断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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海! 水着! ダンジョン! Ⅳ

 50人という数は多い。多いので捌くのには割と時間を要する。まぁ、今日は他にも何か予定がある訳じゃないので、普通にこれだけの人数を処理する事は可能なのだが。とはいえ、時間拘束が長くなるので、まず最初にやる事はここから数を振るい落とす事だ。という訳でサクッと条件を追加する。流石に50人全員を見る事は出来ないからだ。

 

 最初の条件はレベル22以上。これはクリアしている。なら次の条件はパーティー戦闘経験ありか否か、という所だ。流石に今からパーティー行動に関する常識とイロハを叩き込んでいるような時間はないので当然と言えば当然な所だ。

 

 これで数名抜ける。まだ45人。まだまだ振るい落とす為に条件をセットする。

 

 次にコミュニケーション能力に難がない事。普通に会話出来て、普通に意見を出すことが出来て、改善点などを言い合う事の出来る人格の持ち主。コミュニティにも和があるけど、基本的に身内ベースのコミュニティなので会話についてこれない事があっても特に気にしないような人。つまり精神的にある程度の強さを持った人が欲しい。メンヘラは悪いがNG。ここにHimechanの居場所はないぞ。という訳でそれを条件としてフィルタリングすると、1人も抜ける事はなかった。

 

「お前らコミュ強者か???」

 

「逆に聞くけど、コミュ能力なかったらVRMMOなんて遊べんだろ」

 

「せやな」

 

 Do正論。

 

 従来のMMOであれば定型文を使った挨拶でもなんとかなるもんだが、これがVRMMOとなると顔を合わせなくちゃいけないだろう。その上で実際に体を動かして遊ぶもんだから普通にある程度のコミュニケーション能力がないとそりゃあやってられないだろう。だからコミュニケーション能力や人格面の自己判断ではあまり落とせない。

 

 んで次は時間回り。

 

 ちゃんと時間を確保できるか。ぶっちゃけちゃうとシェアハウスや未成年で家族と一緒に暮らしている環境だと時間を合わせづらい部分がある。遊ぶ時間に制限があったり、決まった時間でログアウトしなきゃいけなかったり、思い切って遊んだり後少しだから延長する、みたいなことが出来なくなる。そうなるとどうしてもパーティー全体として停滞してしまうので、時間確保で迷惑をかけない人が欲しい。

 

 これを条件に出すと人がそこそこ抜けて、残り35人。まぁ、十分減らした所かな。

 

「じゃあ、ここから相性の良さを調べる為に実戦形式で色々と調べるから、ちょっとTHDで分かれてくれるかな?」

 

「なんか、思った以上にガチガチっすね」

 

「ばーか、俺だけの問題なら適当にやるけど、他人の期待と事情がかかっている以上、真面目にやらなきゃいけないんだよ。これが固定を組む為だったら割と真面目にネタに足を突っ込んでるやつでも採用するだけの器量が俺にもあるよ? だけどNPCの依頼で、それもエルディアの先のことを決める内容だってんなら真面目にやる以外ないだろ?」

 

 PCの1人の質問に答えると成程、と納得されたのでそのまま東門へと移動しつつTHDに分かれて貰う。1番耐久とレベルのあるエネミーが存在する近場となるとここぐらいしかない。だから動きを見るならこれが一番。

 

 という訳でここでTHDに分かれると、

 

 タンクがまず5人。

 

 ヒーラーが8人。

 

 そしてダメージディーラーが17人。

 

 こうやって率を見ると明らかにタンクの数が全体でみると少ないんだよなぁ。やっぱり攻撃を受けて常に頭を回して仲間の被害を減らすという趣旨のロールは人気が薄いのだろう。まぁ、公式でロール概念を出さない場合大体ヒーラーとDDにしか分かれないんで、そういう部分もあるのかもしれないが。とりあえずちょいバランス悪い偏り具合かなぁ、なんて事は思ってしまうが、軽くこれで5グループに分ける。

 

 タンク1、ヒーラー1、DD2をまずは5グループ。これでT5H5D10消費される。残されたH3D7はニーズヘッグに代理でのタンクをお願いして貰い、1グループだけD3構成にする事で解決させることにした。

 

 これでとりあえず8グループが作成できる。東門の外で、軽くこれからやる事を説明する。と言っても内容は実にシンプル。

 

「あー、これからここで自由狩りする。俺も一緒だけど働きを見る為だけだから、俺は頭数としてカウントしないように。んで1グループは持ち時間15分ね。この15分間の間にグループとして行動する所のアレこれを観察するから、採点されているという意識をもって宜しくな」

 

「ういーっす!」

 

「よろしくお願いしまーす!」

 

「やるぞやるぞやるぞ」

 

コメント『面接……お祈り……うっ』

コメント『ヴ……』

コメント『即死魔法やめろやめろ!』

コメント『コネ入社落ちたけどなんか質問ある?』

コメント『寧ろ気になるわ』

 

「改めて言うけどこれ、固定用じゃなくて今回の依頼・イベント消化用の補充だってことを念頭に置いてな?」

 

「OK!」

 

「全然問題ねぇぞー」

 

「おーし、そんじゃ最初のグループからいってみよっかー!」

 

 それじゃあテスト開始。

 

 

 

 

 1グループ目。タンクを長剣盾のオーソドックススタイルが担当。ヒーラーはバフメインのスタイルで、DDは斧持ちと槍持ちが1人ずつ。かなり癖のないパーティーが出来上がっていた。タンクがエネミーに一発叩き込んでヘイトを取り、引っ張りながら集めて範囲攻撃でメレーが一気に片付けるスタイルを即座に構築し、ヒーラーが纏めて攻撃を叩き込む前のタイミングでバフを差し込んでいる。結果的にかなり効率良く、素早く敵を集めては殲滅する事に成功している。トップ・オブ・トップ層と比べてしまうと特徴というか浮き出た部分がないのが固定採用に関してはマイナスの要素になってしまうが、それを抜きにすれば安定感の高さは高評価だ。割と良い感じのパーティーだし、今回採用しなくてもこの人たちでパーティー組めばいいんじゃないだろうか? ぶっちゃけ安定重視で言えば文句が出ない。

 

 2グループ目。ハンバーガー、フライドチキン、健康食品、ベジタリアン。狂気の組み合わせにこれ以上語る事を禁ずる。全員お帰り願った。こいつらの事は二度と思い出したくない。終わり。

 

 3グループ目。キノコ、ギタリスト、タケノコ、忍者。キノコとタケノコで互いにヘイトを擦り付け合う戦いが始まる。その中で《演奏》スキルを使ってバフをばらまくギタリストとその陰に隠れてちまちまと仕事をこなす忍者の組み合わせがあまりにも面白かった。キノコとタケノコが所かまわずヘイトを集めて叩きつけ合う遊びをしている中で、パーティーが崩壊しないように支えているのは忍者の存在だった。頑張れ忍者、諦めるな忍者、その混沌を安定へと持ち込むPSは間違いなく高評価だから。

 

 4グループ目。アビサルドラゴン討滅戦でアビサルドラゴンの足止めを行った斧使いがタンクをしていた。DDの内片方が逆境型なのでセルフ腹切りをした所でヒーラーがその意図を理解できずHoTをばらまいてタンクに巻き込む形でDDを回復してしまう為、DDが定期的に腹切りをしだす。血をぶちまけながら半ギレのDDとヒーラーが自傷回復合戦をしている面白い絵面だった。なお、2人のキャラの濃さに潰れる様に隠れていたタンクとDDが2人で次々と雑魚を処理出来てた。

 

 5グループ目。”我が名前はルシファー。北海道の喧嘩チームフォーリン♰エンジェルズの総長だ”とかいきなり言い出してくるヤバイヒーラーが来た。一体どこから突っ込めば良いんだこれは? そう思っていたらこいつ、味方を急に殴り始めるがその拳で味方をヒーリングし始める。”魂の込められた聖天使の悪の力は光と闇を超越して魂を活性化させる”じゃねーんだよ。コミュニケーション能力に難があるじゃねぇか! 帰れ! でも個人的には面白いと思うぜ! あ、完全にこいつに存在感を食われてたけど複数の刃武器を携帯してた連携特化DD君がかなり良い味をしてた。個人的にすっげぇ好みのビルドの。

 

 6グループ目、ここからはニーズヘッグがタンクになる。DDにはなんかレオンハルトがいた。お前ほんと固定に潜り込む気満々だな? ヒーラーも優秀なもんでバリア特化型ヒーラーで、単体と全体で切り分けてバリアを張れるもんだからタンクの被弾が減る減るでまとめがものすっごい楽になる感じだ。これはピュアヒーラーと合わせて運用することで強くなるタイプだろう。もう片方のDDは強職イナゴだった。トレンドを見て今1番強いって言われているジョブと組み合わせを模倣するスタイルだ。まぁ、悪くはないんだが個人的に気にいらないので没。

 

 7グループ目。流石に疲れてきた。だがその衝撃もここに登場した新たなスタイルのDDに全て吹っ飛ぶ。こいつはボンバーマン。文字通り爆発する男だ。唐突に相手に抱き着いたら”さよなら……”とか言いながらHPをミリ単位だけ残して自爆しやがった。そしてそれでしっかりとエネミーを倒しているもんだから何かがおかしい。そしてその結果、ヒーラーが回復奴隷になり、もう1人のDDの影が完全に消え去った。自爆しながら走る男とそれを必死に守る他のパーティーメンバーはどことなくHimeを追いかける従者にも見えたが、話はそんな次元じゃないだろこれ……。

 

 ラスト、8グループ目。兄が参加しているんだから当然妹もいる。という訳でこのグループにはレインがいた。事前に知っている通り物凄い優秀なDDとしての実力を見せつけながらも、他のメンバーの邪魔にならないように自分の立ち位置を調整していた。賢いし、ちゃんとこっちが何を見て採点しているのか解っている動きだ。これに加えてヒーラーが踊りをベースにしたバッファースタイルを取っており、味方がある程度散らばっても方向を問わない強化をバフ、誘因デバフで敵を引き付けてタンクに譲渡する、というかなりクレバーな動きをしている。残ったDDも侍ロールをしていて、見事な太刀筋を披露してくれている。このグループが一番優秀なグループだったんじゃないだろうか?

 

 そして8グループが終わったことで1グループ15分、トータル2時間に及ぶ採用テストが終わりを告げた。

 

 終わったのは良いがルシファーナックル(癒)が未だに頭から抜けない。




 RPするもひたすらWIKI見て強いビルドパクるのも自由。それがオンゲとTRPGというものだ……。
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