断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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王国同盟 Ⅴ

「ん……」

 

「連れてきたわよ」

 

「俺は5体連れてきたから俺の勝ちだな」

 

「お前らぁぁぁぁああ―――!!」

 

 半ギレになりながら〈スロウ〉から即座に〈イラプション〉を予測詠唱に入る。ニーズヘッグは当然の様にトードを3匹トレインしてきて、レイン―――蒼髪で毛先が翡翠色に変化するグラデ-ション髪、後ろ髪は短く横髪を長くしているタイプのダブルクローを装着した女はフィッシュを3尾連れてくる。それにわずかに遅れる様に片手に鞘を握ったレオンハルトがトードとフィッシュの混成グループを纏めて4体トレインしてきた。こんなの〈スロウ〉を叩き込まないとどうあがいても対応できる数じゃねぇ!

 

 と言いたいだろう?

 

 対応できてしまうのだ。そう、修羅勢ならね。

 

 ニーズヘッグ、レオンハルト、そしてレオンハルトが連れてきたレインという奴を含めて全員リアル超人か何か? ってレベルで動きが良い。レオンハルトはニーズヘッグとは別のタイプの動きだ。鍛え、練武を重ねた武芸者の動きだ。動きの1つ1つが洗練されていて、次に繋がる様に体の動きが出来ている。レインも同じジャンルの超人だ。恐らくはレオンハルトとリアルでの知り合いなのかもしれない。どっちも武芸者であるというのは動きの運びと無駄のなさで解る。動きの質が梅☆の野郎に近い。

 

 理想の形に対して無駄をそぎ落とす事で近づいてゆく形だ。

 

 対してニーズヘッグはそういう理論を全て投げ捨てている。経験を積み重ねる事で本能が今まで経験してきた事を糧に自動的に最適解を導き出して体を動かす形に近い。何も考えていないようで、ニーズヘッグの脳内は戦闘中、相手の急所やガードが一番薄い所を常に狙って誘導している。それが武芸者の鍛錬に劣るのか? といわれると難しい。方向性が違うだけで、どっちもどっちだ。頭がおかしい事実には何も変わりはしない。

 

 だからそれに付き合う此方が一番大変なのだ。

 

 こいつらの動きをある程度先に予測して、攻撃が重ならないように範囲魔法をセットする。そうすると他の3人がそこを起点にしようと敵をそこへと誘導するので、〈スロウ〉で鈍った足の速さと合わせて魔法を発動させる。〈イラプション〉からの〈ヴァルカン〉で敵を焼けば広範囲にダメージをばらまける。そうやって敵をグループで焼きながら目くらまし、或いは行動阻害を行う。同時にここでヘイトを奪う。挑発系統のスキルを使ったヘイトではなく、ダメージヘイトだ。つまり純粋なダメージ量でこちら側に相手を集中させる。そうさせることによって相手がより纏まって、疑似的にタンクの役割をこなす。

 

 そうすればフリーハンドになった修羅共が簡単に群がって食い荒らしてゆく。

 

 それぞれがそれぞれの動きを邪魔しないように暴れまわる事はどうやら得意らしく、ニーズヘッグなんて良く飛び跳ねたり上からチェーンソーを振り下ろして突き刺したりするのに、それが他の2人に当たるような事は1度もなかった。それにレオンハルトもレインも、一切の躊躇なく全力で攻撃を繰り出しているのに全くのミスを起こさない。

 

 お前ら実は人の姿をしたロボットだったりしない?

 

 そう思いながら敵のHPを全体で管理すれば、それがもうすぐ消滅ライン近くまで来ているのが見える。ここで周辺にエネミーが湧いたか残っているようであれば、すかさず〈ファイアーボルト〉でMPの消費を抑えながら攻撃し、ヘイトを引っ掻けて此方へと誘導して乱戦に敵を追加する。DDは攻撃以外の事をさせる時間が増えれば増える程DPSが落ちる。だったらなるべく攻撃する事にのみ集中させるのがベストなんだが、

 

 周辺にはエネミーの姿は残されていない。すべてが死滅していた。それもそうだ。この3馬鹿が凄まじい勢いで周辺のエネミーを引っ張ってくるのだからあっという間に纏めて殲滅して絶滅させてしまっている。

 

「む、もういなくなってしまったか」

 

「物足りないわ」

 

「次」

 

「お前ら少しは落ち着きを取り戻せ!! 遠足に行く小学生かッ!!」

 

 杖を地面に叩きつけながら吠えると流石に3人が足を止め、1列に並んで腕を組み、首を傾げた。

 

「首傾げてるんじゃねぇよボケ! 馬鹿! 馬鹿! 俺が過労死してしまうわ! なんだそのさり気無く全部”おーい、もってきたぞー、纏めてー!”みたいな感じはよ! こっちはお前らからヘイトとって纏めなきゃならんから辛いんだぞ! タンクじゃねぇんだぞ!!」

 

 その言葉に3馬鹿が顔を見合わせ、

 

「そう言えばそうだったな……!」

 

「そうだったな、じゃねぇんだよ。なんだよその数は」

 

「だが次は5体引っ張れそうなんだ」

 

「私は6行けるわ」

 

「……7」

 

「張り合うな」

 

 当然中指を突き立てる。

 

 その数を俺に纏めさせるって正気か?

 

「これ以上敵を纏めたいならタンクを誘え! タンクを!」

 

「いや、タンクは皆アビサル誘導の挑戦と練習に忙しいからな……後はもうパーティー組んでるし」

 

「そうよ、無茶を言っちゃだめじゃない」

 

「悪い子」

 

「なんで俺が責められるのぉ……?」

 

 まぁ、流れ的にネタにされてるのは解るから許すけどさ。それにレベルだってこの短時間で上昇している。たった1時間ほどの狩りなのに、既にレベルが1上昇している。今の自分たちのレベルは17で、レオンハルトとレインのレベルは15まで上がっている。やはり格上を一気に纏めて狩るとレベルアップのペースがあほの様に早い。だからもっと集めて狩りたいという気持ちは解るのだが、

 

「頼むからもうちょいペースダウンしてくれ。俺が疲れる」

 

「すまない」

 

「謝罪」

 

「ごめんなさい」

 

「素直すぎかお前ら???」

 

 ノリと勢いの良いDD3人組に溜息を吐いて、軽く体を捻って体をほぐしながら背筋を伸ばす。まぁ、最初は即座に解散しようかと思ったところもあったのだが。真面目にレインとレオンハルトの性能が良い―――というか滅茶苦茶優秀でDPS出しているので、解散するにできなくなってしまったのだ。この2人はちゃんと攻撃全部避けながらカウンターで攻撃をどんどん叩き込んで行くし。そのせいでここまで、あの2人に被弾はないし、なんならニーズヘッグもない。唯一被弾しているのはちょくちょく詠唱中だから避けるのを拒否してダイレクトアタック処理している自分ぐらいだ。

 

 まぁ、ぶっちゃけてしまうと。

 

 俺も超効率を楽しんでいた。

 

「まぁ……上手な人と一緒に遊ぶのって楽しいしな」

 

 その言葉にレオンハルトが頷く。

 

「ああして欲しい、こうして欲しい。そういうのを口に出さず伝えられる、伝わる、ストレスなく動き回れるというのは実際に楽しいからな」

 

「同意」

 

「ちなみにレインの口数が少ないのはキャラ作りだ。実は普通に喋れるぞこいつは」

 

 直後、レインが爪を抜いてレオンハルトに襲い掛かった。はっはっは、と笑いながらレオンハルトが回避し、剣で切り払っているのをムキになってレインが襲い掛かっている。やっぱりあの感じ、リアルでの知り合いって感じあるな。しかしまぁ、RP勢か、と納得する。

 

 折角のVRMMOなんだから、リアルの自分とは違う役割、姿、言動やファッションを楽しみたいという人間は出てくるだろう。そういうRPガチ勢も楽しそうでいいなぁ、なんて事は個人的に思ってたりする。俺自身はそこまでRPなりきりとか得意じゃないから素がどうしても出てしまう。卓の間なら割と平気なんだが、実際に演じるのはちょっと難しいので、VRでのRP勢はちょっと応援してる。

 

「それはそれとして、レオンハルトは朝からこっちだろ? 進捗はどんな感じ?」

 

「レオで結構だ。そして成果の方が悪くはない。実験段階で封鎖領域の半分まで引っ張り出して、ヘイトを切って大橋に戻るのを確認した。戦闘状態でない時は大橋へと戻る様になっているみたいだな」

 

「成程、なら本格的に王宮の方も同盟組んでくれそうだな」

 

 レオンハルトが証拠の映像を見せてくれる。システム的な物なので、これをNPCに証拠として提示する事が出来ないのが残念だが。ただ見せてくれる映像を確認すれば、アビサルドラゴンが最初のタンクを喰らって殺したら、次のタンクの〈挑発〉を受けて即座に飛びついてゆく姿が見れる。

 

 うん、予想した戦術でどうにかなっているようだ。

 

 タンクたちに何をさせているのか、と言えば簡単だ。

 

 ()()()()()()だ。

 

 〈挑発〉というアビリティは強制的に自分のヘイトをトップにする事でターゲットを自分に向けるアビリティだ。これを使う事で即座に自分をターゲットにさせる。これを今回は悪用した。つまりヘイトを取った後で次の者が〈挑発〉でヘイトを取れば、アビサルドラゴンの攻撃はそちらへと移る。これを利用する事でアビサルドラゴンをどんどん大橋から引きはがし、タンクを犠牲に釣りだすという作戦だ。

 

 なお死ねばダリルシュタットで蘇生するので、作戦地点までは寧ろこっちからの方が近い。なんならダリルシュタットから合流地点までの馬を出してくれるので即座に合流できるようにするつもりでもある。

 

 タンクが〈挑発〉する前に死んだら?

 

 心配ご無用、

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。結果、一定の範囲に他のプレイヤーが存在する場合、そのプレイヤーにヘイトが飛ぶことになる。つまりタンクが死亡してヘイトが跳ねた場合、それを受け止める為のプレイヤーが傍にいれば良い。

 

 これは馬を使って直ぐに移動できる俺とニーズヘッグが担当する。ヘイト跳ねても直ぐに〈挑発〉が飛ぶだろうから別にこっちにワンパン飛んできた所で特に問題はないのだ。

 

 という訳で、これが対アビサルの秘策、ヘイトリレー作戦である。

 

「これはいけるな」

 

「……本当にそう思うか?」

 

「これで行けなきゃ無理ゲーよ。他に手段もないしな。まぁ、確実に発狂か覚醒か暴走か、途中でどれかが入るだろうけど封鎖領域の外に連れ出した時点でほぼ勝利が確定したようなもんよ」

 

「成程、自信がある訳だ」

 

 まあの。でなければこの話を忘れてさっさと旅立っている。まぁ、それでも結局一番大事なのは、エンジョイする心だ。何事もエンジョイする心さえあれば成功も失敗もその準備も、全部存分に楽しめる。

 

「うっし! 休憩終わり! 今日中に20レベ目指してペース上げるか!」

 

「お、やる気だなアイン」

 

 剣を肩に乗せてとんとん、と叩いたレオンハルトは笑みを浮かべ、走り出した。

 

「次は10体引っ張ってくるか……」

 

「なら私は15よ」

 

「30」

 

「対処できない量を連れてくるなよ!?」

 

 早く、タンクをください。心の中でそう呟きながらそうか、タンクか、ともう一度呟く。

 

「パーティー用のタンクもう1枠探さなきゃいけないんだよなぁ……」

 

 今回の騒動で2人目のタンク、もしかして見つかるかも?




 タンク1、ヒーラー/バッファー1、DD1。フルパーティー完成の為に必要な残りのメンツである。

 君ならどんな人材をそれぞれのロールに求める?
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