断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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黒雪氷原ザンバ Ⅲ

 2ボス浸食フロストワイバーン・大。

 

 こいつのギミックはまず最初に全体攻撃する所から始まる。全体攻撃でダメージを与えるとランダムなプレイヤー4人に対して、外周から湧いてきた小型ワイバーンが襲い掛かってくる。全体攻撃の咆哮は同時に号令となっており、ワイバーン達のヘイトはターゲットされた4人に固定される。これはタンクでも奪い返せないものだ。つまりDDかヒーラーが落ちる前に、火力を集中させて素早く潰さないといけないギミックだ。しかもその間もボスは常にタンクを攻撃している。なのでタンクをちゃんとケアしていないと、タンクのHPが削られてボスがフリーになってしまう。

 

 そして小型ワイバーンを処理すると死体がその場に落ちる。これは多くのエネミーとは違い、消えずにその場で残留する。その為、死体そのものがギミックの一貫として残されるのが解る。つまりこれから来るギミック用に、このワイバーンの死体を警戒しなくてはならない。

 

 次は突撃態勢に入った小型ワイバーン達が外周に発生し、縦横をマス目に分ける様にフィールド全体を突撃で分断してくる。それと同時に、小型ワイバーンの死体から冷気が放出され爆発する。安置にワイバーンの死体があった場合、これで安置が潰される。なのでこのボスの対処法として、ターゲット指定されたプレイヤーはまず小型ワイバーンを一か所に集める事を意識する。散開せずに集めて処理する事で爆破場所を一か所に纏める。そうせずに爆散する場合は自己責任だ。ただバリアを厚くすればこの散開、サボれる可能性はあった。

 

 そこからのギミックは余り難しくはない。ランダム範囲攻撃が2週目のマス目突撃に混ざるだけだ。それでも全体的にエネミーのHPと攻撃力が高くなる為、しっかりとタンクと全体のケアが出来ていないとあっさり全滅もあり得るだろう。ただギミックとして考えると、ボスだけではなく外周を意識させるものであるようには感じた。

 

「あんまり強くはなかったな」

 

「というか俺らが強くなったんだよ。装備とかアイテムとか揃えられる範囲でなるべく良い物にしてるしな」

 

「レベルもちゃんと上げてきてるしな。前みたいな強行軍してない分、割と余裕はある」

 

 略剣と土鍋の言葉にまあ、そうなるかと頷く。VRMMO……というよりもMMORPGの性質として、上級エリアへレベルを無視して突っ込むと事はそう難しい事ではない。解禁されているかどうかは別として、突っ込んで敵を倒すのを頑張ってみたり、或いはなんとかハメて経験値をたくさん貰ったり。そういう遊びも出来たりはする。このゲームもそうだ、そして俺とニグが強行軍で突き進んでた時はそういうプレイに割と近かったりはした。

 

「私とボスのプレイ!?」

 

「人の思考を断片的に抜き取って広げるの止めないかなあ!」

 

「ナチュラルに思考読まれるんだな大将」

 

「あの二人だけやぞ」

 

 ボスを処理して宝箱を回収する。手に入れたアイテムの分配はダンジョンをクリアした時にするとして、再び略剣を先頭にダンジョンの攻略を進める。ワイバーンを倒したことで鬱陶しかった空からの襲撃はなくなった。だがその代わりに飢えるような狼たちの遠吠えが更に増え、そして同時に空を突き抜けて飛翔してくる音が聞こえる。視線を空へ向ければ、遠く、ダンジョンの奥の方から槍の様に鋭い黒い氷が降り注ぐ様に飛んできていた。別段それが大量にある訳でもなく、着弾個所は半径3メートル範囲程の小規模な襲撃だ。だがそれが一定の間隔で、侵入を拒む様に投擲されていた。どうやら今度は氷の槍を回避しながら、更に増える狼たちの相手をして奥に進まなくてはならないらしい。

 

「やっぱ新しいギミック出る度にプレイヤーに色々と経験させよう、って感じがあるんだよなぁ」

 

『アインさんアインさん、やっぱり開発側に興味ありませんか?』

 

「絶対にノゥ」

 

 PoPしてきたデフォルメフィエルを出て来た空間に押し込んで戻しながら、先導する略剣を追って一気に進行する。先ほどまで遊んでたりふざけて殺めていたが、今回は違う。空から槍の雨が3秒に1回降り注いでくるのだ、それを回避するのは着弾点が予測できる為そう難しくはない。だがそれを回避しながら戦闘を続けるというのは中々に面倒なものだ。これなら纏めて一気に安全地帯まで突っ込んだ方が早いだろう。その判断のもとに略剣とベルセが一気にヘイトを取得する準備を整え、走り出す。それを予測していたように狼の群れが雪の中から襲い掛かってくる。

 

 その数、2グループで合計20まで上る。これまでの出現数で一番多いかもしれない。ここまで数が出てくると、タンク2人の戦い方も変わってくる。バフを炊いて純粋に攻撃を受けるだけではなく、攻撃を当てて狼を誘導し、狼の攻撃に対して他の狼をカットインさせる事で牽制し、1回の攻撃行動を制限するように動き出す。対多数における定石だ。と言っても、直ぐに出来る様な事じゃない。攻撃をした所で相手がどこにいくのか、それがどういう結果を生むのか。それをリアルタイムで思考しながら行動しなくてはならない。

 

 これがかなりきつい。DDはDPSを出す事に集中してれば何にも問題ないが、タンクはダメージを最小限にする為に攻撃を流す方向や弾く方向を常に認識しなきゃいけない。

 

 DDとタンクの明確に違う所は、攻撃出来る範囲とその余裕は明確なリソースである、という事だろう。単純な頭の良さだけではなく求められるのは柔軟な対応力。今自分が起こす事が後々どう響くかを計算できるスマートさ。そういう意味ではタンクも割と頭を使うロールだったりするのだろう。

 

 だからまあ、改めてタンクというロールは希少で、得難い。

 

「皆、固定を組むときはタンクの選別に気を付けような。マジで貴重な上に大変だから」

 

「お、俺を称える声が聞こえるぞ……っと! 数が多いんだが!」

 

「あ、悪い悪いちょっと減らすわ」

 

「数匹削り殺すわね」

 

「足止めして毒入れて放置するのも良さそうだな」

 

身内での殺し合い酷いけどこういう連携も早いんだよなあ

まあ、そこら辺は身内の一長一短って感じ

慣れ合うか否かって所はある

非身内固定でも強い所は強い

 

「延々と同じ話のループになるけど固定はマジ質」

 

解るってばよ……

Himeによって崩壊した固定の話する?

質の良い所はサクサク進むからなあ

結局は固定ガチャなんだよなあ

固定内で意見の相違によって崩壊するのはあるある

というか崩壊しているパターンのが多い

え!? 闇の話をしても良いって!?

お前ら崩壊しすぎだろ

 

「吹き出る闇の数々……」

 

「れ、レティはまだ幸運な方だったのね……」

 

「初の固定で大当たり引いてる方だよ。技術的にも人格的にも」

 

「異議あり」

 

 一斉に却下の言葉が飛んできた。おかしいなあ、人格的にも割と親しみやすい方だと思っているんだけどなあ……と首を傾げていると、空を舞う槍の数が二倍に増えていた。おっと、と言葉を零しながら横へとステップし、降り注ぐ槍を回避してからマラソンを再開する。ニーズヘッグが1体1体確実に殺して行く中、脚を止めなきゃいけないキャスター職はそういう戦いが出来ない。その為、梅☆が脚を打ち抜いて移動に制限を賭けた狼のトループに対して毒属性のDoTデバフを付与し、それを放置する事で処理する。

 

 ヒーラー連中は少し前に出る様に移動し、詠唱の為に足を止めて追い抜かれた所で詠唱完了、再び走り出すという走り狩りでの基本の動きを取ってタンクのリードに従っている。

 

 まあ、ちょくちょく味方を殺す事に全力を出すけど、やっぱりウチは大当たりの部類だと思う。

 

 発作的に殺したくなるけど。

 

「アップリフト! 良し死ね!」

 

「きゃあああ―――!!」

 

 地面を隆起させてレティシアを空中へと放ち、リカバリーを待つまでもなくそのままダッシュで前へと向かって逃亡する。

 

「……ってしまった! ヘイトはタンクが取ってるじゃん! 失敗したわ!」

 

「じゃあ私のターンね。このまま人生の墓場まで直行させるわ」

 

「レティをダシにしてない……?」

 

 全力でこっちへ向かって走ってくるニーズヘッグから逃れる為に、恥も外観もなく全力の疾走を開始する。それを見て爆笑している皆とコメントは必ず復讐してやると誓った。




 再び冬眠する為の穴倉を探し始める。さ、寒い……ここ数日寒いぞ!!!
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