断絶世界のウィザード   作:てんぞー

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”裏切り者” Ⅱ

「はい、バトルログとリプレイデータ」

 

「確認確認っと……大体5分辺りだな? ……良し、見たらデバフついてるな。〈白の審判〉と〈黒の審判〉で分かれてる。たぶん白黒塔踏みギミックだわ」

 

「となると自分のデバフ欄を確認して踏みかなー」

 

「だな」

 

 恐らくは自分のデバフと同じ色の範囲を踏む事で爆発を抑えるギミックだ。良く見るタイプの奴だと思う。だけどこの手のギミック戦闘は、ギミックを第一に知らないと滅茶苦茶苦労するという部分がある。だから出てくるだけで未経験者は大変だろう。そこに関して俺らはそこそこいろんなゲームを遊んできた経験がある。触っちゃいけない範囲、踏まなきゃいけない範囲、その形、種類、パターン、かなりの数をこなしてきている。そういう意味で俺達の判断と適応は早い。一応ゼド達補充3人に話している内容を確認してみるが、

 

「あ、元プレイヤーなんで解ります」

 

「エンド勢!」

 

「問題ないです」

 

「おっし、じゃあ再開だ。多分さっきので前半パターン終わって後半の複合パターンが来るだろうから、それに警戒。既存ギミックに関しては俺がコールしてく。全員、デバフ欄は確実に見える所にセットしておくこと。鍋森はHP管理頼む。剣盾コンビは防バフと軽減入れるところ相談してくれ。ついでにスイッチのタイミングも」

 

「無敵切ったらスイッチだな。それまでの歓談タイムと連撃中にバフかなぁ」

 

「だな」

 

「俺達DDはギミックを間違えずにDPSを出し続ける事! 他に集中しなきゃいけない事がないし楽やろ」

 

「楽だったらいいなあ」

 

「それな」

 

「ボスが期待してるならなんとかするわ」

 

 最後の犬の発言にやれやれと肩をすくめつつ、全員を見渡し、軽く笑い声を零す。

 

「高難易度ボスだ―――楽しんでいこうぜ」

 

「応ッ!!」

 

 帰ってくる返答に満足感を感じつつ、配信画面へと一瞬だけ視線を向け、悪いな、と言葉を向ける。

 

「本気で集中するからたぶん気にしてる場合じゃないと思うんで、反応しなくなるから」

 

コメント『それはしゃーない』

コメント『まぁ、コント期待してるわけやないしな』

コメント『俺達は攻略を見に来てるからな』

コメント『何時も通りの勝利頼んだぜボス!』

コメント『がんばえ~』

 

「よっし、やるぞお前ら! 次はワイプするにしたって前よりも長く生きるぞ! 開始はアレキに任せる!」

 

「やるぞ! やるぞやるぞ! やるぞやるぞやるぞやるぞ!」

 

「カウントオーケー? ……良し、カウント始める!」

 

 アレキサンダーの声に合わせ、即座に慣れた戦闘前準備に入る。バフ、バースト準備、アイテムの使用を完了させ、これまた何度目かになる開幕バーストを開始する。

 

「いざ奈落の扉は開かれん。反逆とは即ち裏切り。生ある者に対する永劫の憎しみを糧に今こそ境界よ開け!」

 

「全体!」

 

「バリアだけで凌ぎます! 行けます!」

 

 森壁の言葉通り、アビリティを切った強力なバリアを展開する事で、この瞬間を乗り越える。HPは一気に下がるが既にそれを理解していた土鍋が強力な回復スキルで一息に戻す。そのまま次に来る個別範囲を対処する為に、相談してある八方散開へと移動。綺麗に個別範囲を処理しながら再び集合、土鍋からのヒールをHoT込みで受けてHPを7割段階まで戻す。ここまで回復すれば、HoT効果で次の全体が来るまでに完全回復は出来るだろう。

 

 そして始まる、追尾剣。

 

 これは対処法は見てしまえば簡単だ。

 

「八方散開! 剣の反対側に来るようにボスの傍へ!」

 

 剣はボスの全体が発動し、吹き飛ばされるのと同時に砕け散る。つまりその瞬間まで剣を回避し、ボスの吹き飛ばしに対処すればそれで十分なのだ。なのでアレキサンダーがトレイターを中央に固定し、その八方に近づく様に散開、剣は反対側から迫ってくるが―――それが届く前に、ボスによる吹き飛ばしがやってくる。

 

 吹き飛び、HPが削られながらもノックバック距離は10メートル。ボスの傍にまで移動していれば外周まで吹っ飛ぶ距離ではない。そして味方の背後まで迫っていた剣は吹き飛ばしの衝撃によって砕け散っている。吹き飛びながらも〈詠唱消去〉を使って、動いてしまう状況に攻撃を挟みつつ、漸く立ち止まったところで普通の詠唱に入る。攻撃しながら次の攻撃に備え、そして土鍋からのヒーリングを受ける為に詠唱、攻撃、移動、詠唱という小刻みなキャスター特有のステップでボスの背面まで集合する。

 

「きっつ……!」

 

「だが、全員生きている! 動きは完璧だ! ……アレキ、略剣!」

 

「解ってる! 〈ラストリゾート〉!」

 

「砕け散れ! 〈パニッシュメント〉!」

 

「ここからは俺のターンだ」

 

 アレキサンダーが食いしばりで攻撃を受け切り、その衝撃で僅かに硬直しながらも即座に略剣とスイッチする。入れ替わった所で通常攻撃を略剣が受け、そのまま次のギミックへと移行する。

 

「潔白とは? 罪とは? 誰もが己の無罪を主張する、たとえそれが大罪者であろうとな……己に刻まれた烙印を理解しろ咎人」

 

「デバフ確認! 同じ色だぞ! いいな、同じ色だぞ?」

 

「うん、解った! 逆のに入るな!」

 

「やったらマジ殺すからなお前?」

 

 笑いながら殺害宣言を行い、白と黒の柱に入る様に4:4で分かれた。無事にギミックを処理すればHPは2割程度しか減らない―――どうやらちゃんと処理する事に成功すればダメージはそんなでもないらしい。

 

 が、

 

 こちらに休ませる暇もなく直ぐに結晶剣が空に展開され、外周にも結晶剣が出現する。だけど今回のそれは追尾するような動きを見せない。()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 クソが、と毒を吐く。

 

「鍋、出現向き固定、安置!」

 

「6か所ある!」

 

 攻撃を繰り出す手を止めずに、トレイターに対する対処を続行する。土鍋が即座に全員の立ち位置と攻撃範囲、直線範囲から安置を割り出す。だが存在する安置は6か所。それを土鍋がマーカー代わりにホロウィンドウを6個瞬間的に作り、投擲して地面に突き刺す事で示した。だがこれで助かるのは6人だけ。つまり必然的に2人死ぬ事になる。

 

「うし、梅」

 

「あいあい、俺らからだな」

 

 迷う事無くメレー組とヒーラー組の生存を即決し、自殺する為に範囲に味方を巻き込まない距離へと移動し、直線斬撃を受けてHPを0にする。このチョイスはとても簡単なもので、即座にMPをヒールする事の出来る俺と、一番DPSが低いビルドをしている梅☆、便利ではあるけど死んでもそこまで被害がひどくならない2人から殺すという選択肢だ。

 

「セット! アインさん起こします!」

 

「HoT撒いて……梅起こすぞ!」

 

「通常攻撃タイムで良かったな……!」

 

 トレイターは結晶剣を両手に生み出すと、それを乱舞するように正面にいる略剣に叩きつける。1秒に1度というリズムで繰り出される攻撃は遅く見えるが、その1撃1撃がタンクのHPを防バフ込みで1割削って行くだけの破壊力を有している。ただそれでも、トレイターが繰り出す他の攻撃と比べればはるかにましであり、このギミックの合間の通常攻撃タイムは俺達が火力を叩き出す為の時間でもあった。

 

 即座に死亡から蘇生を受けて蘇り、立ち上がりながらMPヘイストを起動させて氷を生み出し、連射しながら火モードへと切り替えて火力を叩き込む事に集中する。トレイターのHPは今大きく削れて50%をぎりぎり切る所まで来て、

 

「成程……確かにこれは脅威だ。稀人。お前らの事を侮っていた」

 

 腕を振るう様に略剣を弾き飛ばすと、そのまま衝撃波を生み出し全員をフィールドの端まで吹き飛ばす。スタンが発生して全員の脚が停止し、立ち上がれなくなる。その中でトレイターは浮かび上がると外周の外側へと飛び出し、此方全体を捉えるように腕を広げた。

 

「この一撃を持ってこの戦いの幕を引いてやろう……耐えられるというのであれば、耐えて見せるが良い……!」

 

 漆黒が渦巻き、結晶がその周囲を踊る。本来であれば光を乱反射する筈である結晶は、漆黒をその鏡面に乱反射させる事で極限まで力を高めていた。

 

 トレイターが戦いを終わらせるための究極奥義を繰り出す態勢に入った。此方の攻撃範囲を脱したトレイターからの究極奥義。

 

 俺達には今、それを受ける以外の選択肢はなかった。




 これでも手加減はちゃんとしてくれているトレイターさん。

 たぶん今のアイン達は汗を大量にかきながら物凄い楽しそうな笑みを顔に張り付けて遊んでる。
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