「なんで死んでたん?」
「いや、暖かそうだなぁ……って思って近づいたら何時の間にか」
蘇生アイテムで蘇ってきた所、土鍋がなんか馬鹿な事を言っている。つまりなんだ、こいつ誰かに焼かれたとかじゃなくて自分から痛覚オンなのに燃やされに行ったの? 馬鹿じゃないの? まあ、ええわ。
蘇生したばかりの土鍋で再びキャンプファイアーした。
仮設キャンプ地点から北へと真っすぐ移動する。断絶の影響で空は黒く、暗い。それこそ本来の気候と曇天と合わせて今まで巡ってきた断絶エリアの中で一番の暗さを見せているエリアだった。その為、必然的に光源が必要となる。土鍋が光の精霊を召喚し、それにライティングを任せながら俺も魔法で光源をいくつか作成、獣だったり蝶だったりの形をするそれを周辺へと放つ事で一定距離の視界を確保しながら真っすぐ北へと延びる街道に乗る。俺達が攻略するルートとして選んだのは最短で最も険しいルート、中央街道であるザンバ街道攻略ルートだ。
既に何度もこの数日間プレイヤーたちが通っているだけあって、IDまでの道のりは踏み均されており、歩きやすくなっている。だがキャンプ地点から離れれば離れる程雪の勢いが強くなり、風も強くなり始める。その影響で遠くが見通せなくなり、足元も段々と歩きづらくなる。フロストレイクはこっち程環境が過激ではない為、特殊技能を保有しないのであれば其方へと回ったほうが攻略しやすいと言われるのは……まあ、解る。
そんなこんなで土鍋焼身自殺事件から合流した俺達はID侵入地点である街道入口までやって来た。そんな訳で目の前に存在する侵入地点となる光の道の前で俺らは一旦足を止め、振り返る。そこではカメラを装備した非戦闘召喚状態のフィエルが存在し、サムズアップを向けている。どうやら問題なく映っているらしい。
という訳で、はい。
「おっす、久しぶり」
選考落ちたああああああああ
どうして?????
どうして落としたんですかぁあ―――?
選ばれたDD誰だよ! 出せよオラ!!!
納得いかない
隠れようとしているレティシアをわきの下から掴んで持ち上げる。
「お前らの書類は1体のゴスロリ特殊技能メスガキを召喚する為の触媒となった。許せ」
凄い納得した
許すしかねぇじゃん……
お前の勝ちだわ
誇れ! お前の勝利を
「この人たちラリってるの?」
「アイツらは強いロリプレイヤーは実在するという夢を見てさまよう亡者共だ。それが今事実という供給を得た事により一種の宗教的信仰心を満たされてしまったんだ」
「……???」
首を傾げてるレティシアちゃんは可愛いなあ、と思いながら邪魔なので投げ捨てる。背後からきゃあって悲鳴が聞こえるが無視する。
「さあ、という訳で貴様らよ。久しぶりの配信という訳で早速ID攻略をしていくぞ。しかも今度は完全フルの固定メンバーたちと一緒だ」
リハビリに最前線を選ぶ勇気
ゲリラ配信でやる内容じゃないよな???
い つ も の
またボスがボスしてる……
地味に最前線で戦えるレベル維持してたんやなあ、って見てる
幼女は投げ捨てるもの
振り返る。
「自己紹介……する?」
「我は必要ない。どうせ嫌でも目立つし覚えられる」
「私も大丈夫です」
「レティは―――」
「うっし! じゃあ突入するか!!」
「レティの扱い雑くない!?」
いや、全然そんな事ないよ。寧ろこういう雑い扱いって身内カウントじゃないと中々やれない事だから光栄に思っても良いぞ? まあ、そんな事絶対に口に出す事はないのだが。そのノリを他の連中もちゃんと理解してくれているので、笑った視線を合わせると背をカメラに向け、そのまま入口の方へと戻す。そしてそこに表示される突入用のホロウィンドウを確認し、パーティーを確定して承認する。
開く様に生み出される光の道に、一気に飛び込んだ。
視界の全てが光に覆われてから一気に駆け抜けた感触と共に猛吹雪の闇へと切り替わる。
IDの中へと突入が完了した、という感触は足元が深い雪を踏みしめる感覚で理解した。それと同時に猛吹雪の影響で視界の全てが閉ざされ、風の轟音によって音の全てがかき消される事で理解できた。視界の全てが雪と暗闇によって塗りつぶされ、何も視認できない状態が生み出された。成程、これは確かに攻略するどころの状況じゃないだろう。なのでまずは風を軽減する。
「〈カーム・ウィンド〉……うぺっ、口にまで入り込んできやがる」
口の入り込んで来る雪を吐き捨てながら風を止める魔法を発動させる。環境干渉型の魔法は見事に〈詠唱消去〉によって即座に発動し、暴風をまずは止めた。それによって漸く目を開ける事の出来るレベルで状況が落ち着いた。それでも曇天による暗闇、雪による視界の圧迫、そして冷え込んでくる空気が邪魔になる。
「えーと、装備を杖から本に切り替えてっと」
広範囲、高効率化を目指すなら杖よりも本の方が相性が良い。なのでバフデバフ関係に手を出す場合は魔本二刀流とかいう異形スタイルになる。装備を素早く切り替えたら氷属性魔法を発動させ、〈エレメンタルチャージ〉で水属性を最大状態まで一気に引き延ばす。これでMPヘイスト状態が最大になった。
「拡大〈カーム・ウィンド〉、拡大〈クラウド・コントロール〉、効果倍化〈ヒートプルーフ〉」
無風範囲を広げる。頭上の雲を退ける。空気を温める範囲を拡大する。邪魔となるものがなくなってきて空から陽の光が黒くも入り込んで来る。曇天によっておおわれていた環境が徐々に明らかになって行く。
「拡大〈クラウド・コントロール〉! 拡大〈クラウド・コントロール〉! 拡大〈クラウド・コントロール〉! 拡大〈クラウド・コントロール〉! MPガンガン減るなぁ。俺じゃなきゃこんなことできないぞ」
「ボスがんばえー」
「ばえばえー」
「ばえー」
「うるせぇ!!」
後ろから応援の声を送ってくる連中に笑いながら声を送りつつ、魔法を発動させる。風は無効化した。雲も退けた。これで吹雪は対処完了だ。光源は空から入り込んできた黒い光が不気味に世界を照らしているから必要はないだろう。その代わりにこのエリアでの最大の問題は強すぎる氷属性フィールドにより、エネミーが火属性弱点であっても環境干渉で属性の力そのものが弱まってしまう事だ。故に《結界術》をベースとしたオリジナル魔法で、
「〈エンハンスエレメント:火〉、〈エレメンタルフィールド〉、〈ジェネレイトエレメント〉、〈ステイブルエレメント〉」
火属性の効果を強化し、それをまた別の魔法で固定、安定化させる。これで環境干渉用の魔法がフルセットで発動完了となった。
「ふぅ、こんなもんかな?」
魔法による環境安定化を終えて魔本を閉じる。これでこのダンジョンの攻略はしやすくなっただろうと視線を正面へと向ければ、視界がムービーへと切り替わった。
そこは氷原だった。本来であれば雪原を抜ける街道だったのだろう。だが街道沿いにある建築物は凍り付き、漆黒のクリスタルに覆われて凍り付いている。目に見える範囲の建築物が全て凍り付き、乱立する漆黒の結晶が迷路の様に道を分断し、封じ、新たな道を形成していた。
その上空を侵食されたワイバーンが吠えながら飛翔し、漆黒の雪の結晶で構築されたゴーレムが敵を求める様に瞳を赤く光らせて徘徊する。凍り付いた骸は静かに立ちあがりながら戦列を整え、そしてその奥では闇に紛れて巨大な姿が足音を立てながら歩いている。カメラは入口からその奥までを滑空するようにIDの全容を軽く見せると、再び入口に立つ自分の元へと視界が合わさる。
黒雪氷原ザンバ、攻略開始である。
現在のアインはスキル枠9枠。内、スキルマスター済みで埋まっている枠は《杖術マスタリー》、《詠唱術》、《二刀流》で3枠。これはパッシブ固定枠なので不動。
スキルトレーニング中なのが《光魔法》、《闇魔法》、《契約術》、《毒魔法》、《魔本マスタリー》で5枠。
特殊枠が《深境》で1枠。レベル40を超えているので初期5枠+4枠で合計9枠がこうなっている。《決戦技》がスロット非使用枠なので例外。
そしてこの1か月でマスター済みで削除されているのが《火魔法》《氷魔法》《風魔法》《土魔法》《時魔法》《結界術》で6個。
基礎の魔法構築パーツがこれらから出ていて、アインが使用している魔法は全てエディット作成されたもの。習得したこれらのスキルを素材に作成されている。そして4属性習得完了時点で師匠から「じゃあこれでもっと自由にやろう!」と受け渡されたエディットパーツの山がどさり。
今の魔法環境は大体そんな感じ。