影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

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ぶっちゃけ今回は諦めてたけど投稿出来た


第23話

 

「静雅さん、ありがとう。本当に助かった」

 

 

 そう言って迅は静雅に向かい頭を下げた。迅の突飛な行動に静雅の頭の上にはクエスチョンマークが沢山飛び交っている。

 ついこの前、静雅は風間と城戸からこっ酷くお灸を据えられた。理由は単純明快。任務を放棄したためである。

 

 

「静雅さんが来なかったおかげでおれはアイツらを助けることが出来た」

 

 

 「だから、ありがとう」そう言って姿勢の正しいお辞儀をしてくる迅。一瞬、戸惑いもしたが、静雅は優しく迅の頭を撫でる。

 

 

「…静雅さんって、可能性の低い未来を選ぶよね」

「ア? なに照れてンだテメェ」

「そりゃ照れるでしょ!!」

 

 

 わちゃわちゃと静雅と迅の周りにほのぼの空間が生まれる。花でも飛んでそうな勢いだ。

 

 

「そういやなんちゃらトリガー手放したんだって? 太刀川の勢いがいつもよりウザかった」

「なんちゃらトリガーって…ブラックトリガーね」

「そうそれだ」

「ホント興味無い事は覚えないよねぇ」

 

 

 「静雅さん聞きました!? 迅が!! ブラック!! トリガーを!! 手放したって!!」と興奮がやまない太刀川と不機嫌極まりない風間が静雅に報告してきたのは数時間前のことである。迅とのランク戦を望んでいた太刀川は嬉しいことこの上ないだろうが、迅が脅威で仕方ない風間はあまり嬉しくないのだろう。…まあ、なんだかんだ言って風間もバトルジャンキーである。顔に出さないだけでそこそこ喜んでいるに違いない。

 

 ブラックトリガーの名を出した一瞬。迅は悲しそうな顔をした。やはり、わかっていたとは言え寂しいものは寂しいのだろう。見栄を張る迅は決してそんなことは言わないけれど。

 

 

「そうだ、この後入隊式あるけど行くの?」

「視えてんだろどうせ」

「あっはっは、やっぱり口で聞きたいしさ。いいじゃない、そんな勿体ぶらないで」

 

 

 風間も大層迅が手塩にかけている餓鬼共が気になるらしく、菊地原達を連れ入隊式を見に行くと言っていた。それに誘われもしたが断った。ただただ興味なかったからだ。後、面倒だし。

 

 

 

「いいや。静雅さんは見に行くことになるよ」

「ア?」

「さん、にー、いち…」

「し、静雅さーーんっっっっ!!!」

 

 

 何かが静雅の背からドタドタと走って来る音がしたと思ったら、静雅の背に誰かが飛び乗った。

 

 

「へるぷ、へるぷみーだよ静雅さん!!」

 

 

 静雅の背に飛び乗った犯人は安定の顔窓でお馴染み、嵐山隊所属の佐鳥だった。何故かギャン泣きで何かに怯えているようだ。

 

 

「あん? ンだようるせーな」

「荒船さんがぁぁ、静雅さんを連れて来いって!!」

「どこに」

「スナイパーの訓練場ですよ!! ほら、おれ達って入隊式の説明とか任されてるから」

「…えー、ダルい。荒船がいる時点でダルい」

「行ってきなよ静雅さん。後輩の頼みなんだからさ」

 

 

 全く状況を理解出来ていない内に静雅は迅に背を押され、佐鳥に「ほらほら」と腕を引っ張られる。迅の言った通り、静雅は入隊式に行かなくてはいけないようだ。

 佐鳥に手を引かれながらも一瞬足を止めた静雅は迅の顔を見て言う。

 

 

「今度ウチに飯でも食いに来い。雅人を用意しておく」

「…ほんと、いつまでたっても敵わないな。静雅さんには」

 

 

 静雅さんが焼いてくれるわけじゃないんだ、と迅は笑った。

 

 

 

 * * *

 

「うおっ、佐鳥お前マジで連れてきたのか」

「あはは!! 静雅さんって押しに弱いからね!! おれにやらせればこれくらい」

「黙れ顔窓」

「扱いが酷いっ!?」

 

 

 顔をキランとさせた佐鳥の頭を押し付けながら、静雅は微笑ましそうに見守っていた東に小さくお辞儀をする。東はあくまで見守る立場を貫くらしく、手をヒラヒラさせるだけで近づいては来なかった。

 

 

「んじゃ、おれスナイパー志望の子連れてきますね!!」

 

 

 

 ビューンと走っていく佐鳥を見て静雅は巻き込まれた事が面倒に感じため息をつく。俺がここにいても何もならねぇだろが、が頭の大半を占めている。つか、荒船もあんまお手本にならなくね?

 

 

「つか、なんで俺呼んだンだよ。荒船ェ」

「えー、面白そうだからッスかね?」

「ど(タマ)ぶち抜くぞ」

 

 

 

 そうこうしている内に佐鳥が先導をしてスナイパー組を連れてきた。数を数え「…今回も少ないな」と東が悲しそうな声で言う。

 

 

「ただでさえスナイパーは静雅さんに揉まれて消えてく奴が多いってのに」

「おい、俺が虐めてるみてェな言い方すんな」

「いやぁ、荒船が言ってることもあながち間違いじゃないだろ」

「おいコラ東!!」

「東さんな」

 

「はいはい、そこの御三方!! 訓練始めますから指示頼みますよ〜」

 

 

 

 結局、俺も手伝わされンのかよ…と思いながらも、やる時はやる男静雅。静雅が受け持った新人にはしっかりトリガーの説明をし、撃たせる。口と顔が怖いのか、指示されているC級の子は半泣きであることを除けば静雅は完璧である。

 

 

「そろそろスナイパー用のトリガーにうつろうか!」

 

 

 顔窓がトリガーの説明をしている間、暇な静雅はここに迅の言う有望な株はいるのだろうかと隊員達を見つめる。静雅の視線に気づいてしまった数人は冷や汗が酷いが、残念なことに正隊員は誰一人として気づかない。

 

 

「まあ、百聞は一見にしかず。女の子2人に試し打ちしてもらおう!」

 

 

 佐鳥が指名したのは小さな女と目付きの悪いそこまでパッとしない女だった。そそくさとその場離れようとすると荒船が目敏く俺を止めてくる。

 

 

「おいおい、どこ行くんだよ静雅さん」

「いや、責任転嫁される前に逃げようと思ってよ」

「責任転嫁? なんで?」

「ア? 見ればわかるだろ。あのチビのトリオン…」

 

 

──ズドッ!!!

 

 

 佐鳥にアイビスを渡され、言われたように撃ったそれは射撃というよりかは砲撃に近く──。

 

 

「ほらな」

「…まあ、全責任は佐鳥にあるんで大丈夫か」

 

 

 佐鳥が泣いた瞬間だった。




 
Q.静雅はわざと任務をトンズラしたの?
 A.決してそういう訳では無い。家族をただ単に優先しただけ。

Q.静雅は東さんも呼び捨て?
 A.基本的に東さんに関しては敬称をつけている。けど、時々呼び捨てにして東さんから「東さんな」とコントのような会話を繰り広げる。

Q.静雅は千佳のことを知っていたの?
 A.もちろん知らない。けど何故トリオンのことを知っていたのか? それは次回の話に繋がる……のかもしれない。

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