断絶世界のウィザード   作:てんぞー

34 / 135
ぶらり、ダリルシュタット観光 Ⅴ

「干し肉とかどうなんだろうなぁ……ちゃんとした飯を屋台でテイクアウトできるならそっちのが良くない? インベントリでは時間経過しないらしいし」

 

「雰囲気とか?」

 

「あー、それは大事だな」

 

 消耗品補充の為に雑貨屋へと来ている。ダリルシュタットには大型のマーケット街がある。固定の店舗ではなくこういうマーケット街で欲しい物を探すのも中々乙なもんで、ニーズヘッグと歩きながらマーケットに並べられている物を確認している。と言っても目的は軽く消耗品を補充する事だ。あんまり本格的な買い物はしない―――ほら、東街道終わったらゴンドワから再びガラドアIDに突入してそっちで装備を揃える予定なのだから、ここで装備を整えるだけ金の無駄だ。

 

「というかさ」

 

「うん」

 

「思ってた以上にフレーバー系の道具、必須かもしれない」

 

「それは解るわ」

 

 ロープとか、ザイルとか、そういうふつうは使わないような道具。この世界で冒険する上ではちょっと重要になるかもしれない。これがTRPGだとエリアの攻略とかでGMに対してこれ、判定で使えませんかー!? ってやる奴なのだがこのゲーム、この世界、やれる事がとにかく自由で制限が存在しない。やろうと思えばロープでエネミーを縛る事さえもできるだろう。そう考えると道具は考えようでどうにかなってしまうのだろう。それを考慮すると、手段を確保するという意味で色々と買い込んでおくのは悪くない選択肢だと思う。インベントリは枠に制限があるが、それでも重量の制限は存在しないし。だったら圧迫しない程度に買い込んでおくのが賢いもんだと思う。

 

 そういう訳でロープ、ザイル、投げナイフ、ガラス瓶を購入。極々シンプルな登攀セットと投擲セットだ。投げナイフは投擲して攻撃にも妨害にもMPの消費なしで使えるし、何なら詠唱動作もいらないので投げる技術さえあれば完結する優秀な道具だ。ガラス瓶は投げて割れると音を立てるからそっちに視線が行く、一瞬でも気を逸らしたいときに隠れながら使うとこれで奇襲しやすくなる道具だ。

 

 こういうもんは何が出来る? というのを考えながら購入するのが楽しかったりする。

 

「あ、ボス、見て見て」

 

 マーケットを歩いていると、ニーズヘッグが露店の1つに近づき、売られている装備品に目を輝かせている。

 

「これ、ちょっと試着してもいいかしら」

 

「構わねぇぜ」

 

「ありがとう」

 

 露店で拾い上げて装着したのはベルトポーチだった。それも物凄く長い奴。ニーズヘッグが装着してみれば腰に2重に巻いて、X字を描く様に交差させるタイプの奴だと解る。腰の両側にポーチが装着されており、レザー製のそれは雰囲気がアクティブなニーズヘッグとマッチしているように見えた。

 

 まぁ、こいつ黙ってれば見た目だけはかっこいい系の美人だからな。黙ってさえいれば。

 

 口を開くと耳と尻尾を幻視するけど。

 

「似合うんじゃん。ただロングタイプのスカートとは組み合わせられないな」

 

「どうせショートかスラックスしか履かないわ、私。これ、買うわ」

 

「サンキュー! 4000Gになるぜ」

 

 ちょっとお高めかもしれない。だけど性能を確認してみると装着できるアイテムが多めになっている為、それを込みにすると丁度いい値段なのか? 流石に装備品の相場と呼べるものはあまり解らないなぁ。そこら辺の相場は時間をかけて安定したり把握するものだし。現時点で高い安いを把握するには相場を知っている人間に話を聞くしかないだろう。

 

 金策もなぁ、考えなきゃいけない。これが通常のMMOだったらプレイヤーメイドの装備品とかが高く売れるのだが、ぶっちゃけエルディア人の職人の方が品質の良い物を作るしな。そう考えると金策って割と難しい問題なのかもしれない。或いは現状、現地人では入手するのが難しい素材を調達してくるの1番か? グリムビーストの素材とか割と良い値段で売れたし、そういう所があるのかもしれない。

 

「むふー。満足」

 

 満足げな表情のニーズヘッグはそのまま次の露店を眺めに行く。また別に自分の求めるデザインの装備品を探しに行ったのだろう。なんだかんだでアイツも女だしなぁ、そういう所には気を遣うのだろう。俺もまぁ、そこそこ見た目には気を遣うタイプだが。

 

「ポーションの類はまだ配布品が残っているしな……あんまり遠くに行くとはぐれるから気をつけろよー」

 

「解ってるわ」

 

 本当に解ってるんだろうかアイツ。

 

 腕を組みながら他に必要な物を考えてみる。1番必要な回復アイテムはさっき補充と運営が配布してくれている。そのほかで何か欲しいと思ったら……バフアイテムか? 露店を軽く巡ればそういう類のアイテムが並んでいるのも見れる。

 

「《魔力の香水》か……これ、どういうアイテムなんだ?」

 

「ん? これかい?」

 

 眼鏡をかけた露店の店主に販売しているバフアイテムを確認する。それを持ち上げた店主が説明してくれる。

 

「この香水は匂いを嗅ぐことで匂いが残っている間は一時的に魔力を強化してくれるものだと。ランクに合わせてⅠ、Ⅱ、Ⅲがあるかな。それぞれ伸ばせる能力に限度があって、適切に言うならⅠは1から20レベルまで、Ⅱが21~40、そしてⅢが41~50だね」

 

「へぇ、香水にそんな力が」

 

「まぁ、これは香水だから効果は弱いよ。もっと効果を求めるなら服用タイプの薬が1番さ。香水だと効果時間内1%~3%だけど、服用タイプは短時間の間に10%は伸びるからね」

 

「成程。こっちのが安くてお手頃、と言う訳か」

 

「正解」

 

 値段を確認すると香水が1番安いので単品200程度、《魔力増強薬》の安いものが単品で3000だ。こう言っちゃアレだけど値段の桁が違う。だがスキルではない、金で解決できるバフアイテムとみるとこれは相当優秀な類なのかもしれない。

 

「ちなみに料理の方も出来が良い物は能力を一時的に向上させる効果もあるから、興味があるなら知り合いかお店に頼んでみれば出してもらえると思うよ」

 

「普通には売ってくれないのか」

 

「質の良い物を作るのって中々手間だし素材の方もこだわる必要があるからね。それに料理の腕前もかなり要求される。ちなみにこの香水も増強薬も、どっちも《錬金術》で作成できるものだよ。興味があったら手を出してみるのもいいかもしれないね」

 

「ありがとう、じゃあ香水を5個程貰おう」

 

「まいどあり」

 

 リップサービスの代金に香水をいくつか購入する。バフアイテムにもクールタイムが存在し、どうやら効果が切れたら即座に使うという事は出来ないらしい。だがそれ込みでもかなり優秀だ……これは《錬金術》と《エンチャント》に関しては真面目に誰か、雇うか育成する必要があるかもしれないと思う。わずかでも火力を詰められる要素は詰めるしかない。料理も料理で誰か、雇えると良いのだが。

 

「うーん……」

 

 デッスコードを起動する。

 

1様『おーい、そっちは調子どうだ?』

 

 直ぐに返事が返ってこないので、軽く露店を巡る。今度は設置型の大盾なんてものを見つけた。人が1人後ろに隠れる事が出来るサイズの盾だが、そこ部分に杭があって、それを地面に突き刺して使う事によって遮蔽物としてその場に即座に設置できるというものだった。これがあればコボルトのアーチャーなどの遠距離射撃ユニットに対して戦闘が凄い楽に進む。割とほしいかもしれない。あ、なんだこの魔本、詠唱カットが付与されてる!?

 

土鍋『順調だよ。こっちはこっちでID1個突破して3人でレベリングしてる』

略剣『マルージャはレイドボス倒して半壊してるから復興中だな』

土鍋『お陰でPCへの当たりが強いわwwwww』

略剣『笑いごとじゃないんだが』

梅☆『こっちはその影響でプレイヤーが連合してる』

土鍋『連合というかクランというか』

1様『反省しろー????』

略剣『お陰で封鎖領域2個突破したんだから良いだろ!!』

 

「おぉぅ、もう2個突破したか。いや、でもあっちはTDHのバランスの良い組み合わせだったしな。タンクで纏められる分進行が速いのも当然か」

 

略剣『という訳で順調だぞ。ただなぁ、おかげで臨時メンツとか探せてない』

土鍋『最大8人PTでしょ? って事は外様3人探さなきゃいけないんだよね』

略剣『ぶっちゃけこっちは探せそうにない。代わりにクラフターは腐る程いる』

梅☆『開拓よりも復興作業進めてるからね、こっち』

土鍋『っしゃあ! 猿捕まえたァ! ケツに棒突き刺して掲げるぞ!!』

略剣『うおー!』

梅☆『[画像]』

 

 梅☆から画像が送られてきた。取られたスクショの内容は猿型のモンスターのケツの穴に棒を突きさして、それを掲げながら森道を進んでいるという景色だった。よく見れば周りのエネミーの類がドン引きして逃げている姿が映し出されている。本当に何をやってるのアイツら。

 

1様『じゃあこっちで入れられそうなやつ探しておくな……Dの基準はニグかぁ』

狂犬『わんわん』

略剣『基準を人類レベルに戻してくれ』

1様『理想は高い方が良いだろ!!』

梅☆『採用基準が新卒飛び級技能熟練の若手で給料いりませんとかいうレベルぞ』

1様『もうちょっと基準落とすわ……』

土鍋『草……あ、ケツ猿死んだ』

略剣『次だ次! 次の生贄を確保するぞ!』

 

「楽しそうだなアイツら」

 

 楽しそうにはしゃいでいる姿が想像できるので苦笑する。あっちは相当早いペースで進行出来ているから、意外と早くマルージャ側と合流出来るかもしれない。本格的な攻略とかはやっぱり合流してからがメインになるし。ヤッパリ俺達は全員が集まってからが本番だろう。

 

 ただその前に色々と、追加の人員をどう募集するかとか考えたほうが良いだろう。

 

「ツブヤイッターで探すと変なのばっかり釣れそうだしな……」

 

 この世界の掲示板を利用するか? まぁ、なんか手段あるだろうし誰かに後で相談しておくか。ただそれはそれとして、

 

「この設置盾ください」

 

「あいよ、5300Gだ」

 

「うーん……高いけど必要経費かなぁ」

 

 平地で安全を確保するための代金だと思えば安いかなぁ、と判断しておく。消費した分はまた後で狩りで補充すればいいし。

 

 ……この手のマーケットって無限に見ていられるから本当に困る。

 

 いい加減脱出してニーズヘッグと東街道の様子を見に行かなくては。そう思ってニーズヘッグの姿を探すが、近くに姿が見えなくなっている。

 

「あれ? ニグ?」

 

狂犬『(´・ω・`)』

1様『言った傍から迷子になってるんじゃねぇよ!!』

土鍋『草』

略剣『これは大型チワワ』

梅☆『大型チワワ(戦闘用)』

1様『戦闘用大型チワワってなんだよ……』

土鍋『なんだろうな……? あ、ボスだからちょい黙るわ』

 

 はぐれたニーズヘッグを捕まえたら、この補充を終わらせてそのまま東街道へと行くとしよう。予定よりは早いが、下見しておくのに越した事はないだろう。

 

 ただ、やっぱり、なんというか。

 

 こうやって王都を歩き回るのは非常に楽しかった。




 ニグ徘徊。

 あっちのチームはあっちのチームで割と真面目に攻略してた。ただマルージャの状況が状況なので、攻略よりも復興の方が目立っていて戦闘よりも生産の方が今は人が多く勢いがあり、レイドによって団結した影響もあった多くのPCが連合に所属しているのでスカウトが大変という状況。

 どうしてこんなことに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。