第22話
『遠征艇が着艇します』
バチバチと音を立て、
『付近の隊員は注意してください』
宇佐美が風間隊から離脱し、三上という女性が新しくオペレーターになった。三上は宇佐美が連れてきたということもあって有能だったし、どんな話を聞いていたのかは知らないが、静雅のことを怖がりもしなかった。
「おい、早く降りろ菊地原」
「いたっ。…ちょっと蹴らないで下さいよ」
「静雅、隊員を足蹴にするな。菊地原が落ちるだろう」
「はっ、どーせトリオン体なんだから落ちても痛くねェだろ」
狭い遠征艇からゾロゾロと遠征に行っていたチームは出てくる。遠征艇の中はあまり身体を伸ばせるような広さはなかったので、静雅の体は開放感に包まれた。
「風間達は報告だろ?」
「静雅さん、代わりに行ってくれよ」
「んじゃ冬島さんの代わりに報告もお願いしまーす」
「殺すぞ」
これから報告だりーなー、とか船酔いした気持ち悪ぃ…、だとかわちゃわちゃしている所から静雅は抜け出す。それに気づいた菊地原が「どこに行くんですか?」と聞いた。
「雅人達がおかえりパーティやってくれるんだと。テメェらに付き合ってる程、俺は暇人じゃないんだわ」
「…勝手に帰って風間さんに怒られても知りませんよ」
「俺を帰した全責任は風間にある。目を外したのがいけねぇ」
んじゃ、と静雅は菊地原に手をヒラヒラ振りながら勝手に帰って行った──。
遠征で手に入れたトリガーを風間は城戸に渡す。しかし、遠征の話も程々に話の内容は切り替わることになる。それは、最近の話の中心にいた
トリガーを確保することはもう確定している。それがどんな手段であろうと、それぐらい城戸は本気だった。
「今夜にしましょう」
空閑と対峙した三輪隊の報告を聞いた太刀川が言った。いつもは馬鹿だが、戦闘面に関しては頭が回る馬鹿なので、太刀川が言うことにも説得力があった。
空閑のトリガーは学習するトリガーだ。あまり日が経ちすぎると、こちらが不利だ。確実に奪うためにはこれが最善だろうと、作戦日時は今夜になった。
「えー、ダルいです」
「そんなこと言うな菊地原。もう決まったことだし」
「…おい、静雅はどこ行った」
「それが…帰っちゃったみたいで…」
風間から新しい任務を聞いた菊地原は嫌そうな顔をし、歌川がそれを宥める。静雅がいないことに気がついた風間は周りを見渡し…三上の言葉に青筋を浮かばせる。
「呼べ。今すぐ呼べ」
「そ、それが…風間さんが報告に行ってる間にお電話したんですけど…」
『ダルい。嫌だ。眠い。…おい、ゾエ!! それは俺のモンだろォが!! ……おいコラてめ、っ』
「…を、最後に連絡途絶えました」
何度も何度も三上は電話をした。が、静雅が出たのは最初の1回だけ。次に出たのは弟の雅人で「兄貴、兄貴ンとこのオペから電話」「切れ」と切られ、次に出たのは北添。「静雅さーん、電話」「切れ」。それからは電源が切られ、誰も出てくれることはなかった。
「…迎えに行きますか?」
「えー、行くなら風間さん達だけで行って下さいよー。ただでさえ、遠征終わりで機嫌悪いのに無理に関わりに行きたくないですよ」
静雅のサイドエフェクトは遠征では重宝される。どこにネイバーがいるのか、瞬時に分かるからだ。静雅がいるといないで遠征の成功確率はかなり変わってくる。
が、そんなサイドエフェクトもいいことだけではない。瞬時に沢山の情報が頭の中に入ってくるため、長時間広範囲の使用は静雅の脳を圧迫し、オーバーヒートさせる。本人が言うには、オーバーヒート中は頭が割れるような痛みがあり、ずっと視界がグルグルと回っているそうだ。
そんな地獄と形容してもいい遠征から開放された静雅は今、最高にご機嫌なことだろう。そんな静雅に向かって「任務が入りました。至急、ボーダーに来てください」なんて言ってみろ。
「即ベイルアウトは確実かと…」
想像した三上は苦笑いしながら言った。その結論はどうやら皆辿り着いたようで、風間隊の隊室には重苦しい空気が漂う。
「
「いや…でも風間さんがいれば何とか…」
「諦めなよ。絶対近くに影浦隊がいるんだから、乱闘になるだけだって」
「でもボーダー同士の戦闘は……」
「あの兄弟がそんなこと一々考えると思ってるの? 兄弟揃って根付さんをボコボコにしてるのに」
「諦めましょう」
話し合いの末、「やる気のない奴がいても士気が下がるだけだ」と結論に至り、静雅は放置することになった。
* * *
『目標地点まで残り1000』
空閑のトリガーを奪い取る為、太刀川隊、風間隊、三輪隊の三部隊は走っていた。空閑を匿っている玉狛支部に向かうためだ。
「おいおい三輪。もっとゆっくり走ってくれよ」
三輪隊は一度ネイバーと交戦し、負けたと報告が入っている。それが理由で三輪を急かしているのか、それとも単なるネイバーへの恨みだけで急いているのか。そんなこと一々考えるような優しさも空気を読む努力も持ち合わせていない太刀川は、至って飄々とした顔で言い放つ。三輪が少し嫌な顔をした。あからさまに太刀川は三輪に嫌われている。
『目標地点まで残り500』
後、もう少しで玉狛だった。しかし、何か異変に気づいた太刀川は声を荒らげた。
「止まれ!!」
全指揮は太刀川がとることになっている。太刀川の命令は絶対。太刀川の声で、三部隊は足を止めた。
「迅…!!」
太刀川の視線の先には玉狛支部所属の実力派エリート 迅悠一が立っていた。「なるほど、そう来るか」と呟く太刀川だが、どことなく楽しそうにも見える。
「太刀川さん久しぶり。みんなお揃いでどちらまで?」
太刀川と風間がいる時点で平和な匂いはしない。それに迅は未来予知のサイドエフェクトを持っている。この三部隊がどこに行こうだなんて分かっている筈だ。
「うぉっ、迅さんじゃん。何で?」
玉狛に空閑がいるという事実があるので目の前に迅がいる理由も分かる筈なのだが、当真も太刀川と同じ馬鹿に所属している人間だ。単純に頭に浮かんだ疑問だったのだろう。
「よう当真。冬島さんと静雅さんが見えないみたいだけどどうした?」
「ウチの隊長は船酔いでダウン。静雅さんはアレだ、カゲ達と遊んでるらしい」
「さっきゾエから集合写真送られて来たんだよなー」と当真は呟く。風間が「余計なことを言うな」と叱責するが、それはもう遅い。
「静雅さんがいないなら…うん。良かった。おれは何としても可愛い後輩を守らなきゃいけない」
──これなら守れそうだ
迅はそう言ってニヤリと笑った。
* * *
同時刻。静雅の実家である「お好み焼きかげうら」でパーティをしていたゾエは思い出したように静雅に聞いた。
「そう言えば三上ちゃんの電話出なくて良かったの?」
「ア? 別にいいんだよ。どーせ面倒事だ」
「えー、面倒事なら尚更行かなくちゃだったんじゃない? 風間さん怒ってるよ」
角を生やした風間を想像した北添はぶるりと身震いをした。心做しか顔色も悪く見える。
「どうせ
「いやいや!!」
「迅が出てる。だからいーんだ」
「ああ、迅さんがいれば大丈夫だね」
久しぶりに食べた焦げたお好み焼きは美味しかった。
Q.三上ちゃんが風間隊に入るところはカット?
A.多分、いつか、多分書く…かもしれない。今のところはカットで進む。
Q.静雅は迅と戦わないの?
A.戦わない。遠征直後のスケジュールは遠征行く前から決まっていたのでテコでも動かない。
Q.静雅と三上の関係は良好?
A.至って良好。しかし、三上は宇佐美からキツく「静雅さんだけは好きにならないで!!」と言われている。圧が凄かったらしい。
Q.ゾエからの集合写真って?
A.何故か記念でとることになった。シャッターを押してくれたのは静雅パパ。静雅の横は雅人と光が陣取り、ゾエは微笑ましく思っていた。宇佐美が見たら多分、発狂する。
Q.焦げたお好み焼き?
A.「お好み焼きかげうら」の次男坊にお好み焼きを焼く才能は無い。100%確実に焦げる。お好み焼きを焼く才能はどうやら三男坊に取られたようだ。
Q.何か書き忘れたことあるらしいね?
A.感想欄で何度か「なんで静雅は風間のこと蒼也って呼んでたのに風間に変わったの?」と質問を頂きました。私は本編で「静雅は恥ずかしがり屋なので風間と2人っきりの時しか名前では呼ばない」と書いたような気がしてたけど、確認したところ気がしただけでした。誠に申し訳ない。
静雅は基本的に人は苗字で呼びます。風間のことは名前で呼んだりしますが、他人に聞かれると恥ずかしい、太刀川や生駒に聞かれるとウザイという観点から2人っきりの時しか名前で呼びません。その場に第三者がいれば頑なに「風間」と呼びます。
まるで初心なカップルかよ!?と思ったそこのあなた、それは間違ってない。けどカップルじゃない。恋心は絶対に抱くことはありません。
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
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宇佐美栞
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二礼光
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オチなし
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他の誰か