影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

35 / 41
新年あけましておめでとうございます。いつの間にか年が明けてました。
お昼の12時にクリスマスネタの番外編を投稿します。お暇だったら見てください
後、活動報告書にてリクエストを受け付けようと思います。気が向いたら番外編か本編で書くかもしれません。良ければご協力お願いします


第30話

 

 「ミラ」と呼ばれたおかっぱな女性は明らかにこのエネドラのお仲間だろう。しかし、先程の攻撃はあからさまに()()()()()エネドラを狙って攻撃してきた。人型ネイバーに仲間意識がないのか、はたまたはこのエネドラが()()()()なったのか。後半の方が説として成り立つな、と静雅は1人頷く。

 

 

「おい、ぷよぷよ。お前に残されたのは2択だ」

「あ゙!?」

 

 

 新しい人型の攻撃を避けながらエネドラと話す。流石に体格がでかく体重もそこそこにあるエネドラを抱えながらの戦闘はキツい。長く喋っている暇も無さそうだ。

 

 

「1つ目はこのまま殺される未来。あの女は俺よりもお前を殺す方に重点を置いている」

「…」

「考えられる理由はひとつだな。てめぇが俺に負けた。簡単な理由だ」

 

 

 ギィと歯ぎしりする音が聞こえた。事実なので反論する余地がないのだろう。そんなエネドラを横目に静雅は話を続ける。何故なら時間がないからだ。

 

 

「2つ目は救かる未来だ。てめぇがこれを選ぶのなら俺が何としてでも救ける」

「はぁ!?」

『ちょっ、静雅さん本気で言ってるのか!?』

 

 

 ヒカリとエネドラが反応したのは同時期でキィーンと音が耳に響く。言いたいことは分かる。このエネドラは敵であり、救ける義理なんてない。しかし、ここでエネドラを救けられたとしたらボーダーには利益しかないことも事実。ぶっちゃけ見た感じ、エネドラが何か重要な手がかりを持ってそうには見えないが、戦闘員としてそこそこやれていたわけだし、多少のトリガーなら知っているはず。それに多少なりとも情報があれば知りたいし、こんな馬鹿そうな男に縋りたいほどボーダーは何も情報がない。これも目的のためだ。

 

 

「しかしこれには条件がある」

「条件…?」

「てめぇのトリガーを寄越せ」

「なッ!?」

 

 

 確かこのエネドラのトリガーはブラックトリガーだったはずだ。この記憶が間違っていてノーマルトリガーだったとしても、少なくとも鬼怒田辺りには感謝されること間違いないだろう。そして、新たなトリガーが生み出されればボーダーとしてもきっといい方向に行くに違いない。

 

 

「お前のトリガーを狙ってきている可能性も捨てきれねぇ」

「…」

 

 

 ブラックトリガーはとてつもなく強大で、戦況を一変出来るほどの力を兼ね備えている。そう簡単に量産できる訳でもないので、このブラックトリガー(仮定)は凄く貴重な筈だ。しつこく女が狙ってくるのも頷ける。

 

 

「悩んでる時間はねぇぞ。生きるか死ぬか。生きていたらまたあの女に復讐ができるかもしれねぇし、死んだらそこまでだ」

 

 

 「選べ」そう静雅がエネドラに選択を迫るとエネドラは舌打ちをひとつした。そして嫌そうな顔と声色でこう告げる。

 

 

「あの女の名はミラ。窓の影(スピラスキア)っつーブラックトリガーを持っている。能力はワープだ。あの女のワープ装置みてーなのを俺らは『窓』と呼び、『窓』がでけぇほどタイムラグが発生する」

「ほう…」

「…生に縋るわけじゃねぇ。が、このまま死ぬのも腹が立つ」

 

 

 そう言うエネドラの顔は何処か諦め顔で、それでいて何故か晴れやかな顔をしていた。

 

 

「別に死んでもいい。あの女に一泡吹かせられるならな」

 

 

 エネドラは懐から黒いぷよぷよしたものを取り出すと「ほらよ」と言った。…トリガーまでぷよぷよしてんのか。あんまり触りたくねぇなと静雅は思ったが、ここで受け取らないと意味が無い。

 

 

「好きにしろ」

「…約束は絶対に守る」

 

 

 ワープ女の攻撃を静雅は地味に避けながらテレポーターを扱い、女と距離をとり撒く。流石スナイパー。気配を消すのはお手の物だった。しかし、これもずっと続く訳では無い。こちらが後手に回ってしまっているこの状況下である限り、必ずすぐに見つかってしまうだろう。

 

 静雅は辺りを見渡し、そこそこ大きくもう使われていない一軒家の中に入り込むとエネドラを地面に下ろす。あまりにもエネドラが重いので乱雑な下ろし方になり、思いっきり尻を打ち付けたエネドラは大声で抗議をする。大声を聞いた静雅は反射的にエネドラの口を押さえた。

 

 

「見つかんだろうが」

「もごもごもご!!」

 

 

 「黙ってろ」と制裁を一発エネドラに入れると、ワープ女の追跡を確認するため、2階に上がった。案の定、窓からワープ女が静雅を探している光景が見える。女を観察しながら「おい」とヒカリに通信を入れるとすぐに繋がった。

 

 

「ぷよぷよを確保した。誰か回収に来れっか」

『…ん〜、誰かって言われてもな…』

「アレだ。風間とか暇だろ」

『ムリだな。風間さんもベイルアウトしてそう時間が経ってない。流石にトリオン体の再構築には時間がかかると思うぞ』

 

 

 どうやら風間はまだトリオン体の構築も出来ないようだ。トリオン体の構造として、ベイルアウト機能が大量のトリオンを消費してしまうので、トリオン体を構築するぐらいならいけなくもない…と考えていたが、静雅の認識は甘かったらしい。ヒカリの報告を聞いて静雅はチッと舌打ちをする。

 

 

『菊地原達も交戦中だし…カゲ達を呼ぼうにも場所が遠すぎっからなー』

「いや、いい。アイツには暫くここにいてもらう」

 

 

 あまり静雅がこの場に長居してもエネドラの身が危険に脅かされる。そろそろ離れるかと1階に下り、エネドラに言う。

 

 

「ここから出んな。そしたら多分安全だ」

「おいおい多分かよ」

「残念なことにてめぇを回収できる人間が居ねぇ。あの女達を追い返すまでここで大人しくしてろ」

「俺が民間人に手を出すとか考えねぇのか」

 

 

 エネドラの言葉に静雅は「愚問だな」と鼻で笑った。そもそも、ここは警戒区域内で民間人なんて1人もいない。それに生身でここらを出歩けば危ないのはエネドラの方である。死にたいのであれば勝手にすればいい。静雅は「ここから出るな」と言ったのだから。勝手に約束を破り、出歩いたエネドラに全責任がある。

 

 

 

「わかってると思うが邪魔だけはすンなよ」

 

 

──まあ、トリガーの無いてめぇに出来ることなんてひとつもねェが

 

 トリガーを持っていない奴を煽る必要性もない。流石にそこまでは口に出さなかった。

 

 

 

 

 * * *

 

「ん…」

 

 

 棒付きキャンディを舐めながらカチャカチャ カチャカチャと画面を弄っているのはB級2位 影浦隊のオペレーター仁礼光である。エネドラを確保した静雅の元にどうにかして人員を回せないかと人手を探すがどうしても無理そうだった。出れる戦闘員は既に出払っているし、空いている戦闘員はボーダー基地の護衛に回っている者ばかりだ。むう、と仁礼の顔が歪む。

 

 

「静雅さんは別にいいって言ってたけど…流石に気が散るよな」

 

 

 かと言って人員を回せないのも事実。カゲなら何とか回せるか…?とも思うが、静雅の元へ向かう道中できっとネイバーの邪魔が入って来るに違いない。向かえないことは無いが、あまり期待も出来ないし早急には無理だろう。アタシが行けたらなあ〜!!とも思うが、戦闘に関してはやれる自信が無い。無理だ。ないものねだりだ。仁礼は頭をガシガシと強くかいた。

 

 

『ヒカリさん』

「お! 三上じゃねぇか!!」

 

 

 人員について頭を悩ませていたが、三上からの内部通信が入り、考えを遮断する。「どしたどした?」と三上に聞いた。

 

 

『静雅さんは、無事ですか…?』

「ん? 今のとこ五体満足のピンピンだぞ。しかもサラリとブラックトリガーを確保!!」

『──ッ!!』

 

 

 三上の息を飲む音に仁礼は首を傾げた。別に静雅さんは悪いことをしてないだろ? その反応はなんだ? もっと驚くかと思ったのに。仁礼の疑問は尽きない。三上もそれがわかったのだろう。『あの…』と暗い声で何かを言いたそうにしていた。

 

 

『仁礼。風間だ』

「お! 風間さんじゃねぇか。ん? どした?」

 

 

 風間まで出てくるとはこれは思ったよりも深刻そうだった。さらに仁礼の頭の上でクエスチョンマークが増える。

 

 

『…心して聞け。迅の視た予知だと静雅が死ぬ未来があるらしい』

「え…」

 

 

 思ったよりも、なんて比にならないほど深刻な話だった。

 急に人が死ぬと言われても「はい、そうですか」と納得できるほど仁礼は戦闘慣れしていないし、日本は危ない国でもない。

 

 死ぬ? 死ぬってなんだっけ。

 ぐるぐると仁礼の頭の中で死ぬという単語が回る。ベイルアウトのことか? いや、ベイルアウトならベイルアウトって風間さんは言うはずだ。それにベイルアウトぐらいなら伝えなくてもいい。確かに静雅は中々にベイルアウトはしないけれど、ボーダー隊員ならベイルアウトしても可笑しくない。

 

 じゃあ、死ぬって──?

 

 仁礼の顔から一気に血の気が引いた。つまり、そう言うことだ。

 

 死ぬ、それ即ち。命を無くし、もう二度と会えなくなってしまう。「おはよう」も「おやすみ」も何も言えないただの屍になることを指す。

 

 

『話を聞いていれば静雅はブラックトリガーを手に入れたと言っていたな』

「は、はい。人型ネイバーを救ける対価として受け取ってました」

『そうか』

 

 

 やばい。仁礼の頭の中はその言葉で埋め尽くされた。静雅は今1人で新たな人型と戦おうとしている。それも、戦えない人型ネイバーを背負ってだ。静雅は「救ける」と言った。静雅は守れない約束は絶対にしない。本気で守る気でいる。そうなるときっといつも以上に気が散って戦えないはず。

 

 

「三上、静雅さんを頼んでもいいか…?」

『はい…?』

 

 

 戦闘員が割けないのであればアタシが行けばいい。そんな気持ちで二礼はオペレーターに支給されているトリガーを握り、影浦隊の隊室を出る。

 

 大丈夫だ、静雅が戦ってるのは本部からそう距離がない。行ってエネドラを回収したらすぐだ。きっと往復で30分も満たない内に本部に帰って来れるだろう。

 

 大丈夫、そう何度も心で唱える。もしかしたらネイバーが私の目の前に出てくるかもしれない。けれどそれはもしかしたらで、出てこないかもしれない。タラレバを考えればたくさん浮かんでくる。けれど、そんなしょうもないことを考えてここで足踏みをして、静雅さんが死んでしまったら、きっと私は後悔してしまう。

 

 仁礼は戦えない。そんなことは重々承知だ。だから、ネイバーと出会わないように慎重に、そして最短ルートでエネドラという人型を迎えに行く。

 

 

「死ぬなよ、静雅さん…!!」




 
Q.静雅はエネドラをどのように運んでいたの?
 A.理想はお姫様抱っこ。現実は俵担ぎ。そもそも、静雅とエネドラのカップリングは誰も萌えない。

Q.三上ちゃんは本当に光を「光さん」と呼んでいるの?
 A.多分、多分…。光のことだから「名前で呼んでくれ!」とか言ってると思う。そして、光が三上ちゃんの事を「三上」と呼ぶのかも分からない。原作じゃみかみかと呼んでいる可能性もあるが、この小説では風間隊の唯一紅一点の三上を警戒して名前で呼んでない可能性もある。恋敵だと勘違いしているのかもしれない。

オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)

  • 宇佐美栞
  • 二礼光
  • オチなし
  • 他の誰か
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。