ウミヘビが大地に体を叩きつければ円形の戦場の周りに爆発が発生し、フィールドの周辺が水に覆われた。だがそれはフィールド内部を侵食する事はなく、外側だけであり、まるで逃がさないと主張するかのような動きだった。そしてこの状態で外周に水を呼び出したのだ、おそらくは何らかのギミック用の設置なのだろうと辺りをつける。まぁ、そこら辺の判断は土鍋に任せる。
「多分毒だぜアレ。DoT系な。触れるなよ、ヒーリング面倒だから」
「アレキ前、耐えて動きを引き出しつつ火力叩き込んで対処すっぞー」
「おー」
「外周毒って事はノックバック系が多分来るだろうな……槍剣コンビは外周近くまでボス引っ張ってくれ。その方がノックバック喰らったときセーフの可能性が上がっから」
「Ok!」
土鍋と並んで指示を出しながら攻撃を開始する。開幕の自己バフを乗せたバーストから一気に火力を叩き込み、HPを削りに行く。それに反応するようにウミヘビが大きく吠え、その体が鞭のようにしなった。強撃がアレキサンダーに叩き込まれ、その姿が後ろへと10メートルほど吹っ飛ばされる。ちょうどフィールドの端から中央まで吹っ飛ぶ形で勢いは消滅し、その隙間は略剣がスイッチする事で埋める。だがそこから5カウントを待って、再びウミヘビが強撃の姿勢に入った。
「アレキ戻れ! スイッチだ!」
「ジャグリング? いや、これで1つのギミックか」
「おー、さっきのボスよりも忙しいなこりゃ!」
略剣がガードに入り、吹き飛ばされると同時に突進攻撃でアレキサンダーが戻ってくる。入れ替わってスイッチを完了させると、ウミヘビが低い声で唸る様に体を震わせる。黒い体が段々と赤熱化して行き、更に赤い水が覆い始める。溶岩の様な強い粘液性を持ったそれは、地面に滴り落ちると大地を極彩色に染め上げた。
そしてその体を大きく震わせた。
飛び散る毒の粘液がフィールドにばらまかれ、毒エリアがいくつも形成される。即座にそれを回避するように走りつつ、真っすぐ吹き飛ばされても大丈夫なように動線を確保する。とはいえ、まばらにばら撒かれた粘液のせいで安全な場所は少なくなっている。吹き飛ばしが来たら恐らくどれかを突っ切るか、仲間を動線に合わせる必要があるだろう。
「特殊タイプのボスだなぁ……っと、全体!」
「軽減入れるぞ!」
「バリア張ります!」
ウミヘビが咆哮する。途端、その背面から津波が襲いかかってきた。全員を均一に殴りかかるがダメージは低く、HPを3割程しか削らない。だがそれと同時に発生するノックバックが無理矢理詠唱を中断し、メレーをボスから引きはがし、放たれた矢を水流で飲み込んで流し去る。その上でボスは津波に紛れてフィールドの反対側へと逃げ込み、そこで尻尾を振るい、大地を爆発させるような一直線の破砕攻撃を放ってきた。
「はい、ガードッ!」
アレキサンダーが突進アビリティを使って突き抜けることで津波からいち早く復帰し、攻撃を前に立ってガードする。だがその結果、ばら撒かれた粘液を突っ切って毒を受ける。それまでのダメージも合わせてHPは一気に残り2割まで落ちるも、瞬間的に略剣がスイッチに入ってヘイトを奪いなおす。
これがタンク1人だったら、やっぱり地獄だっただろう。
だがウチはメイン、サブ登用型だ。1人で抱えきれないなら分割して抱える事で戦線を安定させるのを目的としているスタイルだ。だからアレキサンダーのHPが一気に減っても、ピュアヒーラーである土鍋が即座にヒーリングを入れながら戦線復帰までをサポートできる。
「げ、ランタゲか」
ウミヘビが体をしならせながら此方へと牙を大きく剥き、攻撃の予兆へと入ろうとしていた。それを見てうげぇ、と声を漏らしながら庇って貰おうかと考えるが、横から土鍋の声が飛んでくる。
「毒踏めボス!」
「マジで!? 文句は言うなよ!」
「あー! こいつ毒踏みやがった! いーけないんだいーけないんだ!」
「貴様ァ―――!」
茶番を走らせながら毒エリアを踏んで毒状態になる。HPが削れ始めるのを感じながらも、魔法回しと連撃合わせを行いつつウミヘビの行動に注視する。その攻撃は此方に向けられ、準備を完了させ、しかし此方を確認すると攻撃をキャンセルして体を振るい、牙を突き刺そうとタンクへの攻撃へと戻った。
「うし、毒解除OK!」
「そういうギミックか……デメリット系だと思わせてか」
「ま、あるあるネタだよな」
そこでよーし、と梅☆が声を張った。
「準備完了! バースト準備に入れ!」
梅☆が背丈を超える巨大なクロスボウを取り出すと、杭としか表現できないような巨大なボルトを装填する。それを片腕で振り回すと宙へと飛びあがりながら放ち、反動を空中で回転することで殺して着地する。一直線に放たれたバンカーボルトはウミヘビに突き刺さると、その体を大地へと縫い留めて動きを一時的に停止させ、
その瞬間に溜め込んでいた火力バフを一気に解放してバースト攻撃に入る。バーストに入った瞬間、ウミヘビのHPが目に見える勢いでガリガリ削れる。やはり高スペックのプレイヤーで固めているだけあって、バーストの火力が高いのは目に見えている。後は仲間の相性と、そして組み合わせだ。そう思いながら素早く指示を出して散開する。
ウミヘビが攻撃を放った。
2方向へと放たれた攻撃は土の津波の様に略剣とアレキサンダーを飲み込んだ。それが外周に展開される毒とぶつかり合い、破裂しながら雨となって降り注ぐ。
「痛いッ! 痛ッ!! なんだこれ痛てぇ!!」
「この雨痛いんですけどぉ!?」
「鉄でも詰まってるんかこれ!」
雨の様に降り注ぐ外周の毒。それが上から弾丸の様に打ち付けてくる。全身を滅多打ちにする痛みに悲鳴を上げながらも、誰一人として攻撃を停止させない辺りは流石としか言葉がないだろう。それを受けてボスの方も怒りを感じているらしく、舌を突き出すとそれを揺らした。
「うるせぇ! なにがしゃーだ! しゃー!」
「しゃーじゃないだろ。あれはふしゅるるるだろ」
「違う違う、へびへびー、よ」
お前それ、マジで言ってんの? という視線がニーズヘッグに集まり、戦闘が一瞬だけ中断してしまう。だが、ボスの次の動きに即座に戦闘へと戻る。尻尾を振り上げてタメを作る動作は強撃のものだ。再びノックバック攻撃を繰り出す姿にアレキサンダーが防御に入り、毒がない方向へ飛ばされる様に誘導する。
そして吹き飛び、スイッチ。
そこから更に2度目の強撃、スイッチと吹き飛ばし。
即座に攻防の入れ替えとスイッチを完了させて元通りアレキサンダーをメインタンクの座へと戻し、前よりも痛く感じるダメージを乗り越えながらウミヘビが体を震わせるのを確認する。
「攻撃がループ入ったな。だけどさっきの毒は消えてないな……?」
「なら単純に安置が減るってだけだろ」
せやな。つまり早く始末しないと安置が消えて全滅、という話だろう。だがこれで全ての攻撃パターンの確認が終わった。なら後はどこでバーストタイミングを挟めるのか、それも解ったし順当にギミックを処理しつつ最高ダメージを叩き込み続けるだけの作業だ。
余程、大きな事故を起こさない限りはここから失敗する要素もない。
ウミヘビボスのギミックベースの行動には少々苦しめられたが、全てのギミックが判明すれば安心して火力を叩き込み続けられる。
数分後にはウミヘビの処理を完了させ、2ボスの攻略を完了する。
2ボスはギミックベースのエネミーに対してちゃんと対処できるかを確認するタイプのボス。戦力が整っていれば踏み越えられるタイプでもあるので、やっぱり足切りという意味が強いかもしれない。