「さて、こうやって集まった所で俺達のこれからの活動の話をしようか。とりあえず今の状況を……略剣、頼む」
「あいよ」
ソファに座って視線を略剣へと向ければ、眼鏡の位置を軽く調整するように持ち上げながら頷いた。略剣は手の動きでホロウィンドウを取り出すと、そこに現在のチームの資金や状況をまとめたデータを表示した。
「今現在、俺達はイェン嬢のバックアップを受けて活動している。だから消耗品の補充や触媒に関しては気にしなくて良い。使った分はここで即座に補充できると考えて貰っても良い。装備に関しても更新はイェン嬢が金を出してくれる。5の倍数のレベルに上がったら、こっちに戻ればレベルに合わせた装備を受領できるようになってる。勿論ID産の装備の方がレベル帯としては強いからそっちを優先しても良い」
「流石のスポンサー様だな。金のある所は違うな」
べルゼの言葉に頷く。その為のスポンサーだからだ。
「という訳で俺達にはスポンサーがいる。そしてイェン嬢が面倒な購入やストックの補充をやってくれているおかげで、俺達の活動においてそこら辺の心配をする必要もない。無論、梅☆の弾薬に関しては機工工房と契約済みだ。消費した分の弾薬は、あっちから自動的に補充されるようになってる」
「おかげで派手に使えるぜ」
そう言って片手で持ち上げるには少し大きな銃を梅☆は取り出した。その武器は前から大幅にアップデートされており、工房の方で発明された銃を交渉する事で使わせてもらえるようにしたのだ。ただ弾薬は工房でしか作成できない為コストが少々高くなっているし、現実の銃ほど連射できる訳ではない。その代わりスキル等を絡める事でレーザーを放ったり、グレネードを撃てたりとんでもない事が出来る様になっている。純粋な火力に関してはクロスボウを握っていた時よりも遥かに高くなっている。
「イェン嬢の商会が俺達のスポンサーになるが、それとは別に王城との繋がりもある。この国じゃ恐らく一番豪華なコネを持っているのが俺達だ。つまりバックアップ体制に関しては何の心配もいらない。ついでに言えばクラフターを何人かこっちで雇ってる。ある程度レベリング用の素材を提供する代わりに優先してこっちの仕事を受けて貰う形でな。実質的にはクラフターの育成と囲い込みって形だが……NPCでは無理で、PCにしかできないような事を頼む為には必要な事だ」
今の環境だとまだまだNPCの職人がレベル高すぎて追いつこうと頑張っている段階だが、最終的にはPCの方が優れた技術者になるだろうとは言われている。その時に備えて今のうちに才能と意欲のあるプレイヤーを囲んでおくのは意義のある事だし、それに金を出す事は悪くない。何よりもこっちは商会を牛耳ってるのだ。リアル技術や知識を通して作成したアイテムやファッションを露店等の個人商店ではなく、商会という形で流通に乗せられるのは売れる幅が全然違うのだ。
そういう意味じゃかなり大事な事だったりする。
「そんで次は他のPC組織との話だな」
略剣が話を続ける。
「今現在、俺達はトップチームである《レジェンズ》との同盟関係にある。つっても内容はシンプルで睨み合わないで情報共有しつつ進めよう、ってものだが。おかげで下準備の為に前線を離れている間でも前線の情報が入ってくるようになった」
「俺達は人数が少ない少数精鋭チームだからな。他所からの情報収集は割と大事だ」
「あぁ。特に大規模レイドが発生した場合、連携の取れるチームが複数欲しい。その事を考えると《レジェンズ》と同盟を組んでいるのは悪い事じゃない。それと似たような同盟関係は他にも《スターズ》、《鉄血騎士団》とも組んでる。どっちも《レジェンズ》には及ばないが、北方遠征で頭角を現したトップチームだ」
同盟交渉は俺と略剣の仕事だ。イェンの商会の準備の合間に北へと遠征しては現地で交流しつつ交渉し、契約を結んだという形だ。そのほかにもちょくちょくローテーションを組んでうちの人員を他のチームのパーティーに混ぜて偵察とか、情報収集とか、交流とか。レベリングついでにそういう事もしておいたから大体の火力係数は把握している。
「バックアップも横の繋がりも良好。チームとしての状況は悪くない」
「問題があるとすればここ数週間、目立つ活動をしてない事、か」
「それ」
べルゼの言葉に頷く。ここしばらくはこの体制を確立する為に活動が控えめになっていた。ちょくちょく前線に行ってはいたものの、攻略や断絶解除の功績は他のチームに取られている。だからここはそろそろ復帰と共に一気にトップである事を証明する為の活動が必要だ。何故なら名声には期待が付随する。そしてその期待というものは金や力というものになるのが組織だ。何よりも漸く8人集まったのだ。だったらいっちょ、派手にかまして俺達が帰ってきたという事を証明したくなるのも道理だろう?
そういう訳で、
「俺達の今後の活動。ここが一番重要だ」
略剣の話を引き継ぐ様に話始める。背筋を軽く伸ばしながら全員の視線が此方に集中しているのを意識して話し出す。
「まず絶対に片付けなきゃならないのが北方遠征だ。この大陸の未来がかかってるレベルで重要な案件だからな」
北方帝国・アルスティア、ドラゴンライダーの聖地とも呼ばれる場所だ。ゲーム開始前まではエルディアと戦争していて押していたとさえ言われる力のある国だ。だが逆に言えばこの大陸有数の軍事力を保有する国家だという意味だ。つまりこの大陸における圧倒的な武力が復活するという意味でもある。断絶を解除すればするほど土地が増える。だが国家と人が増えなければその土地は増えたモブエネミーと浸食エネミーの残党によって荒れ果てて行くだけだ。
また、同時に軍事力の高い国家が復活する事は対抗策が増えるという意味でもある。断絶をこの地に齎した黒幕共。そいつらは凄まじい力を持っている。だが此方も国家というパワーが蘇れば蘇る程、それに対抗する手段を手にすることが出来るという事だ。
「何よりも帝都解放作戦の参加は報酬と名声が美味しい。乗らない理由がない。だから当面はまず北方遠征の攻略だ―――つっても聞いた話だと1エリア攻略すれば帝都に到達できるって話らしいけど」
「ならそれに参加して帝都も解放するって事ね」
「できるならどっちもレティ達の手で攻略したいわ」
まあ、それが理想だろう。実際は他の攻略パーティーも同時に活動しているし、既に攻略を進めている所だってある。そこに割り込んでクリアを狙うとなると、ちょっと難しいだろう。だから最終エリアに関しては攻略を諦めて、帝都攻略前のウォーミングアップで考えたほうが健全かもしれない。まあ、北に関してはこの程度で良いだろう。
「重要なのは帝国解放後だ。うちの師匠から聞いた話、帝国解放後は南部遠征を開始して最後の国家、メゼエラの解放を行う。こいつは魔導国家と言われるだけあって生活にまで魔法が混じって浸かってるって話だ。しかもこいつ、本体が空中都市だ。つまり航空戦力しか乗り込めないステージって事になってる。俺達の次の目的はこいつで、ここの解放だ」
先に北方遠征が終わった後の話をする事には意味がある。
つまり北が終わったら即座に他のチームや組織が動き出す前に、アドバンテージを取って南部へと一気に進めるという事だ。無論、南部への道は既にある程度開拓されている。だが一番早いルートはジュエルコーストを通して海方面からメゼエラ方面の港へ向かい、そこから陸路でメゼエラへと向かう事だ。出現するエネミーは平均して40台中ほど、中々高レベルのエリアとなっている。
「こいつの解放は契約上必須だ。そして解放が終われば―――」
「大陸全土が解放されますね」
森壁が出した答えに頷きを返す。アルスティア、メゼエラ解放で国家を縛っていた断絶は細かいものを除いて全て解除される。特に魔法のエキスパートと呼ばれる国家が解放されれば軍事力を持つアルスティアと共に、稀人無しでも断絶を解除する方法を見出すかもしれない。そうなれば必然的に相手はリセットされるこの状況を覆す為に動かざるを得ないだろう。
「
全ての国家を解放したら、相手が動く。それが恐らく連中との決戦の時になる。まずはそこを目指す。そして超えなくてはならない。その先にあるのがエンドコンテンツだ。どういう形になるかは解らないが、まずは俺達の存在を証明する。
だからまずは初めの一歩。
「俺達の証明の為にもまずは北だ」
次回から北へ。
なんで3章から4章まで数週間飛ばしたん? って言われると凄い絵が地味になのと、それを込みで話を続けると地味で盛り上がらないフェイズだけでまた1章分の文字数増えてしまうからですなー。
という訳で装備やスキルもだいぶ更新されている。そこら辺の説明は次のIDで。