早く原作進めてとあるお方の話を書きたい。なので久々に書いたけどほとんど進んでないやばこれ…。
『──静雅、そっちに仁礼が行った…!』
「ア"!?」
突然の風間による通信に静雅は一瞬動きを止めてしまう。そこを目ざとく感じ取ったミラは隙を見逃すはずもなく、静雅の右肩に棘のようなナニカが襲った。
ぶっちゃけると静雅の戦況はあまり宜しくない。そもそも、ミラと闘う前にブラックトリガー持ちのエネドラと交戦していた。そこで、まあまあな量のトリオンを削られ、今では右腕は使えない状況。こういう時、いつもならスコーピオンで空けられた穴を補強するなどしてトリオン漏れを凌いでいたのだが、生憎と今はそのスコーピオンがない。チッ、と舌打ちを打ちながらも、静雅は考えるのをやめない。
静雅の戦況は著しくない。が、静雅はミラとの相性は良かった。ミラは通称「窓」と呼ばれるワープ系のトリガーを使っている。そして、静雅のサイドエフェクトは「強化空間認識能力」。ミラが繋げようとしているワープ地点を一瞬、サイドエフェクトで察知することが出来るのだ。たった一瞬。されど一瞬。ミラが繋げようとしている空間にピリッとした空気が流れる。それを、逃さず察知する静雅の集中は今までで一番高まっていると形容して間違いないだろう。
「(なんなのコイツ…! 私のワープ地点を読んでいる!?)」
ミラが静雅にまともに与えた攻撃は先程の一撃だけだった。それ以外は綺麗に躱され、なんならカウンターを入れられる始末。ギラギラと目を光らせ、洗練された身のこなしは完全に兵士そのものだった。
「(エネドラも面倒な奴にトリガーを託したわね…)」
ジリ貧の戦い。しかし、ミラには勝機がまだまだある。静雅のトリオンを削ればあっちは勝手に死ぬのだから。
ミラは静雅を囲むように、ワープを配置し棘を配置した。さすがに複数個は察知しきれなかったのか、静雅の脇腹と右足に穴が空く。
──ヤバいな
静雅は冷や汗を流した。静雅はどちらかと言えばトリオン量が多い部類に入る。が、戦闘がこうも長引くとさすがの静雅でもキツい。それに一番やばいのは、近くにヒカリがいること。ここで静雅がエネドラのブラックトリガーを持ってベイルアウトしたとして逃げきれたとしても、確実にエネドラはミラの手によって殺されるだろう。そして、それは同時にエネドラの回収に出たヒカリの死を表す。
それは、静雅にとって見過ごせないことだった。
静雅は死ぬ覚悟ができている。それはボーダーに入ると決めたと同時に死の覚悟も決めた。なんなら遺書だって書いているし、双子の兄にもそれとなく「俺は長生きできないかもしれない」と話はつけてあった。
でもヒカリは違う。普通に生きて、ボーダーに入った。きっとトリオン量の問題もあったのだろうが、死線とは程遠いオペレーターにつき、ボーダーに貢献してきた。まだまだ続く後半年ほどの高校生活。なんなら大学にだって行くかもしれない。そして、好きな男と付き合って、結婚して、子供を産んで。そんな在り来りで幸せな日常を送る筈なのだ。そんな尊い命をここで摘むわけにはいかない。
『おい、静雅。何をする気だ』
長年の勘なのかもしれない。どうやら風間は何かを感じ取ったのだろう。静雅を咎めるような声色で問うてきた。しかし、静雅は何も返さない。
「旋空孤月」
直線上に伸びる斬撃はミラの真横を通り、頬を掠める。そこから僅かにトリオンが漏れ出す。
「もうトリオンはないでしょう? さあ、アナタはどうするのかしら」
「安心しろ。俺は逃げねェ」
テレポーターでミラの前に移動した静雅は「旋空──」と呟く。急に目の前に現れた静雅に驚くことなく、ミラは逆にニヤリと笑った。
「視線の範囲内でないと移動できないことはとっくに見破ってるのよ。ここで終わりね」
ミラの棘は静雅の土手っ腹に風穴を空けた。それと同時にミラの右腕が吹っ飛ぶ。
「(さっきと斬撃の速度が違う…!)」
通常よりも数秒早く放たれる生駒旋空は、通常の旋空と絡めると相手のリズムを乱す。通常の旋空が来ると思って油断していたミラの腕を飛ばすのには覿面だった。
ピキピキと静雅の顔に罅が入る。これは、静雅のトリオン体がベイルアウトをしようと準備し始めたのだ。それを察知した静雅は「トリガーオフ」とトリオン体から肉体へと、換装する。
『静雅!!』
最後の最後に咎めるような風間の声がしたが、静雅は聞こえなかったことにした。
* * *
──別に三門市の人間を守りたいだとか、そんな大義名分を掲げてボーダーに入ったわけじゃない。
是非ボーダーの広報に!!と風間と共に呼び出された静雅は、一人ペラペラと喋っている根付の顔を見て静かにため息を吐いた。
ネイバーが三門市を襲ってまだそう日が経っていない頃。せめて知り合いだけでも救える力が欲しいと、静雅は風間と共にボーダーに入ることを決意した。風間の兄である進がボーダーに所属していたこともあり、ツテを辿ってボーダーに入るのは案外簡単だった。それにボーダー側も人手不足らしく、使えるものは使っていくというスタンスだったこともある。
ボーダーという組織がまだ世間に知られてそう時間が経っていない。ネイバーという驚異から救ってくれたという感謝よりも、人とは違うまた驚異の力を持っているボーダーに人々は疑いの目を向けていた。それでも街の人間を守るには人がいる。なので、ボーダーはクリーンなイメージですよ、という認識を植えつけるためにも根付はボーダーの隊員を使って記者会見を行うことを考えていた。人々の不安を聞いて寄り添う、そんな組織であると見せつけるために。
それに白羽の矢がたったのが風間と静雅だった。二人の容姿は隊員の中でも際立っていた。特に静雅は眼鏡を掛けさせると目付きの印象が和らぎ好青年に見えてしまうほどの豹変ぶり。思わず根付が「キミの顔は詐欺だよ…」と呟いてしまうほどには整っていたのだ。
拒否権なんてものはなく、あれやこれやと準備をさせられ、最低限のカンペと共に静雅と風間は背中を押され記者会見に出ることになった。
沢山の報道陣。中にはニュースの取材まで来ていた。正直、げっそりとした気持ちだったが、風間に「しゃんとしろ」と咎められ最低限の顔は作る。
記者会見という名のお披露目会は正直に言ってクソだった。ボーダー組織の在り方を問うて来る者はもちろんのことだが、中には「見知らぬ人間と家族、襲われていたらどちらを助けるか」なんて質問をしてくる人間もいた。
どうやらその回答に風間は倦ねていたらしい。きっと風間としての回答は家族なんだろうが、ボーダーとしての正解は街の人だから。自分を偽りボーダーのイメージをとるのか、それとも自分の強い意志を見せつけるのか。そんな風間を横目で見つめた静雅は風間が答えるよりも早く「家族」と言った。
「なッ──!!」
ザワザワと報道陣が煩くなる。そこから口々に開かれるのは批判の波。結局、どっちを取ったとしても批判する気満々だったであろう醜い大人を見て静雅はため息を吐いた。
「顔も名前も知らない人間よりも、俺を産んで今まで育ててくれた両親を取るに決まってる」
「じゃあキミは街の人々を見捨てると言うのか!!」
「俺は見知らぬ人間を護るためにボーダーに入ったんじゃない。今まで俺を愛し、育ててくれた両親や兄弟達を護るためにボーダーに入った。その覚悟をお前らにイチャモン付けられるいわれは無い」
静雅の真っ直ぐとした瞳を見て報道陣は黙りこんだ。
「未成年を戦わせるのはどうだ、とか。あれやこれや突くのは楽しいか。ボーダーに入った人間は少なからず覚悟を持っている。それをお前らにあれやこれやと汚されたくない。──そして、テレビを見てボーダーに興味を持った人間に告ぐ」
「──お前らは護るために死ぬ覚悟があるか?」
記者会見は批判が殺到した。主に静雅が口にした「死ぬ覚悟」について。年端もいかない少年が死について語るのはそれはそれは世間の目からすると異様で、不気味に見えたらしい。
護られている者はラクだ。そして、それに慣れるがあまり、護られることが当たり前だと認識し始める。それは当たり前ではないのに。護る裏側には何かしらの犠牲がついている。それを見ないふりして、ギャーギャーと文句を言うのはラクだし簡単だ。力が無いからと言ってそれに浸るのはいけない。力がない者はない者なりに、闘う手段を見つけ、自衛をしなくてはいけない。何故なら、最後に自分を護るのは自分なのだから。
きっとこの件で一番被害を受けたのは根付だろう。火消しに全力を注いだあまり胃潰瘍になったらしい。
「キミは一体自分がなにをしでかしたのかわかってるのかね!?」
「ア? 俺が言ったのは事実だろ」
「言い方って言うものがあるのだよ!! キミはどれだけ野蛮なんだね!! 全くキミを育てた両親はどんな教育を──」
ここで明記しておかなくてはいけないことは、静雅と根付共に精神的コンディションが悪かったこと。
知らない人間に好奇な目で見られあれやこれやとチクチク突かれた静雅に、静雅の後先を考えない発言に最大の尽力を持って火消しに勤しんでいた根付。二人ともストレスは通常の倍よりも感じており、お互いがお互いを睨み合っていた。
記者会見に出たくなかった静雅と、余計な仕事を増やされた根付。そして、根付の発言は静雅を怒らせるのには十分な発言だった。
「死ね」
手を硬く握り、爪が食い込むほどの拳を振り上げ静雅は根付の顔面に一発入れた。多少鍛えている静雅の拳はそれなりに重く、非力である根付は地面に身体を打ち付けた。
「な、なにを」
「俺は幸せだ。クソみたいな人生を歩んでいたのに、あの人たちは俺を見てくれた」
焦点の合わない目で、静雅は言った。
そして、光を映さない瞳で根付を見下ろすと静雅は言う。
「俺の誇りをお前ごときが踏みにじるな」
ガス、ガス、と。根付の顔面に一発一発入れていく静雅。慌てて風間が止めに入るが、静雅はやめようとはしなかった。
「キミは、本当に、ロクな人間じゃない!!」
元々、静雅と根付は合わなかった。お互い初めて顔合わせをした時も不思議と「あ、コイツいけ好かねェ」と2人はシンパシーのようなものを感じた。そして今回、回り回ってこうやって爆発してしまったのだ。
それからは根付と静雅の仲は随分と悪いものになった。近くにいた風間や忍田に物理的距離をとらされた二人は和解することも無く、そして根付の発言が撤回されることなく、今を生きている。
ああ見えて静雅はお人好しなのだ。自分よりも、相手を思える優しい人間。家族を一番に考え、大切な者たちを護ろうと奮起する姿は素直にカッコイイと思う。が、自己犠牲が過ぎるのも如何なものかと思うのだ。
「風間さん…」
静雅のトリガー反応が消えた。そして、ベイルアウトはしていない。となると生身で静雅は今、ブラックトリガーと相対していることになるのだ。風間はギリッと自分の手を力いっぱいに握った。
今の自分は非力だ。静雅を救けられる環境は揃っているのに、風間は静雅を救けてやれない。また、大切な者を亡くしてしまうのか。そんな負の感情が風間を覆おうとしていたその時。
『──こちら諏訪隊。影浦静雅と合流!』
新型兵器にキューブ化された諏訪がボーダーのエンジニアの手によって、元の姿に戻り静雅と合流したらしい。
『ちっ、中々にやられてるが…死んでねぇぞ風間。安心しろ』
『オラ、チンたらしてねぇで仁礼と日佐人を回収しに行くぞォ!!』と叫ぶ諏訪の声が聞こえて、本当に静雅の安否が確認出来た。
風間はホッと息をつく。風間の隣にいた三上はグスグスと鼻を鳴らしながら「風間さん、良かったですね」と言った。
「ああ、本当に世話の焼ける馬鹿だ。一度やつには手痛い仕置をくれてやらねばならん」
「もちろん、仁礼もな」と呟く風間に三上は同意を示した。
Q.ブラックトリガーを持ったままベイルアウトするとそれは反映されるの?
A.多分される。されなくても、されることにしてください!
Q.諏訪さんはキューブになってたんだね?
A.なってました。というか、記述していないところは全て原作通りに進んだと思ってください
Q.静雅の誇りって?
A.それは家族や友人。自分を慕ってくれる僅かな後輩。それらに該当する全ての人間が静雅の誇りです
Q.静雅のイメージイラストを貰ったんだってね?
A.コクマ様から頂きました!! ありがとうございます!! 自分じゃね、静雅は描けないので本当に貰えるとすごく嬉しいです! もし、描いてくれるよ!という心優しい人がいましたら、ぜひ送ってくれるとめちゃ嬉しいです
【挿絵表示】
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