレイが現状は解禁されていないのが非常に残念な所でもあるのだが。実はちょっとだけ興味があったりするんだがまあ、技術的にはまだクリアされてない所だししゃーないものはしゃーないだろう。

 

『あ、技術的に安全性が確認されたので近々アップデートと共に実装されそうですよ』

 

「人の思考を読むな」

 

 フィエルが人の考えを読んで表示させたホロウィンドウを齧って破壊する。その様子を特にリアクションを見せる事もなく土鍋はスルーしている。まあ、フィエルがだいぶ馴染んできた事実もあるしこの手の茶番は今更だよな。

 

「結局の所バフに関しては短期間で集中的に、もしくは長期でまんべんなく、か」

 

「だな。どっちもそれぞれのメリットがある。一概にどっちのが優秀かってのは判別し辛いんだよな」

 

 土鍋の言葉に利用するコンテンツ次第だよな、と同意する。トレイターの雑魚&破壊フェイズで瞬間的な火力が求められた様に、ああいう状況なら瞬間的な強化バフが欲しくなるだろう。だが全体がギミック処理ベースのボスでタイムアップ込みの構築の場合、全体の火力を底上げする継続バフの方が欲しくなってくる。この場合、どっちを選択するかは完全にコンテンツを予測しての盲撃ちになってしまう。だからここは何がパーティーとしての相性が良いか、っていうのを考えなくてはならない。

 

 3人目、踊り子ビルドで名前はアイラ。

 

「んん、踊り子でアイラ……!」

 

「びっみょーになつかしさ感じる組み合わせだよな」

 

 解る人には解っちゃうかもなあ! と思ったけど武器はロッドらしいので違うらしい。偶然かぁ、と思ってちょっとテンション下がる。そんでこの人は《舞踊》スキルで舞踊を重ねれば重ねる程バフ効果が向上し、一定のレベルまで達すると最大効果まで上がったバフ効果を維持する事が出来るらしい。バフ効果がかなり高い代わりにヒール能力は薄く、支援と強化しか行えないビルドとなっている。正直な話、レイド向けの性能であって少人数の戦闘だと滅茶苦茶難しい性能だ。だけどDPSを増やすという意味では最適解かもしれない。完全なバフ集中型タイプ。面白いビルドだなぁ、とは思うが。

 

「これ、お前がヒールで憤死しそうだよな」

 

「解る? だから悩んでる」

 

 相方ヒーラーが回復性能0となるとマジで大変そうだよなぁ。HPの戻しもバリアも全部土鍋が担当する事となるんだから。

 

 んで4人目は……お、森壁だ。性能に関しては今更話し合う事はない。既に一緒に遊んでいて知っているのだから。完全なバリア特化型ヒーラー。味方のHPを守り、維持する事を得意とするヒーラータイプだ。ダメージを軽減する事で生存性を高め、相方のピュアヒーラーがHPを戻す作業を手伝うのが役割だ。開いているスキル枠でステータスに対するバフスキルをいくつか取得し、それを使ってバリアの片手間に味方を強化するスタイルを取り入れたらしい。

 

「一番安心できる枠だな」

 

「だな。呼吸が解るってのはそれだけで大事な事だ」

 

 既に数日一緒に遊んでいる実績があるからスキルや動きの合わせには苦労しないだろうし、何よりも人柄と実力が解っているのが良い。つまり地雷率が0である事が保証されているのだ。これは固定を組む上では凄い重要な話だ。

 

 何せHimechanとか、サークラとか、唐突に身内パーティーに出没した怪物が一瞬で友情破壊して何も残さず去って行くなんて話、MMOの界隈では都市伝説でもなんでもなくガチで存在する話なんだから。そういう意味では女性プレイヤーよりも男性プレイヤーの方が遥かに安心できる部分が強い。

 

 一部連中なんてそれこそ女性プレイヤーを地雷認定して近づかないレベルで。

 

 人間不信ってレベルじゃねーぞ!

 

 いや、まあ、気持ちは解るが。それにうちの身内連中は相手がいるからそういう事に対してはドライなんで心配する必要ないんだが。

 

 あるとしたら俺が煮え切らない態度取ってるからそういうのが来たらニグに襲われそうな事かなぁ―――!

 

「森壁くんの問題があるとすればバフ要素に薄くて全体としての火力貢献が薄いって事か」

 

「だけど戦闘中の安定性って面で見れば一番これが強い。マジで。相方に完全にヒーリングを理解してくれる奴がいてくれるとヒーリング分担で仕事がマジで楽になる。その分攻撃にリソース回せるから必然的に俺と森壁が火力出せる様になる」

 

「そこがなぁ。魅力的なんだよなぁ……」

 

 ピュアとバリアの分担作業だ。正直土鍋のヒーラーとしての目線で見ると森壁の様な特化バリアヒーラーをパーティーに入れたいんだろうなぁ……とは思う。

 

「んで5人目……最後は結界使いか」

 

「そそ。面白そうな性能してるだろ?」

 

 俺が既にマスターしている《結界術》を更にヒールとバフの方面で特化させたスタイルのビルドの様だ。俺は《結界術》をテレポートの習得前提としてしか見てなかったが、森壁やこのプレイヤー、ゾルクスからすればバリア回りで発展できる要素が強い様だった。結界から発展させた陣を展開し、内部で様々な効果を発揮させながらバフと軽減を発動させるほか、陣を重ねる事で複数の効果を混ぜて新しい効果を発生させたりする面白い発展の仕方をしている。バリアも出来、バフも出来る。こう言えばかなり便利に聞こえるが、陣は普通の魔法や結界とは違って範囲が狭く、直径5~10メートルほどのサイズまでにしか拡大しないらしい。

 

「範囲が狭いって事はその分動きを固定化させるって事だけど、移動ギミックが多い所となると陣の効果を全く受けられなさそうだな」

 

「それ。そこを考えるとバリア関係は森壁のが強いんだわ。安定性では圧倒する。でも火力が必要だよなぁ? って考えるとアイラなんだけど、間違いなく俺が悲鳴を上げ続ける事になる。その合間を考えるとカズデルかエクサ。俺達は動きを精鋭化できるから尖らすぜ! ってなるとゾルクスかな……」

 

 そこまで口にした所で土鍋が腕を組みながらうーん、と唸る。

 

「悩ましいけどとりあえず一旦面接して、人柄とモチベ確認してから決めるかぁ~……って感じだわ」

 

「あいあい、お疲れお疲れ。ヒーラー組の面接に関してはそっちに任せるわ。俺は俺でDDの方をとりあえず100にまで絞って、そっから更に絞ってくわ」

 

 どいつもこいつも火力一辺倒というか、火力の事しか考えてないというか。まあ、DDなんだから当然なんだけど、それしか考えてない連中ばかり応募してきてるから厳選するのがマジで大変だ。中にはどう見ても小学生にしか見えない奴が混じってるし。それでも基準満たしてるからなぁ。

 

「ふぅー……とりあえずお互い、もうちょい頑張るか」

 

「おう。今略剣の奴がタンクの面接やってるみたいだしな」

 

 うーん、あっちもあっちで気になるがとりあえず今はこっちだ。今日中にもうちょっと厳選頑張るか、と部屋から出て連絡を取り始める土鍋を見送り奮起する。




 君ならどんな奴を採用する? 最高難易度コンテンツを攻略するのに必要な能力とは……?
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