断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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宝砂楽園ジュエルコースト Ⅲ

 6グループ目を殲滅する頃になりレベルが漸く上がる。しかしレベルアップのペースが早いか遅いかで言えば早い方だろうとは思う。そもそもからしてレベルは此方の方が10ぐらい下になるのだろうから、エリアとしては格上の部類だ。それでも素早く殲滅できているのは動きを完全に理解し、そしてリソースを惜しまずに一気に注ぎ込んで殲滅する事でレベルアップし、そのレベルアップでMPリソースを回収している事にある。それだけじゃなくてアイテムの方でも、実は割とごり押ししている事実もある。だがその成果もあって、レベルが低めだったメンバーは既に2度目のレベルアップを迎えている。

 

 そんな中、浜辺のヤドカリを殲滅していると浜辺から道路へと上がる階段が見えてくる。そろそろ上へと移動するか? そう思ったとたん、海の方から巨大な影が飛び出してくる。

 

 それは浜辺の先へと進ませないように結晶の壁を一瞬で生み出すと、その前に守護者の様に立ち尽くす巨大なヤドカリの存在だった。これまで倒してきた個体、その数倍の巨体を誇るヤドカリはその鋏も禍々しい姿を見せ、棘の様な結晶を震わせる事で威嚇してくる。

 

 それに対して足を止める事もなく、全員で一気に踏み込んだ。煉獄蝶を飛翔させ火バフを取得しつつ、素早く指示を口にする。

 

「事前に相談した通りに! 八方、四方、二方散開を間違えるなよ!」

 

「了解!」

 

「一番槍行くぞぉ―――!」

 

 何の躊躇する事もなくアレキサンダーが―――名前を盗み見る―――カースド・シェルベアラーに突貫した。盾を投擲し、そのヘイトアクションでヘイトトップに立つと反射して戻ってきた盾を掴みながらスライディングを行い、直前まで迫っていた鋏のハンマーを滑り込んで回避しつつ、反対側へと回り込んだ。

 

 パーフェクトな駆け出しだ。

 

 そのままメレーが背面に、レンジがその横にズレるように、射線を被らないように配置する。物理レンジである梅☆が左側に、そして俺が右側背面に位置する。ヘイトトップを奪ったアレキサンダーを追いかけるようにシェルベアラーが振り返り、その背面の結晶に物理攻撃が叩き込まれる。が、硬い、武器が弾かれるのが見える。

 

「連撃ッ!」

 

「これが煉獄無限突きだぁ!」

 

 ニーズヘッグが側面へと動き出すのに合わせ、《連携》が挟まる。シェルベアラーの足元にマグマ溜まりが生まれ、それが剣へと変形してシェルベアラーを足元から三度、貫く。連携した場合の魔法、スキルは詠唱カットで詠唱動作なしの合体攻撃になるから個人的にめっちゃ嬉しい攻撃手段なのだ。

 

 だがその合間にも攻撃を重ねる。

 

 炎の剣を数本、囲む様にランダムに出現させ、突き刺す〈フランベルジュ〉は単体用の基本攻撃火魔法として生み出したものだ。本当ならもうちょっとデザインに凝ったものを作りたかったのだが、時間と参考資料が少なかったのでこれで妥協した。ただ威力そのものはかなり高い。基本威力が150あり、その上で火バフと火タームによる火力向上で実質的に威力は240まで上がっている。それを短い詠唱で何度も連打し、MPが尽きる前に〈フレアメテオ〉を叩き込んで〈リバース〉でスイッチ、回復タームに入りつつ単体用氷攻撃魔法〈雪月花〉を放つ。

 

「そらよっ!」

 

 空から落ちてきた氷の粒が弾け、氷結の剣山となって飲み込み、破裂するように砕け散るというシンプルな演出を放つ。MPが完全回復するまではこれを連打し、満タンになった所で再び反転させるんだが、

 

 火タームに入る前にシェルベアラーが威嚇するように鋏を持ち上げて、構えた。全力の一撃を叩き込む様な気配をアレキサンダーに感じる。

 

「バフ! バリア!」

 

 アクションに入る前にコールする。即座にアレキサンダーが自己バフ、そして森壁がバリアを張る。アレキサンダーの耐久力がかなり向上し、防御する為に盾を構えたところに全力のハンマーが繰り出される。その速度、そして精度はとてもだが回避できるような速度には見えない―――恐らくは必中タイプの強攻撃。

 

 アレキサンダーが攻撃を受けて、HPが一気に6割消し飛ぶ。

 

「交代だ」

 

「そっちのが安定するか」

 

 略剣が槍を側面からぶっ刺しながらシェルベアラーを飛び越えるように前面へと飛び出し、入れ替わるようにアレキサンダーがシェルベアラーの体を蹴って背面へと飛び込む。場所が入れ替わる2人、同時にヘイト操作スキルでアレキサンダーが略剣に自分の稼いだヘイトを譲渡する。それを受けてヘイトトップへと入れ替わったヤドカリが怒りを今度は略剣へと向け、必殺ではない普通のハンマー攻撃を鋏で連続で繰り出す。

 

「おぉ、怖い怖い。DPSちゃんと出せよお前らー」

 

「うるせー! ちゃんと出してるわボケ!」

 

「DPSチェックあるかもしれんしなー」

 

「ぶおーん、ぶおーん」

 

 略剣が入れ替わりながら放つ会話に笑い声を零しながらも最高のDPSを叩き出す為に繰り出すスキル回しは絶対に狂わせない。ゼドとは事前相談でどこで連携を挟み込むか相談しているし、他の連中も自分の火力の出し方はスキルとにらめっこをして既に良く理解している。だからここに淀みなんてものはなく、アレキサンダーと略剣の奮闘の間にもシェルベアラーのHPは%単位で段々と減って行く。

 

 そしてそれに抗う様に連続で鋏を殴りつけるシェルベアラーは怒る様に両手を上にかかげると、ちゃきんちゃきんと鋏を鳴らした。その様子と気配に察した。

 

「あ、全体攻撃の気配だわこれ」

 

「マ?」

 

「はい、バリア! 陣! そして軽減です!」

 

 シェルベアラーが浜辺を叩いた。衝撃と共に浜辺の大地が波打ち、その衝撃が逃げ場もなく全体を襲う。一撃でバリアが吹っ飛び、怒りを表現するように連続でシェルベアラーが大地を殴りつける。1割、1割、1割と連続でHPが減って行く。その様子に森壁が悲鳴を上げるが、土鍋が余裕そうな表情を見せている。

 

「あ、そっか。俺の仕事か」

 

「お前ヒーラーだろ!!」

 

「まぁ、これならまだ余裕で戻せる範囲だな」

 

 地震撃は5連続で放たれて終了し、バリアの影響でダメージは4割程度で済む。いや、4割減っているのは俺とヒーラー組の低防御低HP組で、タンク組はその半分しか受けてなかった。やっぱ最大HPに差があると余裕が出てくるなぁ、と思っていると、シェルベアラーが体を震わせて背中の結晶をばらまいているのが見える。

 

「たぶん爆発する」

 

「たぶん!?」

 

「爆発する!!」

 

「よっしゃ! 逃げるぞ!!」

 

 わああ、と叫びながら足元へとばら撒かれた結晶から全力ダッシュで逃げ出す。詠唱を投げ出して逃げ出して5秒後、足元にあった結晶が爆発し、連続で周辺の結晶が爆発してシェルベアラーからPCを遠ざける。うおお、めんどくせぇギミックだなぁ! と思いながら距離を開けた状態で詠唱、攻撃を差し込みながら連携を挟んでダメージを重ねる。

 

 そして再び、ハンマーが振り上げられるのを見た。

 

「強攻撃ッ!」

 

「スイッチ入れるぞ!」

 

「了解!」

 

 強攻撃が略剣を襲い、2本の槍を交差させるようにガードしながら、その衝撃を受けてわざと後ろへと吹き飛ばされる。その隙間にアレキサンダーが入れ替わるように滑り込み、一瞬でヘイトの交代を完了させた。2人のその動きに淀みもなく、そして綺麗に役割を完遂させている。

 

 その間にも減って行くシェルベアラーのHPはいよいよ2割を切る。だがその行動が特別、新しい物へと切り替わる様な様子はない―――所詮は1ボス、そこまでの強敵ではない。

 

 一気に倒しきる為に火力を集中させる。

 

 まだ1ボス。こいつは小手調べでしかない。

 

 本命はまだまだ、この先に居るのだから。




 1ボス、ヤドカリ(大)。たぶんヤドカリ。定義はまだ乱れない。

 HT単体強攻撃、全体連続攻撃、爆弾設置という技幅。狭いように見えるけどロールバラバラだったり、役割を分担できてなかったり、ヒーラー皆無のPTだとあっさりと壊滅する。

 つまりちゃんとPT構築できてる? 役割を分担できてる? ってのを確認するボス。
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