断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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目指すはW1stの称号 Ⅲ

「じゃあここで暇を持て余しているフィエルちゃんにエージ式ビルド話をしてやろう」

 

「エージ式」

 

「マイ・ネェェム!! イズ! エージ!」

 

「いえ、それは何となくわかりますけど……ビルド話ですか?」

 

 もう立ち続けているのもめんどくさいから既にこの庭園の草地に寝転がりながらホロウィンドウを眺めている。ちょっと離れた位置に立っている木人君が寂しそうな視線を向けているが、お前の出番はコンボ確認の為にあるのだからまた後でな。とりあえず、マイ・ビルド理論話に関してに戻ろう。とりあえず最初はアレだ。

 

「火力の出し方を独自的なアレで話すサムシング」

 

「もうちょっと言葉を固めましょうよ……!」

 

「いやいや、ほんとふわっとしてるというかこのVRMMOというゲーム形態が新しすぎてちょっと細かい事までは言えないのよ。だけどほら、このスキルを選んでキャラをビルドするってのはキャラクターシートに技能を選んで書き込むTRPGの形式とかなり似てるじゃん? そしてこれがMMOという形態を取っているなら事前に参考できるデータもあるし。となるとまぁ、大体火力の出し方ってのは予測できるのよね」

 

 つまりシナジーとコンボだ。これが火力を出す上では一番重要だ。

 

 まず第一にパッシブの何%が火力に乗るのか、火力に対してどれだけ貢献するか、という奴だ。これは盛れるだけ盛って良い。

 

「根本的に主力となる火力スキルが常にアップデートとアップグレードによって環境に適した威力を発揮できるなら、後はパッシブ盛って火力の底上げを行った方が効率が良いんだよね。魔法ってキャストタイムとクールタイムで他の攻撃を一切できない時間が大半だし。そう考えるとその1回1回に対してどれだけ火力を増やせるかってのが重要になってくる事で」

 

 メレーはそこらへん連続攻撃タイプだからまったく感覚違うよなぁ、と思う。だって複数の攻撃スキルを連続で繰り出すのだ。同じスキルだとモーションからモーションが繋がらなさそうだし。メレーにとって重要なのは硬直を減らして連続で常に高威力の攻撃を続ける事。だからメレーはメインとなる攻撃手段を複数用意しなきゃいけない。いや、もしかして一つのスキルから複数の攻撃技を獲得できるのかもしれない。その場合はちょっと良く解らないかなぁ、と思う。ちょっとそっちの方も軽く触れ―――いや、触れば触るだけノイズが増えるから止めておこう。

 

 ともあれ、魔法だ。

 

 魔法スキルの仕様は非常に面白い。

 

 魔法スキルは習得すると同時に使用可能な基本的な魔法を習得し、スキルレベルを上昇させる事で()()()()()()()()()()()のだ。そして増えた魔法パーツを組み合わせることで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というシステムが採用されている。

 

 凄いだろう? つまり消費MPや攻撃規模、範囲、そういうのも全部自分で設定して作成できるという事なのだ。ただこれはスキルレベルが上昇してからの話だ。まずはスキルそのものを成長させない限りは意味がない。ただこのシステムを見ている限り、本当に魔法スキルを一つ採用してパッシブガン盛りにするのが最適解の様に思える。

 

 例えば《火魔法》スキルを習得する。ここに《杖術マスタリー》を習得する。そしてここに《火属性マスタリー》を習得する。これで杖を装備した時にステータス及び威力の補正が入り、火属性の利用に対する補正も入る。二重の補正が《火魔法》に対して加算されるので純粋な威力は大きく伸びるだろう。

 

 ここに妨害札として《毒魔法》を習得するとして、MPの自然回復能力を補佐する為の《瞑想》スキルを習得するとする。

 

 そうすると2種類のパッシブで火力の強化された火属性の魔法が使え、相手に対して毒を使った妨害、そして《瞑想》スキルの説明を見る限りは大幅に低下するであろう戦闘中のMP回復力をこれで補佐する事ができる。火力を維持をしながらHPの継続的削りも行え、詠唱中のDPSロスも防げるかなり優秀なビルドが完成する。

 

 ね、強いでしょ?

 

 でもこれ、一つ大きな問題があるんですよ。

 

 つまり属性に特化しすぎているという問題だ。マスタリーの取得によって火に特化すれば、それだけその属性に集中した場合のリターンも大きくなる。だが良く考えてみよう―――属性って概念があるなら、もしかして弱点属性と耐性のある属性の概念があるのでは?

 

 この疑問にフィエルは答えなかった。

 

 だけどそれが答えなんだよなぁ、という感じはあった。

 

 つまりだ、メインウェポンを一つに絞って属性を選んだ場合、その属性が通じない時点で戦力的にはお荷物になってしまうのだ。ならサブウェポンとして別の属性を持てばいいじゃないか! という話にもなるだろう。

 

 え、既に《火属性マスタリー》持ってるのに《氷魔法》取得するんですか!? 効果が乗らないのに!?

 

 そう、火が通じないから別の属性を取得する。それは別に良いのだ。だが火が通じない相手にレベルアップして取得した6スロット目に《氷魔法》を入れて使ってみよう。

 

 成程、ダメージは通るね。

 

 だけどもしかして、《氷魔法》使っている間は《火魔法》だけじゃなくて《火属性マスタリー》まで死んでない……?

 

 そう、つまりはそういう事なのだ。一つの属性に特化させてからサブウェポンを取得した場合、実質的に二つのスキル枠を死なせているのと同じ扱いになるのだ。これ、あんまり深く考えないとそこまででもないかもしれない……なんて思いがちだろう。

 

 だけど20レベだ。スキルスロット2つ分で20レベだ。つまり特化させたのに使わないと20レベ分の損をしているのだ。これは相当ヤバイ。だって、20レベル分のシナジー火力を損なっているという事実が生まれているのだから。その特化させなかった分に別の主力スキルを叩き込んでいれば損失は10レベル分だ。これならまだ許容できる範囲だ。火力の変動もフラットだし、浮いた枠に別のシナジーかコンボパーツを入れる事だって可能だ。

 

 だったら全て単体で完成されたスキルを入れれば良いのか? TCGには所謂グッドスタッフ構築と呼ばれるものがある。これは単体で強く、完成されたカードを使ってデッキを組むスタイルの事だ。カードパワーがあるから単純に強く、ローリスクローリターンとも言えるスタイルだ。

 

 つまり《火魔法》《氷魔法》《毒魔法》《杖術マスタリー》《瞑想》という一つ一つが優秀なスキルで構築するという話だ。これなら火が通じなければ氷を、常に毒を差し込みつつMPを加速させて魔法の回転数を増やすという事が可能だろう。どんな相手でも損失の少ない闘い方が可能だろう。

 

 だけどこれ、上の特化スタイルと比べると火力に劣るよね? 攻撃が通じるタイプ相手には使わない分、ロスなんじゃないの?

 

 うん、そうなんだ。特化させるというのはそれだけで通じる相手に対しては完全な優位性を得る事はまず間違いがないんだ。グッドスタッフな構築と比べるとコンボとシナジーを重視しているからハマる相手に対しては無類の強さを発揮するのだ。

 

「はぁ……つまりはどっちがいいんですか?」

 

「答えが出る訳ねぇだろ!!!」

 

「えぇ……」

 

「答えが出るなら迷ったりしねぇんだよ! スロット拡張前提でビルドの話はしねぇ! そもそもこの先どういうスキルが新規で追加されるかわからねぇから成長プランもくそもねぇんだよ!!」

 

 庭園をごろごろと転がりながらリストを確認し、これいいなぁ……と思うパーツをリストアップする。それでも悩みに悩む。

 

「ここはもはや趣味の領域に入るんだよなぁ。通じる事前提でビルドするのか。それとも通じない事を前提でビルドするのかって事で。そもそも身内で求めてるのはエンドコンテンツに対して最速クリアを目指す事だから別段道中のボスで引っかかるかどうかって事はそこまで考慮してねぇんだけどよぉ~」

 

 ごろごろと転がりながら悩む。

 

「なら特化させた方が火力がでるのではありませんか?」

 

「それよそれ。なら特化させた方がボス相手に火力が安定するのはまず間違いがないんだよ」

 

 そう、それで悩んでる。

 

 更に30分ぐらい。

 

 なら特化させるだけ得なのでは? と思うだろう。実際そうだろう。だがそこで属性に特化させる、というのが罠なんじゃないかなぁ、と思う部分があるのだ。属性マスタリー系統は属性を切り替えれば意味をなさなくなるという弱点があるのだ。だけどこういうスキルって上位属性とか上位互換の物とかが出てきそうな気配あるんだよね。

 

 現時点でスキルはレベル10でカンストらしい。

 

 だけどのその先がないとは一言も言われていない。

 

 ほら、《火魔法》と《氷魔法》がSL10になった結果なんか合体して《虚空魔法》みたいなものに生まれ変わってマスタリーから外れたらすごく嫌では? いや、スキルの削除はいつでも可能らしいのだが。だとしてもそれってスキル育て直しでしばらくスキラゲ作業にタスクが占領されるという事ではないか。

 

 だから火力に特化させる方向性は悪くないかなぁ、と思うんだがそれだけでいいのか? と思う部分はある。気になるスキルは他にもあるのだから。

 

 例えば《詠唱術》スキルは魔法のキャストタイムを短縮する。魔法のキャストタイムを短縮できればそれだけ魔法攻撃のサイクルを加速させられる。攻撃回数が増えればそれだけダメージは増えるだろう。単純な火力を考えたら10%火力を増強させるよりも、攻撃回数を1回分増やしたほうが火力が出ている場合もある。

 

 ただそれはそれで芸がないよなぁ、と思う部分もある。

 

「あー、ゲテモノ面白ビルドでありながら高火力をキープできるビルドねぇかなぁ……」

 

 辟易とした表情のフィエルが此方を見ている。

 

「要求しすぎじゃないですかね……」

 

 うーん、もうこの際1属性で良いかもしれないと思う。メインウェポン+妨害、残り3枠を共通で他の属性にも適応できるマスタリー。そしてレベルを上げた先で耐性に引っかかるようであれば別の属性をサブウェポンとして追加する。

 

 これが一番隙の無いビルドなんじゃないかなぁ、と思う。

 

 となると、自分が求める理想の形ってのが大体見えてきた。だから立ち上がり、リストから求める物を習得リストに追加する。

 

「えーと、まずはメインとなる《火魔法》だろう……」

 

 まずはこれだ。火氷土風光闇属性の中で一番火力に秀でた属性。純粋なDPSの高さはこの属性が一番らしい。なのでまずはこれをチョイスする。これが二つ目の属性を習得するまでは唯一の武器となる。

 

「これで妨害札として《時魔法》かな」

 

 初期から習得している魔法は一種のみで、それも鈍足付与。動きを遅くするのではなく、移動速度を大幅に低下する。《毒魔法》もDoTダメージを入れる事で悪くはないと思ったのだが、最終的に状況に対する対応能力を広げられるタイプの妨害札の方が腐りづらいかなぁ、という判断になった。スキル説明に書いてあるが、成長させると将来的に完全に移動を封じれるバインド、バフデバフ効果の延長や相手に付与されているバフ効果の解除などが行えるようになるらしい。

 

「となると残る3枠はマスタリーだけど―――」

 

 まずは《杖術マスタリー》を確定枠にする。というかキャスター職でこれを外す選択肢は―――いや、《魔本マスタリー》を習得するビルドになるか。こちらはMPブースト向けの性能をしていた。火力よりも継戦能力を優先する場合はこっちを選択するかなぁ、って感じがする。だけど今回は火力ビルドなので杖での戦闘を想定。こっちを優先する事にする。

 

 後は《詠唱術》と《瞑想》取るのが安定するかなぁ、って感じはする。ただ正直これ、どっちかのみで良い気もする。戦闘時間がボスでもなければそう伸びる事はないだろうし、ボスエネミーとの戦闘ともなればMPの回復手段を他にも用意しているだろうし。そう考えるとMPのスキルによる回復手段は腐らないけど必須という訳でもないと思えてしまう。

 

 なら《詠唱術》を取得して攻撃回転率を上昇させるので正解だろう。

 

 で、最後の枠は火力マスタリー枠。特化させずに汎用性の高い火力の増強手段を用意したい。

 

「もういっその事バフ系統の魔法でも取得するか? でもバフを差し込む為に詠唱したらその分DPS落ちるしなぁ……」

 

「そこまで悩んでやる事なんですか……?」

 

 此方の呟きに対して反応するフィエルに視線を向けて、サムズアップを向ける。

 

「名言を与えよう! 火力(DPS)は命より重い! 火力(DPS)は命より重い、だ!」

 

 なので火力こそがダメージディーラーにとって最も大事な事なのだから当然命よりもその価値は重いのだ。

 

 ともあれ、これでラスト1枠という所まで来た。《魔力ブースター》で純粋にINTをブーストするのが腐らないかもしれない。

 

「うーん……お」

 

 色々とスキルを確認しながら、面白い事を思いつく。

 

「フィエルフィエル」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 ホロウィンドウに表示されているスキルの一つを指さす。

 

「《二刀流》で杖二刀流ってできない?」

「今なんていいました?」

 

「杖二刀流」

 

 メインウェポンの補正二倍にすれば強いじゃん。

 

 もしかして、俺天才では?

 

「いや、出来ますけど……問題なく……」

 

 これで初期のスキル構成は完成した。選んだスキルは《火魔法》、《時魔法》、《杖術マスタリー》、《詠唱術》、そして《二刀流》だ。

 

 いやぁ、これは天を狙えるビルドだ。いい仕事をした。凄まじい達成感と困惑し続けるフィエルを前に、キャラクリを次の段階へと進める事にした。




 せや! 1H制限も2H制限もないからSTR制限みたいなものがないなら1Hで武器って持てるやん!

 そこから生まれる杖二刀流とかいう神の発想。それまで語ってたビルド理論はどこへ行ったの?
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