シェルベアラーの始末を完了するとレベルが上がり、先へと進めるようになった。浜辺の先へと進むルートは魔晶石によって遮られ、その代わりに道路へと上がる階段が通れるようになっている。そこを登って進めば、ジュエルコーストのメインストリートへと出る。
その先に見えるのはやはり、エネミーの影だ。
クラゲ、魚、カニ、海の生物たちが道を塞ぐように散発的に配置されている。恐らく1体でも此方を感知すればリンクするように反応して複数が接近、グループを形成するようになるだろう。とはいえ、相手は明らかに雑魚だ。ダンジョン内の雑魚相手に苦戦するようなことは戦力的にはないだろう。詠唱を開始しながら口を開く。
「最近さ、健康に気を遣う様になったじゃん」
「おう」
タンクの役割を果たしながら略剣が応える。
「だけどさ、野菜ジュースとかで摂取するのって正直どうよ? って思うんだよな」
「あー、言いたい事は解る」
攻略しつつ普通に日常会話を始める姿に、補充の3人が此方を向いて直ぐに戦闘へ戻るが、そんな事に気にする事もなく土鍋も会話に混じってくる。
「まぁ、実際野菜ジュースのラベルに1日に必要な栄養揃ってます! とか書かれてもいまいち実感ないよな……まぁ、俺はカノジョにそこらへん全部任せて血液、脈拍、体温や脳波まで記録されてるから健康意識はちょっと考えるなぁ」
「相変わらず土鍋の彼女の話やべーよな」
コメント『御覧の通り、さっきまでガチガチに戦ってた集団です』
コメント『クッソ軽いノリでしゃべるけどパフォーマンス落ちてねぇな』
コメント『完全にマルチタスクになれてるって感じよな』
コメント『そういうことじゃないと思います(小声』
まぁ、割といつもこんなノリだしなぁ、と宙から〈フレアメテオ〉と全く同じ内容、ただし燃えるおっさんが降り注ぐ魔法を使った。いきなりの不意打ちにアレキサンダーが噴き出し、手元が狂って敵の攻撃を土鍋に通した。後ろへと吹っ飛んだ土鍋を無視して、会話を続ける。
「だから俺は基本的に食事をバランスよく作る様に心がけてるな」
「あー、アインはそういや自炊派か。他に自炊派いたっけ?」
「私も一応自炊よ」
チェーンソーをカニの甲羅の隙間に突き刺したニーズヘッグが無理矢理体を割り開けながらそんな事を言った。かなりグロテスクな光景であり、解除なしなら確実に規制されるような光景を生み出している―――が、まあ、ニーズヘッグが戦うと大体こんな感じだし、視聴者含めて皆グロテスクな光景には耐性を得ていた。
「こう見えて花嫁修業は一通りマスターしているわ」
「ですってよ、奥さん」
「じゃあ今度なんか作ってもらうか……」
「……!?」
「!?」
「ほぁ!?!?」
「あああああああああああああ」
ニーズヘッグが攻撃を停止してこっちに振り返ってエネミーに殴り飛ばされた。略剣が動きを停止させて振り返りサムズアップを向けながら攻撃をもろに受けて倒れた。ニーズヘッグの手から飛んで行ったチェーンソーが回転しながら森壁の顔面に突き刺さった。そのまま持ち手のないチェーンソーは暴れまくりながら顔面から首元まで下がりながら切開して行き、この世とは思えない悲劇を始めていた。
コメント『うわああああああああああ』
コメント『これもう戦犯決まったでしょ』
「お、俺悪くないもん! 今の俺完全悪くないだろ!! 勝手に手を止めて死んでるだけじゃねーか! というか早く起こせ鍋! 笑ってないで起こせよ!!」
「もうやってる、やってる。ぶふっ」
略剣を蘇生しながら土鍋が爆笑していた。梅☆も笑いながら攻撃を放棄しているので範囲魔法を放って一気に殲滅し、戦闘が終わった所で笑っている連中に蹴りを叩き込んで道路に転がす。割と普通に返答したつもりだったのにそうやって笑われると滅茶苦茶恥ずかしくなってくるんだよ! だからそこ! 笑うの止めろオラ!
「俺が! 何か面白い事をしたか!?」
コメント『した』
コメント『したぞ』
コメント『しなきゃ戦犯にならないんだよなぁ』
「俺は戦犯じゃない。じゃないぞ」
主張していると横からとんとん、と肩を叩かれ、振り向けば良い顔のゼドがそこにいた。
「じゃ、良い話お願いしますね」
「容赦しないなお前……?」
周りに味方が1人もいない事を認識し、溜息を吐きながら腕を組み、首を傾げ、俯き、
「あー……じゃあ俺の暴露話します」
「よっ、待ってました!」
「トップ戦犯!」
「次の戦犯が決まるまでの犠牲者!!」
えー……おかしくなーい? いや、まあ、こうなったらなんか恥ずかしい話しますけど。何かあったかなぁ、と脳内のネタ帳を開き、杖を握ったまま腕を組んで首を傾げて考える。色々とストックさせているしなぁ、だけどここでパンチの弱い奴を出してひよった、って思われるのも嫌だ。ここはうーん、なんか一気に腹筋崩壊させるレベルの奴で行きたいな。
「えー、じゃあこれは俺が高校の頃の話なんだが」
「うん」
「なんつーか、まだ社会のルールとか全く知らない時期ってあるじゃん? だからちょっと危ないって言われる界隈に度胸試しで足を踏み入れる事があってさぁ……でも結構普通の街だなぁ、なんて印象を抱きながら結構舐めた感じで歩いてたんだけど」
「だけど?」
「自転車で黒服を轢いちゃった。こう、ずごごごご、がががー! って感じに。何メートルから吹っ飛ばす勢いで。ぶつかる寸前に飛び降りアタック! って感じに綺麗に決まったね。死ぬかと思った。最終的に川に飛び込んで」
話をしてから数秒後、頷かれ、
「はい! 次行くぞ次!」
「休憩終わったから進むぞー」
「ボス、ボス。いつ行けば良いかしら。ねぇ、ボス」
「痛い話というか物理的に痛い話だったなあ……そういうのもありか……?」
「アレは特殊タイプだからなぁ……微妙に怪しい所だぞ」
視線が此方に向けられるので中指を突き立てる。結構身を張ったネタだったんだがダメなの? 調子に乗るんじゃねぇ。だったら俺は全てを破壊する手札を使うぜ。
「じゃあフィエルちゃんが我が家で生活してるってのはどうだ! 今スマホやパソコンを通して一緒に生活してるぜ! おはようとおやすみも一緒だ!」
『お世話になっています』
「は?」
ニーズヘッグ、当然キレる。
「やべっ、逃げろ」
梅☆を咄嗟に盾にすると梅☆がフィエルのしゃべったホロウィンドウを盾にした。それをチェーンソーが一瞬でぶっちぎった。ノータイムで攻撃へと回ったその思考に、はははは、と笑いながら梅☆の背に隠れた状態のまま、配信画面を掴んで引き寄せた。
「これが罰ゲームだぞ―――さあ、ここからどうやって言い訳する?」
コメント『控えめに言って死ねばいいのでは?』
コメント『死ね』
コメント『爆発しろ???』
コメント『やっぱ戦犯じゃん!』
は? 俺悪くないし?
そう思っている間にもニーズヘッグが迫ってくるので、他の味方を何の躊躇もなく盾にし、チェーンソーでがりがりと削って抹殺する。
それを数度繰り返せば味方なんてものはいなくなるし、目の前にチェーンソーは迫ってくる。それを前に覚悟を決めて、視線を向け直す。それを受けてニーズヘッグの動きが止まる。此方が何かを言い返そうとしているのが理解できたのだろう。故にそれを待つようにチェーンソーを目の前で構えたまま、坐った目で此方を見つめてくる。
それに頷いて叫んだ。
「……ワイプだワイプ! 一回死ぬか!」
コメント『草』
コメント『ワイプじゃねぇだろ!!』
コメント『ほんと草』
コメント『こんな全滅あるぅ???』
「それが遺言ね」
そして、ダンジョンとは全く関係のない所で俺達は全滅した。
全滅カウント、その1。
Hr世紀末時代にPSO2引退したけど最近復帰しました。
相変わらず相場のインフレ凄いなぁ、あのゲーム(震え声