影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

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ランク戦書きますかと感想で頂き、ぶっちゃけその感想をいただくまでは書くつもりありませんでした。需要あるかわかんないし、アンケート取ろうと思ってたんですけど、どうしても静雅と風間隊の関係が書きたかったので触りで書いてます。
でも、だいぶ端折ってるので、ちゃんと後で書くかも。番外編とかで。


第14話

 

 迅にとって静雅は恩人と言っても過言ではない。未来視のサイドエフェクトがあるとはいえ、勉強はどちらかと言えば苦手な方で、数学などは特に解き方を分かっていないと厳しかった。そんな時によく勉強を教えてくれたのは静雅である。赤点取りまくりで親がしょっちゅう呼び出される太刀川を引き摺り、往復練習だと太刀川の監視も兼任した風間とよく4人で勉強会を開いたものだ。まあ、今でも迅を除く3人は大学へ行っているので定期的に勉強会は開いているみたいだが。

 

 影浦静雅とは初対面時のインパクトが中々に強く、敬遠する人もいるが、迅は違った。未来視云々を除いて、純粋に彼に惹かれている節がある。それに、精神的に助けて貰ったこともある。

 

 だから、根付の暴力騒動があった時も頑張って庇ったし、本部の壁を壊した時も頑張って庇ったし、気に入らないC級をブース外で首ちょんぱした時も庇ったし、庇えるところは庇っているつもりである。が、これは流石に庇えないぞ…とダメな方に進みつつある未来を予知した迅は思う。

 

 今現在、B級のランク戦をしている風間隊の成績は著しくなかった。隊を作ってまだ時間がそう経っていないこともある。が、しかしそれだけの理由ではなかった。

 

 

「中々にやられてるじゃないか」

「あ、忍田さん。わざわざ見に来たんですか?」

「…何となくこうなる気がしていたからな」

 

 

 隣にやって来た忍田に挨拶をする。忍田なりに風間隊が心配なのだろう。何せ、あの隊はある意味爆弾を抱えている。

 

 モニターでは険しい顔をしている菊地原と明らかに機嫌の悪い静雅が映っていた。現在、菊地原と静雅で荒船隊の隊長 荒船哲次と、三輪隊の隊長 三輪と交戦しているところである。この中で2人とはいえ、合流出来ている菊地原と静雅は優位な位置にいるのだが、戦況はそうでもなかった。

 

 

「静雅は個々としての力は優れているが、残念ながら協調性は無い。それはどうやら菊地原も一緒のようだ」

 

 

 攻撃手(アタッカー)ランキング1位の静雅。サイドエフェクトの恩恵もあって、相手が隠れてもすぐに撥ねることができ、機動力もある。伊達に一位を死守していない。勿論、実力だってある。その為、太刀川はよくポイントを根こそぎ搾り取られ、未来予知が出来る迅でも頑張って五分五分に持ち込めればいい方と、静雅は非常に才能に溢れていた。

 菊地原も強化五感のサイドエフェクトを持ち、耳がいい。実力としてはまだまだではあるが、上がり立てとして見るのなら、風間の指導が効いていると思う。

 

 しかし、誠に残念なことに、この隊を結成した風間も頭を現在進行形で悩ませているのだが…菊地原と静雅が全く合わないのだ。短気な静雅と思ったことをなんでも言う菊地原。まさに火に油で、顔を合わせて数分で喧嘩を始めてしまうのだ。

 

 

[風間さん、だからぼくはヤダって言ったんですよ」

[文句ばっか言わないで少しは合わせる努力をしろ]

[…おい風間。俺、間違えてこのガキの首撥ねるかもしれねェ。仲間の首撥ねてもポイントって入んのか?]

[シズさーん、きくっちー殺してもポイントは入んないよー]

[つか、ぼくが殺されるわけないじゃん]

[[…ちっ]]

 

「あー、あれはもうダメだね」

 

 

 迅が苦笑いを浮かべながら言った。

 個々の力であれば完全に静雅が有利である。つい最近、東隊が解散し自分の隊を作った三輪と、菊地原達と同時期にB級に上がってきた荒船。サイドエフェクトを持っている菊地原が若干荒船を押しているが、部隊経験…それもつい最近までA級部隊1位に所属していた三輪がそう易々と荒船を落とさせる訳もなく…。

 一向に連携のれの字すら見せない菊地原と静雅。対して協力とまではいかないが、違う隊なのに中々の連携を見せている荒船と三輪。臨機応変に風間隊をジリジリと押していた。

 

 

「これは三輪に分があるな」

 

 

 忍田の言う通りだった。戦況は合流出来た風間隊ではなく、三輪に分がある。三輪は荒船と共に、菊地原と静雅を押し──最終的には2人を落としたあと、荒船も落とすつもりなだろう。

 

 

「荒船くんは確かに才能がある。しかし、三輪は東くんから教えを受けていたからな…」

 

 

 それに、三輪の方がボーダーにいる歴も長い。つい最近B級に上がってきた荒船とは目に見える力の差があった。

 

 それに気づかない程、菊地原と静雅も馬鹿では無い。そう易々と点は取らせない。その気持ちで戦ってはいるものの、残念ながら同じ部隊に所属しているはずの静雅と菊地原は拙い連携をしようとするが、荒船の攻撃を左右で避け合い、身体をぶつけ逆に危機に陥ったり、静雅が正面から三輪に斬り掛かるが、避けられ三輪の背を狙っていた菊地原を斬ろうとしたりなど、本当に同じ部隊に身を置いているのか疑問に思えるほど、息が合わない。

 

 そして、遂に堪忍袋の緒が切れる。

 

 

「ほら、斬っちゃった」

 

 

 迅がそう呟くと同時に顔に青筋を立てた静雅は迷うことなく目の前にいる三輪──の首ではなく、真横にいた菊地原の首を撥ねた。

 

 

『相手にポイント入るぐらいなら俺が殺す』

 

 

 静雅の次に青筋を立てたのは、迅の隣にいた忍田だった。

 

 ここから一気に戦況が変わる。菊地原をベイルアウトさせた静雅は『お荷物がようやくなくなった』と呟き、三輪に切りかかる。菊地原がいると連携を意識したり、ちょこまかと動かれて集中が出来なかったりと、静雅にとってはマイナスな面が多かった。しかし、その菊地原ももうおらず、存分に暴れられる。

 

 

『仲間を斬るとは…中々な奇行だな。……しかし、誰かが真似したらどうする。貴方にはそれ程の影響力があるだろ』

『真似だ? どうぞ皆さん、お隣に菊地原が来たら殺してやってください』

『…話すだけ無駄か』

『おいおいマジかよ…菊地原を斬りやがった…』

 

 

 スコーピオンと孤月の鍔迫り合いでは、どうしても静雅が使っているスコーピオンの耐久性で負けてしまう。荒船と静雅が鍔迫り合い、力で勝った荒船が静雅のスコーピオンを割る。バリンと音をたてて無くなるスコーピオンを見た荒船はこれを勝機だと思い、飛びかかる。しかし、そんな荒船の後ろには構えた三輪がスタンバイしており、静雅の位置からだと荒船と共倒れだ。

 

 しかし、静雅は持ち前のセンスでカバー…では無く、何を思ったのか、荒船の首を絞めた。

 

 

『!?』

 

 

 

 苦しくはない。が、人間の咄嗟の防衛反応で驚いてしまう。

 

 

『戦闘体活動限界。ベイルアウト』

 

 

 そのアナウンスと共に荒船がベイルアウトする。

 首を絞められただけで、トリオン体はベイルアウトをしない。トリオン体は「トリオン伝達脳」という脳の部分、若しくは「トリオン供給機関」という心臓の位置にある部分を壊すか、相手のトリオンを空っぽにさせるの3択でベイルアウトさせることが出来る。

 

 

『…荒船さんは大して怪我を負っていなかった。…なるほど、スコーピオンか』

 

 

 スコーピオンは身体のどこでも出し入れ可能である。その為、危険を察知した静雅は咄嗟に荒船の首を絞め、首を絞めている掌からスコーピオンを出したのだ。

 

 

『早よテメェも死ねや』

 

 

 その言葉と共に、気がつけば三輪の首も自分の胴体と離れていた──。

 

 

『戦争中におしゃべりしろとテメェは東さんに習ったンか?』

 

 

 つまらねェと言い捨てると、風間か歌川と合流すべく、移動を始める。

 

 このB級ランク戦、結果は生存点を含め5点取った風間隊が勝利だった。しかし、この結果を勝利と言っていいのか…勿論、否である。

 ブース画面が暗くなると、忍田はため息をつき、試合を観戦していた隊員に「決して真似しないように」と注意をする。

 

 

「いやいや、あんなマネできるのは静雅さんだけですって」

 

 

 基本的にボーダーには性格のいい人が集まる傾向にある。明るく、周りを照らす嵐山だったり、なんだかんだダメダメな太刀川を世話する風間、どうしても静雅が放っておけない忍田と、仲間の首を邪魔だからチョンパしようとは思わない。一時期、力でゴリ押ししていた二宮でもそんな体験はしていない。

 

 静雅がブースを出た途端、怒りを滲ませた忍田が静雅の首根っこを掴む。

 

 

「ンだよ!! 離せクソ忍田!!」

「いいから来い。お前には仲間の大事さについて話さなくてはいけないらしい」

 

 

 「離せ、離せェェェ!!」と叫ぶ静雅を見て菊地原が「ふん、ざまあないじゃん」とボソッと呟く。それを聞いた風間が菊地原の首根っこを掴んだ。

 

 

「安心しろ菊地原。お前もお勉強の時間だ」

 

 

 ズルズルと引きずられていく菊地原を見て不安気に歌川はため息をついた。2人とも仲間としては頼もしい人物である。菊地原がいつも余計な一言を言ってしまうため、喧嘩が起きてしまうのだが、中々に菊地原が言うことも的を射ていて、注意しても…いや、もうここまで来るとどっちもどっちだ。

 

 

「…本当にこの隊大丈夫なんでしょうか」

「まあ、何とかなるよ。風間さんがいるしね」

 

 

 菊地原達の後にブースから出てきた歌川が不安気に宇佐美に問うた。不安気な歌川とは対称的に、宇佐美はニコニコしており、何故か自信満々だ。

 

 

「それに…うってぃーだって気づいてるでしょ? シズさんは確かに言動行動には難ありだけれど、悪い人ではないんだよ」

 

 

 色々と仕事の整理をしていて帰りが遅くなった宇佐美を家まで送ってあげた静雅。隊室に教科書を置き忘れて帰ってしまった歌川を心配して、次の日の朝わざわざ学校まで届けてくれた静雅。思い返してみれば、歌川や宇佐美が静雅に怒られたことはそうない。

 

 

「それにしてもうってぃー見てた? シズさん凄くカッコよくてねぇ。スパーンときくっちーの首を撥ねたあの姿、思わず一瞬うっとりしてしまったよ」

「静雅さんが菊地原の首を撥ねてる時、俺は米屋先輩と戦闘中でしたから、見てません」

「そうだったっけ? じゃあ後でログを見返すといいよ。アレはねぇ、本当に職人技だったよ。きくっちーの驚いた顔、有り得ないと言うような三輪くんの顔に荒船くんの顔。やっちゃダメなことだとはわかってるけど…少しスカッとしてしまったね、うん」

「…それ、風間さんの前で言わないで下さいよ」

「分かってるって」

 

 

 そう宇佐美は眼鏡を反射させながら言った。そんな宇佐美を見て歌川は本当か?と少し疑うが、宇佐美まで疑い始めたら終わりだと、頭を横に振って疑うことを強制中止させる。

 宇佐美は静雅に対する好意を隠すことなく、かっこいいと思った時はそれを遠慮なく口にする。風間隊の面々は宇佐美の好意に気づいているが、残念なことに人の感情に疎い静雅には気づかれていない。

 

 ここで風間隊のオペレーター、宇佐美栞について少し説明しよう。宇佐美栞、彼女はこよなく眼鏡を愛し、オペレーターの支援技術も定評である。そんな彼女は、同じ風間隊の影浦静雅に一目惚れをしてしまったらしい。グイグイ行く時は行くし、引く時は引くという空気を読める女性だ。

 

 

「告白とかしないんですか?」

「告白? うーん、今のところは考えてないかなぁ」

 

 

 今、告白したところで「ア? 興味ねェ」で終わらされそうな気がする。それを宇佐美は歌川に伝えると歌川も「確かに」と同意した。

 

 

「でもさでもさ、私噂を聞いてしまったのだよ」

「静雅先輩に関する噂ですか?」

「そうそう」

 

 

 「どんな噂です?」歌川がそう聞き、宇佐美はよくぞ聞いてくれましたと言うかのように胸を張る。

 しかし、宇佐美がその噂を口にすることは無かった。

 

 

「静雅さんが眼鏡を掛けてるって噂だろ? ほんとだよ。おれも何度も見たことあるし」

「迅さん!! 何で言っちゃうの!!」

「はっはっは。ごめんな宇佐美。ついつい言いたくなっちゃってさ」

「いや、そんなことはどうでも良くて!! ていうかアレ本当だったの!? 太刀川さんの嘘だと思ってた!」

 

 

 「おい、宇佐美。聞いたぞ〜。静雅さんのことが好きなんだってな。そんなお前にいい情報を教えてやろう。静雅さんは勉強してる時だけだが眼鏡をかける。眼鏡をかけると目付きが普通になるもんでな、それが男の俺から見ても結構かっこいいと思っちまうんだよ」そう教えてくれた太刀川の顔はニヤニヤしていて…ぶっちゃけ信じるか信じないか迷うところだった。

 

 

「んふふ、忍田さんに解放されたら頼んで見ようかな♪」

 

 

 ルンルンな宇佐美を見て歌川は思った。本当にこの部隊は大丈夫なのだろうかと。

 ちなみに菊地原の首を撥ねた罰として、静雅の減点に加え、先程のランク戦は最下位となってしまった。




ちなみに転送位置は…

     影浦   三輪
              菊地原
  荒船    
               
    奈良坂    歌川
        米屋
                穂刈

 風間          半崎



Q.何で風間隊VS三輪隊VS荒船隊なの?
A.とりあえずランク戦書きたかった。でも、この時期ってどの隊がA級とかよく分からなくて、オフィシャルブックと睨めっこしながら考え考え考え抜いた結果、考えることをやめました。いやもう、草壁隊と加古隊はこの頃ってまだ緑川もいないし、黒江もしないし、そもそもA級1位の東隊が解散してるのかも分からないし、もうパンクした為、比較的書きやすい三輪隊とアタッカー荒船さん出したかった。丁度見てたアニメで荒船さん出てたのも大きい。

オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)

  • 宇佐美栞
  • 二礼光
  • オチなし
  • 他の誰か
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