断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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目指すはW1stの称号 Ⅴ

「えーと……戦闘チュートリアル、必要ですか?」

 

「今までの会話で大体必要な事は察した。ただMPの自然回復速度だけは知りたい」

 

「えーと……公開しても良い情報らしいので教えますね」

 

「良いのか」

 

「検証すればすぐに判明する事は別段隠す必要も感じないらしいです」

 

「はえー……」

 

 そういう所は本当にプレイヤーフレンドリーだなぁ、と思う。こういう事を大体の運営は濁したり黙ったりする。どうせ検証されるし、そこらへん口にしちゃっても良いかと俺は思うんだけど。それはそれとして、フィエルによればMPの回復速度は非戦闘状態で5秒に1度回復判定が入り、この時MP最大値に対しての10%だけMPが回復する。つまり初期状態だと5秒に3MP回復する事になる。

 

「そして戦闘中だと10秒に対して最大MPの1%、小数点切り上げで回復ですね」

 

「成程、戦闘中のMP回復手段は割と急務か」

 

 いや、もしかしてこれ、キャスターソロで回復アイテムが尽きても詰みにならない為の対策かな? とは思う。少なくとも60秒経過すればMPが6回復するのだ。これは〈ファイアーボルト〉1発分のMPでもある。1分間逃げ回ってMPを回復から再び魔法攻撃という手段も取れるだろう。戦闘中の回復速度は遅いが、それでも回復するだけ恩情か。

 

 いや、これは〈瞑想〉スキルの価値結構あるかもしれない。スキルスロットが開いたら最優先で確保する事を検討する必要があるかも。少なくとも二刀ビルドで両手が塞がっている以上、アイテムに頼らない回復手段を用意したい。ビルドミスったかなぁ、と思うがここら辺は実際にフィールドに出て戦えば解る所だ。

 

「他に質問はありますか?」

 

「RPはどうしたの?」

 

「やってても意味がないと判断したので止めました」

 

「えらい」

 

「かけらもえらくないです」

 

 いや、偉いよ。ちゃんと無駄だって解ったじゃん。それが解らなくて炎上してしまう愚かな人類が世の中にはたくさんいるんですよ。えらい!

 

「なさそうなので話を進めます―――次は生産活動に関してです。実際の作成などに関しては興味があったら生産関連のギルド等の講習を受けて学んでください。こちらでお教えするのは」

 

 フィエルが手を振るう。そうすると新しくホロウィンドウが出現するが、それは既に見た事のある自分のメニュー画面だった。そこから更に開かれるのはステータス画面であり、現在の自分のステータス、そしてレベルが表示されている。

 

 Name:未定義

 BLv.1

 CLv.1

 HP:100/100

 MP:30/30

 STR:10

 VIT:10

 DEX:10

 INT:10

 MND:10

 BSkill:■■■■■

 CSkill:□□□□□

 

「ステータス画面に2種類のレベル表記が見えると思います。BlvとClv、それぞれバトルレベルとクラフトレベルを意味します」

 

「ほーん、戦闘と生産でレベルは別扱い、と」

 

 メニュー画面に≪TAP ME!≫という表示が出てくるので、それをタップすると自分の状態が戦闘モードから生産モードへと切り替わったのを表示された。先ほどまで埋められていたスキルスロットが空になっている。その代わりに新しいスキルスロットが表示されている。

 

「はい、これで現在貴方は生産モードに入っています。このモードの間はまともに戦闘を行う事が出来ないのでご注意ください。武器も戦闘用のは装備出来ず、戦闘用の金属鎧などを装備していると生産活動にペナルティが入るので、生産用の装備に着替えるのをお勧めします」

 

「ふむ……」

 

 つまり生産は生産で戦闘とは別の装備を用意しなければならないし、生産モードの時は戦う事を考えるな、という話だろう。

 

「生産、そして採取活動もスキルを通して実行できるようになりますが、生産スキルスロットはレベルが上がっても増えない事をご注意ください。その為、従事できる生産、採取活動はスキル枠の5種類までとお考え下さい」

 

「採取も含めて? 採取も戦闘用装備じゃダメ?」

 

「はい、そうなります―――あ、今凄いチュートリアルっぽい事してます」

 

 哀れな奴め。

 

 少しだけ感動しているフィエルの様子を確認しつつ、採取も生産活動込みとなると少し面倒な部分が出てくるかもしれないなぁ、なんて事を考える。生産活動も生産活動でレベリングを要求してくるのなら最前線を走る為に、生産活動に集中して活動してくれる奴が必要になる。片手間にできるのであればよかったのだが……そうではなく、かなり本格的なスタイルで要求されてくるみたいだ。となると戦闘を捨てた完全な生産プレイヤーが味方に欲しい。

 

 これはゲームを開始したら募集してみるとしよう。

 

「実際何が出来るかはゲーム開始後、都市を回ってそれぞれのギルド等を確認してください。ただ戦闘するだけでは絶対に足りないものが出てくるので、並行して生産スキル回りにも手を出す事をお勧めします」

 

「オーケイオーケイ、つまりクラフト系は別枠と。良し、解った」

 

「ではこれで基本的な説明とビルドを完了しますので、エディットに合わせた初期装備を配布いたします」

 

 これまでは仮装備だった状態が、一瞬で変化する。簡素なレザーパンツに白いリネンシャツ、腰には二重に巻かれたベルトが存在し、腰の後ろには装備を格納する為のホルスターが存在していた。今、そこにはメインウェポンとなる杖が2本横になる様に上下に並んで格納されていた。足を確認すれば頑丈そうなブーツ、手は指先まですっぽりと覆うグローブを装着している。

 

「おぉ……すっげぇ普通だ……皆同じ装備貰ってるのかこれ?」

 

「いえ、此方で初期に配布される装備がありまして、そこからビルド、容姿に適した物を選別して送らせていただいてます。……貴方に関しましては、魔法ビルドでありながら大人しく後ろに下がっているという気配が欠片もないので魔術師向けのローブやマント装備は省かせて頂いた代わりに、グリップを補強する手袋を追加しましたが」

 

「うん、それで正解だと思う」

 

 少なくとも杖が2本もあるとマントやローブじゃ抜くのに邪魔だろうし。体を動かすのにも引っかかって邪魔だ。キャスター職だからと言って動かないのは実際、どうかと思う部分もある。

 

 ステータスを確認すれば装備された杖によってステータスが上昇している。今貰った杖は先ほど練習に使った杖よりも弱く、軽くタップすると装備としての能力詳細が表示される。

 

「えーと、《木の杖》か。INT補正は3で魔法攻撃補正は10、と。さっきの杖かなり強かったんだな……」

 

「装備とは別に初期作成の選別として初心者用ポーションセット、そして1000ゴールドが追加されているので確認してください」

 

「これ、RP込みだとどういう風に渡してたの」

 

「え? ……えーと、稀人様の先行きをどうか―――」

 

「めんどくさいからやっぱええわ」

 

「えぇ……」

 

 リアクションが面白いから弄るだけで楽しいんだよなぁ……。

 

 ただ、彼女はこの空間の担当だしここを出たらもう会う事もないだろう。ここまで個性豊かで面白いのに、もう会えないと思うと中々寂しいものがある。まぁ、ここを出たら身内と合流するから寂しいという感情は微塵に砕け散るだろうと思う。何せ、もうこの時点で相当ワクワクを抑えきれない状態になっているのだから。ここから先、もっと新しいものをたくさん見たらどうなってしまうんだろうか。

 

「発狂しそう」

 

「どうしてですか……」

 

「解らない。ただ俺は今、発狂しそうだという事実に気が付いた」

 

「もう既に十分発狂しているようにしか見えませんから安心してください」

 

 結構酷い事言ってるなこいつ……? と思いながらも、エディットは完了した。これで後はここから旅立つだけだが―――あ、いや、最後に重要な事を一つ忘れていた。

 

「えぇ、そうです―――では最後に、貴方の名前を教えてください」

 

「名前か」

 

 俺の名前。

 

 勝利したら一生刻まれる名前だ。

 

 この世界に、歴史に一生最強のキャスターとして刻むための名前なのだから、そりゃあもう特別なもんだ。何時も通り、チャットで使っているハンドルネームと同じ名前でも良いかもしれないなぁ、なんて最初は漠然と考えていたが。まぁ、それじゃあ正直つまらないだろ。

 

 もっと、こう、特別な感じの―――そう、直ぐにアイツだ! って解る名前が良い。

 

 だから……そう、こうしよう。

 

 人差し指を持ち上げる。それを見てフィエルが首を傾げる。それを見て小さく笑みを浮かべる。

 

「アイン。それを俺の名前にしよう」

 

「アイン……1を意味する名前ですね」

 

 ナンバーワン、ファースト、オンリーワン、ザ・ワン。

 

 1という数字は良い。何をどうあがいてもトップだって証明になるのだから。これでワールド・ファーストを取れなかったら爆笑もんだろうが―――少なくとも俺はそれを崩すつもりはない。俺の身内もそのつもりで遊んでいる。だからアイン、それが今回の俺の名前になる。

 

「その内忘れられない名前になるから、宜しく」

 

「もう既に忘れられない名前になっていますが―――そうですね」

 

 キャラクターエディットが完了し、ここから冒険の舞台へと送り込まれる為に身が光に包まれる。転移の光に身を包まれながら、笑みを浮かべるフィエルの姿を見た。

 

「楽しみにしています」

 

 その言葉を最後に、チュートリアルを終える。

 

 そして、このゲームが本当の意味で開始される。




 Name:Eins
 BLv.1
 CLv.1
 HP:100/100
 MP:30/30
 STR:10
 VIT:10
 DEX:10
 INT:10
 MND:10
 BSkill:■■■■■
 CSkill:□□□□□


 という訳で次回から冒険始まりますよ。いや、冒険まともに始まるか……?
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