断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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固定パーティー Ⅴ

1様『確定で』

略剣『マ? マジで? こっちも今決めたところだけど』

土鍋『は? どういう事よ』

1様『同類発見。DPSチェック達成。性格に難あり』

略剣『おい、最後』

土鍋『いや、ボスと同種って事はヘルチワワ派遣すれば解決って事だろ』

略剣『あー』

梅☆『言っておくけどそれガチ劇薬だかんな。トラウマもんだぞ』

1様『という訳で近接・デバフ型火力DD1名確保』

梅☆『無視するじゃん』

土鍋『ならこっちは森壁で良いな。採用の連絡入れるわ』

狂犬『呼んだ?』

1様『メスガキ躾けるから応接室にカモン』

狂犬『わぁい!』

略剣『んじゃこっちの採用者もそっちに連れてくわ』

土鍋『森くんも割と近い所にいるみたいだし直ぐに来るってよ』

 

 デスコの画面を消去し、ぼろぼろになった木人の前で得意げな表情を浮かべるレティシアの姿を見た。間違いなく自分の才能と力の全能感に酔っている部分があるし、先人としてこのメスガキ候補を絶対に解らせないと、という使命感に駆られる。ほぼ確定だろうがこいつ、マウント取れる相手には100%マウント取ってくるタイプであるのはもう気配で解る。

 

「とりあえず仮採用って事で」

 

「仮採用?」

 

「次が最終試験で、それで俺が満足する結果が出たら採用って感じだな。ま、とりあえずついて来い。外で突っ立ってるのも嫌だろう?」

 

「そうね、ならエスコートをお願いするわ」

 

 最近の若い子はませてるなぁ、と苦笑しながらレティシアを連れて拠点内に戻る。拠点―――というか屋敷の内装はイェン達の趣味で東国風に整えられているが、こっちにある家具や調度品で完全なる東洋テイストを再現する事は出来ない。その為、東西を混ぜ合わせた、中間の様な不思議な様式になりつつある。

 

 こんな感じに文化とか芸術って発展してるんだよなぁ、と美術の歴史で学んだ事を思い出す。俺は割とこの内装気に入っている。家具のチョイスとか一部俺の意見も入っているし。それはまぁ、ともかく、

 

「シャーリィさんいますか?」

 

「はい、此方に」

 

 王宮では専属の侍女として働いてくれたシャーリィだが、此方の引き抜きに応じてくれてこっちでも働いてくれている。まあ、十中八九王宮側からのお目付け役なのだろうが。それでもこういうパイプを繋いでいる人を傍に置くというのは同時に敵対していないですよアピールでもあるので、略剣やイェンは面倒ごとが減って良い事だって言ってた。

 

 ともあれ、

 

「応接室に皆で集まるから。ゲスト含めて合計8人。新人含めてこっちに移ってくると思うんで」

 

「はい、部屋と飲み物のご用意をしますね」

 

「ありがとう」

 

 頭を下げるとシャーリィが下がって行く。それを見送りながらレティシアがふーん、と声を零す。応接室へと向かいながらレティシアが聞いてくる。

 

「お金があるのね?」

 

「うちはスポンサーがついてるからな。商会が丸々1個」

 

「あ、知ってる。東炎商会よね? 和風・中華のインテリアやアイテムを販売している事からプレイヤーに人気の所よね。レティの趣味ではないけれど、悪くはないセンスだと思うわ」

 

 略剣も販売と流通にいつの間にか噛んでたからな……アイツゲームの中で迄何をやってるんだろうか……?

 

「ま、そういう訳で俺達の活動は余程馬鹿な使い方をしない限りお金で困る事はない、って訳だ」

 

「世のプレイヤーが聞いたら怒りそうな事ね―――ま、レティはその恩恵を受けるからどうでもいいけど」

 

「おー、強気じゃん。いいぞぉ、強気なのは。弱気なのよりは全然」

 

 うちの狂犬が来たら一瞬で崩れると思うから。それまでの命よ。

 

 そんな風にレティシアと話しながら応接室まで案内し、中に入れる。ソファに座って少しすれば飲み物をシャーリィが運んでくる。それを受け取りつつ、テーブルを挟む様にレティシアの方を確認する。

 

「……一応、先に固定周りに関する注意事項と細かい確認を行うけど良いな? 後ついでに本当にログインしていて問題ないか、許可を得ているか、そういう所も確認するが」

 

「えぇ、勿論不安に思うだろうしレティも構わないわ。さっさと面倒な話は終わらせてしまいましょ」

 

「良し」

 

 

 そこから他の連中が集まるまで、レティシア相手に色々と確認を行う。俺と同じタイプの技能持ちでDPSも出せるなら、才能と能力を加味して十分即採用コースだ。だが彼女が本当に両親の許可を得て遊んでいるのか、或いはログインし続けられる環境にあるのか。それを確認する必要がある。特にこの固定の募集は元々社会人を想定して結成しているものだ。その中に明らかに未成年が一人混じるのだから、気を付けなきゃいけないところがある。

 

 まあ、だから確認は万全に。

 

 

 

 

 すったもんだでレティシアのご両親とちゃんとコンタクトが取れたし、ちゃんとレティシアのログインに関しては許可が出ていた。その上で時間と活動に関しても問題をオールクリア。寧ろクリアされている事で不安が増えたりしたのだが、固定活動をする上ではなんも問題がない事が判明してしまった。何やらその裏には家庭の事情がありそうなものだが、それを細かく突っ込むのはマナー違反だ。相手から口にしない限りはノータッチ、これがマナーの基本という奴だ。

 

「ね、何も問題はなかったでしょ?」

 

「俺はプライベートな話はこれ以上はしないよ」

 

「それはそれで寂しいわね。私、お兄さんになら追求されても別に良いわよ……? ねぇ……?」

 

 椅子に座りながら足を組んで蠱惑的に微笑んでくる少女―――うーん、なんというメスガキ感あるだ。いや、本物はもっとアレなんだが。だけどなぁ、こういう状況でお前そういう事をやってしまうとなぁ……。

 

 時間的にもそろそろじゃね? と思いつつあると、当然の様に窓の上枠を掴んでニーズヘッグの姿がぶら下がる様に出現した。その姿を察知してレティシアは視線をニーズヘッグへと向け、ニーズヘッグが視線をレティシアへと向けた。

 

「―――今、ボスを誘惑したのってこの子?」

 

 そうは言うものの、相手が子供なだけにニーズヘッグの迫力は皆無だった。見慣れたチワワ状態。体を軽く振るとそのまま部屋の中に一回転しながら着地して侵入する。フレーバーとアクロバットに特化したビルドをしているニーズヘッグのスキルはこの1か月で更に磨かれており、知っている限り最も曲芸染みた動きの出来るプレイヤーとなっている。

 

 そんなニーズヘッグを見て、

 

 レティシアは完全にフリーズしていた。その口は何かを言おうとして半開きになった状態で停止し、そして瞳はニーズヘッグを見て大きく見開かれている。

 

 その姿、まさしく宇宙猫と呼べる状態であった。

 

 だが直ぐにその視線は震え出す事で変化する。アイデアロールに成功してしまったんだろうなぁと呑気にその様子を見て、ニーズヘッグは唇に指をあてながら首を傾げた。

 

「ボス、この子ボスと同じ……?」

 

「そうそう。良い拾い物でしょ」

 

 俺達の視線はそれからレティシアへと向かう。そんな彼女の視線は完全にニーズヘッグに釘付けになっており、明らかに恐怖で表情が揺れているのが解る。ニーズヘッグの中身を理解する生き物はこうなる。動物とかが根源的に強者に服従する様に、野生動物が当然の様にこの女の前では腹を見せる様に。レティシアはその感受性の高さから感じ取ってしまったのだ。この女の中身がどんなダークマターとなっているのか。

 

 ―――やっぱ3秒も持たないよなぁ!

 

「やっぱこの女の中身ロクでもねぇな」

 

「……」

 

 しょぼん顔で無言の抗議を見せるニーズヘッグが動こうとした瞬間、レティシアが動いた。一瞬で座っていた椅子から飛び出すと、そのまま床に転がり、そして額を地面につけた。それはあまりにも見事で、完成された命乞いだった。半分本能的に、生きる為に、ニーズヘッグの中身というものを見て彼女という存在を察してしまって出したリアクションだった。いや、まあ、気持ちはわからなくもない。見た目はチワワだが。いや、ほんと、見た目はチワワなんだが。中身はこう、SANチェックいるタイプの構造してるし。

 

「―――い、命ばかりは許してください……お、お願いします」

 

 先ほどまでの威勢や元気さ、調子の良さは一切見えなくなっている。この中身を一時期は溢れさせていたんやぞ。それに蓋をした俺のことを人類はもっと褒めても良いと思う。

 

 まあ、ニーズヘッグ自体は物凄くこの手のリアクションは不本意で、耳と尻尾がだらりと力なく垂れ下がっている……様に見えてくるぐらいには意気消沈している。

 

 その様子を俺は手を組み合わせながら膝の上に置き、足を組んでその景色をニコニコ顔で見てた。

 

 取り合えず開幕パンチはこれでええやろ!




 ライバル(3秒)。理解できる奴は一瞬で格付けチェックを終わらせてしまうタイプの犬。やはり正ヒロインは(物理的に)強かった!。

 これで漸く固定メンバー全員集合できる。
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