影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

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*日付からわかる通り影浦雅人誕生祭の小説です。
*お誕生日おめでとう、影浦雅人。本編で一言も祝われなくてごめんね!
*時系列はネイバー侵攻が終わったあとぐらいです。
*本編を読んでない人は本編から読むことをオススメします。
*終わり方が迷子になった自信があるので、書き直す可能性あり!

──本日の主人公──
【影浦 雅人】
 この番外編の主人公。あの手この手で静雅が企てている計画を阻止しようとしている。その為なら大嫌いな犬飼にも協力を仰ぐ。

──愉快な仲間たち──
【影浦 静雅】
 雅人の実の兄。お好み焼き屋の次男坊。尚、彼にお好み焼きを作る才能はない。
歳下に貢ぐ癖アリ。多額のお金を貢ごうとしては菊地原に止められ、ぶうぶうと説教される21歳。

【風間 蒼也】
 静雅の幼なじみ。静雅の貢ぎ癖は一生かけても治らないと諦めている。自分が20歳の誕生日プレゼントとして静雅に車を貢がせた。悪気はなかった。でも車も欲しかった。

【太刀川 慶】
 成長しないバカ。レポートをよく溜める癖があり、定期的に静雅と風間に殺されている。同隊の後輩である出水に「剣の腕は信用しているけれどそれ以外は一切信用していない」と言わせた男。
「レポートちゃんと提出しました?」
「おー、したした」
全ては太刀川が悪い。

【北添尋】
 ふくよかなボディにニコニコとした優しい笑顔の裏には八度にわたる雅人とのタイマンが潜んでいる。怒らせたら怖い系男子。しかし、本人の一人称がゾエさん故に、殺伐とした雰囲気も彼が喋れば一発で朗らかな空間へと様変わりする。菩薩。

【村上 鋼】
 隊長の菩薩度を分け与えられた戦士。来馬辰也の守護神として名を轟かせている。後輩の真の悪から色々と面倒事に巻き込まれたりするが、笑って許してしまうぐらいには菩薩として出来上がっている。

【荒船 哲次】
 パーフェクトオールラウンダーを目指すアクション派スナイパー。元スコーピオンの使い手であり、現スナイパーである静雅をどうにかしてこの道に引きずり込めないかと画策しているが静雅には「パーフェクトヒューマン」と間違って伝わっている。心を強く持って諦めないで欲しい。

【穂刈 篤】
 某飲料水を彷彿とさせるニックネームを持つ男。喋り方が倒置法なので、非常にめんどくさい。メールになるとキャラ変して倒置法を忘れ、やけに饒舌になるとか。普段もそれでいて欲しい。

【犬飼 澄晴】
 笑顔の裏には闇がある、を体現している男。多分左利き。雅人から超絶嫌われているが気にしていない心強き男。これからもその意気で頑張って欲しい。

【当真 勇】
 実は太刀川よりも勉強が出来ない男。それはやばい。早急に受験勉強した方がいいと思う。自主的に彼の勉強を見てくれる人が今しかおらず、それも同クラスの国近と並行してなので色々と終わっている。ちなみに同じ隊の真木理佐は彼の学業を切り捨てているらしい。

【王子 一彰】
 キラキラとした苗字とは裏腹に変なあだ名をつけてくる。一見王子様を彷彿とさせるルックスだが、過去は尖っていたらしく犬飼同様若干闇がチラつくキャラ。中々使い時が見つからないため必然的に登場回数は少ない。

【蔵内 和紀】
 一度静雅と対面で話した時があり、その時に「会長」と呼ばれたがために色々な噂を流された男。曰く、影浦静雅は蔵内の下についたとか、王子を筆頭にしてボーダーをめちゃめちゃにする気だとか、そろそろ根付(さん)殺されるんじゃね?とか。尚、この噂は静雅の耳に入る前に風間隊がもみ消したし、根付は本気にして忍田にボディガードを依頼していた。ちなみに静雅が会長呼びした理由は単純である。
(あー、雅人と同じ学年の…誰だっけ。確か荒船とか犬飼が「会長」って呼んでたな)
強く生きて欲しい。

【水上 敏志】
 よくブロッコリーとイジられる生駒隊参謀。何やら本誌で彼がまたイジられたらしいがネタバレになるといけないので敢えて明記はしない。基本、彼が出るとイコさんが出しゃばるので登場回数は必然と少なくなっていく。

【生駒 達人】
 最近、海に「静雅さんのストーカー」と呼ばれたことが悩み。確かに静雅の行動は大体把握出来るようにしてるし、見かけたら後をつけたり写真とったりしてるけど…。ストーカーでは無いと思っている。マリオに相談したところ「それはストーカーや。今すぐやめぇ!」と隠し撮り集を全削除されそうになった。特別深い思いを静雅に寄せている訳ではなく、ただただ静雅のようなイケメンになりたいと言う願いからの行動らしい。ちなみに迅も一度通った道だとかなんだとか…。

【南沢 海】
 アンパンマンよりも元気な男。よく悪気のない悪意を生駒にぶつけては撃沈させている。悪気は無い。でも、それは本心である。5歳児でも遂行できる初めてのお使いができない男。興味もへったくれもない任侠映画を片手に持って生駒隊隊室にやってきた。

【隠岐 孝二】
 肝心なところで外すスナイパー。本編では一切絡めていないが、どうやら静雅に好かれている模様。時々、焼肉を奢ってもらう仲。生駒からの飛び火が凄い。

【細井 真織】
 生駒隊の貴重なツッコミ役。ニックネームはよく攫われるお姫様を助けに行くおっさんと同じ。シルエットは某21歳と似ている。
キティちゃんよりドラえもん派。

【来馬 辰也】
 鉄壁の戦士と真の悪を手札に置く菩薩。真心込めて育てた熱帯魚を白茹でにされても血涙を流し許してしまう彼を菩薩と形容せず何と言うのか。尚、太一と折り合いの悪い静雅から一目置かれていることは本人の知らぬところである。

【宝くじ】
 三門市某所の宝くじ売り場で諏訪が購入している所を見届けていると「どうせだから静雅も買え! 一口100円だしよ!」と勧められて数枚ほど購入した。お金に頓着ない静雅は買ったと同時に諏訪に預けていたのだが、後日騒がしく風間隊の元へやってきた諏訪が「静雅の宝くじ、1等の組違い賞で当たってやがる!!」と報告に。その10万は風間隊&諏訪隊のご飯代で消えたのだが、当たったという事実だけを雅人に教えているため、雅人はそのことを知らない。



番外編0-2 影浦雅人の秘密裏計画!!

 

 5月某日。ボーダー本部内のラウンジにて。6人がけの椅子(+1)に座る男達の顔ぶれはそう珍しくない。強いて言うなら、無理やりにでもついてきた犬飼の顔を見て雅人の機嫌が悪いのだが、これもいつもの事である。特筆すべきことでもないだろう。

 

 

「王子と蔵内は」

「防衛任務に出てる」

「…別に要らねーけど当真は」

「当真も防衛任務だな」

 

 

 18歳組と呼ばれる同年齢の彼らの仲はいい方である。一部、ギスギスしている者やしていた者もいたが、片方は特に気にしていなかったり仲直り出来たりと比較的仲は良好な部類だ。そんな彼らを呼び出したのは雅人であり、一斉送信されたであろうメールを見て雅人(と北添、犬飼)を除く者達は何があったのかと心配した。ちなみに、北添は呼び出し理由を知っているためメールの送信はなく、犬飼は意図的に呼び出されていない。

 

 雅人から呼び出すことなんて専らランク戦であり、それ以外の要件と言えば「飯食いにいかね?」ぐらいのものだ。

 

「あのカゲが…」

「何があったんだ、一体」

「え、荒船達カゲから呼び出されたの? おれ、呼び出されてないんだけど!」

 

「…太一、すまん。カゲからの招集が──」

 

「カゲ君からの呼び出しは珍しいなあ」

「王子、その時間は防衛任務だぞ」

 

「真木理佐〜、今からって」

「防衛任務。アンタのそのスカスカな頭どうにかならないの?」

 

「…おー、珍しいやんカゲからの呼び出して」

「カチコミですか水上先輩!!」

「エッ、水上カゲんところにカチコミ行くん? しゃーない、ウチのイケメンスナイパー隠岐を貸したるわ!!」

「イコさん、急な飛び火と本人了承無しのレンタルはあきまへんわ」

「…海、アンタTSUTAYAで何借りてきた言うてたっけ」

「よく分からない任侠映画です!!」

「ドラえもん借りてこい言うたやろ!!!」etc...。

 

 「来れるやつ今すぐ集合。ただし、死んでもクソ犬は連れてくるな」を見て集まった彼らはよく言えば友達思い、悪く言えば暇人である。

 

 

「おい荒船! クソ犬は連れてくんなつったろーが!!」

「仲間外れは酷いと思うよ〜?」

「連れてきたんじゃない。ついてきたんだ」

「そもそも悪かったんだ、タイミングが」

 

 

 呼ばれすらしなかった犬飼はちゃんとした席に座れず、一人溢れてしまった。近くの椅子を持ってきて無理やり輪に入っている状態だ。そこまでしてこの場にいたいのか、という視線を感じるが犬飼はヘラヘラと笑って重い腰をあげようとはしない。テコでも動かないつもりだろう。

 

 

「そんなことよりも何かあったん? カゲからの招集珍しゅうて思わずイコさん連れて来よかーって悩んだわ」

「俺もいざっとなった時のために来馬さんと一緒に来た」

「せめておれにも一声かけてくれなーい?」

「死ねクソ犬」

「まあまあ、カゲもそうイライラしないで。みんなに相談したいことがあるんでしょ?」

 

 

 今すぐにでも犬飼を殴らんとする雅人を落ち着かせ、北添が言う。雅人と北添以外の5人が「相談?」と声を揃えた。そりゃそうだろう。雅人は相談と無縁そうな顔をしている。

 

 

「………」

「ほら、プライドとか要らないものはゴミ箱に入れちゃおう! 一人でも人は多い方がいいし」

「……………」

「ここで相談しなかったら後々困るのはカゲだよ?」

「……………………ちっ」

 

 

 同年代に相談を持ちかけるのが嫌だったのか、それとも犬飼に相談内容を聞かれたくなかったのか、雅人の心中は分からないが、どうやら未来の自分をとったらしい。誠に不本意です、と顔にデカデカと書いた雅人はようやく、口を開いた。

 

 

「6月4日…」

「6月4日?」

「あ! それってカゲの誕生日じゃんね!」

「黙れクソ犬」

「…さっきからおれにアタリ強くない? まあ気にしないけど」

 

 

 6月4日。それは犬飼の言う通り影浦雅人の生誕祭である。5月後半になると、北添の微笑ましい視線とソワソワし始める仁礼に絵馬を雅人は感じ取る。別に誕生日プレゼントなんて要らないが、相手が用意したくて仕方ないらしいからそのまま放って置いている。が、それは影浦隊のメンバーだけだ。

 

 

「催促か? プレゼントの」

「ほんなら飴ちゃんあげような」

「わかった。なんの参考書が欲しいんだカゲ」

「荒船は数学の参考書にすればいいんじゃないか? 俺が化学の参考書渡すよ」

「じゃあゾエさんは人の気持ちを分かれる男になりますようにって願いを込めて国語の参考書渡そうかなあ」

「カゲってばわざわざ呼び出してまでプレゼントの催促したかったの? みんなあげるならおれからは…あ! 古今和歌集とかどう? カゲが風流な男になったら面白い──」

「お前らいっぺんくたばれ!! 特にクソ犬とゾエだ!! つーか、ゾエ!! てめー呼び出した理由知ってるくせに乗っかってんじゃねーぞ!!」

 

 

 ガルルと犬のように吠える雅人をみんなは優しい目で見つめる。優しい、いや、どことなくニヤついて面白いものを見つけたと言わんばかりのハイエナの目だった。

 

 

「まあまあカゲ」

「分かっているぞ、俺たちは。カゲの気持ちをな」

「気色悪いモン向けてくんじゃねー!! 殺すぞ!!」

「いつまでもそうカッカしてると血圧上がるよカゲ?」

「………」

「(耐えてるな)」

「(耐えてるな)」

「(頑張ってるなあカゲ)」

「(相変わらず性格悪いやっちゃなあ)」

「(血圧上げてる本人が言うなよ…)」

 

 

 プレゼントの催促をしていると勘違いされた雅人の怒りパラメータは上がる一方だ。特に犬飼の存在がダメだった。

 

 

「で、結局呼び出した理由はなんなんだ?」

 

 

 このままじゃ埒が明かないと代表して荒船が雅人に問う。雅人は「はあああ」と重苦しいため息を吐き出した後に「兄貴が…」と声を漏らす。

 

 

「兄貴?」

「兄貴ってあの人だよね?」

「静雅さんだろ?」

「どうしたんだ、それが」

「カゲは静雅さん大好きじゃないか」

「いや、まあ色々とね…」

「あンだよ……」

 

 

 雅人が呼び出した理由を知っている北添も若干疲れたような顔をしている。なんなら雅人は頭を抱え始めた。

 

 

「張り切ってんだよ…」

「静雅さんがか?」

「何を?」

 

 

 いまいち状況が理解出来ない彼らは頭の上に沢山のクエスチョンマークをつける。「何か知らないけどいいじゃん」と軽く言った犬飼に噛み付く雅人。その形相は人を一人殺してきた後のような顔だ。

 

 

「いいわけねぇだろ!!!」

「…遂にキレた」

「堪忍袋の緒が切れたんやなあ」

「笑ってないで助けてあげたらどうだ、犬飼を」

「お前がこの場で一番肉体派だろ」

「お前たちも鍛えたらどうだ。世界を救うぞ、上腕二頭筋は」

「いや、世界救う前に犬飼をカゲの魔の手から救ってやれよ」

「でも犬飼楽しそうだし大丈夫なんじゃないか?」

 

 

 襟袖を掴まれ、グワングワンと前後に揺さぶられている犬飼の顔は確かに楽しそうに見える。対して、揺さぶっている雅人の顔は全く余裕がなさそうだ。

 

 

「…当たっちまったんだよ」

「「「「「何が」」」」」

「──宝くじ、10万が」

 

 

 宝くじ、10万。それを聞いた瞬間その場にいた男達が沸いた。「すげーじゃん!!」「え、めっちゃいい事じゃん!」「何がだめなの!?」決して自分達が当てた訳では無いのにこの盛り上がりよう。ラウンジの角の席とはいえ、ギャーギャーと盛り上がっていれば人の目につく。現に今も、あまりにも盛り上がっているので何かあったのか?とチラチラ視線を集めていた。

 

 

「…宝くじが当たったことは凄い。が、その前に落ち着こう」

 

 

 この場で比較的冷静だった村上が騒がしい彼らを落ち着かせる。急に騒ぎ始めたものだから、ここまで一緒に来た自隊の隊長、来馬が若干心配そうな目でこちらを見ている。それがどうも、村上はいたたまれなく感じていた。

 

 村上の一声で落ち着いた彼らは、大人しく席に座ると雅人に視線を寄こす。サイドエフェクトかそれとも肌で感じ取ったのか知らないが、雅人は某アニメでお馴染みのゲンドウポーズをとり、顔を陰らせるとこう言った。

 

 

「宝くじが当たったせいでグレードアップするんだよ。俺の誕生日プレゼントが!!!」

「「「「あっ…」」」」

 

 

 弟故の悩みだった。

 

 雅人の兄である影浦静雅は、人相故によく怖がられる男である。常人ならメガネをかけるほど視力が悪いにも関わらず頑なにメガネをかけない姿勢に、言葉遣いも悪いという理由から嫌厭されてしまう。しかし、その蓋を開けてみれば弟思いの優しい兄であり、殆ど歳下に限定されてしまうものの、見かけたらとりあえず褒めてくれる&ジュースを奢ってくれるという、良い言い方で言うなら優しいお兄さん、悪い言い方で言うならカモである。

 

 しかし、その奢り癖がいけなかった。静雅は自分に無頓着であり、他人を優先させてしまう。そのため、静雅の貯金は全て雅人の将来のために使うと公言されているし、親友の記念すべき20歳の誕生日プレゼントだからといって車を渡してしまうようなそんな男なのだ。

 

 雅人の去年の誕生日プレゼントは初代プレステから最新の5までのセットだった。しかも本体だけ持っているのもアレだから、という気を利かせて国近セレクトのゲームが何本かと、影浦隊で遊べるようにとコントローラーを4つ。それも純正のものが贈られた。

 

 

「そもそも18になったら車の免許取れるからっつー理由で俺の誕生日プレゼントが車で確定した」

「うわあ」

「凄いな、それは」

「…あの人確か風間さんにも車買ってたよな?」

「金銭感覚狂ってるな〜」

「佐鳥とかにもめっちゃ奢ってるって聞いた事あるぞ」

「菊地原がよくボヤいてるもんな…」

 

 

 今のところ交通手段は北添がいるし、ボーダーの関係上そう簡単に三門から出られないので免許はとっても車は要らないと雅人本人は考えていた。乗らないのに持っているのは税金等がかかるし邪魔なのでそこそこに迷惑な話である。まあ、貰えるなら乗るけど。

 

 

「買うなら自分で買うつってんのに頑なに買うって言い張るんだ」

「いいじゃん。貰える時に貰っときなよ」

「車をちゃんと買うってなったら結構な額になるしな」

「確かに他人からだとアレだけど、兄ちゃんからなんだし良くね?」

「考えすぎなんじゃないか?」

「いい車を選べよ、どうせなら」

「……いや、金かけすぎだろ!!」

「去年もアレは結構お金かかってたと思うしねぇ」

 

 

 年々グレードアップしていくプレゼントは、弟と言えどここまで来ると申し訳なくて仕方ない。しかも、宝くじが当たったからせっかくなのでカスタマイズとかしようと言い始めている。特に車に興味のない静雅は「とりあえずシートとか高いやつにしとけばいいんだろ?」と言っており、必死にやめてくれと言っているが止まる気配が見えない。

 

 

「…別に車が欲しいとか兄貴の前で言ったことねぇし。そこまで高いやつを強請ったこともねぇ。普通に生きて、朝に「おはよう」夜に「おやすみ」って言い合えたら俺は別になんだっていいんだよ」

「カゲ、めっちゃいい子っっ…!!」

「いや、それは欲無さすぎじゃん?」

「その顔に似合わへん言葉やな」

「本当に好きなんだな、静雅さんが」

「そういうのは未来の奥さんに言ってやれよ」

「ゾエ、ハンカチあるぞ」

「ありがとう鋼くん…」

 

 

 極論すぎるような気もするが、そもそも静雅はA級隊員であり定期的にネイバーフットへ遠征にも行く。本人の実力もそうだが、サイドエフェクトが有効的すぎて遠征メンバーから外されることは余程なことがない限りないだろう。その為、定期的に遺書を書いたりしているようだし、ネイバーが頻繁に現れる三門市で隣にいた友達がふとした瞬間に居なくなる、なんてザラである。そう考えると、一番の願いかもしれない。

 

 

「だからどうにかして誕生日プレゼントを車っていう考えを消したい。手伝え」

「いや、それは…」

 

 

 水上が目配せすると雅人と北添以外が「うん」と同時に頷いた。

 

 

「「「「「無理だろ」」」」」

 

 

 

 * * *

 

「嫌いな奴にまで頭下げてんだからせめて何か知恵を振り絞れやァ!!」

「急なチンピラ感!! さっきの優しいカゲ戻ってきて〜!」

 

 

 机をバン!!と叩いて犬飼にメンチを切る雅人。雅人の隣に座っていた北添が「まあまあ」と雅人を宥める。

 

 

「それこそ静雅さんの手網を握ってる風間さんの出番じゃないのか?」

 

 

 荒船が言った。その言葉に他数名も頷く。確かにボーダー内では静雅=風間という方程式が出来上がっており、静雅が何かやらかしたら風間を呼べ、は暗黙の了解になりつつある。尚、太刀川が何かした時もとりあえず風間を呼んでおけば丸く収まることが多い。

 

 

「…俺もそう思って相談したわ! ……何て言われたと思う」

「…風間さんやろ? なんか厳しいこと言いそうな気ィするわ」

「「腹を割って話し合え」とかじゃないのか?」

「うわ、めっちゃ言いそう!!」

「語り合え、拳でな…! とかか?」

「いや、何キャラ?それ」

「……で、正解は?」

 

 

 6人の視線が一気に雅人に集まる。雅人は頭が痛いと言うふうに眉間を揉みながら言った。

 

 

「『アイツの貢ぎ癖は諦めろ。言っても無駄な奴とは一定数いる。静雅の貢ぎ癖、静雅の喧嘩癖、太刀川のレポート、太刀川の学力、太刀川の逃げ癖、太刀川の餅。…ラクなのは諦めるか見捨てるかのどちらかだ。耐えられないと言うのなら縛って川にでも捨てておけ。そうすれば自分の悔いを改めるんじゃないのか』だってよ」

「…また太刀川さんのレポートで徹夜してたのかな」

「そろそろ太刀川さんは川に流されるんじゃないのか」

「でもあの人の場合は自業自得だよね」

「風間さんもなんだかんだ言って面倒見いいからな」

「絶対に相談する時期ミスっとるやんそれ」

 

 

 しかし、静雅のことでは絶対的信頼をおける風間が諦めているとなるとどうしたらいいのだろう。みんなが一斉に頭を悩ませるが全然いいアイディアは浮かばない。

 

 

「そもそもクリスマスプレゼントに現金を送ってた人だぞ?」

「夢も希望もないな…」

「まあ、さすがに半数以上は返したらしいけどな」

「受け取ったやつおるんかい」

「水上んとこの隠岐を筆頭にな」

「おい隠岐ィ!!」

「めっちゃ清々しい笑みで受け取った横でイコさんが撃沈してたな」

「でもジュース奢ってもらって機嫌直してただろ?」

「一万円の隠岐とジュースのイコさん。凄いな、落差が」

「……まあ、構って貰えるだけ儲けもんやろ」

 

 

 話が脱線した。雅人が「ゔぅん」と咳をすることで本線へと戻る。暫くして「どうするの?」という視線が交わり…もはや諦めるしかないのかと考えていたその時。神が降臨した。

 

 

「鋼、ぼくちょっと弓場くんのところに──ってどうしたの? 雰囲気重いね」

 

 

 村上と共に本部へ足を運んでいた来馬がやってきた。正しく神からの天啓。これを逃がすまいと、雅人や荒船が来馬の肩を掴む。

 

 急に肩を掴まれた来馬は困惑しながらも、流れるようにして村上が座っていた席へと誘導される。尚、元々溢れていた犬飼が端に追いやられ、村上の座っていた席に来馬が、犬飼が座っていた席に村上が座ることになった。一人「なんで??」と呟いた犬飼の声は誰一人の耳には届かない。

 

 

「え、え、どうしたのみんな」

「来馬さん、どうか力を貸してほしい」

「俺達には強すぎる相手だった…」

「くっ、まだまだ未熟だったということか、俺達は」

「…偉いノリノリやなそこの二人」

 

 

 来馬がやってきたことでこの件は解決したも同然だと思ったらしい。急に「ふっ…」と格好をつけ、荒船と穂刈がボケ始めた。

 

 

「えっ、ナチュラルに立たされたおれは無視? ねぇカゲ、なんでおれは席を立たされたの??」

「元々クソ犬は呼んでねぇだろうが」

「あっ、もしかしてぼくが来ちゃったせいで、犬飼くんの席無くなっちゃった!? ごめんね、今すぐ帰るから!!」

「おいクソ犬!! 余計なこと言うなや!!」

「わーわー、全然大丈夫です!! ちょっ、叩かないでよカゲ」

 

 

 余計なことを言う犬飼の元に雅人の制裁が下る。あまりにも犬飼が必死なので「じゃ、じゃあおじゃまさせて貰おうかな…」と来馬が空気を読んだ。さすが空気が読める方の20歳である。この場に来たのが来馬ではなく、太刀川(バカ)二宮(バカ)加古(バカ)だったら更に混沌を極めていたことだろう。

 

 いまいち状況が掴めていない来馬に代表して雅人が説明する。全てを聞き終えたところで来馬は「うん、理解はできたよ」とひとつ笑みを浮かべて頷いた。そして少し困ったようにこう言うのだ。

 

 

「──正直、ぼくには誕生日プレゼントに車という選択肢がダメなところが分からないというか…。ぼくも鋼や太一、今ちゃんが免許を取ったら贈りたいと思ってたんだけど…」

 

 

 雅人達も一瞬で理解した。そう言えば来馬(このひと)上流階級(かねもち)だった、と。常人の金銭感覚ではないのだ。

 

 

「ごめんね、期待に添えなくて」

「いや、別にそこはどうでもいいんだ」

「そうだ来馬さん。そこはどうでもいい」

「…え?」

 

 

 悲しそうに目を伏せる来馬を見て荒船と穂刈が首を横に振った。思わぬ反応に来馬は首を傾げた。

 

 

「太一に免許は危ない」

「三門市の死亡率が跳ね上がる」

「…こう言っちゃなんだが、あいつは死神だ」

「…確かに」

「まあ、上層部が許してくれないと思うけどな」

「確かカップラーメンもまともに作れへんのやろ? ハンドル握らせたら、やばいわな」

「それこそ過労で根付さんが死ぬことになる」

「…それはそれで兄貴が喜ぶな」

「いやダメだよ!? 市民のためにも、太一くんには…免許を諦めて貰わないと……」

 

 

 言われたい放題の太一である。が、太一が人を轢き殺して泣いて警察に自首しに行く姿が想像出来てしまうので、来馬も「わかった」と神妙な顔で頷いた。

 

 

「しかし、これで万事休す、か…」

「もう大人しく車受け取ったらええやん。めんどいし」

「18で車でしょ? 20歳になったら一軒家贈られるんじゃないの?」

「なまじ有り得そうで怖いね…」

「これでカゲが結婚でもしたらどうなるんだろうな」

「…確かに気になるな。ちょっくら届けて来てくれないか。婚姻届を、そこらの誰かと」

「届けるわけねーだろ! 殺すぞ!!」

 

 

 「そこらの誰かって誰だよ!!」と突っ込みを入れる雅人は正論である。またもや、来馬が来る前の重苦しい雰囲気を纏う彼ら。そこに「あの…」と来馬が恐る恐る挙手をする。

 

 

「カゲくんがちゃんと、誠心誠意込めて頼み込めば静雅さんは無下にしないと思うんだけど…」

「それで納得してたら今までの時間は一体…」

「え、頼み込んでないの?」

「まあ、無駄だと思ってたからね…」

「やるだけやってみろよ」

「案外上手く行くかもしれないしな」

 

 

 来馬を先頭に雅人達は静雅がいるであろうランク戦のブースへと向かう。ちなみに、北添が電話で確認済みなので、静雅はちゃんとブースにいるはずだ。

 

 

「兄貴!!」

「アン…? なんだぞろぞろと引き連れて」

 

 

 辻と一緒にジュースを飲んでいた静雅は、ゾロゾロと連れていた雅人を見て首を傾げた。「今からカチコミでも行くんか?」と呟いた静雅はもしかすると南沢と同レベルかもしれない。

 

 

「兄貴、ランク戦をしようぜ」

「…はあ?」

「俺、誕生日プレゼントはランク戦がいい!」

「きゅ、急にどうしたんだよ…?」

 

 

 グイグイと静雅の手を引っ張り、ランク戦を開始させる雅人を見て「あれは…無理やりだね」と来馬が呟く。

 

 

「それにしても、カゲくんは意外と欲がないんだね」

「カゲが良い子に成長してくれてゾエさん嬉しい。カゲ成長日記にまた楽しい出来事が増えたよ」

「ゾエ、お前カゲの成長日記なんてつけてるのか…?」

「最早母親の域だな、ゾエ」

「えー、面白そう。おれもつけてみようかな?」

「カゲを怒らせたければいいんじゃないのか」

「…実は犬飼ってドMだったりする?」

「ねぇ、勝手な憶測で言うのやめてくれない!?」

オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)

  • 宇佐美栞
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