「じゃあ行くぞー」
「おー」
攻略が始まる。
視界と環境のクリアリングの確保が終わった為、ここからは先頭をタンクに任せて他の面々は後ろから後をついてゆく形になる。結局、戦闘開始時はタンクにヘイトトップを取って貰わないと困るのは俺らなのだから。そう言う訳で略剣がトップに立って氷原を行く。ただ30メートル程前に進んだ所で周囲から遠吠えと威嚇する様な音が聞こえてくる。
「お、来なすったか」
「見づらいしエフェクト切るか……」
なんでぇ?
どうしてVRMMOでエフェクト切った?
視界の全てを塗りつぶせ
「えー、仕方がないなぁ……」
派手な魔法って結構視界を遮るから邪魔な部分もあるんだよなぁ。もうちょっと地味目のエフェクトを作成した方がいいんだろうか? まあ、どうせ他の連中もエフェクトを半透明化かオフにしているだろうしなあ……。
「エフェクト切ってる?」
「切ってる。というかタンクは切ってないとなんも見えん」
「それな」
「メレーも割と目の前が光りまくるからちょっとエフェクト抑えてる」
「あー……」
そう言う問題もあるんか
まあ、実際目の前でちかちかされたら眩しいしな
集中できるかどうかって問題もあるんか
もっと地味な魔法を作れオラ!
「時間があればな! 一つ一つ作るの結構時間かかるんだよ! エフェクトの内容が他の魔法と被ったりすると地味につまらないし……そこらへんアイディア発掘する為にも参考資料とか色々買ってきてチェックしてるし」
「技術的には簡単じゃないってのは解ってたけどやっぱめんどくさかったんだな」
「せやで」
土鍋の言葉に頷きを返しながら炎の柱を発生させ、略剣へと襲い掛かるモンスターの群、その先頭を飲み込む。流石炎弱点が付与されている地域のモンスターだけあって炎でのダメージが良く通る―――略剣とべルゼが分割して集団のヘイトを取得するとレティシアが攻撃しつつデバフを付与、そこを範囲攻撃で纏めて一気に狩る。集団を殲滅するのに時間はそうかからない。一戦一戦の戦闘時間が短く設定されているのはこのゲームの良い所だと思う。雑魚による戦闘を長くさせたり、無駄に戦闘力を高くして強敵にしたとしても待っているのはプレイヤー側のストレスだ。
「狼にトカゲ? 狼は解るけどトカゲはちょっと良くわかんねーなー」
「まあ、ファンタジー生態だしな」
深く考えるだけ無駄、という奴だろう。雑魚を殲滅したら氷によって生み出される道を進み、奥へと向かう―――目指すのは氷原の向こう側、かすかに見える帝都の影だ。あそこが俺達の現在のゴール地点だ。とはいえ、そこにたどり着くまでには幾多もの戦闘に勝利しなくてはならない。とりあえずは、今の雑魚との戦闘でのダメージはあまり大きなものではなかった。
「ちょい纏めて良さそう?」
「あ、こっち大丈夫です」
「これならヒーリング間に合う範囲だわ」
「んじゃサクサク纏めてくぞー」
「おー」
ヒーラー側からの許可を貰って略剣とべルゼが武器を出したまま先頭を走り始める。それに追従するように俺達が後を追い、先頭を走る2人に向かって多方面から一気にヘイトが飛んでくる。エネミーが一気に多方面から出現する。それでもまだ10だ、そこまで数は多くない。ヒーラーの2人体制なら問題なく処理出来る数だ。2人で5:5にヘイトを分割して取るとそのまま前へと向かって進んで行き、更に追加された15のエネミーを一気に引き寄せる。そこでバフを発動させて防御力を上げ、バリアによるダメージの一定までの無効化を行う。これで大多数を引き寄せた所で少しの間はダメージの事を考えなくて済む。
その間に足を止めて範囲攻撃を一気に叩き込んでHPを削る。もはやここら辺はどのIDでも固定の行動となっているので迷いとか間違いとかはない。属性値を高めて火力を増しながら範囲魔法で焼き払いつつ、MPを再装填しての火力のループ。スキルのレベルが上がって攻撃手段が増えても、メインとなる魔法を選んでそれを補助して火力を上げるというのが最適解なのは変わりはしない。1分ほどの戦闘時間を経て敵を殲滅すれば、経験値だけが残される。
とはいえ、このレベルまでやってくると簡単にスキルもレベルも上がったりはしない。サービス開始時の雑にレベル上がってた頃が懐かしいなあ、何て事を考えながら更に前へと進む。ここまでは3ループほどのエネミーを処理した。通例通りであればそろそろボスが見えてくる頃だろう。
「あ、先が広がってるわね」
「どこからどう見てもボスですってサインだ」
「うーし、そのまま突撃するぞー」
「ういー」
「じゃあメインタンクするな」
「了解」
開けたエリアはボスが出現する為の場所だ。つまり何時も通り、やりなれたダンジョン攻略の流れだ。略剣を先頭に氷原の開けた大地に出れば、周辺に散乱していた黒く濁った氷のクリスタルが浮かび上がり、ダンジョン中央で回転しながら合体を果たす。そうして生み出されるのは黒い水晶の様な体を持つ、4メートル程の高さを誇るゴーレムだ。しかし既に魔法の詠唱は済ませている。ゴーレムの合体変形が行われている間に唱えた魔法によって空には隕石が形成されており、合体が完了するのを見計らいながら落ちてくる。
「ファーストブラッドゲットォ!!」
「タンクが!! ヘイトを取る前に!! 殴るな!!」
これは見事な先釣りクソDPS
ガンガンヘイトを奪って行け
でもアレ野良でやられるとキレるよな
「身内でやるから許されるやつだよなあ」
「それofそれ」
こういうのが許されるのが身内固定の良い所だったりする。
頭上から隕石を叩き落とされたゴーレムは吠える様に胸を大きく張り、そこから挑発でヘイトを奪取した略剣に向かって巨大な拳を叩きつけてくる。1度、2度と拳を叩きつけると両拳を繋げるように大きく持ち上げる。
「接近!」
コールと共に全員が一気に前に出る。バリアが差し込まれるのと同時にチャージされた拳が勢いよく地面へと叩きつけられる。それによって発生した衝撃波に全員吹き飛ばされ、外周近くのエリアで氷の塊が爆発する。
「うげ、踏んだ」
梅☆がそれを踏んでいた。というのも顔見せギミックでもあるので、外周にあった氷塊が爆発するなんて情報はない。仕方ない話だが、それでも俺は言う。
「雑魚」
「俺らキャスターなのに初見で避けましたけど? レンジの癖して避けられない? はー! ギミック免除されてるのに愚かしいですねぇ!」
「煽るわねあの土くれ」
「梅☆もキレて無言でドラミングし始めてるからイーブンよ」
「……何がイーブンなの!?」
メレーは突進スキル持ちなので、吹き飛ばし中に突進してノックバックを無効化している辺りがちょっとずるく感じなくもない。まあ、それを言っちゃえば俺だってショートテレポートで無理矢理ノックバック無効化できるのでずるいと言えなくもないが。逆に言えばそこらへん対策すればノックバック死系統の攻撃は無効化できるんじゃないだろうか? まあ、その実験はまた今度するとして。
今はボスの対処が先だ。魔法回しを完璧にこなしながら陣形を、互いに攻撃を邪魔しないよう散開を維持しつつボスの行動を監視する。
「上! 範囲捨て」
視線を味方の頭上へと向ければ先ほど爆破した氷の塊が出現している。左右へと軽く体を揺らす様に動かせば氷塊はそのターゲットの先をしっかりとプレイヤーへと向けてキープしているのが解る。唯一ターゲットにされていないのはヘイトトップを取っている略剣のみだ。だがその略剣も強撃を今受ける所に入っている。となると範囲捨てた先で設置という奴だろう。
「八方でいいかな」
「解った……ってなんでレティの方に来てるの!?」
「俺と死ねぇ―――!!」
「わたしもわたしも」
「ぎゃああ―――!!」
げらげらと笑いながら一目散にレティシアへと向かってダッシュをし始めると、後ろからチェーンソーをぶんぶん振り回しながら走ってくるニーズヘッグを見た瞬間ホラーへと変わる。振り回されるチェーンソーから逃げるように全力疾走をしだすとレティシアも全力でフィールド内を走りまわり、それを全力でニーズヘッグが追いかけてくる。
そしてそのまま、土鍋に突っ込む。
「こっちに来るんじゃねぇええええ!!!」
「うわああああ!?」
「きゃああ!?」
「ぐああああ―――!!」
着弾。
地 獄 絵 図
お、ピクニックかな?
皆殺し達成
ヒーラー巻き込んで殺すのは点数高いですよ先生!
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落ちてきた氷塊が四重にダメージを発生させる。多重に発生したダメージによってDD3人とヒーラーが一瞬で蒸発して転ぶ。森壁が悲鳴を上げながら詠唱カットからの蘇生魔法で最初に土鍋を叩き起こし、目を回しながら強攻撃を喰らった略剣のHPを必死に戻していた。
「どうして、どうして」
「あ、MP無いから蘇生できねぇわ。しばらく1人で頑張ってて」
「お、おぉぁぁぁぁ……」
「スイッチ! スイッチするぞ! 流石にこの状況はキツいぞというか何でそんな事をしたお前! 吐け!」
だってふざけたくなったんだもん……。
冬眠から蘇った。