カウント0で丁度発動させた魔法で小型の隕石が生み出され、メテオストライクによって先制攻撃が成される。頭上に攻撃を受けたマンモスは揺らぐ事なく怒りに吠え、鼻を持ち上げて威嚇してくる。その正面へと向かって略剣とベルセが一気に飛びつき、移動を封じる様に前足に武器を叩きつけてリアクションを封じる。その間にダメージディーラーとヒーラーで軽く散開し、タンクが反対側へとボスを向けられるように場所を開けながら開幕のバーストに合わせてバフを使用する。
「こっちだデカブツ!」
挑発を入れる事でヘイトコントロールを維持するように意識しながら、略剣とベルセが反対向きになるようマンモスを引っ張ろうとする。とりあえずMMOにおける安定した攻撃箇所はボス背面だろう。頭上弱点だとしてもまずは背面を向かせる事で戦線が安定する。
だがタンクの誘導を無視するようにマンモスは吠え、散開している此方へと向かって、鼻で抉った雪混じりの土砂を叩きつけて来た。ショートテレポートをその場で使用する事で攻撃をすり抜ける様に回避し、10秒のクールタイムが発生した事に舌打ちしながら後ろで質量が爆発するのを爆風で感じ取った。
「ヘイト無視確認! 大ボスな上にヘイト無視なのは中々珍しい……というか初出じゃないかこれ!? 対処がめんどくさい!!」
「気合入れて前足を押さえつけるぞ眼鏡!」
「おう!」
誘導しようとして失敗したタンク2人だが、直ぐに思考を切り替えるとマンモスの正面へと回り込み、その前足を武器で押さえつける。攻撃に移ろうとする巨体を二人がかりで無理矢理抑えて行動を阻害する。
その間に此方も攻撃態勢を一気に整え動く。
「後ろ足を攻撃! 崩せるかどうかをまず試す!」
「了解!」
ヒーラーがフィールドの両脇端まで移動し、メレーはそのまま後ろ脚へと向かって移動した。居場所を選ばない俺と梅☆は射線を被らせないように基本散開方面に待機しつつ、とりあえずは後ろ脚へとターゲットを絞って攻撃する。こういう大型のボスは、足を崩す事で胴体や頭を下に落とし、倒れている間に集中攻撃で体力を削るというパターンが王道で定石だ。このゲームの運営はそれほどねじれてはいない―――というかプレイヤーフレンドリーな運営なのは良く解る。だから変に捻って考える必要はない。
とりあえず予測できる事から開始する。
「そら!」
弾丸と魔法と斬撃が後ろ足に叩き込まれる。巨体に見合う高いHPを誇るマンモスへのダメージの通りは悪い。部位別でHPを保有しているというよりは、脚への攻撃ではあまりHPへの影響がないという所だろうか。それでも鬱陶のかマンモスは後ろ足を蹴り飛ばす様に振るい、その質量が通り過ぎる衝撃で凄まじい風圧を生み出す。体が軽いレティシアはそれだけで後ろへと軽く吹き飛ばされる。あの質量を真正面から抑え込むのは、特化しているタンク2人といえども中々難しい所だろう。
実際、略剣とベルセも前足を止める事に相当苦労しているのが見える。メレーは脚の後ろだが、タンクの二人は脚の前に陣取り、武器を振るって攻撃を前足に叩き込みながら動こうとする脚を阻害している。だがそもそものサイズが違いすぎる。人よりも大きなサイズの脚はそれだけで凶器となっている為、武器を叩き込んだ所で弾く事すら難しい。結果、出来るのは目の前に立って攻撃を叩き込み、注意を引いて動きを邪魔する程度の事だ。
「……正直に言うと脚一本に2人は欲しいなこれ」
「こっちは何とかぎりぎり1人でなんとかなってるがなぁ!!」
ベルセはタンクの中でもSTRを伸ばしている火力タイプのタンクだ。それで防御をおろそかにしているという訳ではないが、平均的なタンクよりも火力が出て、攻撃による抑え込みが得意なタイプだ。その為、ギリギリ1人で抑え込めている。逆に略剣は手数と弾きで抑え込むタイプのタンクだ。武器のリーチ差で相手を牽制するクレバーなスタイルでもある為、ベルセと比べると火力や抑え込む力に不足していると言える。これがサイズ差の薄いボスであればかなり効果的なスタイルなのだが、巨大なタイプに対しては相性の悪さが見えていた。
巨大ボス相手であれば、ベルセをメインタンク運用する方が有効かもしれない。そう思案していると、マンモスが後ろ両足で大きく立ち上がった。
「総員退避―――!!」
「ぬお―――!!!」
「ぎゃ―――!」
「逃げろぉ!!」
後ろ足で立ち上がったマンモスは前足を勢いよく地面に叩きつけ、そこから発生する衝撃波で周辺を吹き飛ばしながら地面を抉り、大地を捲り上げる。同時に上へと吹き飛ばされた雪が氷混じりに降り注ぎ、二段階に分けた全体ダメージが発生する。全体ダメージのケアは完全に土鍋と森壁任せにするとして、此方はそこから土砂の山を作って向き直ってくるマンモスの相手をしなくてはならない。
が、復帰からのアクションは何よりもニーズヘッグが早い。
マンモスの攻撃によって生み出されためくれ上がった大地、それを足場に素早く跳躍した。そのままの跳躍だと容易く迎撃されそうではあるものの、足場を使って素早く移動した跳躍はマンモスの鼻と牙でも迎撃の出来ないものだ。そのまま額に両足を付けて着地すると、マンモスの牙を足場にチェーンソーを目に突き立てた。
判断はえー
やっぱ組み付くのが正解なんかねえ
それにしてもアクションの流れが速すぎる
これはやっぱプレイヤーで一番強いまである
いや、最強はやっぱトムさんでしょ
最強スレでやれ
「レティ!」
「無理よ!!」
「……だよな」
ちゃんと用意された足場でもないのに、あっさりと組み付いたニーズヘッグの判断とバランス感覚が異常なのだ。普通のプレイヤーに同じことをしろと言っても難しいだろう。だからそれをサポートする為にアップリフトによる地形操作を行う。足元の大地をテーブル状に隆起させる事で足場を作り、味方が戦う為の場所を作る。それにレティシアが飛び乗った。ついでにマンモスの前にタンク用の場所を作り、持ち上げる。
―――露骨にこうやって地形操作を行うと対策かペナルティがされそうなんだよなあ……。
マンモスの動きを封じるなら地面を操って檻でも作ってしまえば良い。そうすれば動けなくなるだろう。ただボスクラスのエネミーが対策を施していないとは思えない。それを確かめる意味でもボス周辺に足場を作成し、組み付く様に戦闘を再開する。レティシアは頭の上に載って鎌を振り下ろし、ニーズヘッグは牙の上から顔面にチェーンソーを振り回している。正面に陣取ったタンクたちは足場を拘束具代わりにして動きを止め、顔面へと攻撃を繰り出す。それが地上で距離を取る俺らからは良く見える。
だからマンモスが発狂モードに入る瞬間も良く見えた。
体を這う人に怒りを見せたマンモスが咆哮を放った。吹き飛ばし効果のある咆哮は組み付いたすべての存在を体から落としながらも、同時にスタン効果を付与していた。ニーズヘッグをはじめとする組み付き組はその一瞬で無力化されて上に落下ダメージを強制され、
そこからそのまま―――跳躍したマンモスによって纏めて踏みつぶされて即死した。
「はえー、こっわ」
「ニグレティベルセ即死かあ」
「一定数が組み付くと発狂スイッチオンになるっぽいなこれ」
マンモスの咆哮に合わせて外周から目を血走らせる狼たちが出現する。出てくるのと同時に一直線にスタンが抜けたばかりの此方へと向かってくる姿に、逃げも隠れもせず噛みつかれる。その間もマンモスは鼻を振り回して大地を粉砕し、土砂の塊を津波の様に巻き上げながら薙ぎ払ってくる。それを回避する手段はあるにはあるが、半数近くも死んでいる状態から無理に戦線を引っ張る理由もないだろう。
発狂モードのマンモスと取り巻き立ちの攻撃を素直に受け入れて死亡する事にした。
これで1ワイプ目。発狂トリガーをある程度把握したので次回、もうちょっと検証しながら挑戦すれば完全に発狂トリガーを掴んで安全に攻略する事も出来るだろう。
青9の2個目が中々できないなあ……スタ6パワ3かスタ6賢さ3辺りが一番便利だとは思うんだけどね。ウマの燃費問題でスタミナは盛れるだけ盛っておくのが大正解ってのが発覚したし。
それはそれとして初の非ヘイト型ボス。