「おいすー」
「お、来た来た」
「久しぶりですね、アインさん」
「ちょりーっす」
ロッジの中に入ればそこには同盟相手が、そのトップが勢ぞろいしていた。《レジェンズ》トップのユウギリは袴姿だが上から防寒用に羽織を着ている。《鉄血騎士団》のトップ、ロイ・Dは頭のてっぺんから爪先までの全てを金属で覆っている、フルプレートスタイルの騎士姿だ。青い騎士鎧を装着している彼のチーム、或いはクランは所属人員全員がフルプレート好きの鎧好きという集団だったりする。そして最後に《スターズ》のトップ、ラジエルは緑髪のハイポニー姿の大弓使いだ。本人曰く、本当ならエルフプレイがしたかったそうだが。彼女のクランは《レジェンズ》同様、大規模なタイプのもので、練度はこの北方遠征で《レジェンズ》に並ぶレベルになっている。
うちのチーム以外は全てクランと呼べるレベルの大きな組織だ。その為の拠点と活動を行っている。少数精鋭で最前線に食らいついているところは他にもあるだろうが、その中で他のトップクラン、トップチームと同盟してたり契約しているのうちらぐらいだろう。
「〈ヒートプルーフ〉、っと。これで少しは話しやすいだろう」
「あったけぇ、あったけぇ」
「鎧、滅茶苦茶冷えそうですもんね」
「もうちょっと暖かい恰好すれば良いのに」
「は? 鎧を脱いだら死ぬが?」
「これはヘルムの民」
いるよなぁ、鎧とかヘルムとかフルフェイス系好きな人って。まあ、俺も自分のイメージに合わせた姿とかファッションとか取ってるし。そこらへんは皆、迷惑をかけないレベルで自由にやればいいんじゃないかなあ。紙おむつだけは絶対に次回見つけ次第燃やしてやろうとは思ってるけど。まあ、それはともあれ。こうやって顔を合わせたんだ。
「ここからは俺達も攻略に合流するぜ」
「終わったら南へ転進予定だっけ? こっちもそっちに合わせるぜ」
「助かる。メゼエラの解放もたぶんマンパワーが必要とされるだろうしな」
北方遠征中も、数十人規模のレイドボスや、レイドダンジョンとかが存在していたらしい。その事を考えるとこのゲーム、1人のバグチート系無双プレイヤーが存在していても絶対に攻略できない様に設計しているんだなぁ、というのを解らせられる。MMOなんだから他のプレイヤーや、NPC達と交流、協力しないと攻略できない様に設計されているんだ。
この話はまあ、今は後回しでも良い。それよりも問題は今、足止めされている所だ。
「で、なんだっけ? 今帝都までのルートは2ルートあるんだっけ?」
「えぇ、フロストレイクルートと、ザンバ街道ルートですね」
湖の上を移動するルートと、街道を移動するルート。一見、街道の方が安定したルートの様に思える。だがここで思い出すべきなのはどっちもID化されているという事実だ。少なくとも二つともダンジョン化しているエリアなのだ。つまり、突破は一筋縄ではいかない。
「フロストレイクは面倒な所よ。完全に凍ってる訳じゃなくて一部が氷結していて上が歩けるようになっているわ。それでもまあ滑るわ寒いわ水がかかるわで悪環境よ。しかもボスが水中に潜む生物で水中から足場を削って襲い掛かるのも酷い話よ。まあ、それでも街道よりはマシだけど」
「街道の方はヤバイからな。吹雪が強くて前が見えないし寒い。その上で吹雪に紛れて襲ってくるエネミー。レイクルートよりも寒いってのもある。ついでに空の影響で暗い。街道が存在する分足場は確かだし、落下死がない分レイクよりも安心して戦えるってのはある。だけどそれを超えるレベルで天候がヤバイ。喋ろうとすると口の中に雪が詰まってくるってレベルだぜありゃ」
「それで足止めか」
「えぇ、そこら辺の何とかできそうな能力を持ったプレイヤーってのは中々いなくて。大体一極か特化型ですし。環境コントロール型、山間部攻略辺りから需要が出てきてビルドし始めた人もいますけど育成が間に合ってませんからね」
ロッジの中、腕を組みながら壁によりかかり、そのまま他の3人へと向けて頷く。IDの状況に関しては大体調べたとおりの状況となっていた。そしてこれなら、
「俺なら何とか出来るな」
俺のビルドは複数の魔法属性―――というか初期魔法属性に関してはコンプするスタイルだ。そして既に《火魔法》《水魔法》《土魔法》《風魔法》をコンプして、《光魔法》と《闇魔法》のレベリング中だ。そしてここに師匠から教えて貰った魔法エディット用パーツが大量にある。これらを使う事で他の人には真似できないような魔法運用や、魔法エディットが可能となっている。その中には環境コントロール系も存在している。〈ヒートプルーフ〉もそういう魔法の1つだ。
「レイクにしろサンバにしろ、環境安定化して攻略しやすくは出来るな。風を遮断するとか保温するとか足元を安定化させるとか。足元に砂地を生み出して固めるだけで大分攻略しやすそう出しな、今回」
「うちに移籍しなーい???」
「こら」
迷わず勧誘してくるロイ・Dの速さに苦笑し、ラジエルにチョップを叩き込まれているのを見る―――あ、反射ダメージで逆にラジエルがダメージ受けてる。俺というキャラクターの便利さは解っている。かゆいところに手が届くタイプのビルドをしているんだ。相手が弱点持ちの場合、弱点に対する特化型ビルドを持っているプレイヤーの方が未だに火力が高いし、DPSでは負けるのだが総合的な継戦能力と対応力でこっちは上だ。しかもビルドはまだまだ完成していない。〈深境〉だって習得してからこの1か月でまだSL5にまでしか上がっていない。この拡張でSL10に到達する事はねぇんだろうなぁ……なんて事を漠然に思ってる。
「決まりですね。帝都までの道は《レコードホルダー》に任せようと思います」
ユウギリは決断するように頷いた。
「アインさんがやる気であるならばこれまで同様、きっと成し遂げられるでしょう。なら拙者らはそのあとの戦いに備えるべきだと思います」
ユウギリの言葉にロイ・Dとラジエルも同意した。
「山の上から見えた帝都、山に食い込む形でめちゃくちゃ大きかったからな……たぶんアレ、攻略するなら1パーティーじゃなくて複数パーティーで攻略するレイドダンジョンになるぜ」
ロイ・Dの言葉にこのイベントの締めを考え、納得するように頷く。恐らくイベントとしてラストは派手にやってくるだろう。あの帝都を丸ごと解放するとなるとジュエルコーストの時の比ではないだろう。フリーマップだとイベントを組み辛いし、たぶんID形式でやるんじゃないかなぁ……なんて事を想う。だけどアビサルドラゴンって前例もあるし、そのままオープンワールドで突撃! というパターンも全然あり得る。
「なんにせよ本番は帝都に到着してからだし、数時間以内にこっちは帝都までの道を開けておくわ」
「では、そういう形で」
「頼むぜー、アイン。竜騎士装備が欲しいんだよ俺達はー」
「対龍迎撃大弓」
「ほんと欲望に素直だなこいつら!」
いや、まあ、装備が欲しい気持ちは解るけど。苦笑しながら軽く手を振って背を向けて、デスコを開く。そのままロッジの外に出ながらデスコで他の連中に連絡を取って集合させる。ふぅ、と暗い空を見上げながら軽く息を吐き出せばそれが白く染まるのが見える。幸い、まだ〈ヒートプルーフ〉が継続中だから寒く感じる事はない。
「抜け駆けしようとする気配は流石にない、か」
ここで抜け駆けする様な意味はないし、和を乱そうとする奴はいない。それは良い。後はこの同盟で問題なく帝都解放を目指せるかどうか、って所だ。バーチャルの付き合いなんて結局は本名も顔も隠して付き合いだ。
「本当に信じられるかどうかなんてわからないぞぉ」
まぁ、それを言っちゃえば俺の事もそうなんだが。心配、考えるだけ無駄だと解りつつも先へと進む為にも視線をキャンプファイアへと向け、
その中で燃やされる土鍋の姿を見た。
なんで????
土鍋(炭化)。