「あんま料理は得意じゃねェけど…要するにアレだろ? てめぇを微塵切りにしていけば勝手に死ぬわけだ」
「はァ? 微塵切りだァ? 雑魚トリガーのてめぇに何が出来んだよ!!」
黒いブヨブヨした──まるでスライムのようなものが静雅を襲う。静雅は後方にジャンプし、それを避けると孤月を出し、構えをとる。
「旋空孤月──」
迅に負けると言われたあの日から生駒を中心にボコボコにしてきた。おかげで
旋空はエネドラの不意をついたのか、エネドラの右肩を大きく袈裟斬りした。が、すぐにズズズと音をたてて治っていく。
「おいおい、そんなチンケな攻撃じゃ」
「喋ってるその口を閉じることをオススメする。噛むからな」
2連、3連とエネドラの身体に旋空が襲う。普通の旋空ならまだしも、静雅は生駒旋空と旋空を組み合わせて連発している。生駒旋空は射程距離が普通の旋空よりも長いので、普通の旋空と共に何度も連発されると避けるのも段々とキツくなっていく。
「チィ!! 雑魚トリガーのくせに生意気な!!」
地面から針のような突起が飛び出す。慌てて静雅は後方に下がるが、右足を掠ってしまったようで、そこから少しずつトリオンが漏れ出していた。
「てめぇのその技は確かに脅威だが…付け焼き刃じゃ俺は殺せねェぞ!」
静雅は後方に下がるのをやめ、グッと一歩踏み出すと、エネドラに向かい孤月の鞘を握りしめる。そして、鞘から孤月を出すと素早い居合切りを繰り出す。急に踏み込んで来るとは思っていなかったエネドラはズタズタに斬られてしまうが、どうやら核は守ったらしい。すぐにモヤのようなものがエネドラの身体を修復していく。
静雅は内心舌打ちをした。自分1人ではどうにも相手のトリガーのネタが分からない。矢張り、意地を張るのではなく、三上だけでもこっちに回して貰うか…?
『あーあー、こちら仁礼。静雅さん聞こえてっかー?』
「アン? ヒカリ…?」
『中々手こずってるじゃねぇか。ったく、光さんが手ぇ貸してやるから、さっさと殺っていこうや!』
「ンでヒカリが…」
三上をこちらに回してもらおうと、通信を繋げようとしていたところだが、仁礼からの通信が入り、それをやめた。仁礼の口ぶりからして、静雅に加担するらしい。全くもって静雅は状況が理解できていなかった。
『ゾエとカゲがこっちは雑魚ばっかだから1人寂しく戦ってる静雅さんを手伝ってやれだってよ』
「はっ、1人寂しく、ねェ…」
『お、怒るならゾエとカゲだけにしとけよ! アタシが言ったわけじゃないんだかんな!!』
「…へいへい。まあ、助かる。暇ならチカラ貸せや」
ヒカリが手を貸してくれるのは静雅としてもものすごく助かる。影浦隊には静雅もよく顔を出しているし、ヒカリもよく雅人と静雅の模擬戦を見ているので、手の内は全て知っている。時々混合部隊だとか何とか言って生駒隊とも遊んだりもしているので、オペレートも何度かしてもらったことがある。
『…! ああ!! そのつもりで通信繋げたんだかんな!!』
嬉しそうな声で『んじゃ、とりあえず作戦決めようぜ』とヒカリは言う。確かに、相手のトリガーのネタが割れないことには、どれだけ切り刻もうと相手を殺すことは出来ない。作戦のひとつやふたつは立てないと厳しいだろう。
『アタシがオペしながら相手のトリガーを解析してくから、さっきみたくひたすら斬れ』
「それ、作戦って言うか…?」
『はは、済まんな! あいにく
ヒカリの笑い声を聞いていて静雅はふと弟である雅人の成績を思い出してしまった。ヒカリもそれと並ぶぐらい悪いと噂に聞くが──今はそんなことを思い出している時ではない。
「とりあえず…斬るか」
* * *
「え…まだやるんですか」
疲れたようにコーヒーを飲みながら、辻は驚いた顔で言う。静雅は至って当然とでも言うかのように頷いた。
「急にどうしたんですか? 俺は…香取さんじゃないんですよ」
よく、気性の荒い香取が静雅に戦いを挑んでボコボコに負けているのを見かける。あまりにもやりすぎるので、定期的に静雅は上層部から減点を貰っていた。静雅のポイントがマスタークラスにならない理由のひとつである。
「テメェらをボコボコにしないと俺はやられるんだと」
「は?」
「迅からのお達しだ」
「迅さんが一枚噛んでたんですか」
「だから…」と辻は思案顔になる。そんな辻を見て、イラつきが増したのか、「オラ、行くぞ!」と逃げないよう辻の右腕を引きながらブースの中へ入っていく。
「あれれ? 辻ちゃんが虐められてるって聞いたから慌てて来てみたけど…珍しく勝ってるじゃん」
「犬飼先輩」
「…アン、犬飼か」
先程のランク戦を見ていたらしい犬飼が「どうも〜」と静雅に挨拶をしながら駆け寄ってくる。辻が静雅に勝つことは早々ないので、あまり表情を変えない犬飼も驚いているように見えた。
「辻ちゃんに負けちゃうなんて静雅さんどうしたんですか? 太刀川さんにでも毒盛られました?」
「盛られてねぇし、盛る前にアイツは絶対にボロ出すだろ」
「あ、そっか。じゃあ風間さんとか二宮さんとか!」
「顔で言うなら2人ともしそうですよね」と犬飼は言う。風間ならまだしも、二宮は自隊の隊長だが、一体犬飼の中で二宮がどんな人物像なのか気になる。
「そこは一周回って…あの、太刀川隊の……お荷物の人がやったんじゃ?」
「あー、確か唯我だったっけ? 確かにあの人なら金は持ってるもんね」
「あ、でも静雅さんって基本的にイコさんに監視されてますよね? …毒盛られる前にイコさんに殺されるか」
「おい、待った。聞き捨てならん情報があったぞ」
確かに生駒はよく近くにいるイメージではあるけど…監視…?と静雅が首を傾げていると、犬飼と辻は顔を見合わせた後、あからさまに話を変えた。
「迅さんはなんて言ってたんですか? 静雅さんが負ける未来なんてよっぽどですよね」
「迅さん…?」
「迅さんが俺をボコボコにしろって言ったらしいんですよ」と辻は犬飼に状況説明をする。そして犬飼は辻から状況を聞き、少し悩んだ後「迅さんって多分、辻ちゃん以外の人の名前出しませんでした?」と静雅に聞いた。
「ぶっちゃけ、辻ちゃんと静雅さんの実力差ってかなりあるから、静雅さんの経験値にはならないと思うんですけど」
「そこまではっきり言われると俺、複雑です」
「……太刀川、生駒、辻、荒船…確かソイツらの名前出してたな」
「…ああ。だから静雅さんは珍しく孤月使ってるんですか」
先程、静雅が名前を出した4人はトリガーのセットに孤月を入れている人選だった。それに気づいていた静雅もどうやらトリガーの構成を変えていたらしい。
「でも静雅さんまでトリガーの構成を変えなくてもいいんじゃ…?」
「迅とも結構昔からの知り合いだかんな。俺の扱い方がうめぇんだよ。…確かに「その人達から孤月の使い方を学んでください」って言われるよりも「静雅さんは負けるから、頑張ってね」って言われた方が燃える」
あの時の迅も静雅が負ける未来を静雅に伝えるべきか伝えないべきか悩んでいるように見えた。が、負ける未来を伝えた方が、最善の未来になると迅は思った。だから伝えた。それに迅は未来がどうのこうの以前に「静雅さんには負けて欲しくない」と言っていた。いつの間にかそこまで懐かれていたが、そこまで言われると手を抜くことも出来ない。やれるだけやってやろうとそんな気になれたのだ。
「なるほど」
「辻と戦う前まではずっと生駒と殺ってたからな。ぶっちゃけ今なら生駒旋空使えるような気がする」
「え」
「それはヤバい!!」
「静雅さんの生駒旋空みたい!! ちょっと辻ちゃんブースに入って入って」そうニヤニヤしながら犬飼は辻の背中を押し、また辻と静雅の10本勝負が始まる。
『旋空孤月』
『…確かに伸びてる』
少し悔しそうな顔をしてベイルアウトをする辻をみながら何故か犬飼は嬉しそうな顔で言う。
「うわ〜、これイコさん見たら絶対泣くわ」
泣いている生駒の涙が、嬉し涙か悔し涙かは本人しか分からないことである。
* * *
『どうだった? この数分間で何かわかったことは?』
「さっき刃先が硬いモンに触れた」
『おーけー。ちょっと待ってろ…』
カチャカチャとパソコンを弄り、ヒカリは嬉しそうな声を荒らげた。
『アタリだ!! 硬質化したトリオン反応アリだ! 反応マークするぞ!』
「…視覚支援入った。サンキュ」
ヒカリがマークしたソレを狙い、静雅は適度な距離を保ちながら孤月を振るう。すぐに静雅がやっていることにエネドラも気づいたのだろう。馬鹿にしたような顔で笑いながら言った。
「…あーあー、なるほど。
ニタリと笑ったエネドラは…硬質化反応を複数に増やした。あからさまなダミーである。
「死ぬまでそのレベルでキーキー言ってろ! どうせ勝てねぇんだからよ!!」
『おいおい、静雅さんどうするよ!?』
「全部視覚情報に入れろ。全て…斬るだけだ」
しかし、風間がやられたタネはまだ割れていない。迂闊に近づくのは得策ではないので、旋空でジリジリと削っていく。
「(チィ! ピンポイントでダミーだけを削って行きやがる…!!)」
『静雅さん!! 辺りにトリガー反応が!!』
「…なるほどな」
トリガー反応がない地点まで静雅は後方に下がった。そして、何となくではあるが奴のブラックトリガーのネタが分かった。
奴のブラックトリガー、それは硬質化と気体化、液体化の3種類に変えられるトリガーらしい。部分部分でもそれは可能らしく、目には見えないがトリガー反応はあることや、風間のやられ口を見る感じ、静雅の予想は外れてはいないはずだ。
「ネタが割れりゃ簡単じゃねぇか」
相手はダミーを増やして弱点である伝達脳・供給機関を上手く隠しているらしいが、そんなのダミーを増やすのが追いつかないぐらい全て斬って行けばいい話だ。斬るのは静雅の得意技である。
『全部斬った!!』
視覚情報に入っているダミーは全て斬った。が、エネドラは死んでおらず、後方に下がった。
「なるほど。猿の悪知恵か」
「調子にのんなよ。ネタが割れようと俺は勝てる。…こっちが風上だかんな」
『静雅さん!!』
静雅は前方を見つめ──姿を消した。
エネドラが「んなっ!?」と声をあげる。
静雅の現在のトリガー構成はいつもとは大分変わっている。理由としては、迅に負けると言われたあの日から、コロコロとトリガーを変え、様々なスタイルを試してきたからである。
そして、今のトリガー構成はカメレオンを抜き──テレポーターが入っていた。
「俺がこのぷるぷるに負けるだァ? 変な未来を見たもんだな、迅もよ!!」
辻、荒船、生駒と3人をボコボコにしていたある日。見かねた男が立ち上がったのだ。
「忍田直伝の剣は速いぜ」
エネドラの後ろに回った静雅は、先程の剣よりも速く、ダミーを斬り──遂に本命を真っ二つにした。
「戦いは逃げるだけじゃ勝てねぇ。覚えときな」
「くっ………そぉぉぉぉお!!」
エネドラの雄叫びと共に周りは爆煙に覆われ…生身のエネドラが姿を現す。
『おお!! 静雅さんやったな!!』
「ああ。…とりあえず拘束するか」
『だろうな。さすがにそのまんま放置はヤバいだろ』
さて、どのように拘束すっかな…と一瞬思考を巡らせ、孤月をチラつかせながら「おら、トリガー出せ」とエネドラに言う。静雅のそれは完全に街のチンピラだ。
「アアン!? 誰が出すか──」
「おいぷるぷる!!」
カッと威嚇してくるエネドラの角を握り、無理やりその場から動かすと、エネドラがいた空間に針のようなものが現れた。エネドラのトリガーと似ているそれは、似ているだけで、どうやら全く別物らしい。静雅のサイドエフェクトが反応する。
「てめぇは…ミラ…!!」
ゲートの中から涼しい顔で出てきた女性はどうやらエネドラの仲間らしい。人間にはついていない角に見かけない格好。そしてトリガー。しかし、仲間だと思われた彼女は確実にエネドラを狙っていた。
「あら、当てたと思ったのに…外しちゃったのね」
Q.どうしてヒカリにしたの?
A.最初は三上にしようかなと思ったけど、出水達と人型を倒した後は三雲の援護に菊地原達は向かうので無理かなと。宇佐美にしようかなとも思ったけど、玉狛第一ってその時めちゃいい時だから無理。静雅と関係性のあるオペが光しかいなかった。
Q.カゲは原作通り頭悪いの?
A.原作と比べると少しマシだけどやっぱり悪い。テスト近づくと缶詰状態。
Q.香取はボコボコにされてるの?
A.フルボッコ。実はM属性なのかもしれない。
Q.なんで静雅は直前に孤月入れてなかったの?
A.一周回ってやっぱりスコーピオンが使いやすいと落ち着いたため。でも直前になってビビって孤月に変えました。
Q.忍田直伝の剣とは?
A.太刀川のレポート締切が近く、太刀川は使えなかったため、代わりに忍田がやってきました。「話は聞いている。さあ、始めよう」の次にぶった斬られて静雅はブチ切れたらしい。
Q.今の静雅のトリガーセットを教えて?
・メイントリガー
イーグレット
シールド
孤月
旋空
・サブトリガー
バックワーム
シールド
テレポーター
FREE TRIGGER
話によっては変わるかもしれない。現状はこれということで
Q.そろそろ雲隠れしちゃうかもって本当?
A.実は結構ギリギリなので、そろそろ更新が止まるかもしれない。リアルが忙しくて本当にヤバい。決してリア充してるわけじゃないし、恋愛のパートナーはいつでも受け付けてます(おい)
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
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宇佐美栞
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二礼光
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オチなし
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他の誰か