断絶世界のウィザード   作:てんぞー

82 / 135
海へ Ⅳ

 さて―――配信の準備もできたし、配信するか。

 

 今日はちゃんと配信30分前に告知したし。

 

「という訳でよう、よう。皆元気?」

 

コメント『告知は半日前にしろ!!!』

コメント『待ってたんだよぉ! お前のことをよぉ!』

コメント『空港攻略にいねぇから何してるのか気になってたんだよな』

コメント『また1人だけ変な方向に走ってる……わこわこ』

 

「いやあ、だって配信って大体俺の気分次第だしなぁ……まぁ、なんだ」

 

 軽く一回転しながら周りを見渡す。直ぐ後ろの大海原ではシャーク海賊団vsジャスティスフカヒレが海の平和を守るための戦いを繰り広げている。それをビール片手に親父共がヤジを飛ばして楽しんでいる。

 

「見ての通り、海の上だぞ」

 

コメント『見ての通りじゃないが?』

コメント『情報量多い……多くない? 多すぎない?』

コメント『また異次元に突き進んでる……』

コメント『なぁにあれぇ』

 

「シャーク海賊団とジャスティスフカヒレの事は気にするな。土鍋―――あぁ、うちの固定のヒーラーがさっき弱っていたフカヒレを助けたら正義に目覚めちゃってな……なんか海の平和を取り戻すって言いながら近海のサメをいじめているシャーク海賊団と戦い始めたとかなんとか。まぁ、本題じゃないしスルーでええやろ」

 

コメント『良くねぇだろ!!』

コメント『どこからどう見ても本編』

コメント『どうなってんだよ海』

コメント『何時ものサメだぁ』

 

 どーどーどー、それよりも今日はみんなに見せるべきもんがあるんだよ。

 

「じゃんじゃじゃーん。魔法エディットだよ。魔法レベルを10にすることで解禁される魔法の作成システム! ”ぼくのかんがえたさいきょうのまほう”を実現してくれる凄い奴だ。なんと今朝、《火魔法》10になったんでついに解禁されたって訳だ―――あ、俺が調べた情報は既にWIKIに書き込んであるから」

 

コメント『ありがてぇ、ありがてぇけどそんな状況じゃねぇ』

コメント『ジャスティスフカヒレ! フカヒレェ! 負けるなぁ!』

コメント『フカヒレカッターってなんだよ……』

コメント『画面の情報が密すぎる』

 

「そしてこれは助手の上級AIのミニフィエルちゃん」

 

 デフォルメミニフィエルを呼び出して指先で突く。

 

「よ、宜しくお願いします……いえ、あの、チュートリアル説明で呼び出されるのは別に良いんですけど配信に巻き込むのってありなんですか? ぎりぎりアウトじゃありませんか? 面白いから良い? えぇ……」

 

コメント『だから情報が多いんだよ!』

コメント『どれかに集中させろよ!』

コメント『あ、誰か落ちた』

 

 ばしゃーん、と音がして此方へと飛んでくる水飛沫をフィエルを掴んで後ろへと回し、それでガードする事で回避する。危ない危ない、と呟きながら魔法エディットのウィンドウを開き、その画面を視聴者と共有する。

 

「実はここからジュエルコーストってリゾート地に解放ミッションで向かう所なんだけど、そこにたどり着くまで1日かかるって話なんだよね。つー訳で魔法エディットで時間を潰そうにも普通にやるんじゃ暇だし、こうやってエディット配信でもしようかと思ってね? 俺に感謝しろよ貴様ら」

 

コメント『ありがてぇし気になるけどそういう状況じゃねぇだろ!』

コメント『ほんくさ』

コメント『本編多すぎる問題』

コメント『アーカイブ配信が楽しみな回』

 

「所でそっちどう? エアポート攻略進んでる?」

 

コメント『進んでるぜー』

コメント『森は2パーティー抜けたぞ』

コメント『森の難易度はまぁ、そこまでは……って感じ』

コメント『連携の取れてるパーティーなら余裕』

コメント『問題は空港が4PTレイドって感じで人足りぬ』

 

「へぇ、そっちはそっちで楽しそうだな。PT制限レイドってのはちょっと参加してみたかった……けど、まぁ、しゃーない! じゃあ、魔法作ってくか。魔法はレベルが上がり、新しい魔法を習得する度にそれに付随する要素を習得するんだけど、その習得したパーツは魔法を削除しても消えない……ってのはもう知ってるな? 俺がWIKIに書いた」

 

コメント『自慢かぁ??』

コメント『アインニキ検証助かる』

コメント『魔法関係の検証任せてる感じあるよな』

 

「俺もちょくちょくWIKIに書き込んでるけど、戦闘面優先してるから細かい仕様とかチェックしてないからな? 他の検証班はそういう方面でよろしくよろしく。あー、という訳でとりあえず《火魔法》削除したんで、その代わりになる魔法から作ってくか」

 

コメント『えぇ、この状況でぇ……?』

コメント『あ、アーマードフカヒレになった』

 

「この状況で説明するんですか? え、じゃ、じゃあ、頑張りますね……」

 

 フィエルがやや気後れしながらも説明を始める。

 

 つまり魔法エディットがどういう風にパーツ別に分かれ、それを選択することで魔法としての要素を満たし、そして魔法を完成させることが出来るかという事だ。と、前説明を受けた時にはなかった項目が見える。

 

「あ、そうですね。アインさんは《火魔法》と《時魔法》、そして《氷魔法》を習得しています。なので属性を混ぜ合わせる事で複合属性魔法を作ることが出来ますね。それに特定の組み合わせ……例えば火と氷ですと、それを合わせた属性の魔法を生み出すことが出来ます。この場合は水属性になります。時属性は現在保有している属性と混ざる事はないので、純粋に時属性を混ぜ合わせた攻撃になりますが……」

 

「……が?」

 

「属性を混ぜれば混ざる程属性の純粋度は下がります。威力100の魔法に火と時を混ぜた場合、50火、50時という形になります。ですので属性としての純粋度は下がります。あ、ちなみにエフェクトとして属性っぽいのを混ぜたい場合はエッセンスとして追加すれば良いので特に問題はありませんよ。後は―――」

 

 フィエルが浮かんだホロウィンドウを指さし、そこに色々とマーカーやハイライトを表示させて魔法エディットの説明を行う。ミニモードながら、説明とかははっきりしているし、とても分かりやすく説明してくれるのであっさりとエディットが飲み込める。

 

コメント『はえー、フィエルちゃん有能』

コメント『そのAI私物化されてる気がするんですが』

コメント『ロリを私物化するだって??』

コメント『これはGM案件ですよ』

 

 運営なんだよなぁ、寧ろ……。

 

「基本的に魔法エディットでエフェクトを作成するにあたって、手段は2種類あります。1つはプリセットを利用する事です。此方のボックスを確認すれば現在まで収集された経験などをベースとされたアイデアが形状となって登録されています。此方から形状を選択すると……はい、こんな感じにホロボックスでエフェクトを弄ったり、改変したりできます」

 

 《形状:槍》を選択し、火の槍を生み出す。これは元が〈イグニートジャベリン〉の奴だろう。それを掴んで、圧縮し、捻りを加えながらちょっと形を整えれば―――はい、ドリルの完成。

 

「おぉ、ちょっと驚きました。結構器用ですねアインさん」

 

「VRペイントと似たような感覚でしょこれ? なら割と簡単かな。確かゼロから作成するモードもあったよね?」

 

「はい、ですがこっちは上級者向けですよ? パレットをこうやって出しまして……はい、それで感覚的な部分を含めながら操作します。実際に手づかみで色々と弄れるのでちょっと試してみてください」

 

「ふむふむ。これは面白い形状とかできそうだな」

 

「あ、勿論AIによる監視が行われているので、規約違反に類するものはダメですよ?」

 

コメント『さり気無く凄い事やってて草』

コメント『ボス多才じゃない? 多才じゃね? 裏山』

コメント『これぐらいなら、まあ、古代VRCの住民なら……』

コメント『できないが??』

 

「ちょっと待っててなー、10分ぐらいあれば最初の魔法が完成するからー」

 

コメント『指の動き早い』

コメント『うっわ、完全に慣れてる手つきじゃん』

コメント『もしかしてボスって芸の方の人?』

 

「あー、現役美大生よ、俺」

 

コメント『お前の様な美大生がいるか』

コメント『嘘をつくにしてももうちょっとまともな嘘を言いなさい』

コメント『ボスはPMCで参謀やってるんでしょ!』

 

「俺に世紀末な設定をつけないでくれ」

 

 コメントに和やかに応答しつつ、後ろでどかんどかんやり合うシャーク戦争を無視する。なんか空中変形合体したサメとかいるが無視だ、無視。今はそれよりもこれをやっているほうが楽しいぞ。あ、土鍋パイロット席にいるじゃん。

 

 とか言っている間に完成したわ。

 

「じゃんじゃじゃーん! えーと、あぁ、SEの設定も出来るのか……あ、結構豊富にある。えーと、検索リストから素材を探して……あったあった」

 

コメント『なにそれ(困惑』

コメント『懐かしすぎるの出てきたんだが』

コメント『草』

 

 完成させた魔法をとりあえず習得し、悪のサメロボvs正義のサメロボの現場を見る。サメってなんで少し見ていない間にワープ進化するのだろうか? そう思いつつ新しく完成させた魔法を発動させる。

 

「行け! そこそこ懐かしい魔法よ! 具体的に言うと90年代の一部にしか通じないアレ!」

 

 魔法が発動する。発動と共に空が赤く光り、全ての視線が空へと向けられた。そうやって雲の切れ間から1つの姿が飛び込んできた。

 

 ―――おっさんだ。

 

 炎を纏ったおっさん……に見えるように作られた、炎で編まれたおっさんだ。それが空から落ちてきている。サメたちへと向かって。しかもうおおお、あっちぃ、と叫びながら空から落ちてくる。その様子を誰もがドン引きした様子で眺め、

 

 そのままサメたちに衝突、爆発を巻き起こしながら全てを破壊して海へと沈めて行った。

 

「いやぁ―――汚ねぇ花火だったな」

 

コメント『ほんとだよ!』

コメント『強引にオチを持っていくな』

コメント『滅茶苦茶笑ったわwww』

コメント『ほんくさ。出来が良いのが更に草』

 

「そんじゃサメと身内始末したんで、残りの配信時間は適当に雑談しつつ魔法作成するぞー。今度はなんか見栄えが良いのを作ってくかぁ……んー、火の鳥とか作るか?」

 

コメント『飛翔するおっさんだって!?』

コメント『おっさんはもうやめろ』

コメント『これから魔法エディットする度に一番最初に生み出されたのはおっさんってなるのか』

コメント『地獄かぁ??』

 

 げらげらと笑いながら欄干によりかかりつつ、ミニフィエルを頭に乗せて魔法エディットに入る。いやあ、夢があって面白いじゃんこれ。

 

 そんなこんなで、俺らの船旅は続く。




 生活の延長線で考えてしまうので言いなりになってしまうフィエルChang。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。