断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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目指すはW1stの称号 Ⅶ

「それ、なに?」

 

「え、チェーンソー」

 

「見間違いじゃなかった……!」

 

 なんで? なんでチェーンソーなの? いや、かなり強そうに見えるけど。なぜチェーンソー? そんな武器可能だったの? あったの? でも二刀杖ビルド可能なら普通にチェーンソービルドもあるよね……考えてみたらなんか普通にありえそうだったので納得する事が出来た。で、結局肝心のビルドはどんな感じなんだろうかこれ。

 

「なんか、《両手剣》スキルがなんか乗るっぽい」

 

「乗るっぽい」

 

「元々普通に両手剣の怪力型ビルドやろうかなぁ~で、装備確定時点で案内人ちゃんに両手剣カテゴリーのどの武器使いたい? って聞かれたから……」

 

「聞かれたから?」

 

「丸太かチェーンソーって答えた」

 

 その時の担当AIの表情が容易に想像できた。

 

「究極の二択だったんだろうなぁ……」

 

 やっぱビルドの担当してたのAIちゃんなのだろうか? 対人経験なさそうだし結構ごり押しで話を通せそうだなぁ、と思う反面。ゲテモノや変態ビルドの類はゲーマーとして非常に気になる……或いは見てみたくなるビルドなのだ。まぁ、チェーンソーならしょうがないかなぁ、とは思ってしまう。いや、だけど、

 

「マジで使えるのかぁ」

 

「当然よ」

 

 ふんすふんす、とチェーンソーを担いだ彼女は胸を張っている。その強調される一部に一瞬周囲の視線が向くが、次の瞬間には肩に担いでいるチェーンソーを凝視している。そうだよな、誰だって中世ファンタジー世界でチェーンソー担いでいる奴がいたらチェーンソー見ちゃうよね。俺だって思わず三度見ぐらいしてる。

 

「まぁ、でもスイッチ入れなきゃ切れ味の悪い両手剣ってか、鈍器って感じよ。起動すると1秒に5MPも吸われるから6秒しか動かないし。その代わりにスイッチ入れるとクリダメとクリ率ガン盛りって感じで滅茶苦茶楽しいわよ。大型モンスターの口の中にぶち込んでミンチにしたい。人の口でも良い。おかげで専用ビルド構築しちゃったわ」

 

「おっと、危険人物が生まれちまったみたいだな……ま、実害ないしええか!」

 

 俺達はガチ勢ではあるが全力エンジョイ勢である。挑む以上、楽しくやらないとやっている意味がない。楽しいからこそやっているのだとも言えるのだが。だから楽しい変態ビルドは大歓迎。レッツ・エンジョイ、このカオスを。俺も俺で人の事は言えないし。

 

 とりあえず合流した事をデッスコードに入力して伝えておく。これでこっちとあっちでチームの合流が完了した。

 

「これで2チームできたな」

 

『とりあえず全員集まらないとクランの発足もできないし、全体での合流も優先かな』

 

『となると断絶の解除と封鎖領域の踏破だな』

 

 封鎖領域。それはあの闇色のオーロラに浸食されて変質してしまった領域の事を示す。闇のオーロラによって浸食されてしまった空間に対して、この世界の住人達は侵入する事が出来ず、そこから溢れ出すモンスターを倒したり、外側から魔法を使って空間の侵食を妨げるしか対処方法が存在しない。その為に呼ばれたのがプレイヤーたち、稀人だ。

 

 異世界の魂の持ち主たちである稀人達はあの断絶の影響を受ける事なく中に侵入する事が出来る。そして断絶の中にある、封鎖領域。そこに存在するボスとボスの守る断絶の要を破壊することによってあのオーロラは消滅し、断絶されていた世界が再び繋がるのだ。プレイヤーたちの目標は全ての断絶を破壊し、そして世界を一つの形へと戻す事になる。

 

 そしてエルディアとマルージャも当然、この闇のオーロラによって断絶している。

 

 もう一つの初期拠点へと向かう為にはこの闇のオーロラを排除しなくてはならない―――つまり両国の間のオーロラの麓まで到達し、そして黒に染められたその内側へと入り込み、その中に展開されている封鎖領域を突破しなくてはならないのだ。

 

 割と一苦労だが、攻略する度にこの世界そのものが救われて変わるのが目に見えるのだ。これほど燃えるものもない。自分が成し遂げた事実が足跡として後のプレイヤーに残るのだから。

 

 だから俺達が合流するには、まずはエルディアとマルージャを繋げ直さないとならない。

 

「という訳で俺達の最初の目標は誰よりも早く、一番最初にあの壁を消し去る事だけど……どうだ?」

 

 デッスコードに文字を入力すると、すぐさま返事が返ってくる。

 

『お、つまりこっちとそっちのチームでどっちが先にあの封鎖領域を攻略するか勝負って事だな?』

 

『やってやろうじゃねぇの!』

 

『……と、いう感じでこっちはやる気満々』

 

「じゃ、レースしちゃおうよ。それぐらいやれなきゃトップ・オブ・トップなんて無理でしょ」

 

 ニーズヘッグが笑いながらそう言って書き込んだ。それに追随するように書き込む。

 

「じゃあ勝負すっか。レベリング、探索で臨時メンツを雇うのは許可。ただし封鎖領域の攻略に身内以外の雇用は禁止で」

 

『そっち、二人な上に回復ないけどええんか?』

 

「私とボスなら被弾回避すればいいし余裕でしょ」

 

「お前レベルの人外扱いしないでくれ」

 

 まぁ、頑張るけど。それにこうした方が絶対に楽しいだろうし。他のプレイヤーたちがレベリングに勤しんでいる間にその横を駆け抜けて先に偉業を成し遂げてしまおう。そして一気に俺達の名前をこの空に広げるのだ。

 

「見ろよ、俺達がナンバーワンだぜ、って」

 

『最高だわ』

 

『出来るって信じて疑ってない辺りがほんと最高だわ』

 

『ま、ゲームなんだ。楽しんでなんぼ。全力でやろう』

 

 合流してから話さなきゃいけない事は結構あるのだが、だがその前に一つ、俺達という存在をこの世界に刻んで本気具合を証明して見せるのも面白い。これが成功すれば全世界の人間が、俺達というその瞬間まで完全に無名だったキチガイに集中するんだ―――これほど面白い事もないだろう。

 

「じゃ、今は解散でさっそく活動開始して行こうか。何か問題とかあったり、仕様とかで面白いものを発見したら共有って感じで」

 

『異議なーし』

 

 意見が統一され、会議は解散。これより俺達の活動が開始する。明確にクラン名とかはまだ決めてないが。まぁ、その内相談してノリで決めるとしよう。とりあえずまずはこいつと二人でこれから取る行動を決める事にする。

 

「ニーズヘッグ……長いしニグでいいな」

 

「えー……まぁ、いいわ。ニーズヘッグの名を恐怖と共に覚えるのは愚民たちにしてもらおう」

 

「お前は何を目指してんだ……パーティー招待は……お、ほとんど直感的に操作できるな」

 

 目の前のニーズヘッグを対象にパーティーに誘いたいと思考すると、それに合わせてパーティー招待ウィンドウが表示されるので、それを送る。すぐに許可を出してきたニーズヘッグがパーティーに参加し、パーティーウィンドウが新しく視界の隅に出現する。それを掴んで引っ張り上げれば二人のHPとレベルが表示されているリストであるのが解る。

 

「あれ、レベル2なのか」

 

「ここに来るまでほぼ1時間近く付近で虐殺してたわ。あ、勿論モンスターをね。結論から言うとこの付近はあんまり美味しくないわよ。限界までトレインして処理してもこの程度だったし」

 

「レベルアップは割と遅いタイプか……」

 

 そうね、とニーズヘッグが頷いた。ぶおんぶおんチェーンソーを振り回しながらジェスチャー込みで説明しようとしているが、それが振り回されるたびに周りから人が逃げて行く。でもチェーンソー自体に興味があるのか、一定の距離からは離れようとしない。気持ちは解るけど俺は今、目の前に立ってるんだぞ。

 

「正直サクサクレベリングを目指すなら1個先か2個先のエリアにでも行かないと無理ね。それでも火力がある程度要求されるわ。お互いに火力を出せるタイプだし、集めたら一気にバーストして狩るのが美味しいかも? ボスは範囲攻撃持ってる?」

 

「にゃい。でも多分《火魔法》のSLが2か3になったら習得するだろうなぁ、って思ってる。2への条件も確認する限り、《火魔法》で敵を倒せって内容だし難しくはないだろ」

 

「じゃあ現場で覚えればいいわね」

 

 まぁ、無駄をなくすというのならそうなるだろう。問題はそのレベルで通じる火力を出せるかどうか、って所だが。ただ、まぁ、レベル2~3差で変動する火力って正直そこまででもないんだよなぁ、システム的に。だから相手の方が4レベルぐらい上でも正直な話、火力は割と問題ないレベルだと思っている。少なくともそういう所を詰められる所までは火力を詰めている。

 

 防御は初心者ポーションがぶ飲みで対処すればいいし。たぶんこのルートが一番早いレベリングなんじゃないかなぁ、とは思う。

 

「んー、どうせなら現場から出る必要がないように先に装備を買っておくか」

 

 そこまで口にして思い至る。

 

「あ」

 

 それに追随するようにニーズヘッグが、

 

「い」

 

 と茶化してきたのでこの天啓を分けてやる事にした。

 

「そうじゃねぇよ。どうせならマルージャ方面へと進んで道と障害確かめながら狩りした方が効率よくない?」

 

「あっち、推奨レベル10とかかららしいけど」

 

「つまり経験値的にすごくおいしいという事だ―――行こう」

 

 此方の説得力のある言葉に女ジェイソンは成程、と胸を持ち上げる様に腕を組むと頷いた。

 

「良し、やろう」

 

 そういう事になった。

 

 この場において、というよりは。

 

 我らの中にストッパーという概念は存在しないのだ。何せそこにたどり着くのに必要なのは努力、経験、そして才能。それを兼ね備えている奴というのはねじが外れている。頭が吹っ飛んでいる。一周回って月まで飛んでいるんだ。そしてそういう連中を集めて、並べて、足並み揃えて、一緒にやって漸く届くかもしれない。

 

 それがワールド・ファースト。

 

 世界最速最強の証。

 

 それ以外に、目指すものはない。

 

 この新世界に―――俺達の足跡を残してやるのだ。




 ヒーラーはいねぇ! メインタンクもいねぇ! 情報もねぇ! 向かう場所は格上のエリア! 他のPLも誰も進出できてねぇ!

 だけど行く、そういう気分だから。この人たちの行動原理とは大体そんなもんです。
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