1ボスのゴーレムのギミックは纏めるとこうだ。
まず強攻撃と全体攻撃は基本搭載されている。これはもう全ボス搭載のギミックだと言っても良い。その上で自分中心の吹き飛ばし攻撃。そして直後に発生するオブジェクトの爆破。爆破後はオブジェクトを再設置する為の個別範囲攻撃だ。ここで味方を皆殺しにしたが、この後も別のギミックが当然ながら待っている。この後発生するのがブリザード、全体攻撃だ。だがこの全体攻撃は受けるとHP低下と同時にデバフを受け、一定時間の間最大HPが低下する。これを回避する為には設置された氷塊オブジェクトの背後に隠れる必要がある。
ブリザードがどっち方面からやってくるかは発動前の詠唱時間中に風の勢いが強くなるため、それで判断を行わなくてはならない。それを超えると今度はランダムターゲット直線範囲攻撃が飛んでくる。素受けすると即死クラスの火力がタンク以外のプレイヤーに飛んでくる為、この直線攻撃の間にタンクを挟む事でダメージをタンクにある程度負担させる事が出来る。
この後タンクに強攻撃が飛ぶ為しっかりとヒールとバリアを行い、吹き飛ばしが放たれる。散開で設置した氷塊が爆発する為、今度は最初とは別方法で散開しなくてはならない。そして1回目の散開の時、タンクだけが氷塊の対象になっていない。その為タンクの散開箇所だけが安置となっている。つまりこの時、全員でタンクの方に集まり、集合から吹き飛ばしを受けて氷塊を爆破、元の場所に戻る。
……という感じになっている。
こうして見るとギミック解りやすいなあ
仲間殺しに行った動きは芸術的すぎた
防御回避しつつギミックを動いて処理するの大変そう
実際、凄い大変だ。スキルや魔法の発動は口頭か思考制御による発動だ。なので発動するスキル、その効果をしっかりと記憶した上でスキルのループやタイマーを確認し、更にで自分の体を動かさないとならない。どっちの方角、何をするのか、それをずっと意識しながら体を動かし続けるのだ。しかも魔法やスキル発動なんて、このゲームを始めて体験する新しい概念なのだから……それに慣れている人間なんて、完全にはいないだろう。
「ま、そう言う意味ではギミック形式の強いボス戦闘ってのは丁度良いコンテンツなのかもな。このゲーム全体を通して俺達はVRという形式のゲームに慣れている感じがあるし」
成程……?
遊べない我らは?
まあ、VRMMO初だからなこれが
そもフルダイブVR自体これが始まりだしな
そう考えると温く感じるギミックも入門って感じか
まあ、我らはそこそこリアルでの動きに自信のある者ども故、割と動きが良い方なのだが。それでもこのゲームシステム特有のギミック処理の動きは凄い楽しく、難しい。結局はひたすら練習を重ねるしかないのだが。
ともあれ、味方を綺麗に殺しながらボスは突破した―――逆に言えば味方を殺しながらでもクリア出来る程度には俺達は強い。それぐらいの余裕はあるという話である。
ゴーレムを突破して氷原を更に進もうとすれば、降り注ぐ雪が少しだけ強くなる。既に魔法を使って視界をクリアに確保しているはずだが、それでも雪の勢いが強くなる。この感じだと相殺しきれるものじゃないのだろう。面倒なマップだなあ、と思うが敵は待ってくれない。闇夜の中を飛翔する翼の音が、大地を這う遠吠えと共に響いてくる。
「よ、っと」
光源を新たに生み出して闇夜の中へと放てば、それが此方へと迫ってくる浸食された蒼いワイバーンの姿を照らした。そのサイズは3メートル程、人間よりも大きなのが2匹迫ってきている。それに遠吠えを聞く限り、前に出現した狼の方も再び徒党を組んでやってくるようだ。
「流石にあのでかいのは纏めきれなそうだな……じゃあ纏めるか」
「ヒーラーを虐めて楽しいか?? おっ????」
「楽しいぞ!!!」
「突撃ー! FOO!!」
「わあー!」
「く、狂ってる……! このPT狂ってるわ!」
レティシアの言葉に深く同意するけど身内だから細かい事は気にしなくて良い。被害をストレートに受けている森壁は……こう、虐められている時の方が輝くんでそれはそれ。頑張って悲鳴を上げてて欲しい。と、そこで略剣がヘイトを取りながら一気にスプリントし、発狂しながら土鍋と森壁が全力疾走に入る。その後を追う俺達も、当然全力疾走しなくてはならない。略剣がフルバフ炊いてヘイトを取る様子見ながら爆笑してDoT魔法を放つ。
「草。なにやってんだアレ」
少し前の自分を見直せ
どっかで見た気しないの????
こ、こいつら味方を殺す事しか考えてねえ!
「当然だよなあ!」
「当然にするんじゃねぇ!! 殺すぞ!!」
爆笑しながらダンジョンを疾走すれば出現トリガーを引いて、更にワイバーンが出現する。その総数が6体を超えた所でブレーキをかけて略剣が攻撃を受け止め始める。そこにべルゼが混ざり、全てのエネミーを半分で分割して受け持つが―――ヒーラーが回復を拒否する。
「ばーか! ばーかばーか! 死ね!!」
「我々はー! 断固この待遇に拒否を示す!」
土鍋と森壁が地面に座り込んだ。必死に略剣とベルセが振り返りながらヒールを求めて視線を送っているが、2人そろって床に転がって視線を逸らす。
「マジで死ぬぞぉ!!!」
「ヤバイ、死ぬ。ポーション飲むかどうか悩ァ―――!!」
ベルセが逝った。ヒーリングがないので当然だろう。それを確認してレティシア、ニーズヘッグ、梅☆と視線を合わせ、ゆっくりと気づかれないように後退し始める。まだあんまりヘイトは稼いでいないから感知範囲外に下がれば狙われるのは哀れなタンクとヒーラーだけだろう。ゆっくりと気づかれないように下がった俺らは適当な氷塊の裏に隠れるように、前線が巻き起こされる醜態を眺めた。
必死に叫ぶ略剣。ヘイトをヒーラー組へと押し付けようとダッシュするが逃げ出す。そのままDDへとぶつけようとするが既に逃亡済みである事を漸く理解し、絶叫しながらタンクとヒーラー二人が纏めて焼かれて死ぬ。
それを俺達は最後までげらげらと笑いながら眺めてた。
あるよ!
「いやあ、やっぱ身内固定クッソ楽しいわ」
「それな」
「どれだけふざけても許されるしな」
「あの! 私達!!!」
「うるせえ! 固定に入ったら身内なんだよ! 好きなタイミングで味方殺せよ!」
「指示が物騒の極みにある」
げらげらと笑いながらリスポーンから再走、そのまま道中の雑魚を殲滅して2ボス前まで一気にやってくる。どうやらこの雪原には川が流れていたらしく、完全に凍り付いた川の上がフィールドとなっていた。その中央では翼を畳んだ巨大な青黒いワイバーンが待機しており、先ほどまで雑魚エネミーとして出現していたワイバーン共が頭上の空を舞っている。そういえば北の方の山岳地はドラゴンやワイバーンの住処という設定だったはずだ。断絶や浸食の影響を受けてここまで下りて来たのだろうか? 何にせよ、雑魚の上位互換とも親玉とも言えそうな6メートル級の巨大なワイバーンが此方を待ち受けている。明確に此方を待っているのが確認できる辺り、今回もギミックメインの戦闘なのだろう。
ただ、それを見て、ちょっと思った。腕を組みながら首を傾げる。
「今ん所超大型レイドボス以外はギミックボスメインだよなあ」
少なくともIDで戦うボスやフィールドのエネミーもヘイトで優先順位の取れるボスばかりだ。それを無視した高度AIで思考するボスは今の所まだ見ていない。トレイター戦だって結局はギミックボスだったし。あの手のギミックは解いている間が滅茶苦茶楽しくて大変だが、解いてしまうと後はトレースになっちゃう部分あるんだよな。それがギミックボスの弱点というか。
いや、MMOという媒体として見るならボス攻略が楽になるのは当然というか当たり前の話でもある。
だけど……それってつまらなくないか?
どれだけシナリオで騒がれていても、攻略方法を確立してしまえば倒せてしまうというボスは。これがレベリング用のボスとかなら解るが、シナリオの大ボス、ラスボスや大幹部みたいなポジションを相手にした場合ギミックボスにしていて良いのだろうか?
「……怪しいなあ」
恐らくこのダンジョンを抜けた先の帝都で、大決戦が待っているだろう。そしてその時になったら来るんだろうなぁ。
「おーい、アイン。ボス戦始めるぞー。カウントカウント」
「あいあい」
非ギミック型AIのボス戦が。
割とそれが楽しみだったりする。
のそのそ……寒い……また冬眠に戻りそうになる……。は、春の暖かさが来たはずだったのに。