隠密機動に特化した新トリガー『カメレオン』と菊地原のサイドエフェクト、そして静雅のサイドエフェクトを駆使した戦法は強力で、確実に風間隊は成果をあげ──遂にA級に昇格することが決まった。
「A級昇格直後に済まないが、君たちには遠征部隊選抜の試験を受けてもらいたい」
真剣な面立ちでボーダー本部、総司令の城戸は風間隊に告げる。忍田に呼び出されることは慣れていた静雅だが、何気に城戸に呼ばれることはほとんど無かったので、大きなやらかしでもしたのかと心配していたが、それが杞憂で良かったと胸を撫で下ろした。
風間隊の前には重々しい雰囲気を纏った上層部が座っている。もちろん、そこには静雅と犬猿の仲である根付も例外なく偉そうに座っていた。
A級に上がってそう日が経っていない。噂では聞いていたが、まさか自分達にその白羽の矢が立つとは思わなかった。
城戸はネイバーフッドへの遠征選抜試験を受けて欲しいと言った。口調はこちらにも選択権があるように聞こえるが、それは聞こえだけで実質こちらに選択権など存在しない。
「城戸さん」
「何かな」
静雅は右手をあげ、城戸に進言する。これだけはこちらも譲れないというものが静雅にもあった。
「俺と風間が行くことに関しては、何も言わねぇ。だが、他の3人は外せ」
「なっ…!」
「キミは何を言っているのかね!?」
「静雅、理由を聞いてもいいか?」
静雅と忍田の目があった。何かしらのアクションを起こした鬼怒田と根付とは違い、城戸は何も言わず、林藤はただニコニコとしている。静雅に質問した忍田は建前上、質問をしているだけで言いたいことは分かっているはずだ。
「俺と風間は世間一般的に大人の部類に分類される。それに自分のやったことにも責任が取れる。が、他の3人は違うだろ。まだ中学生だ。遠征に行っておっ
「それはそうだが…」
「だがキミ達の部隊は菊地原のサイドエフェクト有りきじゃないかね!?」
「だからだろうが」
いちいち突っかかってくる根付を面倒だと思いながら、静雅は補足の説明をする。
「この遠征がなんのためにやんのかは知らねぇ。が、少なくとも、全部隊を投入する必要もねぇだろ。ここに全てつぎ込んで失敗した場合、本部の防衛、言い出したら足りねぇ。一番やべぇのはコイツらを連れてって失敗した場合だ。後処理も面倒だが、A級部隊がひとつ丸々無くなることになる。この3人を残しておけば、少なくとも俺と風間が帰ってこなくてもステルス戦法は無くならねぇ。キーマンの菊地原が生きてっからだ」
「……」
「それに風間だけだったら俺の援護のしようもある。コイツとは付き合いが一番長ぇから」
「…静雅の言いたいことは分かった。それはこちらでまた話すことにする」
静雅に考えがあるように、上層部には上層部の考えがある。ここで全てを決める訳にはいかないのだろう。
「影浦は遠征に行くことを前提に話しているが…受けてくれるということでいいだろうか」
「はい。それに関しては大丈夫です」
「了解した。その確認のために今日は呼ばせてもらった。下がってもらって構わない」
下がれとの命令が下ったので、風間隊は大人しく下がる。部屋を出た途端、静雅は大きなため息をついた。
「はああああ。俺、アイツ嫌いだわ。いちいち威圧かけてきやがって」
「いつものことだろう。それにしてもよく耐えたな」
「アン? ああ、あのキツネのことか。アイツは…1周回ってどうでもよくなった」
「そうか」
スタスタと歩いていく風間と静雅だが、後ろはついてきている気配がなく、2人は足を止めた。
「おい、何してンだ」
「…風間さん、静雅さん。おれも遠征行きたいです」
「少しでも役にたてるなら俺も…!」
「私も行きたい!!」
風間と静雅は顔を見合わせ、またため息をつく。そして、静雅は菊地原達の元へ行くと1人ずつにげんこつを食らわせた。
「それを決めるのは本部の人間だ。俺にどうこうできる問題じゃねェ。が、例え本部の人間がテメェらを連れていくと言ったとしても俺は抗議するけどな」
「分かったなら歩け」そう言って静雅は前にいた風間を追い越し、行ってしまう。その背を見た宇佐美が呟く。
「…私たちは足でまとい、ってことかな」
「それは違う」
「風間さん」
風間も去っていく静雅の背を見つめていた。風間はきっと静雅の気持ちがわかるのだろう。静雅の背を見つめる目はとても優しい目だった。
「お前達に死んで欲しくないからだ」
風間はそう言って、静雅に殴られた3人の頭を撫でると「行くぞ」と声を掛けた。
* * *
「静雅も成長しましたね」
先程までいた静雅を思い出して忍田が言った。その顔は嬉しそうで、静雅の成長を喜んでいるようだった。
「…しかし、まさか彼からあんなことを進言されるとは思いもしませんでしたな」
あんなこと。それは菊地原達を遠征に連れて行きたくないというものだ。そもそも、上層部も彼らのことについては
「しかし、菊地原達を連れていかないとなると、太刀川隊の出水や国近も連れて行けんことになりますぞ!」
若い方がトリオン器官が成長しやすいという理由で、ボーダーの隊員はほとんどが学生である。しかし、それ故に遠征に行ける隊員が少ないとも言えた。
「遠征と言っても、今回は様子見でしょう。連れていかなくても大丈夫だと私は思いますよ」
「しかし! 万が一のことがあれば…!!」
「あまり隊員を増やすのもどうかと思われる。私が守るにも限界がある」
「なっ…忍田本部長まで行くと!?」
「初の遠征です。東くん1人に全ての責任を、なんて酷な話でしょう」
この遠征で決まっているのは、A級(若しくはB級)を遠征隊員として連れていくこと。その隊員は近いうちにある試験で決めるとしているが、元A級1位の部隊を率いていた東と未来予知のサイドエフェクトを持っている迅は行くことが決定していた。
「せめて自分の身は守れる者を連れて行きたい」
「…鬼怒田開発室長、遠征艇に乗れるのは後、如何程か」
「…忍田本部長が行かれるというのなら後3人が限界でしょう。東くんと迅も乗ることが決定している」
「3人…」と小さく根付は呟いた。少なすぎると言いたいのだろう。
「菊地原達を除くというのなら、メンバーはどうなる」
「…太刀川、風間、影浦、加古、二宮…パッと出てくるのは彼らですね」
「言動、行動には難ありですが、影浦を連れて行けたらサイドエフェクトの恩恵も受けられる」
「影浦を連れて行くのなら必然的に風間もついてきちゃいますね」
「…あの2人の連携は頭一つ抜けている。妥当な判断か…」
「加古はまだしも二宮と影浦は仲が悪い! 遠征艇の中まで喧嘩されたらたまったもんじゃない!!」
「太刀川だ」
城戸のその言葉に異論を唱えるものはいなかった。元々、遠征試験をするはずだったがそれはなくなり、次の日上記3名の携帯に通達が行く。
──近いうちに遠征へ行くことが決定した。明日の15時、本部長室へ時間厳守で集合するように。
Q.太刀川や迅はまだ高校生だけど遠征行っていいの?
A.太刀川は学校行っても行かなくても頭の中身は変わらないから大丈夫。迅はお得意の決めゼリフで確定。ま、ご都合主義ってことで。
Q.遠征艇編に入るの?
A.入りません。カットします
Q.静雅と城戸さんは仲が悪いの?
A.仲が悪いと言える程の仲ではありません。ぶっちゃけると静雅は林藤支部長以外はみんな嫌いです。
城戸→威圧いつもかけてくる。嫌だ。殴りたい
忍田→いつもガミガミうるさい。嫌だ。殴りたい
唐沢→いつも品定めするような目で見てくる。嫌だ。殴りたい
鬼怒田→トリガー面でガミガミうるさい。嫌だ。お腹ぽよぽよしたい
根付→静雅本人は1周回って大丈夫と供述していたが、2人きりになると確実に顔面を狙う。合わせるな危険。
林藤→いつもラーメン奢ってくれる。次こそは奢り返したい
Q.二宮と静雅は仲が悪いの?
A.城戸の時と同じように仲が悪いと形容できるほど絡みはない。しかし、顔を合わせると5割の確率で口喧嘩をする。一度菊地原が2人に理由を聞くと「「なんか気に食わない」」との事。実は仲がいいのかもしれない。
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
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宇佐美栞
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二礼光
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オチなし
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他の誰か