断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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海へ Ⅱ

「パーシヴァル様でしたら昨晩よりポート・エルの方へと移動されました。準備が出来次第ポート・エルへと来てほしいとのことです。時間は指定せず、アイン様方の用事を優先してからでも問題はないという事です」

 

「ありがとうシャーリィさん。とりあえず俺達はもうそろそろ身内と合流できるから、したらそのままポート・エルへと行くから」

 

「了解しました。此方からお伝えします」

 

 当然、NPCはPCの様な反則的な情報ネットワークがある訳ではない。だが魔導師なら念話が、そしてそれ以外にも伝令の早馬や、伝書鳩の存在があって遠方と連絡を取り合えるらしい。まぁ、それでも俺達が普段味わっているこの利便さと比べると物凄く不便に感じるが。それでもこの世界の人たちはこれを普通の手段だと思って運用している。まぁ、その事に関しては何も言えない。

 

 とりあえずポートで合流しなきゃならない事実が発覚したのでさっさとサンドイッチをシャーリィから受け取りつつ、王城を出て城下町に出て、そのまま西門へと向かう事にする。

 

 しかしこの西から東へ、先に移動されたり移動して追いかけるお使い感、実に慣れ親しんだRPGのクエスト! って感じがするのが実に懐かしい。まぁ、リアル規格でやらされるとは?? ってなるのが事実なんだが。ただやっぱ、王国の動き早くない? なんというか本気以上に何か必死な物を行動の裏に感じる部分がある気がする。やっぱりNPC側にもNPC側の事情があるのだろう。

 

 それを考えながら西門へと向かえば、そこには小規模な集団が既に出来上がっていた。おー、と声を零しながら手を上げる。ニーズヘッグ、森壁、アレキサンダー、ゼドの姿は既にあったし、それ以外の3つの姿もある。

 

「なんだ、俺が最後だったか」

 

「おー、来た来た。遅いぞアイン」

 

「おはよう、ボス」

 

 合流すれば顔だけは覚えのある3人がいる。アメリカ人の巨漢がマイケル―――じゃなくて梅☆だ。ややスリムなフルプレートのアーマーに2本の槍、髪をオールバックにして眼鏡を装着しているのがクソ長い名前なので略剣と略されているアイツ、そして最後に上半身裸で全身にタトゥーを刻んだシャーマン風の姿をしているのが土鍋。この中で外国人なのは梅☆だけだ。街中を見ると割と外国人とかいるんだけどなぁ、とは思う。割と俺達がそこらへん運が良いだけなのかもしれないが。

 

 当然、シャレムは世界同時発信、共通サーバーでのプレイだ。

 

 だが同時翻訳によって言語が自動的に聞き覚えのある言語に変換されている為、言語で問題が発生するようなことはない。だから外国人と一緒にプレイしようがそういう問題が発生するようなことはない。

 

「はー、お前ら顔はあんまり変えてないんだな」

 

「ま、変えても困るだろうしな?」

 

「なんか顔を変えるってのにも違和感があるんだよなぁ」

 

「そうそう、生まれつきの可愛い顔だからな」

 

 梅☆のその言動に全員がマッチョという言葉を肉体で表現する男の姿を見て首を傾げ、やがてスルーしておく。

 

「んで……アレ、なに?」

 

 到着した直後からずっと気になっていた物があった。門の横へと視線を向ければ、そこにはショートした状態で倒れている大型の機械があった。全長4メートルほどのクマ型のロボットだった。それが全身ぼろぼろ、ショートした状態で倒れ、今も各部からスパークしている。それを見て土鍋がああ、と声を零す。

 

「こっちに来るときちょっと遺跡を見つけたんだけど、こいつがガードしてたみたいなんでちょっと、な」

 

 悪い顔をしながら土鍋が配線を弄る様な手つきを見せた。そういやこいつ、リアルだとそういう方面でめちゃくちゃ強かったな。いや、もしかしてその技術をこっちで応用できたのか。どちらにせよ、機工房が喜びそうな人材とスクラップだ。

 

「というか門番が嫌な顔をしてるから工房で売ってこい」

 

「あぁ、あの変人の巣窟だろ? 確かにあそこでなら引き取ってくれそうだな……」

 

「俺はあそこで銃買えないかちょっと期待してるんだよなぁ。やっぱ手に馴染むもんが一番だぜ」

 

 梅☆がボウガンを取り出し構える。その構えも十分慣れ親しんだもののように感じるが、自称傭兵によるとやっぱり銃が一番らしい。サバゲ―とかでもやってたんだろうかこのおっさん。リアル傭兵とか現代では存在しない職業だと思ってるから俺は絶対に信じないぞ……?

 

 頭を軽くがしがしと掻いてあー、と声を零す。

 

「―――良し、とりあえず自己紹介は済んでる?」

 

「終わった終わった」

 

 そういうと梅☆がアレキサンダーとゼドの肩を抱き寄せてスマイルを浮かべた。アメリカ人にしかできないアクションだアレ。

 

「ほら、仲良し」

 

「むさくるしい!!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「とりあえず全員のロールは頭に叩き込みましたよ」

 

「ならば良し! 先方は既に港へと移動したらしいし、こっちも東門抜けて港へと行くぞ。馬は大丈夫か? 良し、問題なさそうだな。馬を借りてさっさと港へと移動しようか」

 

 元気の良い返事が出てきたので東街道を渡る為の馬を借りに行く。

 

 

 

 

 馬はまぁ、なんというか既に代金が支払われていた。ここら辺が王家を仕事の相手にした場合のメリットなんだろう。国内であれば恐らく最強のコネ。馬どころか馬車さえ借りる事が出来て、御者までつけて貰って快適にポート・エルまで向かうことが出来る。馬車内部も魔法の作用がある影響で外から見えるよりも広くなっており、8人乗り込んでも余るぐらいスペースがあった。

 

「流石ですね、こんなものまで手配されて……」

 

「そこはボスの信用だな。これまでの活動でコツコツと稼いできた分のアレだろ」

 

 森壁の言葉に土鍋が腕を組みながら頷いた。お前らがやったことは国の信頼を破壊するどころか国そのものを破壊する事だけどな?

 

「まぁ、下手に信用上げすぎると今回みたいにイベント回されて行動潰されるから一概にも良いとは言えないけどな」

 

「それ。別に利用できるパートナーは見つけたんだろう? コレ終わったら会わせてくれ。アインじゃ詰められない話とかあるしそっちはこっちで詰めるよ」

 

「助かる」

 

 イェン兄妹との交渉は略剣にバトンタッチ。元々交渉とかの面倒ごとは社会人である略剣がこの中では一番上手だ。俺みたいにアマに任せないでプロフェッショナルがやった方が結果が良くなるのは当然の事だ。こうやってやる事を分割できるようになると本当に楽だ。俺がアレコレと悩む必要がなくなってくる。

 

「とりあえず今のうちにお互いに共通の認識、しとくか?」

 

「時間もあるしお願いします」

 

「時間がある時に軽くすり合わせておくのが良いか」

 

「んじゃ……おーい、フィリー。ちょっと書き込むためのホロウィンドウ頂戴」

 

『はーい、お持ちしましたー』

 

 デフォルメフィエルがホロウィンドウを引っ張ってきた。それを異次元を見る様な目線をニーズヘッグ以外が向けてくるが、それを無視してホロウィンドウに書き込んでいく。

 

 T、H、D、とまず最初に分ける。

 

「まずT枠が略剣とアレキサンダーな」

 

「神空烈滅王神究極超越極絶魔王・剣だ。間違えるなよ、神空烈滅王神究極超越極絶魔王・剣だ。神空烈滅王神究極超越極絶魔王・剣さんを宜しくな!」

 

「略剣とアレキサンダーがT枠な」

 

「スルーされた……」

 

「おう! つまり俺と神空烈滅王神究極超越極絶魔王・剣でモンスターを集めたり受けとめれば良いんだろう? 任せな」

 

「めちゃくちゃイイ子やんこいつ」

 

 正直身内でも言わないフルネームをちゃんと言うのは偉いと思いました。

 

 それはそれとして―――タンクが2枠あるのはタンクの負担を減らす為でもある。適時スイッチしながらモンスターの攻撃を受け止めるのだ。ある程度の損耗を考慮しての編成だ。しかし2人タンクを用意するとなると、どっちがメインサブを張るかって問題が出てくるので、

 

「メインサブの相談はタンク同士で頼む。そこは俺が口出せる範囲じゃないから」

 

「じゃあアレキ君メインで良いよ。こっちは盾無しタイプだから安定感で言えばそっちが上だろうしね。初見エリアならそっちのが良いでしょ」

 

「お、じゃあメインやらせてもらいますわ」

 

 こっちはあっさりと纏まった。んで次はヒーラー枠だ。今回はピュアヒーラーである土鍋と、バリアヒーラーである森壁とヒーリングに関する話し合いをしてもらいたいのだが、既に土鍋がフィエルからホロウィンドウを受け取って、互いのスキルを見せ合いながらヒーリングの談義に入っていた。当然ながら1回のヒールでHPが満タンになるのに、2人で同時にヒールすれば1回分のヒールが溢れる。これは純粋なDPSとMPのロスになる。ヒーラーが数人いる場合は、こうやって相談するのが理想的な所だ。

 

 そんで残される俺達DPS組は、

 

「メレーが側面展開でレンジキャスが背面展開で良くない?」

 

「まあ、攻撃範囲的にそうなるだろうな」

 

「私は異存なし」

 

「俺からも異存はないです。ただ《連携》の登録や確認を行いたいんでリンク先登録を始めたいんですけど、良いかな?」

 

 《連携》のスキルは自分のスキルからスキルへと繋げるのではなく、自分以外のプレイヤーのスキルと自分のスキルをリンクする事でスキルを連鎖発動させたり、合体発動させたりする事が出来るというロマン溢れたスキルだ。男の子ならだれであれ、合体技というものには胸を高鳴らせるものがあるだろう。

 

 俺も当然、こんな楽しいスキル是非とも経験してみたい。

 

 という訳でそこら辺のリンク設定をDPSで行いつつ、軽く互いの動きをすり合わせる。

 

 俺達の初の固定活動がいよいよ始まる。




 固定が集合するまで80話かかるの面白すぎるな……。

 でもなろうフォーマットというか1話3000前後で重さよりも更新重視で展開するとなると話数が文字数に対して滅茶苦茶増える感じあるわね。とはいえ、安定した更新を維持するって意味なら話の重さが薄くて更新しやすい子のフォーマットが大正義に感じる。
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