断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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黒雪氷原ザンバ Ⅶ

 空へと向かって吠えながらゆっくり、ゆっくりとマンモスの姿が倒れて行き―――大地を揺らす様な衝撃と共に傍にいたレティシアが吹き飛ばされて外周に放り出され即死する。そしてレティシアとマンモスの死と共にザンバの攻略は完了した。レティシアの死体が後ろに映り込む様にカメラと立ち位置を調整して、ガッツポーズを取り勝利を全身で証明する。

 

ド畜生で草

これぐらい普通やろ!

段々と慣れてくる視聴者

味方を殺す……殺さない??

殺したッ! なら赦される

さついたかいなー

 

「ぐえー……」

 

 完膚なきまでに哀れな姿をさらしたレティシアが蘇生を受けて蘇り、両膝を抱えて丸くなる。その姿を放置して視線をマンモスへと向ければ、マンモスの肉体がポリゴン化して消滅し、それと入れ替わる様に闇の色をしたクリスタルが残された。これを破壊する事で、このダンジョンとエリアの攻略は完了する。とりあえず俺は破壊経験があるので今回はパスするとして、

 

「誰かやりたい奴おる?」

 

「若い奴に任せるかなー」

 

「大人が率先して手柄を取ってもなぁ? 放棄で」

 

 略剣と梅☆が真っ先に破壊を放棄。かっこいい場面を他に譲った。おー、ちょっと大人だなあ、何て思いながら大人組と合わせて権利放棄していると、ベルセが腕を組みながら口を開いた。

 

「思いっきりぶっ壊したーい!!」

 

「じゃあ譲るわー」

 

「頑張ってくださーい」

 

「レティも譲れる程度には大人だからね」

 

見てください、この大人な言動

数分後ロット戦争で崩れるぞ

あらそえー! あらそえー!

 

 邪神共め……!

 

 視聴者側もだいぶ此方側に脳味噌が染まってきた感じがある。いや、元々ネットの住民ってそういうもんだし最初からこうだったか。

 

 まあ、なんにせよ目の前で振るわれた大斧がクリスタルを砕いた。躊躇なく振るわれたそれによってこの地域を覆っていた闇のオーロラは急速に消え去り、暴風と共に暗雲が一気に吹き飛ばされる。周辺で展開されていた人を拒むようなブリザードは消え去り、静かに、音を吸い込むような優しい雪が降り注いでいた。景色は黒から白へと反転するように入れ替わった。それと共にダンジョン攻略完了、経験値と今回のリザルトを証明する画面が出現する。これまで取得したアイテム、装備のロット画面が出現しながらもとりあえずは、

 

「攻略お疲れ様ー」

 

「乙乙。中々歯ごたえがあったな。死人結構出たし」

 

「まあ、死因9割身内だけどな」

 

「反省しろ」

 

 これで反省する様な連中だったら身内じゃねぇんだよなぁ……なんて思いつつ、今回の報酬を確認する。とりあえず見えてくるのは装備品だ。タンク頭、ヒーラー頭、タンク頭、ヒーラー頭。残りのアイテムはマンモスのドロップらしいマンモス肉。

 

「はい、解散! 解散だ解散!! なんだこの戦争にもならねぇクソドロップは!!!」

 

「草」

 

「げらげらげらげら」

 

 タンク頭x2とヒーラー頭x2はそのままタンヒラ組は戦争する事なく分配できるのでDD勢は全員蚊帳の外だし、マンモス肉は調理品なので俺がロットして料理人へと手渡すのでロット戦争にはならないのだ。何をどうあがいても争いにならない平和なロットだった。しかも装備品に関しては性能が事前に用意してきた装備の方が高いので、マジでいらない。しいて言うならファッション装備としての価値があるかもしれない、ぐらいだろうか。一瞬で終わったロット勝負の後、タンヒラ共が獲得した頭装備を装着する。

 

 マンモス革でできた、牙のある仮面に近い形の帽子だった。略剣と土鍋は無言でマンモスヘッドを装着すると、その場でマンモスのフリをし始める。

 

「ね、ネタにしかならねぇ……!」

 

「これ、見る限り他の部位もマンモスモチーフの毛皮装備なんだろうな……あ、でもこれ一応は耐寒性能あるんだな。他の装備品よりもそう言う面では優秀なのかぁ」

 

「とはいえ防御性能とか諸々の補正が落ちるから正直装備するメリットねぇなパオン」

 

「不意打ち気味のパオンはやめろ。ニグが死んだだろうが」

 

「ぐ……ふふふ……ぱおん……マンモスなのに……ふふふっ……」

 

ふ、不思議ちゃん系……!

何がツボなのか今一良く解らねぇわ

いや、今のは面白かったでしょ

どこが……?

 

 感性が独特な幼馴染の事はともかく、空を見上げればそこには正しい空の色が戻ってきている。振り返ると荒れ果てた街道があるものの、エネミーは一掃されている。そして遠くに目を凝らせば、この時を待ち望んでいたプレイヤーたちが道を確かめるように此方へと向かってきている姿が見える。これで止まっていた攻略がいよいよ、再開されることになるだろう。まあ、別段俺達が攻略しない限り進まないという話でもなく、しばらくしたら別の誰かが対策をして攻略しただろうとは思うが。

 

 それでも今回に限っては、俺が、俺達がここを攻略した功労者だ。

 

 視線を上から正面へと向ければ、帝都の姿が見えてくる。

 

 解放された雪原とは違い、帝都の上空は闇のオーロラと陽の光が拮抗する形で明るい闇の世界に染まっていた。帝都の上空では何かが舞い、そしてその内側ではまだ見ぬ敵が潜んでいるのだろう……。ここはこのゲーム、最初のシナリオを、最初のパッチを攻略する事に置いて大きな転換点となるだろう。少なくとも今までの様なサクサク進めるステージにはならないと思っている。あれだけ大きな都なのだ、シナリオ的にも重さを置いてある場所だろう。

 

「ん-、何時だって新しいステージと要素が見えてくるとわくわくするなあ」

 

「アレ、どういう内容になるんだろうな」

 

 マンモスヘッドのまま、土鍋が横にやって来た。真顔でやってくるもんだから思わず吹き出してしまった。やっぱその装備卑怯だわ。

 

「段階的に制圧するのか、フリーフィールドとして突入するのか、それともIDなんかなあ……」

 

「頼むからそれを脱いでくれ、まともに顔が見れないから。それはそれとして今までのシステムからしてID形式にはなると思うけど……複数人レイドって形になるんじゃないか? 少なくとも1パーティでどうにかなる規模じゃないだろアレ」

 

「まあ、そうなるよな。となると連合レイドって形になるな、ウチだとどう足掻いても大型レイドするだけの人数足りないし」

 

「マンモス脱いだり被ったりを繰り返すの止めてくれません??? ニグが死にそうなんだが??」

 

 雪の上でぴくぴくと痙攣しているニーズヘッグの周りでマンモスヘッド三人衆が邪教の踊りをしていた。レティシアは梅☆の手によって中央へと放り込まれ、梅☆が合流した邪教4人によって邪教の踊りに晒されていた。段々とその瞳が泣きそうになって行く姿は正直興奮するものがある。そう思った瞬間ニーズヘッグが顔を一気に持ち上げてこっちへと視線を向けてくる。

 

「心を読むな」

 

「じぃー……」

 

「じぃ……」

 

「じぃ……」

 

「じぃ……」

 

 ニーズヘッグを合わせたマンモスヘッド共が全員揃って同じことを言いながらこっちを眺めてくるもんだから、流石にこらえ切れず爆笑した。流石に衝撃に耐えきれず片腹を抑える様に地面に這いつくばると、そこには既にデフォルメフィエルの姿が待機してあった。そしてデフォルメフィエルは彼女自身が視界に入ったのを理解してから手を叩いた。

 

「おめでとうございます、アインさん!」

 

「なにが?」

 

 何かやったっけ? と首を傾げながら息を整えているとフィエルがサムズアップを向けてきた。

 

「環境操作、天候操作系統が強すぎるという判断からナーフが決定しました!」

 

 何もおめでたくないが?




 ナーフ! リアルタイムでナーフ! 強すぎる効果はナーフだ!!

 まあ、範囲広すぎた上に強すぎるからナーフ妥当よね。
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