断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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もしや無理ゲーなのでは?

 補充を終えたら新しいメンバーを探し、募集する事もなくそのまま東門へと向かった。理由は色々とあるけど、今の所王子からのミッションを達成するのにあたり、他のプレイヤーが信用できるかどうかで言えば信用できないと判断したからだ。プレイヤースキル、人格、時間、そこら辺を調整して一緒に遊べる相手じゃないと大きな事には挑戦できない。それを短時間で選別する方法もないのだ。それを考えるとやはり、今はニーズヘッグとのコンビで活動するのが1番安定する。

 

 そういう訳で準備を整えた所で東門からダリルシュタットの外に出た。

 

 この先に続くのポート・ダリル、ダリルシュタットへと続くエルディア最大の港町だ。購入しておいた地図を広げて確認する。

 

「港まではこっから真っすぐ東に進めば到着するらしい。街道の方も整備されているから歩きやすくなってる。まぁ、元々は馬車とかが行き交っていたからその為なんだろうけど。ただ途中で何度か川を渡る必要があるけど……これは橋が架かっているみたいだな」

 

「へー」

 

「川は深くて、入るなら潜る事前提。そして水棲エネミーがいるから入るのは危ない。当然ながら橋を渡るのがベスト。ここからまっすぐ進めば封鎖領域に当たるから道から外れずに行くのがベストっぽいな」

 

「了解したわ」

 

 港から王都への道は交通と交易関係で非常に重要だから定期的にメンテナンスされて整備もされているようだった。マルージャへの道が途中で完全な整備が施されていないのは結構な距離がある関係なのかもしれない。ともあれ、このまま東へと向かえば封鎖領域が見えてくる筈だ。歩き出す前に、門を抜けたところで振り返り、門番を見つける。

 

「すみませーん、質問いいですかー」

 

「ん? あぁ、稀人か。こっちに来るのはまだ早いと思うんだが……そう言えば調査の為に稀人がこっちにも来るって話だったな。すまない、好きに聞いてくれ」

 

「こっから封鎖領域までの距離と、出てくるエネミーの大体の感じ良いですか」

 

「構わない。えーと―――」

 

 門番によればここから封鎖領域までは大体徒歩で1時間で到着できるらしい。思ってたよりだいぶ近い所に展開されていた。そりゃあ王子様も解決できそうな稀人にオールベットするわけだ。西街道の方もそうだったが、かなり近い距離まで封じ込められているから割と詰みに近い状況だったことを思い出させられる。

 

「ここら周辺に出てくるのはスウォームビーという蜂の集団が魔物化したものだ。こいつらはサイズが普通の蜂と変わらないが集団で密集しながら襲い掛かってくる。残念ながら武器を使った戦闘じゃほとんど意味はないから、範囲を焼く魔法とかを使って処理するしかない。逆に言えば耐久も蜂相当だから簡単に焼き払える」

 

「へぇ、面倒なのが出てくるな」

 

「まぁ、大型だったり狩りやすいものは事前に安全確保する為に騎士団で周辺の掃討を行っているからな。必然的に残るのは面倒な所にいる奴か、繁殖力の強い奴だ。だからこの付近には昆虫型の奴が多めだよ。少し離れればまた変わってくるが」

 

 成程なぁ、生態系に関しては存在していて必ずしもエネミーがPoPする訳ではない、という所なのだろう。

 

「あぁ、後それとは別に水の気が強いからな。こっから離れればジャイアントトードが出てくる。人程の大きさを持つカエルだ。こいつらは打撃が通じ辛い肉体をしている代わりに刃物を差し込みやすい。後はアクアスプライトだな。こいつは高まった水属性が鉱物や宝石を媒体に魔物化したもんだ。こいつは一種のボーナスで、倒せば鉱石やら宝石が拾える。見つけたらとりあえず倒しておくのをお勧めするぞ」

 

 そのほかにもエネミーはいた。ゴンドワと比べると結構バラエティに富んでいる。大型の蜂であるジャイアントビー、命ある泥のゴーレム型エネミーのマッドマン、そして川を下って迷い込んでしまったワニのエネミーであるキラーゲーターが出現するらしい。特にこのキラーゲーターが凶悪で、レベルもかなり高い。出会ったらまず逃げる事を優先するべきらしい。

 

「ま、大体こんなもんだ。稀人は死んでも蘇るから命は軽いものかもしれないが、それでも死んでしまうのは悲しく、辛い事だ。なるべく危険なことをせずに無事に戻ってきてくれ。その姿を見るのが俺達門番の楽しみなんだ」

 

「任せて」

 

「親切にありがとうございました」

 

 優しい門番だったことに感謝しつつ、さっそく街道を歩き始める。既に昼食を終わらせて時間は少しずつ暮れ始めている。完全に夜になったらまた環境が変わりそうなので、その前にダリルシュタットには戻りたい。ある程度戦闘しながら進み、封鎖領域の確認をしたらノルトとセクエスでダッシュして帰還すればいいかなぁ、という所だろうか。

 

「メンテも終わらせたし、私はいつでも行けるわよ」

 

 杖を2本、ホルダーから回転させながら抜いた。

 

「こっちも準備オッケー。んじゃ、軽く数戦こなしつつ進むか。とりあえずワニ以外はコンプしたいな」

 

 それでは未知を求め、出発。

 

 

 

 

 とりあえず昆虫系は雑魚だった。雑魚と言うか相性が良かった。とりあえずスウォームビーとジャイアントビーは燃やせば死んでくれた。スウォームに至っては置き〈イラプション〉でワンパンで済ませられた。いや、小さくすばしっこいから照準を合わせるのはそりゃあ難しいだろうが、爺との魔法戦練習を果たした自分からすればあの爺程やりづらい相手ではないのだ。なので行動を予測して設置、起爆して終了。耐久力が耐久力なだけにかなりの雑魚だった。これで20代レベルの敵で経験値がもらえるのは相当美味しい。レベル的にみると相手の方が格上なのだろうが、それでも狩れるのだからしょうがない。

 

 そして似たようなエネミーであるジャイアントビーも問題はなかった。そもそもサイズが人の体半分ほどなんで普通にニーズヘッグで攻撃できる。チェーンソーで上半身下半身分断しても動こうとするのは滅茶苦茶気持ち悪かったが。だがそれもニーズヘッグが踏み殺して瞬殺した。昆虫型のエネミーはどうやら耐久力に難があるらしいというのがこれで感じた事だ。つまり倒す相手としてはかなり良い。ぶっちゃけ当てづらいとかの要素は、こっちのPS次第で修正可能なのだ。だから単純に素早くて攻撃が当てづらい、コアが狙いづらいみたいなタイプだったら普通に殴り殺せる範囲なので耐久が低い分にはありがたいエネミーだった。

 

 これがジャイアントトードやマッドマンになると困った。

 

 ジャイアントトードは全長2メートル、つまり此方よりも大きなカエルだった。1つ目の橋に差し掛かった時にこいつは出現してきた……というかいた。橋は予想していたよりも長く、大きく、そしてその下に流れる川幅も広い。どうやら結構深さのあるこの川は海に通じているのだろうが、その中に生息しているらしいトード共は偶に体を乾かしたりする為に陸へと上がっているようだった。

 

 たまたま上まで上がってきて橋を塞いでいる個体の相手をしたのだが、これまためんどくさい。飛び上がってのボディプレス、舌を使った遠隔攻撃に絡みつきまである。その上でこいつは今の自分達よりも格上で、レベルの高い相手だ。その影響で耐久力が今まで戦ってきたどの雑魚エネミーよりも高く、別段火の通りも良くはない。相手するのが面倒なタイプの雑魚だった。経験値が多いのは確かに美味しいのだが、それ以上に昆虫エネミーと比べて倒す手間が多い。昆虫型がワンパンで沈められる所、このジャイアントトードは1体倒すのに魔法5発とニーズヘッグによる攻撃を必要とした。

 

 これを見ればもう、どれだけこいつの相手が効率悪いのかが解る。

 

 それにマッドマンも問題だった。こいつは火の魔法をぶち込めばその分体が乾いて固まり、砕きやすくなるのだが、泥の状態だとまったくと言っていいほど物理攻撃が通らず泥だらけになるだけだった。だというのに自分の体をちぎって作った泥の砲弾を投げたり、圧し掛かって窒息を狙ってくるもんだから実に面倒極まりないエネミーだった。正直この程度でデスペナを貰う程弱くはないが、レベル差とエネミーの特性を見ると非常に面倒なエリアとなっていた。これがレベルの上昇によるエネミーの多様化という奴だろう。西街道はこれと比べれば普通のハメパターンで問題なかったので万倍楽だった。

 

 そういう訳で狩りは効率化する為に、移動しながら倒す相手は昆虫系のみに絞った。こうなるとスウォームの相手はニーズヘッグにはできなくなってしまうのだが、これを新しく覚えた魔法である〈ファイアブランド〉が解決してくれた。ニーズヘッグのチェーンソーに炎を付与する事でその見た目は刃やチェーンの合間、隙間から炎が噴き出すチェーンソーへと変貌した。その効果時間は30秒と短いのだが、効果中はチェーンソーを振り回せばその軌跡に合わせて炎の斬撃が発生し、チェーンソーを突き込めば炎の槍の様なエフェクトが発生する。しかもこれ、ちゃんとダメージ判定がある。これで大振りに振り回せば炎を撒き散らして一気に相手を焼く事が出来る為、ニーズヘッグでも小さい敵に対処する事が出来るようになった。

 

 爺との修行で新しく覚えた〈バースト〉の火魔法もかなり優秀だった。威力は〈ファイアーボルト〉よりも高く、発生までの詠唱時間は一緒。この時点で互換とも言える性能だが、こっちは起点指定の起点発生型の魔法。

 

 指定した場所に炎が一瞬で集い、そして粉砕するように円状に爆発する、名前通りの爆破魔法だった。ピンポイントに場所を指定して放つ分、射撃型の魔法である〈ファイアーボルト〉と比べると命中率に難があるのは事実だが、先読みを駆使して使えば相手には軌道を読まれない魔法と考えられるので非常に優秀だ。しかも威力が今までよりも高いから対単体の魔法として新たなダメージソースとなってくれる。消費MPも少し増えるが、MPの最大値自体が大きく伸びている今、そこまで気にする量でもなかった。

 

 狩りは効率化するものなので面倒な水棲生物と狩りやすい昆虫の組み合わせが悪い。

 

 とりあえずは水棲組はスルー。〈ファイアブランド〉だけ毎回ニーズヘッグにかけなおしつつ、見かけ次第昆虫は爆殺焼殺する。このエネミーは1対1でも十分爆殺可能だって理解が出来たら二手に分かれる事も出来る。なるべく水の傍に寄らないように気を付けながら街道から逸れたところにいる昆虫を見つけては爆殺する。

 

 微妙に小走りになっている部分もあるが、そうやっているとレベルがあっさりと上がる。これでレベルは12へ上がり、そこから更に上がって13へ。やはり大きなレベル差のある相手を倒せるとレベルの上がる速度が速い。他のプレイヤーもこっちくりゃあ良いのになぁ、なんて事を考えるが、どうなのだろう。

 

 他の連中に俺達と同じレベルのPS要求できるかどうか?

 

 まぁ、昆虫って見た目が気持ち悪いし嫌悪感あるし。

 

 或いはそう言う部分も難易度に含まれてるのかもなぁ。

 

 適当にぶち殺しながら進んでレベル13になった所、街道の終わりが見えた。黒く染まった空に黒いオーロラ。どこまでも邪悪さが滲みだすその空間こそが封鎖領域。門番が言ってた1時間よりも時間がかかったのは純粋に狩りをしながら進んでいた事にあるのだが、それでも距離としてはだいぶ近い事に間違いはなかった。

 

 封鎖領域に入るとエネミーの強さが上がったのはゴンドワ街道でもあった事だ。その為にニーズヘッグと合流してから街道の上を進む様に、

 

 封鎖領域に突入した。




 という訳で二つ目の封鎖領域の攻略開始。相変わらずレベルは低いので本来であれば雑魚扱いのカエルと泥に苦戦する始末。適正レベルなら昆虫が不味く、カエルと泥が美味しいエネミーとなる筈だった。装備の更新が行われてもいないのが痛い。

 さて、今度の封鎖領域の内容は……?
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