断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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アフタープレイ

 王城まで辿り着いたらとりあえずはログアウト。これで一旦休憩に入る。マルージャ3馬鹿が盛大にやらかしてくれたおかげでエルディアとマルージャ組の合流は数日中にはできそうだ。少なくとも徒歩だと数日かかる距離が両国の間にある。だがそれさえ踏破出来てしまえば、国交が回復し、飛行船や大型船等を使ってマルージャとエルディアの行き来が回復する。そうすれば今まで以上に冒険できる範囲が広がり、移動も楽になるだろう。運営がどれだけ早く攻略されるか想定したかは解らないが、まさかこんな早くやるとは思いもしなかっただろう。

 

「はあー、楽しかった」

 

 めんどいけど楽しかった。糖分だ、糖分摂取を所望する! はい、プリンー。

 

 という訳で冷蔵庫から自分をほめる為の壺プリンを取り出す。なんと密林でオーダーした高級品だ。しかも1個500円を超えるという値段! うーん、高い! 小市民には中々食べ辛い! だけどスパチャ投げ込まれていたし、これぐらいの贅沢も良いだろう。後で動画編集してアップロードするのを忘れないようにしよう。そう思いながらPC前のチェアに座ってプリンを大人しく食べる。

 

 ちょっと興奮しているので、適度なクーリングタイムだ。

 

「んー、プリンおいちい」

 

 糖分が染み渡る。VRにダイブ中の出来事って体を動かす運動というよりは、脳の運動だからどうしても脳がカロリーを求めてしまうんだよなぁ、と実感を考えとして巡らせる。だからログアウトした後は大体甘いものか何か、食事したくなってしまう。そりゃあログインしている間も美味しいもんをそこそこ食べているけど。だけどやっぱりリアルで食べる実感というのも大事なもんはあると思う。VRで食事すると美味しいのとかは伝わるんだが、細かい体内の反応とかそういう部分は流石にオミットされているから、限りなくリアルでも現実とは違う、って感覚がある。

 

「ま、そういう所含めて楽しむもんかねー」

 

 ぷえー、と謎の鳴き声を零しながらチェアに沈み込む。今日はマジで頑張ったし、もうログインしなくてもいいんじゃないか? 割と目標達成できてるし、全体でスケジュールも押せているし。

 

「んー、スポンサー候補を考えてみるか……」

 

 プリンを掬って口に運び、スプーンを口に咥えたままパソコンに向き合ってメモ帳を起動、そっからちょくちょく入力しているメモ周りを呼び出したりする。

 

「今のところのスポンサー候補は、っと―――」

 

 1.エルディア王家。

 

 正直悪い勝負じゃないと思う。少なくとも俺に対する感情は、今考えられるスポンサーで一番良いとさえ思っている。今回の件で貢献と信頼もかなり上げた。活動の為にスポンサーを頼めばそれこそ普通に通るレベルで信頼関係を構築できている気がする。

 

「次の候補は……」

 

 2.ダリルシュタット機工房。

 

 ここはちょい交渉必須かなぁ、と思う部分はあるけど感情自体は悪くないと思う、エルディア国内での名声もあるし。ドク自身も宣伝と自作のウェポンを使えるというのならスポンサーやってくれそうな気はするんだよな。

 

「まぁ、でもどっちかというと王家の方が比較的に頼りがいのありそうなスポンサーなんだよなぁ」

 

 アーク殿下が割と良い感じにしてくれそうなんだよなー、とは思う反面、新しい王子が帰還するだっけか? と思い出す。そいつが稀人というかPCに対してどういう感情を抱いているかが良く解らんのが問題だ。実際に顔を合わせないとどうにもここら辺は解らない。ただやっぱり、スポンサー確保というのは大事だ。

 

「攻略とかをいったん梅とかに任せて、こっちはスポンサー探しと協力者づくりに走って良いかもなぁー」

 

 俺のレベリングは多少遅れるだろうが、スキルトレーニング周りはA師匠の地獄のタイマン修行をすれば毎日1レベルずつ上げられる。このことを考えると別にフィールドに出て必死にレベリングする必要もないんだよなぁ、と思う。まぁ、それはそれとして自分自身の脚で走って冒険したいのも事実だが。こんな広大な世界、冒険しないのは嘘だろって話だ。

 

「あー、やる事が多いなー」

 

 だけどそれで良い。それが楽しいってもんだ。やる事がある方がない方よりも断然良いに決まっている。やる事がある分だけ楽しいんだから。

 

「とと、そうだったそうだった。固定の要員探さなきゃいけないしな……」

 

 軽くツブヤイッターで宣伝しておくかー、とツブヤイッターを稼働し、そこからツイートを叩き込む。将来的にエンドコンテンツ、或いは超高難易度コンテンツに挑むためのチームメンバーを募集しています、と。

 

 ちなみに募集条件は決まっている。既に今いる身内メンツの戦力と構築はある程度データで送られているので把握している。なので欲しいのは、

 

 タンクが1。此方はサブでもメインでもこなせる人材、それでいて防御力だけではなくちゃんとダメージを出す事の出来るタイプが求められる。何よりも戦闘に対する安定感が欲しいので、変則的すぎるタイプのタンクはお断り。

 

 ヒーラーが1。此方に関してはバリアヒーラーかバッファー/デバッファーヒーラー。既にいる土鍋がピュアヒーラータイプであり、下がったHPを満タンまで一気に戻すことに特化した、純粋な回復力のピュアヒーラーだ。純粋な回復力が高いヒーラーが既にいるので、相方に欲しいのはダメージの軽減を行えるバリアヒーラーか、或いは味方全体のサポートを行えるバッファー/デバッファータイプだ。

 

 DDが1。これはメレー限定。既にレンジが梅☆で、キャスターが俺で、そしてメレーが犬で決まっている。だがDPSの都合上、近接職の方がDPSがやっぱり出るのだ。いや、キャスター職はメレーよりも火力出るのは事実なのだが、強くなればなるほど魔法のエフェクトは派手になるそうで、それが理由でキャスターを増やすと戦闘中見づらくなる可能性もあるのでむやみに増やせない部分がある。まぁ、一応はDDフリー枠でも行けるっちゃいける。でも連携を取る為にここはメレー固定にしておきたい。

 

「これが募集するロールの概要です、っと。えーと……後は指定された固定の日は絶対インできる事、可能なら目標達成までのイン率が高い事も条件、っと。協調性求む……えーと、後は男女に関する指定はなし、と」

 

 大体これぐらいか? 募集内容は。

 

「採用する為に面接&IDでのオーディション形式、後日改めて募集用のツイートをするからその時に連絡をお願いします、っと……まぁ、文面をもうちょい整えてこんな感じかな……」

 

 あ、直ぐにRTされた。こっちはちゃんと告知するんか……って言われてる。流石にするぞー? ちょっと配信の方は趣味でやってるから適度に力を抜いてるだけで。まぁ、大体テロ配信で良いよね。そっちの方が俺も気楽だし。さて、軽く募集の告知だけをしたら反応を見つつ、何か新しいものがないか、と公式の巡回をする。ついでに動画サイトも開けて、追っている実況プレイの新作が来てないかを確認しつつ、だらだらモードに入る。

 

「っと、公式から新しいアプリ来てるな」

 

 公式がシャレム用の管理アプリなんてものを出していた。スマートフォンを使ってゲーム内のアイテムやスキルの確認と整理が行えるというアプリだった。PCあるならそっちでやればいいんじゃねー? とは思うが、どうやらこれ、レタリング機能まであってゲーム内で交友のあるキャラクターとはスマートフォンを通して連絡を入れる事が出来る様だ。

 

 クッソ便利じゃん。

 

「だけど増々VRが現実に食い込んでくるじゃん。人間とほぼ差のないAIがスマホで会話できるとかちょっと良くわかんねーなー」

 

 マジで現実にVRが浸食してきてる。これで将来生活に電脳化必須となってきたら相当やばいぞ。今の社会構造完全に変わっちゃうだろう。価値観がリアルベースじゃなくて電脳ベースになっちゃうだろう。そこらへん、国の偉い人とかどう考えてるんだろ。

 

「いや、まぁ、俺消費者側だから楽しけりゃあ割とどうでもいいけどな」

 

 笑い声を零しながらアプリをダウンロードし、インストールする。そこそこ容量を取るがまぁ、最近のスマホは容量がかなりあるし問題のない範囲だ。その間に食べ終わったプリンを流しに置いて、冷蔵庫から麦茶を取ってくる。

 

 麦茶うまうま。また新しく作り直さなくては。

 

 と、

 

『アプリのインストール終了しました! 此方の方でもよろしくお願いしますね!』

 

 スマートフォンからどこかで聞き覚えのある声がした。アプリがダウンロード完了したことをアプリ側のボイスで教えてくれたらしい。丁寧なつくりしてるなあ、と思いつつパソコンの前まで戻り、スマートフォンを持ち上げる。

 

 そうするとスマートフォンのスクリーン内に、なぜかデフォルメ化されたフィエルの姿が見えてしまって、首を傾げてしまった。

 

『早速アプリ起動しますかアインさん?』

 

「え、そりゃあ試すけど……ん? んン!?」

 

 なんか……なんかおかしくない!? 具体的に何かおかしくない!? ちょっちょっ、待って?

 

 ねぇ、待って??

 

「……Hey! フィリー!」

 

『Hi! じゃないです。人を便利なアプリみたいに使わな……あ、今こっちに出張中でしたね……』

 

「本人じゃん。言い逃れの出来ない本人じゃん。何やってんのお前……?」

 

 スマートフォンを片手に、ドン引きしつつ中にいるフィエルをフリックではじくと、スマートフォンの画面端へと吹っ飛ばされ、逆側から戻ってきた。

 

『え、いや、だって担当に任命されましたし、アプリをDLしたのならこっちでもお仕事かと思いまして』

 

 お前は絶対に何かを勘違いしている。それだけは断言できる。

 

「そっかー、よろしくなー」

 

『はい、よろしくお願いしますアインさん』

 

 だが思った。

 

 便利そうな上級AIが実装されたスマホとかかっこいいし、このままで良いや。




 次回から3章開始。新しいペットの追加よ。Hey、フィリー!
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