すっきりしない終わり方だが、勝ちは勝ちだ。これで王国の依頼は果たしたし、これまで戦闘の合間にちょくちょく開けていた宝箱の中身を確認する余裕と、そしてクリア報酬の経験値が一気に貰えるようになった。ボス討伐、そしてダンジョンクリア、初回クリア報酬などが一気に入った事でレベルは一気に2も上がり、レベル30の大台へと上がった。それにスキルレベルも全てが上がり、成果で言えばかなりのものになっている。
それにレベルが上がった事で、レベルがトリガーとなるスキルも習得した。フィエルからの解説は一旦置いておくとして、
全員で1枚の大きめのホロウィンドウを前に、囲む様に足を止めていた。
それは今回の報酬画面―――つまり獲得装備が表示されている画面だった。
「今回の装備は《コーストライン・ガーディアンゴーグル》、《コーストライン・スレイヤーズリング》3個か……」
「相当偏ったけどタンクが戦争は良いとして、攻撃指3個は戦争だろ……」
腕を組みながらの言葉に深い頷きがあった。どういうことかと言えば簡単だ。アクセサリーはステータスの伸びがメイン装備と比べれば緩やかな分、エンチャントや装備効果によるオプションが割と自由になっている。その影響か今の所、メインと同じ方向性で揃えるよりも火力や防御力の補強に追加する方が建設的なのでは? という意見がWIKIにあったりする。そして無論、ここにいるメンツは全員WIKIの最新のレポートや成果報告を確認している。装備は俺達のビルドに関わる非常に重要な事だ。
つまりはなんだ。
つまりタンクでも指アクセ枠装備を攻撃装備にすれば、多少は火力の向上が見込めるということになる。まぁ、大体1%ぐらいだが。その1%が割と馬鹿にならないのがエンドコンテンツなので、こういう所でのロットは必須になる。まぁ、今の装備でエンドコンテンツに挑むようなことはないだろう。それはそれとして、さっきのトレイター戦での残り0.5秒ぐらいでのクリアを想うと、タンク側も火力が欲しいってのが正直な感想だ。
つまりはなんだ。
物理職全てが攻撃指輪を狙うという事だ。
ロット戦争、始まる。
「あ、でも装備とは別枠でミニサメのペットと、ブラックパールが報酬に入ってるな」
「戦争じゃん。どこからどう見ても戦争だぞこれ!!!」
そうだぞ。戦争だぞ。フリー枠は全員が確実にロットするか8分の1の勝負だ。その上で装備を狙う連中は更に殴り合わなきゃいけないから辛いんだぞ。もう既にメレー組とタンク組が殺気立っている。ヒーラー組を含めた俺達キャスター組は詠唱職でダメージはINTベースなので、ATKベースの装備には一切の興味がない。今回はその手の装備が出なかっただけに、平和である。そう、俺達はフリー枠にロットするだけで装備の方に参加しなくて良いのだ。
「タンク組はタンク装備での殴り合いだけど……」
「攻撃指とかマジでどうするんだよ……アクセ枠って複数あるんだぞ」
そう、指輪が出たってのがマジで酷い。だって指枠複数あるもん。1つロットした所で満足する訳ないじゃん? 火力を出す為にはアクセサリーを火力型にすればいいし。という訳で、手をパンパン、と叩く。
「そんじゃ泣いても笑っても文句はなしで。ロット勝負するぞー」
「ういー」
「まぁ、欲しければ周回すりゃあ良いだけの話だしな」
「せやせや」
「そうね」
コメント『と、申しておりますが』
コメント『目が殺してでも奪うって感じなんだよなぁ』
コメント『は? ロットやぞ? 殺し合いやろ』
コメント『この人たちこわ』
明らかにメレー組の目が人を殺す様な殺意を纏っている。うーん、とりあえずはフリー枠から消費するかぁ。という事で、
「最初のブラックパールからロットしちゃうか。ちなみに俺はコレ、売ってチームの資金にするから」
「あ、汚ッ! ずるいぞお前それ!!」
「ロットし辛くなったじゃん! おい!!」
「そんな事言われたらロット出来ねぇじゃんか!!」
コメント『悪魔的発想』
コメント『牽制入れるかよお前』
コメント『当然の精神攻撃』
コメント『補充のロット権を今の一言で封殺したのは流石としか言いようがないわww』
ダブルピースを浮かべながらロットしようとしていた他の皆の行動を牽制した―――直後、行われるブラックパールのロットに関しては他の全員が辞退、結局唯一ロットした俺だけが真っ黒な真珠、神秘的なアイテムを入手する事に成功した。笑顔を浮かべつつインベントリに入手したブラックパールを仕舞いつつ、少し離れた所で横になってリラックスする。
「あ、俺以降のロット放棄するんで」
「ほんまこいつ」
「誰かアイツを殺せ」
「最悪ですよこの人」
「完全に愉悦する気満々じゃん」
げらげらと笑いながらロット戦争に残る愚か者どもを眺める。ペットのミニアビサルドラゴンを召喚したらそれを優雅に、ペルシャ猫を撫でる様に、目の前に座らせて頭を撫でる。目を細めながら撫でられるアビサルドラゴンってもしかして可愛いのかもしれない……なんて錯乱しながらお次はミニサメペットのロットとなった。今度もフリー枠、つまり全員……俺以外全員が参加するロットとなった。
躊躇する理由もないので即座にロット、
「っしゃああ!! はっは―――! ロット雑魚共乙―――! 俺の勝ちィ! ふっふぅー!」
土鍋がロット勝ちした。手に入れたミニオンを即座に使用して召喚。出現したサメミニオンはチワワ程度の大きさしかなく、しかも翼がある訳でもないので浮いている。どうやら水中でもなくちゃんと移動することが出来るらしい。まぁ、エネミーの中でも浮かんでいる魚はいたしね? そんな訳でShaaarkと鳴くミニサメを連れて、土鍋はこっちの横までやってくると胡坐を組む。
「じゃ、残りのロット頑張って」
「あいつらさぁ……」
手を振って適当に応援してやると略剣の方から中指を突き立てられたが、それを無視して俺と土鍋から頑張れのエールを送る。返されてくる中指の数が倍に増えるのを確認しつつ配信に使っているホロウィンドウを掴んで、それを団扇替わりに自分を扇ぐ。
「おほほほほ、心の貧しい民共が何かを言ってらっしゃるわね土鍋お嬢様」
「そうですわね、アインお嬢様。
やはり敗北者達の心はいつでも貧しい物ですわねぇ~」
「あいつらほんと殺してやろうか」
まあ、まあ、と軽くたしなめてから森壁もこっち側に合流した。まぁ、ヒーラーである彼は以降のロット勝負には参加しないのでこっちに来るのは当然だが。というかさり気無く俺達を壁にしてヘイトを防ごうとしてるな? 良い度胸してるじゃん。
ミニアビサルとミニサメがぽかぽか殴り合いを始める中、良い歳した連中が本気で睨み合いながら牽制を入れ始める。
「なあ……ニーズヘッグ。今度媚薬を譲るからさ」
「私はロットを放棄するわ」
「すんな。渡すな。止めろ。殺すぞ! 殺すぞ俺が!!! おい!! 梅! テメェ!! 薬物! NO!」
「高リアルラック持ちが抜けたぜ」
開始前の即死牽制攻撃が入って、ニーズヘッグが脱落してこちらへやってくる。後ろに回り込んでぴったりとくっつく様に座ると、「解ってるわよね、デート。デート。デート」と後ろから囁いてくる―――ふふ、怖い。助けを求めようにも既に土鍋は5メートルぐらい距離を取っているし、森壁もそっち側に逃げていた。大人げないぞ貴様ら。助けてよぉ。
「剣さんさぁ、イイ年した大人が本気でロット勝負挑むのってちょっと大人げなくないかぁ? 梅☆さんもさー。ここはさ、補充でここにまたちゃんとしたパーティーで来れるかどうか怪しい俺達に譲ったほうがいいんじゃないか? うん?」
「何を言ってるのか良く解らないなぁ……固定でなるべく早く強化したい俺達こそ装備の補充が必要なんじゃないか? うん? この攻略だって生放送で配信してたし、攻略法は既にWIKIにリアルタイムで更新されて書き込まれているでしょ。だったらここに来るのは同じ理解力のあるメンバーをそろえるだけ……ほら、難しくない」
「その集める所が難しいって話だよ」
「はははは、その時は運がなかっただけさ……ははは」
「はははは……」
「デート。デート。デート。デート」
「助けてよぉ」
「状況が混沌としてきたな……!」
なんでだろうな。
「……なんか話が一向に進まないし、先にロット権だけ主張しておこうかな。えーと、全部一気でいいか」
高まる緊張の中、ゼドが空気を読むことを諦めてロットを主張した。3個、同時に。それに合わせ略剣とアレキサンダーと梅☆が視線を見合わせた。
「そうだ、ここは公平に一気に3個同時にロットしよう」
「いいぜ」
「良し、来た! 泣いても笑ってもこれで決着だ」
馬鹿3人が視線を見合わせ、そして頷いてから同時にロットした。
そして馬鹿3人が同時に倒れた。
「あ、3個ともロットできた」
「おー、おめでとう」
「おめおめー、豪運だなぁ」
「ラック持ちだったのね」
崩れ落ちた馬鹿を他所に、ゼドは祝福されている事に頭を何度も下げて対応していた。
コメント『いいオチついたじゃん』
コメント『楽しい攻略でしたね……』
コメント『これ見てると固定が楽しそうでいいよなぁ』
コメント『俺も固定を探そうかなぁ』
コメント『乙乙ー! そしておめー!』
うん、そんな訳で俺らの今回の攻略はここまで。
ジュエルコースト、解放完了であった。
ロット戦争で毎回敗北しているのが私です。
ロット:出現した装備の抽選行為の事。一部MMOは取得アイテムが抽選方式。