「未来がかなり動いたな」
「ふむ?」
三雲と雨取の方へ向かっていた迅はふと、足を止めた。釣られるように並走していた空閑も足を止める。
「宇佐美、戦況はどうなってる?」
『陽介、いずみん、駿くんにきくっちーとうってぃーの5人がB級合同と組んで人型ネイバーを撃退!』
「それだな」
迅は宇佐美の通信を聞いて嬉しそうに微笑んだ。隣で空閑は何が何だか分かっていないのか首を傾げている。
「宇佐美、それだけじゃないだろ?」
『えへへ、やっぱり迅さんは視えてるよね。そうなんです! シズさんがやってくれました…!』
「やっぱり静雅さんは凄いね。これはかなりデカい」
「シズカ…確か緑川が言ってた人だよね」
ふむ、とまた考える素振りを見せる空閑。そんな空閑を見てついつい足を止めてしまっていた迅はちょちょいと前方を指さし、また走り出す。
「そうそう。駿は静雅さんのことが好きだから、しょっちゅう名前出すよね」
「その…シズカって人が何かしたの?」
「どうやら1人でネイバー…それもブラックトリガーを抑えてくれたらしいんだよね」
「ほう!」
空閑が興味深そうに迅の話を聞く。空閑は強い人が好きだ。迅がそのシズカという人間を慕っていることは付き合いが短い空閑でも分かった。
「きっと遊真も気に入るよ。静雅さんは面白い人だからね」
「ふむふむ。いつかオハナシしてみたいね」
近い内に静雅と遊真は会う。これは迅のサイドエフェクトが言っていた。その確定されかけている未来を見て、迅は面白そうに微笑む。
「そのシズカって人のおかげでオサムは死なずに済むの?」
「残念ながらそれは分からない。今、ちょうど分岐地点にいてね。静雅さん次第でかなり変わってくる」
「ほほう。じゃあなんとしてでもシズカさんには頑張って貰わないとな」
「いや、そういう訳にもいかない。…あんまり頑張り過ぎると静雅さんが死ぬ未来が見える」
「!?」
『え、それマジ迅さん!!?』
通信を繋いでいたらしい宇佐美まで反応する。まあ、宇佐美は静雅に好意を抱いているし、仕方ないと言えば仕方ないようにも思えるが…。
『静雅さんは!? 静雅さんは大丈夫なの!?』
「うん、ちょっと宇佐美、声のボリュームを下げてくれない? 耳がキーンてする…」
『あ、ごめん』
ぶっちゃけ、静雅の今の未来はかなり危ないものとなっていた。何故なら、静雅は取らないような未来をいつも選択する。それのおかげで迅は何度も救われたことがあるが、今回ばかりはその未来を選択しないで欲しいと迅は切実に思う。
「こればっかりはおれじゃどうにも出来ない。静雅さんが踏ん張ってくれないと…」
『…とりあえず風間さんに報告しちゃダメかな? 風間さんにだけでも教えてあげたい』
「…うん、風間さんには教えといて。よろしく宇佐美」
『分かった。ごめん、通信切るね』
「うん」
──大丈夫、静雅さんなら大丈夫。
何度も何度も迅は心の中で反復する。静雅さんは死なない。大丈夫。それをずっと。
迅が最初に静雅を知ったのは、風間の兄 進と話している時だった。あの時はまだ静雅とは面と向かって会ったことなかったし、容姿とかは全然分からなかったけれど、時々進が風間さんの話と共に話してくれた。
そして、近い内に迅は静雅と出会うことになる。理由は進が死んでしまった事実を伝えるため。
正直、あの時のことはあまり思い出したくない。痛々しい風間さんの顔、ご両親、そしてやるせない静雅さんの顔。視ていたはずなのに、助けられなかった未来。
『人はいつか死ぬ。気に病むな』
そう、帰り際言われたけれど。それでも。
『アン? ジン…? え、何。俺、お前と会ったことあったっけ』
次に会った時に言われた言葉。どういう顔で会ったらいいのか分からなくてうだうだ悩んでたらそう言われた。そして、背中を大きく叩かれたような気もする。
『テメェ、ガキだろ。笑え。それが仕事だろうが』
『アア!? おいおい、この成績なんだよ!』
『ほーん。スコーピオンね…。中々、面白いモン作ンじゃねぇか』
確かに、人はいつか死ぬ生き物だ。それでも。
「…まだ死ぬには早すぎるよね、静雅さん」
迅の呟きは隣の空閑に聞こえていた。
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
-
宇佐美栞
-
二礼光
-
オチなし
-
他の誰か