断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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王国同盟 Ⅵ

 レベル20、到達。ついでにまとめ処理の為に酷使される《杖術マスタリー》と《時魔法》のレベルも上がった。ただ今回は両方ともレベルアップで覚える魔法の類はなかった事だけが残念だった。まぁ、でも《時魔法》に関しては前回〈ヘイスト〉とかいう友情破壊魔法を習得してしまったから解るかもしれない。実際にニーズヘッグに使ってみたら瞬間的なDPSが跳ね上がったし、それを見たレインとレオンハルトが〈ヘイスト〉欲しい欲しいってうるさくなったし。やっぱり友情破壊魔法だよこれ。

 

「だったらお前ら自分で覚えればいいだろ」

 

「その発想はなかった」

 

「新発見」

 

「私はボスにかけて貰うからいいわ」

 

 ドヤ顔えっへん胸張りニーズヘッグの脇腹に指を突っ込んでへなへなにさせる。あまり調子に乗ってるとまた痛い目見るぞこいつ。忘れたのか、梅☆ショックを。

 

 まぁ、それはともあれ。レインとレオンハルトはマジで優秀だった。どれぐらい優秀かというとニーズヘッグと同じレベルで活躍してくれるというレベルの有能さだ。もう既に人類という概念に喧嘩を売っているこの犬と同じレベルなのだから大概というか人外というか、人類ってそれだけ動けるもんなんだなぁ、というのを実感させるレベルで強かった。なので盛大に調子に乗ってしまう。乗ってしまった。

 

 という訳で周囲の雑魚を一気に集めてしまった馬鹿3人。

 

 それを了承して管理するハメになる馬鹿1人。

 

 タンク? いない。ヒーラー? 当然いない。

 

 なので無論DD連中も軽くヒットしてヘイトを取っただけなので直ぐにヘイトは跳ぶ。その状態でトレインしてきた総勢、30近いエネミーを処理しなくちゃいけない。ただ、まぁ、相手の大半は突撃系のモーションのエネミーだから、優先順位を設定して処理する順番をチェック、先頭を〈スロウ〉ではなく〈バインド〉で足止めすれば、後続が衝突して勝手に転がりながらフィーバータイムに入るのでそこまで大変ではなかった。

 

 寧ろ半端な数の方が交通事故起こせないので面倒なまである。このトレイン処理法、後続が自動的に転んで一時的に戦闘状態を停滞させられるのでかなり便利なテクニックだ。問題は数が更に増えるとこの転んだ奴を踏みつぶしてでも前に出てくるようなスタンピード状態になる可能性がありそうな事だ。ただ、まぁ、そこまでやる奴はいないし。

 

 という訳でレベル20に到達、実に満足といえるレベリングの成果を発揮した。スキルレベルの成長も順調だ。問題は《二刀流》や《詠唱術》が急に成長を渋る様になったことだが、後半戦が育成の辛い所という所だろうか? その割には《火魔法》はガンガン育っている。いや、これは育てて運用する事が前提だから育ちやすいのか? スキルによって育てやすいのと育て辛いのと分かれている気がする。

 

 まぁ、それはともあれ。

 

 そうやって封鎖領域のエネミーを虐殺し終わると割と良い時間になってしまった。そろそろログアウトの時間なので、一旦ログアウトする事にした。ただログアウトする前に封鎖領域の入り口まで戻り、レインとレオンハルトとフレンドを交換した。これでログアウトしても連絡を取り合える。

 

 実は割と頭を悩ませている事がある。

 

 それは後1人、DDをメインパーティー用にスカウトしなくてはならない事だ。俺、梅☆、そしてニーズヘッグがそれぞれDDとしてチームに参加している。ここにもう1人、DDを枠として招かないとならないのだ。そうしないとDDが4人揃わない。タンク、ヒーラー、DD。レオンハルトも、レインもどちらも素晴らしいレベルのDDだ。どちらを誘っても良いレベルの高さを持っている。だが同時に、他にもこういうレベルのDDが眠っているかもしれない……と思うと、簡単に誘う事を戸惑う。

 

 そんな事に頭を悩ませつつ、ログアウトした。

 

 時は昼時。装着していたギアを取って、ベッドの上に置いたら背筋を伸ばす。

 

「んっ―――! ふぅ、軽く体操でもして体解すかぁ~」

 

 冷蔵庫まで行って扉を開け、そこから作っておいた麦茶を取り出して飲む―――我が家では1年中、夏だろうが冬だろうが関係なく麦茶を作っているスタイルなのだ。これで軽く水分補給したら本日のランチタイムに入る。といってもお手軽に今日もパスタにするつもりなのだが。

 

「あー、いや、マテ。パスタばっかりなのも飽きるしな。もうちょい何か作るか……炒飯作るだけの材料あるしそっちにするか」

 

 基本的にパスタか炒飯だよなぁ、作るの楽だし。それ以外となると結構手間が増えるし。あー、でもパスタだと軽く手放しでも作れるんだよなぁ。

 

「……いや、こういう所で手を抜くと最終的になんでも手を抜くしな」

 

 きっちりやろうと思ったら実行しよう。そう決意して昼飯の炒飯を作る。といってもレシピ自体はどこの家にでもあるようなものなので、基本的な材料を含めて特別にやるような事は何もない。ついでに数人分作っておけばまた後か明日の分にもなるか、と考えてチャチャっと作ってしまう。その間はテレビをつけて、適当にニュースを流す。

 

『本日サービス―――』

 

 チャンネルを変える。

 

『やはりShattered』

 

 チャンネルを変える。

 

『世間はVR一色ですがそれもしょうがないと』

 

 チャンネルを変える。

 

「どこもかしこもシャレム一色だなぁ」

 

 まぁ、それもしょうがないと言っちゃしょうがないのだが。民間レベルに落ちたVRギア、そしてフルダイブVRMMOがついに世に出てきたのだ。一時は夢のまた夢とさえ言われていた技術が急に現実になったのだから話題がそれ一色になるのもしゃーないっちゃしゃーないんだが。

 

 が、流石に世間のニュースまでこれに染まるのは流石につまらない。

 

「遊んでない時はふつーのニュースでいいんだけどなぁ」

 

 同じものばかりだと飽きる。肉だけを食べていると違うものが欲しくなる。そういう事だ。毎日毎日同じこと同じものを見ているとそれに飽きてしまう。だからリアルの時ぐらい別の事をしているほうがちょうど良い。それがモチベーションの保ち方という奴だろう。

 

 そう、何事も適度な休息が必要だ。それはライフワークであれ、目標であれ、人生であれ当然だ。だからリアルに戻ってきた時間は割と準備段階以外ではゲーム以外の事をするべきなんじゃねぇかなぁ、と思う部分はある。

 

 とりあえず、筋トレは確定だが。

 

「んー、理想のパラパラ炒飯にはまだまだ程遠いな……」

 

 出来上がった炒飯を鍋から皿の上へと移しつつ、軽く換気する為に部屋の窓を全部開け放つ。そのままパソコンの前にまで移動し、足を横のテーブルに乗せながらスプーンを突っ込んで口へと運ぶ―――うん、味の方は良くできている。あ、麦茶忘れた。取ってこなきゃ。

 

梅☆『おーい、いるかボス』

 

 開いているデスコにメッセが入ってた。どうやら1時間も前には来てたらしい。その頃は……3馬鹿が盛大に暴れていたおかげでめちゃくちゃ大変だった時間帯だ。飯を食いながら返答する。

 

1様『いないよ』

略剣『おるやんけ』

1様『いないよ』

土鍋『ま、まさか、お前はプロトボス……?』

1様『は? 何を言ってるんだお前……』

土鍋『殺すぞ』

 

 ちゃんちゃん、軽い茶番を挟んで本題に入るのが何時もの流れだ。

 

梅☆『経過報告すっぞー』

1様『おー。で、調子どう?』

梅☆『とりあえず森抜けたら街道が湿地帯に飲まれてて街道が半壊してたわ。んで1回全滅な』

略剣『距離的に1日分の1移動距離な、クッソ辛いわ』

 

「あー、それは辛いな。というかPTバランス自体はあっちのが上だろ。それで全滅したのか? マジで?」

 

 レイドボス相手に死なずにマルージャまでトレインした連中だぞ一応?

 

1様『マ?』

梅☆『マ。環境毒ペナ+徘徊FoEでほぼ即死って感じ。ドラゴンゾンビマジやべー』

土鍋『ヒールの上から殺されたのは笑ったよな』

略剣『っつーわけでちょっとこっちは合流遅れるわ。レベリングと人が欲しい所なんだけどなぁ……ちょっとこっち、環境が特殊で身内の固定向けメンツ探せそうにないんだよな。臨時を連れるにゃちょっと回りが雑魚すぎる』

 

 ちなみにマルージャチームはマルージャチームで割と化け物ぞろいであり、あっちは此方と違って年齢が上のメンツが多め。梅☆は自称フリーランスの傭兵、略剣が妻子持ち、そして土鍋が社会人。俺とニーズヘッグと一番年齢が近いのは土鍋だろう。略剣マンはアレで1児のパパがなんでちゃんとできているのかは解らない。アイツマジでなんなの。実は分身の術とか覚えてるのかもしれない。

 

 もしくは運営の所の社員だったりして。

 

 がっはっはっはっは。

 

 欠片も笑えないんだが。

 

略剣『流石に防御してヒール貰っても即死する必中範囲攻撃とかどうしようもないからな……』

梅☆『つーわけでこっちは攻略する準備に数日時間を取るわ』

1様『オーケイオーケイ、追加メンツはこっちで探すのでいいんだな?』

梅☆『ボスはそこらへんの読みを外さないから信用してるわ』

略剣『美少女か美幼女で頼む』

1様『おい』

狂犬『ログは取ったわ。加奈子さんに送るわね』

略剣『すまんかった。5万とリーダーとの添い寝で手を打たない?』

狂犬『削除したわ』

1様『おいぃ!?』

土鍋『草』

 

「草じゃないんだが」

 

 炒飯を食べ終わって早速それをシンクに沈める。少ししたら洗って乾かしておくかなー、と考えていると新しくメッセージが入ってきてた。

 

 先ほどフレンド登録したレオンハルトからだった。

 

獅子『この度はお休みの所、誠に申し訳ありません。ですが緊急の事態故、連絡を入れさせていただきました』

 

「真面目かぁ??」

 

 文章が丁寧すぎて笑ってしまうのだが、スクロールして内容を確認し、要約するとこう、だ。

 

 ―――フィールドボスが出現した。




 梅☆はレンジ。略剣がタンク。土鍋がヒーラー。

 固定メンツの探し方は色々とあるけど最終的には募集した上で面接とかもしなきゃいけないから、とにかく野良PTの回数重ねたりしないといけないのよね。

 そういう訳で、アイン君の行動方針には野良でPTを組み、遊ぶ事が追加された。
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