断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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海! 水着! ダンジョン! Ⅵ

 ―――ジュエルコースト! それは誰もが憧れるリゾート地!

 

 死ぬ前には1度は行きたい場所ナンバーワン! 蒼い海! 白い砂浜! どこまでも広がって行く大空! そして世界は宝石の様に輝き、記憶に永遠に残る様な思い出がその地では生まれる。この世のあらゆる極楽を味わえる魅惑のリゾート地……それがジュエルコースト。複数のホテルやロッジが存在するその地は中立地帯として時折、王族や皇族が療養や休息の為に訪れる場所! あぁ、愛しのジュエルコースト―――ジュエルコーストよ、永遠なれ……。

 

 とかパーシヴァルが言ってた。つまりジュエルコーストはそれだけ凄い場所となっている。

 

「なら解放ついでに土地を貰っておけば良いだろう。貸し出すだけでも収入貰えるだろうしその他大勢に自慢できるぞ」

 

「その発想はなかったな……」

 

 屋台に到着したところで俺達はこんな話をしていた。ジュエルコーストの奪還作戦をするという事、そして改めてイェン兄妹と組もうという話。今回の奪還の件だが、王族を相手に協力関係を築いていると今後もこういう案件を何個も放り投げられるという未来が完全に見えてしまったので、早急にイェン兄妹の方と組もうと考えたのだ。だって金も足もあるし、利害関係で組めるってなるならこっちの方が面倒なお使いクエスト頼まれない分良いだろう?

 

 という事でジュエルコースト奪還作戦の話をして、現地の話や情報を聞こうとしている。断絶する前にも生息していた生物から、ある程度どういうエネミーが出てくるのか予測できる筈だからだ。

 

 だというのに、話はおかしな方向へと転がっていた。まずなんか土地を確保しようとか言い出してた。

 

「ついでに金はこっちで出すから土地を確保したら拠点も立てよう。いつでもリゾートでバカンスが出来るようにな」

 

「うんうん」

 

 イェンとニーズヘッグは腕を組み、頭を上下させながら意気投合していた。君たち、少し前までは憎み合ってなかった? と首を傾げながら意見を挟めば、

 

「いや、別にリゾートの土地なんて良いでしょ……それよりも王都での土地の方が何をするにしても便利で楽だし」

 

「ですよね。王都の良さそうな土地も既に見繕って―――」

 

 フォウと揃ってそんな事を言い出した瞬間、睨むような視線が2人から同時に叩き込まれ、震えあがりながら黙る事にした。2人のその姿が怖かったのでこっそりと小声で、

 

「女って良く解らない……」

 

「うん、そうだよね……」

 

 男の友情が深まっている中、女の友情はさらにヒートアップしていた。

 

「バカンスは大事だわ。海という魔物は私たちを解放する」

 

「一生消えない思い出、深まる仲……誰もが憧れる体験」

 

「やはり必要ね……」

 

「あぁ、必要だな……」

 

 ニーズヘッグとイェンはお互いに視線を合わせて頷き合うと、そのまま俺の両側へと回り込み、腕を絡めてくると、そのまま引きずって行く。無抵抗のまま売られてゆく子牛の気持ちになって視線をフォウへと送れば、即座に視線を外してくる。友情が深まったと思ったがそんな事はなかった。るーるー歌を口ずさみながらそのままニーズヘッグとイェンに引きずられた先が、

 

 ―――服飾店だった。

 

 そして話は戻ってきた。この時間軸に。水着姿のイェンと、水着姿のニーズヘッグ。2人の姿が存在するこの時間軸に帰還してきた。

 

 あんまり現実逃避にならなかったなこれ……。

 

 そんなこんなで今、自分は水着の美女に挟まれていた。ニーズヘッグは水色のオフショルダー型ビキニを装着して胸上の露出面積を大きく増やして露骨に誘惑するような姿をしていた。これでいてプロポーションもしっかりと取れているのだから凄い。なんというか、凄い。それしか言葉が見つからない。多分知っている女性陣で一番良いプロポーションしてるよ、こいつ。オフショルダーというふつうは選ばないタイプを引っ張ってきたこいつのセンスが憎い。

 

 それに対するはイェン、こっちはハイネックタイプのビキニだ。下は普通のビキニと共通しているが、違うのはトップ部分が胸を下から首元まで、背中を開けるように首の裏で纏めているタイプであるという事だ。胸周りの露出が減るという男子的なデメリットが大きくなるものの、胸の形は解るし、それにとっつきやすさというものであれば露出が薄めのイェンの方がまだ一緒に居やすい。

 

 という訳でニーズヘッグとイェンが解っているだろう? と視線を送ってくる中で、手をイェンの方へと向けた。

 

「こっちの勝ち」

 

「馬鹿な」

 

「ふっ、浅はかだな……露出を増やせば良いという訳ではないぞ」

 

「むー……探してくる」

 

「では私も付き合おう」

 

 ニーズヘッグが負けじと新しい水着を探しに行く中、イェンが付き添う形で新しい水着を探しに行く。そもそもなんで服飾店で水着を扱っているんだろうか、と思ってしまうが、あるにはあるんだからしょうがないだろう。いや、割と近くに海があるし需要があるのか? それとも南北のどっちかに大きな湖でもあるのか。

 

「趣味だよ! 水着! いいよね! 見ても良いし! 着ても良い!!」

 

「え、あ、はい」

 

 カウンターを見るとビキニ姿の中年がいた。しかも無駄に胸を寄せて谷間を作ってる。サムズアップで水着の良さをアピールしているつもりらしい。

 

 ビキニ姿の中年?

 

 ……うん! 何も見えない!

 

 すぐさま視線を外して腕を上へと伸ばし、背筋を軽くひねって解す。最近アレコレ考えているから疲れているのかもしれない。

 

 ……でもなぁ、楽しいもんなぁ、オンゲするの。

 

 身内でわいわいやりながら囲んで遊ぶの。形は変わってしまったが、今でもこうやって一緒に遊べる事は物凄く貴重で、大事な事だ。俺達の関係はあの頃から全くと言っていい程進展はないけど……それが少しずつ、あちら側からのアプローチで壁が変わってきているような気もする。だから俺ももうちょい、前向きに付き合ってみるべきなのか。勇気を出してみるべきなのか。

 

 いいや、これは決していやあ、眼福だなぁ、と思っているのを言い訳している訳じゃなくてぇ―――!

 

「ボス、ボス。これはどうかしらっ」

 

 新しい水着に着替えてきたニーズヘッグ、上はホルターネックタイプに、下はショートパンツタイプの水着に変えてきた。ぶっちゃけ、露出面で言えば全体的にあんまり違いがないと言えるだろうが、不思議と普通のビキニからショートパンツタイプに切り替えただけで大分布面積が増えたように見えるし、何よりもアクティブなニーズヘッグとはこういうタイプの水着が似合っているようにも思える。

 

 視線を逸らしたくなるのをぐっとこらえながら、頭の裏を掻いて口を開く事にする。

 

「あー、なんだ」

 

「……」

 

「その」

 

「……」

 

「に、似合ってると思うぞ! あぁ、似合ってる!」

 

 半ばやけくそになりながら声に出した。普段ならもうちょい躊躇なく普通にできたのに、最近変に意識しているのが全部悪いんだ。平静に、平静を保ってと自分に言い聞かせながら頭を横に振る。だがそれで視界に入ってくるのはにやにやと笑みを浮かべながら扇子で口元を隠す、チャイナ風水着に身を包むイェンの姿と、そこに尻尾があれば全力で振っているであろう、花を咲かせそうな程嬉しそうなオーラを放つニーズヘッグの姿だ。

 

 完全にイェンとニーズヘッグの存在に手玉に取られていた。

 

 だというのにニーズヘッグは腕を抱き込む様に掴んできて、更に店の奥へと引っ張ろうとする。

 

「あ、こら、そっちはカウンターの見てはいけない生き物が見えてしまうから気を付けて。ちょっと」

 

「大丈夫。次はボスの好きな清楚系を選ぶから」

 

「あ、こら」

 

「ほほう、そういうのが好きなのか」

 

「あっあっあっ」

 

 ほらー! 性癖がバレたらイェンが悪い顔をしてる! 絶対に狙ってくる方向を決めてるやつだよアレ!

 

 とか脳内で叫んでいる間に逆の腕も抱き込まれるように掴まれてしまった。両腕にジャストでフィットするような柔らかさを感じている。これをとてもだが言葉として表現すると理性にはとても宜しくはない気がするので、感想に関してはここは一旦スルーさせてほしい。

 

「あー」

 

「こっちこっち」

 

「さ、付き合ってもらうぞ。美女の相手をしながら商談を詰められるんだ―――楽しかろう?」

 

 耳元でそんなことを呟かれても内容がまともに頭に入ってくるとは思えないが、うん。なんだかんだで楽しいし眼福なのは否定できない。1度諦めてしまえば楽なんだろうというのを自覚しつつ、強く抗えないのは男としての性か。

 

 どちらにしろ、今日はこれで玩具にされて終わりかなぁ、と確信していた。




 抱け―――! 抱け―――!
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