断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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エルディア王 Ⅵ

『それじゃ本日の配信は精神的にキツイのでこれまで。なんか有用なスキルかシステムの更新あればWIKIに書き込んでおきますわ。流石に配信続けるだけの気力はこの後ではない!』

 

コメント『乙』

コメント『まぁ、そこはしゃーないな。乙』

コメント『枠追加あく』

コメント『乙乙。次も待ってるで』

コメント『今回の件はWIKI書き込んでええの?』

 

『ええで。俺が書き込む気力ないからだれか代わりにやっといて。とりあえずPCサイドに王宮からクエスト出そうだから皆頑張って。ワイ氏、政治の気配にしわくちゃ顔になる』

 

コメント『草』

 

 草じゃねぇんだよなあ……!

 

 半分キレてる。アインに政治の話は解らない。解るのはメロスも政治が苦手という事だ。そしてメロスから生まれた伝統としてメロス族は政治の話が始まったら全裸で走らなくてはならないという掟がある事だ。つまり俺も政治の話をされたら全裸で走り出す。だから止めよう、政治の話。

 

 ……なんて感じに話は済ませられれば良いのだろうが。

 

 世の中―――というかこの世界はそう簡単ではないらしい。AIが自立して世界を構築しているのだ。ならば当然の事として彼らには彼らの法があるのだ。それを遵守しなければ待っているのは犯罪者の烙印。無論、ここはゲームだからと割り切って悪役ロールするのも悪くはないし、政治を理解しないモンスターを演じても良い。

 

 だけど身内にガチで難しいことを何も考えないモンスターがいるので、せめて俺だけでもそこら辺の話についていける状態じゃないとどっかでババを引いてしまうかもしれない。目標としているワールド・ファーストの称号の為にも、ここはぐっとアレルギーを我慢して飲み込み、表面上は何事もないように見せておく。

 

「ほうほうほう、ではお主が儂の生徒じゃな? 我が名は既に名乗ったが、Aじゃ。短い間じゃろうが宜しくのう」

 

 何時の間にかふよふよと浮かぶ老人が目の前に来ていた。A、確か別の国の高名な魔導師らしい。確かに学ぶのなら高位の魔導師が一番良いだろう。だからこっちも頭を下げて言葉を返す。

 

「此方こそ、よろしくお願いします」

 

「ではお嬢さん、練兵場へと行きましょう。言葉よりも行動で理解を得られるタイプの様に思えますので」

 

「宜しくね、騎士さん」

 

 あぁ、大型犬が行ってしまう……心配だ……物凄く心配だ、1人にしてしまう事が果てしなく心配だ……。

 

 ニーズヘッグがジークフリートと一緒に去ってしまう姿に寂しさと多大な不安を感じながら見送ると、横で老人が軽く笑う。

 

「ほうほうほう、そんなに恋人が不安かのう?」

 

「いや、アレはペットなんで」

 

「迷いもなく言い切りおったのぅ……」

 

「根本的に脳味噌を使わないタイプの生物なんで条件反射で行動して深く考えず実行するから失敗した後で失敗したって気づくから絶対に失言するなぁ、って思ってまして」

 

「ぼろくそに言うわ言うわ、逆にどういう関係か気になってきたわい。まぁ、心配はいらぬじゃろうて。ジークフリートは実力は当然、その人柄も良いことで有名な英雄じゃ。何か問題が起きる様な事はないじゃろう」

 

「A殿は盛大に突っかかられてたのに……」

 

「結構遠慮なく言うな小僧……?」

 

 まぁ、これぐらいの失言なら許容するタイプかなぁ、というのは大体話をしてたり聞いていて解ったので遠慮なく。そういうやり取りの方が好まれるタイプだと思った。だからそこらへんは躊躇しない。それに、まぁ、どうせ今日だけの関係みたいな部分あるだろうし。スキル情報だけ得たらさよなら! すれば良いのだから。とりあえず自分のビルドの完成形を構築する上で必要なのは情報だ。その情報を揃えないにはまずはどうしようもないだろう。

 

「とりあえず、お願いします。これから先の成長や方向性に関わってくる話なので」

 

「一瞬で遠慮がはがれてきたな……まぁええじゃろう。儂もこっちの方がやりやすいからの。ほれ、こっちじゃ」

 

 そう言ってふよふよと浮かんでいるAは謁見の間を出て行く。最後に一度だけ玉座を振り返り、そこで未だに座っている王子の姿を見て、頭を下げてから急いでAの後を追う。その歩みはゆっくりとしたものであり、当然の様に浮かんでいる。

 

「ほうほうほう、しかし稀人の生徒か。まさか生きている間に神話に触れる事が出来るできるようになるとはのぅ」

 

「珍しいものなんですか」

 

「神々が遣わした異界の者よ。こうやって話していると忘れそうになるがの。だが本来であればありえぬ邂逅よ。……お主、本当に稀人よな?」

 

「今からフィエルちゃんの恥ずかしい失敗話暴露して証明しますが?」

 

『や―――め―――て―――くださ―――い!!!』

 

 ドアップでホロウィンドウが出現する。フィエルちゃんの反応早いなぁ……いや、そう言えば担当とか言ってたし監視しているのか、これは。という事はこれは普段からフィエルちゃんと一緒という事になるのでは? つまり成す行動、やらかす事全てをフィエルに見せつけて遊ぶことができるという事なのではないだろうか?

 

 これは良いことに気づいてしまったかもしれない。

 

『止めましょ、アインさん。すぐその邪な考えを捨てるのです』

 

 チョップ、チョップ。フィエル・ウィンドウをカラテチョップで破壊する。それを見ていたA翁が笑っていた。

 

「ほうほうほう。まぁ、そこまでせんでもお主が神威の恩寵を受けているのは解るわい。それだけ強く力を受けておればな」

 

「ほーむ」

 

 片手を持ち上げ、もう片手を確認するが、特にそういう力を確認することはできないが―――或いはそう言う特殊タグでもデータに仕込まれているのか? 他のNPCと区別する為に。そしてそれを見抜くだけの力がこのお爺さんには存在するのかもしれない。まぁ、細かい要素は所詮はフレーバーだ、データには関わってくる範囲ではないからそこまで追求しなくてもよいだろう。

 

 と、そんな風に軽い雑談を交えながら城内の廊下を進めば、一室の前でAが動きを止めて、片手を横に振るって扉を開けた。

 

「さ、中に入ると良い」

 

「お邪魔しまーす」

 

 扉を開ければ広い部屋が広がっている。少なくとも外から見た以上に広くなっているようにさえ感じる。少なくとも奥行きも、天井も、他の部屋をぶち抜いてたり上の階をぶち抜いてたりしそうなのだがそれを感じさせない、綺麗な作りをしている。これは……良くファンタジーである、空間を広げているという奴だろうか? 実際見てみるとインパクト凄いなぁ、と思わず室内を見渡してしまう。

 

 壁には見た事もない本や杖が飾られ、テーブルの上には何か実験の道具が飾られている。部屋の隅には魔法陣と木人が設置されており、また別の所には大量の本が詰まっている本棚がある。まさしく魔法使いの部屋、というのをイメージしたものがそこにあった。ちょっとした感動を感じる。そうそう、こういうのも古典的ファンタジーだよな、と。感じ入るものがあった。

 

「ここはメゼエラにある儂の部屋を部分的にこっちへと持ってきたものだから遠慮する必要はないぞ。断絶の前に持ってこれたのはこれだけじゃがな……全く、面倒な事じゃ」

 

「へ、部屋ごと持ってきたんですか」

 

「ま、儂だからできる事じゃな。他の連中にはとてもじゃが無理じゃろう」

 

 自慢気に胸を張って浮遊する老人がそう言う。ヤッパリこのお爺さん、凄い人なんだなぁ、とは思うが。さて、

 

 どーしたもんか。

 

 いや、どうしたもねぇか。

 

「では、お世話になります」

 

「うむ、とりあえず座ると良い。聞きたいこともあるからのう」

 

 そう言って椅子を指さされる。示されるがままに歩いて近づき、椅子に座る……うん、クッションもあって割と座り心地が良い。結構良い物を使っていると思う。

 

 目の前で浮かんでくるAはさて、と声を零しながら。

 

「お主が求めているのは魔法、スキルという形で習得する技術に関する話じゃったの……で、お主は一体魔法に何を求める?」

 

「火力」

 

「……」

 

「……」

 

 即答に対してAが動きを止めて、軽く咳ばらいをする。そして再び、

 

「魔法において大事なものは何だと思っておるかな?」

 

「安定した高火力の維持」

 

「結局火力じゃないかの、それ……」

 

 せやで。だってさぁ、考えてみてくれよ。

 

「DPSだ、ダメージディーラーに求められるものはDPSが全てですよA爺さん! DPSを出せないディーラーは死んでるほうが―――あ、いや、死んでるとDPS落ちるからなるべく死なずに邪魔にならないように火力回しを維持してて欲しい。つまり火力です、キャスターの仕事は火力なんですよ!」

 

「お、おぉぅ?」

 

「いいですか、キャスターは動けない、行動できないという制約を背負った攻撃を行っているんです。メレーやレンジは移動やアクションの自由が常に保障されるからあらゆる状況に即座に、反射的に対応できる。だけど我々キャスターはそれが出来ない。なぜ? それは我々キャスターが圧倒的な火力を約束されている最強のDPS職だからですよ。いいですか、DPSを出せばその分早く戦闘が終わって、タンクとヒーラーの負担が減ります。つまり火力こそ正義。安定した高火力を維持する事によって約束された勝利が訪れるんです」

 

「急に早口になりおったな……」

 

 ただのDPS信者ですから。

 

「では軽く緊張も解れたじゃろうし、そろそろ真面目に言って良いぞ」

 

「んー、ではちょっとこっちの言語使って説明を挟みますけど良いですか?」

 

 Aが頷いた。なので説明する。まず第一に、キャスターが1番火力を追求するロールであるという俺の考えそのものに変更はない。だがそれには以下の要素がある。

 

「コンマでの詠唱時間の秒数管理、何回魔法を発動させたか。他のメンバーのバフの戻り時間。他の人のバーストタイム。私のバーストタイム。コンボによる発生する威力の向上。回避によって発生する詠唱時間のロスでどれだけ秒間当たりの攻撃力が低下するのか。攻撃の組み合わせによって発生する相乗効果。個人バフによる点火と強力スキルの短期投与の瞬間的な火力向上」

 

 これら全てを管理するのだ。戦闘開始の時間からずっと。

 

「つまりリソースの徹底した管理と、手持ちの札への理解力。これを突き詰めた合理的な戦術。突き詰めた最大火力を放ち、高火力の時間とMP回復の時間を挟みながら常に高いDPSを維持して戦闘を安定させる」

 

 これが、俺の考えるキャスターとしての理想の姿だ。卓ゲでもそうだけど、キャスターって結局はMPをどう確保するかって所に尽きる感じがある。MPの確保さえ行っていればキャスターの継戦能力は高く維持される。そしてそういう手段は用意されている。

 

「あると思うんですよね、戦闘中にMPを高速で充填する手段が。アイテムを頼らずに、システム的な働きで一気に充填できるの。火力タームと攻撃しながらのMP回復タームを挟んでのサイクルが最終的な理想としての完成形なんですけどねー」

 

 どこぞの宇宙の救世主的な主人公のMMOだと通常攻撃でMPに当たるものを回復する事が出来た為、魔法系のアクションは攻撃による回復さえ挟めば無限に使用できた。

 

 また別のMMOではスキルを発動させることで自分の状態を回復状態へと移行し、それで高速充填する事が出来た。消費に対して回復が上回るので最高火力を出せないが、それでもそこそこの火力を出しながらMPを満タンまで補充出来た為に回復と火力のサイクルを組んで戦えた。個人的にはこれが理想。

 

 また別のMMOだと最終的にMPの数値がインフレするから消費MPの概念そのものが飾りになるって感じもあった。だから消費MPなんて気にする必要もなかった場合もある。

 

 後は何だろう……あぁ、そういえば別ゲーだと攻撃していない間は高速回復するってタイプもあったなぁ、と思い出す。

 

 ともかく、MPで詰まって回復アイテムをジャブジャブ使わなきゃまともに戦えないのは割とゲームとして、或いはプレイフィールとして破綻していると思う。これはかなりのメタ読みの部分もあるのだが。少なくともゲームというものはある程度快適ではないと遊ぶ気にはなれないものだ。マゾゲーを好むのは一部の人間だけだ。根本的な部分で楽しさを求めるのだから、快適さがあってこそのゲームのプレイングなんだ。

 

 MP、減るだけ減って赤字でポーション飲み続けないと魔法使えないの楽しいと思う?

 

 個人的にはノーという言葉に尽きる。だってめんどくさすぎるじゃんそれ。それにリアルにして考えてみろよ―――常に薬飲みながら戦うのってなんかもう、違わなくない?

 

 ()()()()という言葉に尽きるじゃん。

 

 だからあると思うんだよな、MPを戦闘中にも回復し続ける手段。

 

「―――と、まぁ、大体私はこういう風に考えていますね、魔法に関しては」

 

 結構言葉がぐちゃぐちゃだったかもしれない。だけど真剣にそれを受け止めたAは髭を撫でながら目を閉じ、ゆっくりと口を開いた。

 

「では聞くが……1種類の属性に特化させることを考えはしなかったかの?」

 

「考慮はしました。最終的に蹴りました。1種類封じられたらそれで終わりって所がちょっと危ないかなぁ、って思ったのがありますね」

 

 後は、まぁ、

 

「色々凄い魔法使いたいじゃないですか」

 

 1種類だけに拘るの、勿体なくね? 折角こんな世界に来てるんだ。色々やりたいじゃん、とは今思う。それが特化させるという道に進まない理由でもあるかもしれない。俺はこのゲームを楽しみたいし、楽しんでいる。なのにそこで狭い道を選んでしまうのは勿体ない。だから、どうだろう、A爺さん。

 

「魔法の世界に夢と浪漫、それを両立した強さってありますか」

 

「―――ふむ」

 

 その言葉に目を閉じている老人は小さく唸り、

 

「ふむ―――ふむ、成程のぉ」

 

 深く、頷く様に言葉を呟きながら目を開き、此方を見た。その瞳は真っすぐと此方の心をとらえているようで、あの謁見の間でみた飄々とした態度は欠片も見せない。

 

「そうじゃな……他の道よりも険しく、花開くのも遅くなろう。それでも高みを目指したいというのであれば……ある、そういうやり方がの」

 

「おぉ」

 

 あるじゃん、あるんじゃん! 夢と火力を両立できるビルドが! 完成が多少遅くても問題はない。最終的にレベル50で完成させて、メインシナリオ終了後の高難易度コンテンツでワールド・ファーストの証明を取るのが目標なのだ、ぶっちゃけ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

「もし、お主が苦難の道を歩みながらも夢を捨てずに高みを目指すというのであれば……そうじゃのぅ」

 

 Aという老人は笑みを浮かべ、此方を見据えた。それと同時にホロウィンドウが出現する。

 

「どうじゃ、稀人よ―――儂の弟子になってみるつもりはないかの?」

 

 魔導師”A”の弟子になりますか?

 

 その選択肢を選ぶ為のウィンドウが、師事の詳細と共に出現していた。




 師事システムも存在していた!

 当然ながらW1stを目指す以上、世界最強であらないといけない。つまりアインの個人的な目標、スタート地点は最低でも自分が全プレイヤー最強のキャスターになる事でもある。
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