土鍋『クッソ面白い足を見つけたから早朝には到着しそうだわ』
夜、さんざん水着選びをさせられ精神が損耗し、逃げ出したフォウにその分の補填を求めたら晩飯を奢ってくれた。フォウもフォウで少しは申し訳なく思っていたらしい。まぁ、絶対に許さんのだが? そんな女性陣は今、なぜか完全に意気投合して別のお店へと顔出ししに行った。まぁ、なんというか流石にそこまでは付き合えないので途中でギブアップして抜け出してきた。イェンもニーズヘッグも変に意地を張り合うよりはああやって笑って一緒に遊んでいるほうが微笑ましいし、俺も安心できる。
1様『マジ? それはそれとして睡眠時間大丈夫か?』
土鍋『それは大丈夫。ちゃんとログアウトしてるし』
略剣『ただ最近移動ばっかりだから体が闘争を求める』
梅☆『そして新作が発売される』
いつまで俺達は新作を待てばいいんでしょうね……。
ぽちぽちとホロウィンドウを押しながら晩飯を食べる。今夜は港が解放された事もあって食料が増えたこともあり、豪勢にエビチリなんて物を食べている。これがリアルだと中々口にしないものなだけに、刺激的で美味しく感じられた。やっぱこっちで食べるものって、普段リアルでは食べられないものが正解なんじゃないだろうか……? まぁ、そんな訳で雷帝だか呼ばれているフォウの手料理を食べながら夜を過ごす。明日は王家主導の作戦が開始となる。
「うーん、とりまく状況の流れが速いなぁ」
「そうですね……思い出してみればまだ稀人の降臨から数日って程度なんですよね、今日は。考えてみれば凄い勢いで状況が変わっているのに結構驚いてます」
「でも実は最初、そこまでフォウも状況が変わるとは思わなかったでしょ」
「うん……正直に言ってしまえばね。ここまで弱い人たちで本当にどうにかなるのかな? って疑っていた部分があるのは事実ですね」
ですから、まぁ、とフォウは頬を掻きながら苦笑する。
「ガラドアを解放して戻ってきた稀人の話を聞いた時、驚かされましたね。正直に言うとそれでもまだ半信半疑でしたが。イェンはその話を聞いて寧ろ確信か納得を得た様な感じでしたよ」
「ほーん……アイツは俺に何を見てるんだろうなぁ」
「さあ、そこまではちょっと解らないですね。それでも他の人には見えていない物が見えている子ですから……」
前にもこの話はしていた気がする。しかしその時でも結局、イェンが何を見てここまで迫ってくるのかを理解していないという話に落ち着いていた。まぁ、結局のところ話がそこに落ち着いちゃうんだよね。イェンが何をそこまで押してくるのかが見えないってのが唯一の気がかりって所なのだ。でも、まぁ、組む相手はここ以外はないって感じだろう。
え? 師匠の財布にはタカらせてもらうが?
という訳で、改めてスポンサーにはこの兄妹に頼んだ。これで資金問題は解決した。後はクラフターをNPCとPCで数人抱えたいなぁ、と思う所だ。NPCは今が強いが、最終的にパッチ解放進めればPCクラフターが同レベルだったり上位に入る様になるだろう。その時の為にPCのクラフターも揃えたい。そこも改めて募集かなぁ、と思っていると、
「ボス、ボス。ボスの分も買ってきたわ」
犬が尻尾を振りながら帰ってきた。その手荷物を見てショッピングを大いに楽しんだ事を察して笑い声を零しながら、今夜はその話を聞いて終わらせることにした。
そして何時ものあれこれを処理して夜から朝へ。ログインして何時も通りのログボを回収。宣伝のホロウィンドウを消去し、フィエルの入っているホロウィンドウをフリスビーにして投げ飛ばす。ログイン直後の日課も完了。これで気持ちの良いログインを迎えることが出来た。無論、戻ってきたホロウィンドウを噴水に沈める事も忘れない。
ログインして真っ先にやる事は身内の確認だ。デスコを起動して、身内のルームに繋げる。
1様『今どこー?』
土鍋『ガラドアって街に来たぜー』
略剣『こっちまで来るとそこそこプレイヤー見るな』
1様『おー、速さ次第じゃ1時間以内には合流できそうやな』
土鍋『いやあ、マジで移動に数日かかるのは爆笑したわ』
梅☆『ギミックガン無視の突破だったのになw』
1様『到着したら連絡ヨロ。門まで迎えに行くから』
土鍋『了解。ちょっとここで補給してから行くから1時間ぐらいはかかるぞ』
1様『問題なし。こっちもソロ部分のアレコレ終わらせておくわ』
狂犬『わんわん』
略剣『人語ー??』
「あいつらの方は大丈夫そうだな。んじゃ次は、っと……」
デスコではなくゲーム内の個別メッセージを開く。これ、グループ会話が出来ないからちょっと不便なんだよな。昨日採用した3人がログインしていることを確認し、ついでにニーズヘッグもログイン済みであるのを確認する。どうやら本日の固定参加者は全員ログインしているようで、俺が最後だった。
「まぁ、俺は1人暮らしで支度に時間が取られるしな……」
そこらへんはしゃーない、と諦めつつ連絡する。
「固定活動大丈夫ですか、っと」
『行けます。どこで合流しますか?』
『行けるぜ!』
『問題ありません!』
「おしおし、良い返事が返ってきたな。んじゃ1時間半後に西門で集合、っと」
これだけ時間の余裕を作れば問題はないだろう。これでとりあえず連絡を終えたから合流まではフリータイムになる。さっさと王城へと向かって移動する。先に王城の方で色々と話をしなくてはならないのもあるし、合流するまでに師匠の所で修行をこなす。そうすれば待望の《火魔法》レベル10が拝めるのだ! しかもそれでついに魔法エディットも解禁される! やるっきゃない! やるしかない! これは気合が入る! 入るに決まっている!
という訳で連絡を終えた時点であぴゃー! と叫びながら王城へとダッシュする。そのまま何時も通り小門から内部へと入り、階段を駆け上がり、そして一気に師匠の部屋にまで到着し、勢いよく扉を開ける。
「おはようございます師匠今日こそ殺してやるからな爺! 普段から殺されている俺の恨みィ―――!」
「ほうほうほう―――やってみろ愚かな弟子めぇ! 今日も無惨に殺してくれるわぁ―――!」
ヒャッハーと叫びながら日課、開始。
「いやぁ、お疲れさまでした」
「なぁに、儂も全力で打ち込めるから楽しませて貰っているわい」
開幕で氷結からの粉砕コンボで一瞬で抹殺されたと思ったら即座に蘇生させられたまた殺された。でも最近、死ぬのに慣れてきて”あ、これ死ぬな……”ってのが事前の気配で解るようになってきてしまった。我が読みの力もますます磨かれてしまっている。リアルの事を考えるとこんな技能伸ばしても全く意味はないんだが。
それはともあれ、疲労感に床に転がりながら天井を見上げれば、そこにはホロウィンドウで《火魔法》がレベル10へと到達し、マスターされた事が表示されていた。ファンファーレと共についに1つの目標を達成できた達成感に、ぐっと拳を握って喜んでしまった。後副産物で《結界術》も4に上がった。今回習得したのは異常耐性を敵味方関係なく下げる奴だ。これ、使う場所を間違えたら地獄絵図作れそうだ。
「あー……やっと1個スキルマ終わったぁ……」
「ほいさ」
「あ、師匠待って。今達成感に浸ってるの。勝手に削除して《氷魔法》追加しないで。ねぇ、師匠! おい! 爺!」
「別にええじゃろ、これから何度も経験する事なんじゃから」
「俺の感動ぉ……」
人が達成感に浸っている時、勝手にスキルを変えてくる爺がいるってマジ? マジでスキル削除されて追加されてる……。えぇ……あ、でもちゃんと魔法エディット解禁されてますねこれ……。俺の達成感がぁ……。
「ついでにほれ、《深境》の新たな叡智じゃ。これを受け取ると良い」
そう言って床に転がる俺の体に爺の杖がこんこん、と叩きつけられた。痛い、と床の上で転がったままでいれば、直ぐにホロウィンドウがスキルのレベルアップと新しいアビリティの習得を告げてきた。とりあえず簡単な整理だ。
《火魔法》10で消去、《氷魔法》1、《時魔法》8、《杖術マスタリー》《詠唱術》《二刀流》7、《結界術》4、《深境》は今の爺ノックで1から3まで上がった。
《火魔法》が10になったことでシステムとして魔法エディットが解禁され、《深境》が3になったことで〈リバース〉と〈エレメンタルチャージ〉を習得した。〈リバース〉は現在の属性値を反転させるアビリティ。〈エレメンタルチャージ〉は選択した属性値を最大の状態にするアビリティ。どちらも複数の属性を使えるようになって初めて真価を発揮するアビリティだ。道理で《深境》を成長させられない訳だ。
このまま魔法エディットを弄りたい所だが―――まあ、どうせ船の上で時間はあるのだろうし。
さっさとパーシヴァルとかの方で挨拶や港への移動の話をして、後は合流してしまおう。
固定における大雑把な役割。
アイン、コール役。ギミックの処理方法を覚えたりそれを口に出して指示に出す役割。
梅☆、ムードメイカー。誰とも仲良くできるし空気を一瞬で入れ替えられる。
土鍋、ギミック攻略。一番頭が良いからギミックとかの最適処理を考えて教える奴。
略剣、交渉役。一番めんどくさい交渉とかを担当してくれる大人。
ニグ、ペット。アイン以外からはよアイツ押し倒せと言われてる。