影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

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連投①


第21話

 

 初の遠征は無事に成功を収め、何度も遠征に向かった。菊地原達も中学を卒業し、高校に進学出来、遠征も解禁となった。

 余談ではあるのだが、菊地原が宇佐美と同じ高校に進学すると聞いた静雅が菊地原に「お前、宇佐美のこと好きなンか?」と聞いた時の菊地原の顔は見るに耐えなかったらしい。(歌川談)

 

 

「私…やっぱり玉狛行くのやめようかなぁ」

「何言ってんの。自分で行くって決めたんでしょ」

「でも、シズさんと離れたくないし…」

「中途半端な奴は静雅さん嫌うよ」

 

 

 宇佐美が静雅のことを好きになってこの約2年間。宇佐美は宇佐美なりに無駄にならないよう努力し、アピールしてきたつもりだ。

 

 風間隊を結成した年のクリスマス。どうにかして静雅と一緒に居たかった宇佐美は風間隊を理由にクリスマスパーティを決行しようとした。しかし、それは失敗に終わる。理由は「家族って…強いね」。

 だが、これで終われるような女ではない宇佐美は次の年もチャレンジした。2人っきりの聖なる夜を過ごすつもりで決死のお誘いだった。結果は「関西人…強すぎる……!!」。

 

 

「もぅぅぅ。助けてよきくっちー…。同じ静雅さん大好き同盟の隊員でしょ」

「何そのダサい同盟。入った記憶もないし」

「何っ!? この裏切り者め!!」

 

 

 風間隊の隊室に向かいながらなんだかんだ楽しそうに話す2人を目撃した人物がいた。その人物はニヤニヤと顔の頬を緩ませながら、静かに後ろから近づいてくる。菊地原のサイドエフェクトが完全に抜けている点を見ると、本当に戦闘以外は使えない頭だと認識させられる。

 

 

「よう、お二人さん。随分、楽しそうじゃねぇか。何? 付き合ってんの?」

「「付き合ってません」」

 

 

 宇佐美と菊地原の肩に組んできたのはボーダー最強(笑)の太刀川だった。何故、(笑)なのかと言うと、菊地原と宇佐美はボーダー最強を静雅だと疑っていないからである。

 

 

「…馬鹿がやってきたよ」

「おいおい、相変わらず口が悪いな菊地原。そういうのは静雅さん見習わなくていいんだぜ?」

「そうだよきくっちー。きくっちーはもう少しオブラートって言うものを覚えた方がいいと思う!」

「余計なお世話」

 

 

 「で、なになに。なんの話してたの」とゲスな笑みを浮かべ、言い寄ってくる太刀川を見て、これが風間さんとの決定的な違いだよなと菊地原は思う。

 

 

 

「シズさんのお話してたんです。いつもお世話になってるから!」

「静雅さんねー。そういや、知ってる? 静雅さん彼女出来たらしいぜ」

「は」

「え」

「おう?」

 

 

 太刀川の言葉を聞いて宇佐美の息が止まった。それに瞬時に気づいた菊地原は宇佐美の肩を叩く。それにハッとなった宇佐美は──倒れた。

 

 

「ちょっ…!?」

「おいおい、宇佐美!?」

 

 

 倒れた宇佐美は責任持って太刀川が風間隊まで送り届けた。

 

 

「うっ、うぅぅ…。私は、もう玉狛に行くもん」

「…さっきと言ってること違うじゃん」

「ううう」

 

 

 運が良かったのか悪かったのか、風間と静雅は隊室にはおらず、風間隊の隊室には使えない顎髭と菊地原、そして遅れてやってきた歌川がいた。宇佐美はあまりの失恋ショックに部屋角で体育座りをして泣いていた。

 

 

「そ、そーいえば静雅さん別れたって言ってたかなー…?」

「もう、いいよ太刀川さん。迷惑かけてごめんね。帰っていいよ…」

「(こんなお通夜ムードで帰れるわけねぇー!!)」

 

 

 自業自得とは言え、太刀川は帰りたい気満々なのだが、ここで本当に帰るとダメな気がする。自分自身の何かが死ぬ気がする…!と頭が警鐘をガンガン流しているので、帰るに帰れなかった。

 

 

「(てか、何。宇佐美、玉狛に移籍でもすんの?)」

「(遠征でネイバーのテクノロジーにやられた宇佐美さんは玉狛に移籍したいと言い張ってましたが、静雅さんのこともあり揺れ動いてたんです)」

「(太刀川さんのあの一言で宇佐美さんは風間隊を辞めることになったけどね)」

「(え、それ、俺…やばくね?)」

 

 

 自分自身の言葉が決定打になったと(アイコンタクトで)聞いた太刀川の顔色は著しく悪くなる。

 

 

 

「(確実に風間さんには殺されるだろうね)」

「(こればっかりは俺にもどうにも…)」

「(あ、フォローの達人 時枝連れてこようか?)」

「(時枝と嵐山連れてこい…! 後、迅だ!!)」

「(どうやったって確実に死ぬと思うけど…)」

 

 

 確実に死ぬ未来が見えて太刀川は泣いた。

 

 

 

 * * *

 

 宇佐美の辞める辞めない騒動が隊室で起きている中、そんなことを露も知らない静雅はランク戦をしていた。

 

──なんか調子に乗ってるウゼェC級がいたからコテンパンにしたら懐かれた

 

 

「えっ、名前静雅って言うの!? 迅さんが言ってた人じゃん」

「アー、アー、ソウデスネ」

 

 

 静雅の周りをずっとクルクル回っている少年は緑川と言うらしい。「しずかん先輩ってよんでいい?」とか聞いてくるあたり、相当人懐っこいらしい。

 

 

「勝手にしろ」

「ほんと!? やっぱり、顔は怖いけど普通に優しいんだね!! 迅さんの言う通りだ!」

「…テメェ、迅の知り合いか?」

 

 

 緑川はキラキラとした顔で「うん!」と頷く。そして、ちょっと前に助けてもらった、とも。

 

 

「ボーダーに入ってすぐ、迅さんに会ったんだ。その時言われたの。影浦静雅っていう人にあったらお前は毎日が楽しくなる!ってね!!」

「今すぐUターンして帰ってくンね? 割とマジで」

「ごめんなさい、無理です!!」

 

 

 ここ最近、歳下に懐かれることが多いなと静雅は遠い目をした。ちゃっかり自分から餌付けしちゃってる佐鳥や時枝は除くとして、あのうるさい関西人(いこま)も迅と同い年だと言うし、緑川(こいつ)は明らかに餓鬼。雅人とマブらしい荒船はパーフェクトヒューマンにならないかみたいなことを熱弁してきた。パーフェクトヒューマンとレイジにどういう関係があるのかは分からない。

 

 

「あれ、静雅さんじゃん!! うわ、ランク戦のブースにいるの久しぶりに見た!!」

「まあ、ここ最近は隊室で模擬戦の方が多かったかンなァ」

「あれ、隣にいるチビってあのスーパー新人(ルーキー)じゃね?」

「おお…! 太刀川隊の射手(シューター)の出水先輩と三輪隊の攻撃手(アタッカー)の米屋先輩じゃん!」

 

 

 「2人も強いんだよね!!」と次は2人の周りをクルクル回り始めた緑川のテンションにやられて「お、おう…?」と返事になっていないような返事をしていた。

 

 

「ねえねえ、しずかん先輩といずみん先輩ってどっちが強いの?」

「しずかん先輩…?」

「いずみん先輩…?」

「大丈夫だよ、よねやん先輩もちゃんとあるよ!!」

「「いや、そういうことじゃなくて…」」

 

 

 蛇に睨まれた蛙のように、怯えた顔をして出水と米屋は静雅の顔色を伺った。

 

 ──いつも静雅は自隊の隊長の首をちょんぱした後、隊室を片付け断末魔をあげる面子丸潰れな隊長を引き摺ってどこかへ消える。

 

 ──ネイバーにかなりの恨みを持っている自隊の隊長は静雅をかなり尊敬していた。彼曰く「ネイバーを恨んでいなくとも、あの殺し方は賞賛に値する」とのこと。

 

 廊下で会ったら普通に話しかけるし、ランク戦だって時々したりするけど、彼らの根底では静雅は“怖い人”である。それ故に、緑川まで首ちょんぱされて、呆気ない終わりを迎えるのかと思ってしまうと、2人の良心が痛む。

 

 

「ちょちょちょ、静雅さん一旦落ち着きましょう!!」

「そうそう!! 流石にこの年齢の子を躊躇いも無く首ちょんぱは酷ですって!!」

「ア?」

「…なに言ってるの?」

 

 

 出水や米屋は知らないことだが、首ちょんぱに関しては既に緑川は食らっている。いや、先程のあれを首ちょんぱと形容していいのか、それは定かではない。

 

 

「いや、だから、あの」

「そのニックネーム…」

「ニックネームがどうしたの?」

「…呼びたきゃ勝手に呼ばせとけ」

「「マジでか!?」」

 

 

 え、意外と優しいの…?と説が浮かんできたところで2人はハッと思い出す。

 

 ──確かに柚宇さんも「太刀川さんには厳しいけど、基本的に怖いのは顔だけでふつーに優しいよ〜」とアイスを食べながら言っていた。しかもそのアイスも「静雅さんに買ってもらったんだ〜」なんて太刀川さんに自慢してた!

 

 ──静雅さんってあれじゃん!! 栞の好きな人!!

 

 

「え、じゃあ俺もしずかん先輩って言っていいんスか!?」

「言いたきゃ言えばいいだろ」

「マジでか!?」

「…いや、いつかどんでん返し来そうだから、ここは静雅先輩で止めとこうぜ」

「それ敬称変わっただけじゃん」

 

 

 少し出水と米屋の心が近づいてほのぼのとしていたが、緑川がハッとしたような顔をして「違うじゃん!!」と大声で言った。

 

 

「うるせぇ」

「いたっ…。じゃなくて、しずかん先輩といずみん先輩ってどっちが強いの?」

「どっちもなにもなぁ…。まず土俵が違うし」

「静雅先輩ってアタッカーとスナイパーの二刀流だしな」

「…え、しずかん先輩ってシューターじゃないの?」

「は!?」

「…ん?」

「(ダリィから帰っていいか…?)」

 




 
Q.原作に一気に近づいたね?
 A.うん。多分、あと一 二話ぐらいで原作突入するかも!!

Q.結局、栞ちゃんはどうなっちゃうの?
 A.恋心のせいで揺れ動いていたけれど、原作通り玉狛に行きます。静雅の中で宇佐美と菊地原が付き合っている説が濃厚でしたが、同時期に烏丸も玉狛に移籍したので宇佐美と烏丸説も濃厚になりました。その為、風間隊とバイバイする1週間前程から静雅が宇佐美に護身術を教えていたそうです。

「烏丸ってファンクラブあっからな…」

Q.静雅は意外と恋バナ好きなの?
 A.全く興味はない。だが、宇佐美と菊地原がもし付き合っていたのなら、多少自分も気を読んでやろうとの要らない配慮のため聞きました。

Q.静雅に彼女がいるのは…?
 A.それはホント。正確に言うと「いた」。静雅は告白さえされれば、断るのが面倒という理由から断ることはしない(被っていなければ)ので、宇佐美達が知らないだけで色んな女の人と付き合ってきてる。

Q.「家族って…強いね」?
 A.正確に言うと家族+ゾエさんと光

Q.「関西人…強すぎる……!!」?
 A.浪速のナスカレーは尽く振られているが、肝心なところで外す狙撃手は珍しく外さなかった…!! 初対面10秒後には佐鳥と時枝の焼肉会にお呼ばれした。後日、ナスカレーが「俺も連れてってや」と泣き崩れていたらしい。

Q.静雅のシューター疑惑はなに?
 A.宇佐美にいちいちトリガーを変えてもらうのが面倒になり、自分でやってみたところ全てをひっくり返した。何がどのチップか分からず、適当に入れたらシュータートリガーが入ってた模様。ついくせで首を狙い、緑川の首から上を吹き飛ばした。

Q.荒船のパーフェクトヒューマンとは?
 読者の皆様には某サングラスのオジサンが頭の中にあると思われるが、それは間違いである。荒船は熱心に木崎レイジのことを語っており、荒船自身も「パーフェクトオールラウンダー」と正確に伝えている。静雅の頭の中で色々と変換された故に出てきた言葉。

Q.感想欄で静雅の「鬼怒田さんのお腹をぽよぽよしたい」が好評ってホント?
 A.多分ホント。本編じゃ書いてない完全な裏設定だけど、静雅は何故か宇佐美に頼らず自分でトリガーをセットしようとして全てをひっくり返すという所業を何度もしてる模様。それを聞いた鬼怒田は静雅に口うるさくガミガミと注意するのだが、静雅本人はマスコットとしか認識していない。

オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)

  • 宇佐美栞
  • 二礼光
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