菊地原と模擬戦したり、佐鳥と時枝を連れて飯に行ったり、歌川と模擬戦したり、佐鳥と時枝を連れて…、風間と模擬戦したり、佐鳥と時枝を…、太刀川を勉強面でボコボコにしたり。兎に角、静雅は充実した日々を過ごしていた。
季節は冬。半袖は仕事の行き場を無くし押し入れの奥深くに封印され、代わりにセーターや長袖、コートなどが活躍する季節。そんな季節のボーダー内では、誰が流したのか分からないが色々な噂が流れていた。曰く、次のランク戦で勝ち上がったものがA級に上がれるらしいとか、A級とB級上位は遠征がどうのこうの。信ぴょう性は全くない上に、静雅は特に興味を示していなかった。それに、そんな噂にかまけている余裕など今の彼にはなかった。何故なら──現在進行形で凍え死にそうだからだ。
今日は特に防衛任務は無く、大学にも顔を出す気にすら起きなかったので、昼過ぎまでぬくぬくと暖かい布団に包まれ静雅は寝ていた。流石にあまり寝過ごす訳にもいかないと少ない良心が働き、起きたのはお昼の13時過ぎだった。若干寝ぼけながら静雅はトイレに向かい…電気をつけた。静雅の家のトイレは窓がなく、光が入らないので、電気をつけないと昼過ぎでも微妙に暗い。その為、カチカチとスイッチを押すのだが一向に電気がつく予兆は見えず、そして気づいてしまった。
「…電球切れてんじゃねぇか」
とりあえず出すものを出した静雅は、ストックの電球を探すが、運が悪いことにストックは無く買い出しに行くしかなかった。家族の誰かに頼もうかとも思ったが、今日一日寝過ごしてぐうたらとしていた静雅の頼みを両親が聞いてくれるとは思わなかったし、双子の兄に頼むのはなんか癪に障る、雅人に頼むぐらいなら自分で買いに行こう、という決断の元、数少ない静雅のジャージを引っ張り出し財布と携帯を持って外に出た。
…ぶっちゃけ後悔している。ホームセンターまでの道のりは長く、そして外も寒い。今、静雅が来ているヨレヨレのジャージでは冷気を通しすぎてしまう。このままじゃ風邪を引いてしまうだろう。目的のホームセンターは見えてすらいないが、このままUターンして帰ろうかと考えが頭をよぎった。…取り敢えず寒いからここでUターンして、今日単独で防衛任務に出ている風間にでも買ってきてもらおう。雅人には頼めないが、風間だったらいいだろうという判断だった。
考えが纏まった静雅は素早くUターンする。そして、一歩踏み出すとジャージの上着のポケットに入っていた携帯が着信を知らせてくる。
相手は迅だった。ぶっちゃけ出るのが面倒。寒い。帰りたい。…無視するか。数秒間、着信は鳴り続けるが無視していると、着信は途切れた。そしてまた鳴り始める静雅のスマホ。これは無視しても意味が無いと静雅は悟った。
「…もしもし」
『あ、やっと出てくれた。静雅さん、頼みがあるんだけど聞いてくれる?』
「絶対ぇヤダ」
『そんなこと言わないでさー』
今すぐ通話を切ってしまいたい気持ちでいっぱいだった。近くでめっちゃ関西弁喋ってるダルそうな男がいるので早々にこの場を後にしたい。
「アカン、迷ってもうた。どこやねんボーダーて。そもそも普通、上京したての雛を1人で放り出すか? 俺に死ね言うてんのかい」
『静雅さん聞いてる? 多分、今日、静雅さん道に迷ってる人を見かけると思うんだけどその人助けてくんないかな? その人、この先のボーダーでかなり重要になって──』
「マジでヤダ」
ダルい。何がダルいってめっちゃ個性がありそう。マシンガントークとかしてきそう。偏見でしかないが、兎に角関わりたくない人種だと静雅は思った。
「アカンわー。誰か助けてくれる心優しい
めっちゃチラチラ静雅を見てくるガラの悪い男。完全に静雅をターゲットにしているようだった。凄く目が合う。早々に帰りたい。ツラツラと1人で何か喋っている迅を無視、通話を切った静雅は男から逃げるように歩き出した。
「何、俺を見捨てようとしてんねん! これかやら都会はアカンわ」
「あ、多分人違いなんで。太刀川なら多分この先の大学に──」
面倒事は太刀川か風間に押し付けるに限る。が、残念ながら相手は手強く、押し付けられてくれなかった。
「え、タチカワ? だれそれ。そんなかっちょええ名前の知り合いなんて居らんで」
「さいですか。じゃあ俺はここで」
「おい、ちょ待てよ。どこ行くんねん。アンタ、ボーダーの関係者やろ。逃げようたってそうはいかへんで」
「ちょ、待てよ」の部分で明らかなキメ顔をした男だが、静雅はガン無視である。打ち合うつもりは無いという意思表示でもある。
静雅がボーダー関係者と割れているあたり、この男もボーダー関係者なのだろう。どこから情報がわれたとかは一切考えるつもりは無い。なぜなら、ボーダー内で静雅はかなりの有名人である。勿論、悪い意味で。
「間違ってたらすんませんなんやけど…アンタ、影浦静雅やろ?」
「ア?」
「ちょっと前にテレビ出てたやん。俺、それ見てアンタかっこええなって思ってん」
嵐山と柿崎が2人で記者会見をしていた時があったように、風間と静雅で同じような会見をしたことがある。あの時はボーダーも人員増加に力を入れており、なりふり構わないところがあったし、目付きは悪いが、顔の出来は決して悪くない静雅と普通にモテる風間に白羽の矢が立つことは仕方なかった。
「あの会見後から俺、眼鏡かけてたらモテるんちゃうか思うてずーと眼鏡かけててん。まあ、モテへんかったけど!」
「…で?」
「「…で?」ちゃうわ! 俺、この前ボーダーからスカウトもろて、わざわざ京都から上京してきてん。三門駅まで来てくれ言われたけど、三門駅知らんし。迎えももう帰ってしもうたって言われたから自力で行こう思うてんけど…俺、地図読めへんこと忘れとって……」
男が自慢げに見せてくるのはGoogleマップ。それみてボーダーに行けないのはかなりの重症だと静雅は感じた。…どことなく太刀川と同じ匂いがする。
「ほんま静雅サマに会えて良かったわ。こんまま俺一人やったら飢え死にとか有り得たわ」
「静雅サマ言うな。つか助けるつってねェし」
「てか、眼鏡かけてへんの? あん時かけとったやん」
「ダルい。うざい。1回黙れ」
思った通り、話の通じない男だ。無視して男の横を通り過ぎようとするが、腕を掴まれてそれは叶わなかった。掴まれた腕を見つめること数十秒。静雅は頭の中で計算した。このまま、この男を無視して絡まれる方がいいのか、それともちゃっちゃと本部へ送るのがいいのか。…静雅は本部へ送ることを選択した。ぶっちゃけ非常に不愉快ではあるが、このまま絡み続けられるよりかはマシだという判断だった。
「…わーった。行くぞ、本部」
「はわわ。ありがとさん」
「はわわ…?」
真顔でありながら、若干空気に星が飛んでいるように思えるこの空間を静雅は見なかったことにして足を進めた。しかしこの後、あれこれと絡まれた静雅は自己紹介させられたり、ちゃっかり三門市案内をさせられることになる。結局どっちを選んでも絡まれる運命にあるのだ。
「思ったより遅かったね、静雅さん」
「…迅、テメェ殺すぞ」
「痛た、おれは何も悪くないから!」
本部前でずっと待ってました、みたいな顔をしている迅の頭を鷲掴んで静雅は言った。その言葉にはかなりの殺意が込められている。さすが関西人。終始テンションは高かった。
「し、静雅さん、これと交換しよう…!」
そう言って迅が静雅に渡したのは、静雅が当初の目的としていたトイレの電球だった。
「こんなので、許されると思うなよテメェ!!」
セクハラエリートは抹殺され、浪速のナスカレーは静雅と仲良くなれた(と勘違いしている)
Q.イコさんはスカウト組だけど本当にこの時期なの?
A.分かりません。生駒隊や弓場対してなどは正確な入隊時が分かりませんので、捏造増し増しです。
Q.静雅はテレビに出ていたの?
A.実は風間と共にテレビに出ていました。しかし、その放送はボーダー内で黒歴史となっており、上層部にその関連した話を話すと凄く怒られます(特に根付から)。勿論、イコさんはそんなこと知らないので、根付相手にマシンガントークで勝ちました。尚、影浦家と風間家にはダビングしてある当時の放送が残っている模様。
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
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宇佐美栞
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二礼光
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オチなし
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他の誰か