とりあえず、小学生編はここで終了です。次から中学生編へと突入。中学生編はあんまり書くことない予定なので3話終了とかあるかもしれない。高校生編も3話終了予定。その後から徐々に原作の話を入れていくので…。約6話を書ききれば私の勝ちかな? いけるかもしれない。
※あくまで願望です。
卒業式。感動ムードに包まれ、正装した彼らは今日、小学校を卒業する。まだ式は始まっていないが、泣いてしまう子もちらほらと見える。ちなみに静雅はそんな感動ムードなんてへったくれもなく、若干ピリついていた。
結局、風間は最後まで鬱陶しかった。行事をサボろうとする静雅の首根っこを掴むことは最早日常と化していたし、クラス替えは行われるが、この6年間1度も静雅と風間は離れることがなかった。静雅の通っている小学校は大して生徒数もいるわけではなく、1学年3クラスしかない。なので、確率としては3分の1。しかし、どうやってもその2が静雅は引けない。風間から離れられないのだ。その事実を知る度に静雅の機嫌は悪くなるし、こうなってくると何かの陰謀すら感じていた。
しかも、面倒なことに風邪の一件から静雅の母は大層、風間を気に入ったらしい。よく家に連れてこいとうるさいし、何なら風間の両親とも仲良くなってしまい、今では家族ぐるみの付き合いだ。
運動会があれば静雅家と風間家合同で観戦は当たり前。何なら運動会が終わった後、お疲れ様会なんて称して食事に行くこともある。温泉で疲れを癒した時もあったし、わざわざ店を閉めて両親のお好み焼き屋で忘年会&新年会もやったこともあった。だらしない静雅の母は朝まで酔ってどんちゃん騒ぎ。父は飲めない酒を母に無理やり飲まされ、深い眠りについていた。そんな光景を見て、途中から酒をセーブしていた風間の両親に後片付けをさせる始末。なんだかんだ深い関係にありつつある風間の両親は笑って許してくれたが、息子としてあれは恥ずかしく感じた。仲がいいからって風間家はあくまでも他人であり、他所様だ。無様な姿を堂々と見せないで欲しい。
風間家と多くの時間を共有することによって、静雅は風間の兄と知り合った。静雅は元々から年上にいいイメージを持っていなかった為、初対面時はかなり攻撃的だったのだが、風間の兄は笑って許してくれた。静雅達と歳が離れていることもあって、考えはかなり大人に近かったし、そもそも争いを好むような性格もしていなかったので、隣りにいてかなり気が楽だった。
ちゃらんぽらんでもなんだかんだしっかりしている両親を静雅は尊敬しているが、両親とはまた違う人種、根がしっかりとした出来た年上を初めて見た静雅は、勿論尊敬した。尊敬しているという雰囲気こそは出さないが、風間の兄がダメだと言ったら歯止めを利かせていたし、我慢した。それほどまでには尊敬しているのだ。
「静雅、おはよう」
「……」
グスグスと鼻を啜る音と共に感動ムードが流れるこの雰囲気の中、登校してきた風間が静雅に話しかけた。一瞬、静雅は風間に視線を移すが、返事をすることはなく中々進むことの無い時計を静かに見つめる。そんな静雅に慣れている風間は勿論、怒ることはなく話を続けた。
「前髪上げたのか」
モサモサとしたいつもの髪型と違う静雅に鈍感な風間でも気がついた。目を隠すほど伸びきった前髪はくせっ毛のこともあって、あちらこちらと毛先をいつもは跳ねさせている。特に髪に拘りがある訳でもない静雅はセットをする訳でもなく、適当にお湯を頭にかけて寝癖を直す程度だったのだが、今日は違った。
今日は卒業式。他所様に見られるということもあって、卒業式に出る本人よりも両親の方が燃えていた。普段はつけることの無いワックスを手に取り、伸びきった前髪を上げた。所謂、オールバックというやつだ。髪を上げたおかげで、ココ最近は見ることがなかった切れ長の二重が現れる。この6年間、目付きは更に悪くなり、何なら視力も悪くなった為、更に目付きが悪くなった静雅の目を見て朝から母親の小言が出たのは余談だ。おかげで朝から静雅の機嫌が悪い。
「スーツは見苦しい。ちゃんとボタンはつけろ」
堅苦しい服装を好まない静雅は、ワイシャツのボタンを上から2つほど嵌めていなかった。何ならネクタイすらしていない。それが気に食わなかった風間は指摘するが、静雅が直す様子は見られない。
直す気のないことを風間は理解している。強く言ってもいいが、静雅が機嫌の悪いことは何となく察しているためそこまで強要するつもりはなかった。意外と静雅は出来る子で、本番直前になれば身嗜みぐらい整えてくれるだろうとの判断だった。
風間がそんなことを考えていた時だった。
ガタンを物音をたてて静雅は立ち上がった。静雅の顔は不機嫌そのもので、この状況に耐えれなくなったのだ。
朝、いつもよりも2時間早くに起こされた。卒業式に出る静雅よりもやる気と元気を漲らせた母親のせいだった。朝ご飯を食べさせることなく、静雅の髪型が気に入らないだのなんだのと小言を言いながら、静雅を着せ替え人形にし、結局最後までご飯が出てくることはなく、もうそろそろ出ないと遅刻しちゃうからと無理やり家を追い出された。
学校についたらついたで、卒業式ということもあり、いつも以上に学校は人の出入りが多く、それを感じ取ってしまう静雅にとってそれはストレス以外の何物でもなかった。
教室に辿り着いたかと思うと、まだ式は始まっていないのに泣き始めるクラスの連中。意味が分からなかった。中学校は地区で別れるため、かなりバラバラになってしまう。しかし、まだ式は始まっていない。そして、静雅には友達という友達を持ったことがないので泣く意味が分からなかった。
全てがストレス。限界。良くここまでもった。静雅は自分を褒めてやりたい。そう思うほどには我慢した。しかし、それも限界だ。
静雅は卒業式をバックれることにした。どうせ大した思い出のない小学校だ。バックれたって両親は五月蝿いだろうが、静雅にとって問題はなかった。兎に角、人気の少ない場所に行きたかった。ここは人が多すぎる。段々頭が痛くなってきた。心做しか気分も悪くなってきたような気がする。
「おい静雅。何処に行くつもりだ」
「あー!! さっきから一々うるせェなァ! テメェには関係ねェだろォがァ!!」
グワッと静雅が振り返れば、後ろにはキョトンとした顔の風間が立っていた。風間の行動の何処に静雅が怒っているのか、どうやら風間は理解できていないらしい。そしてやはりキレた静雅を見て怯えていないところを見ると慣れているなと感じさせられる。慣れるぐらいにはしょっちゅう静雅はキレていた。
「? 別に気にする事はない。どうせついて行くからな」
「は? テメェ何言って──ついてくるだァ!?」
冷静に、いや冷静に見なくてもわかる。明らかに話が噛み合っていない。
卒業式のこの感動ムードをぶち壊しにしている2人を見て、涙ぐんでいたクラスメイト達は、ソワソワと近づき難い2人を見守っている。勿論、ここで「やめろよ!」なんて言って止めに入るクラスメイトは居ない。初期の頃は、そうやって正義感をもった子が止めに入っていたりしたが、止めてもキリが無いことや、逆に機嫌の悪い静雅に泣かされることが多いために居なくなった。上下関係がしっかりしているクラスだ。
あと5分でチャイムがなる。
チラッと時計を見た静雅は思った。そろそろ担任が来てもいい頃合いだろう。もし、担任が来てバックレようとしている静雅を見たらなんというだろうか。当たり前のことだが、止めるに決まっている。無理やり出させられることになるだろう。
さて、ここで静雅は2択を迫られる。
▼このまま風間と茶番を続ける
▼風間を居ないものとして教室から出る
諦めるしかなかった。大人しく静雅は風間を連れて教室を出ることを選択した。それ程までに卒業式に出たくないという気持ちが強いのだ。
「チッ。……勝手にしろ」
「元々からそのつもりだ」
すごく、風間の顔面に拳をめり込ませたくなった。
***
サボり場の定番屋上。静雅と風間がよくお世話になったところだ。と言っても、歳を重ねるにつれ、風間の強制力が強まり、ここ最近はちゃんと授業に出てしまっていた為に来れていなかったが。
別棟の体育館から卒業式の音が漏れており、耳を澄ますと僅かに聞こえてくる。それと同時に数人の教師が静雅と風間の名を呼びながら走っている声も聞こえる。
「テメェの母ちゃん達は怒ンじゃねェのかよ」
「静雅も知っている通り母さんは変わってるからな。男はこれくらいヤンチャな方がいいと頭を撫でられるだろう」
「…父ちゃんは」
「母さんが許せば父さんも許してくれる。勿論、兄さんも」
基本的にのほほんとした優しい雰囲気を纏っている風間家は風間が卒業式をバックれたとしても笑って許してくれるだろう。どうせ静雅が絡んでいることは容易く想像ついているだろうから、それも思い出だと静雅や風間の頭を撫でる想像がつく。
それと反対に静雅の母は頭に角を生やしてキレているに違いない。あれだけ朝、力が入っていた母だ。今もきっと血眼になって探しているだろう。父はきっと今頃は雅人を抱っこしながら双子の兄の卒業式を見守っているに違いない。朝、無理やり静雅を着せ替え人形にしていた母を止めていた父だったが、それを聞かなかった為、今この現状ができていると理解している。多分だが静雅の味方についてくれるだろう。
「そうだ静雅。写真を撮ろう」
「実はここに来る前、父さんに会ってカメラを借りたんだ」そう言う風間の手には真新しい一眼レフがあった。一眼レフを持ってきている辺り、風間家の両親は風間の卒業式を結構楽しみにしていたんじゃなかろうか。そう思うと静雅は少しだけ申し訳なくなった。
「…1枚だけだ」
その一眼レフを使わずに返すのも気が引けたので1枚だけ了承する。まさか了承されるとは思っていなかった風間は一瞬、驚いた顔をした後、嬉しそうに笑った。
「ああ」
あれやこれやと試行錯誤しながら撮った1枚は拙い写真だったが、如何にも青春らしい写真だった。
珍しく静雅の顔は笑っていた─。
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
-
宇佐美栞
-
二礼光
-
オチなし
-
他の誰か