結論だけ言うとカゲも二宮も生駒もフィギュア&タペストリーで出てきてくれなかったし、風間隊のキーホルダーすら出なかった…。フィギュア&タペストリー&キーホルダー(簡単に言うと全部)に関しては推し以外が綺麗に出てきてくれたよ(血涙)。おのれ迅ンンン!!(三輪の気持ちが少しわかった)(迅だけタペストリー2個出た)
目を覚ましたら知らない天井だった、そんな言葉から始まる物語はそう少なくない。凄く面白いと感じるラノベ小説も、在り来りに見えてしまうどこかで読んだかさえ思い出せない小説も、よくそんな始まり方だったような気がする。しかし、それは物語の世界だけだと思っていた。
見慣れないシミひとつない白い天井に、白い壁。大きく広い部屋にポツンと自分だけがいる空間。薄水色の人生で数度しか来たことの無い薄い服に包まれた自分。自分も、左横にある小さなタンスもテレビもテーブルも全てが異質に見えた。
部屋は暗く、カーテンは開いていた。窓から外を覗くと、外の世界は暗闇に包まれていた。どうやら夜らしい。カチリカチリと音をたてて日々の仕事をこなす掛け時計に視線をやれば深夜3時を指していた。一体、自分はどれほど寝ていたのだろう。
この部屋には日付を知らせるものは何一つとして置いてなかった。掛け時計はアナログ式で日付は記されていない。カレンダーもなく、テレビをつけようにもリモコンが見つからないし、自分を繋ぐ点滴が邪魔であまり動けなかった。
窓に映る自分は酷く無愛想で傷だらけだった。両腕を繋ぐ点滴に、グルグルと巻かれた包帯。顔の小さな切り傷は絆創膏やガーゼが貼ってある。さすがに窓に映る自分の顔色までは分からないが、きっとこの部屋の白さも相まって青白いに間違いない。
──まさか、生きていたとは。
死にたがりでは無い。けれど、あそこで死ねていたのなら、きっと、悔いはなかった。楽しい人生だったと、そう言いきれたに違いない。
窓の向こう側…つまるところ暗くて何も見えない外を眺めているとふと、ボーダー本部に行こうと思った。本当なら、今日は寝直して、朝イチで先生に身体を見てもらった方がいいのだろう。それに、きっと傷だらけのこの身体で本部に向かうのは少々キツイと自分でも思う。それでも、本当に何となくの思いつきだが行きたいと、そう思ってしまった。
両腕に繋がれた点滴を乱雑に外し、ベッドから降りる。その時、腹の傷がかなり痛んだ。思わず服を捲って見てみると、腕と同様に包帯でグルグル巻きされていた。無理に動いたせいか白い包帯が赤色に染まっている。
この身体じゃこの檻のような息の詰まる部屋から出ることすら叶わないだろう。小さくため息を吐こうとした時、ふとテーブルに視線が行った。
綺麗に片付けてあるテーブルにはチリひとつ乗っていない。しかし、そんなテーブルの上にまるで自分を取れと言わんばかりに主張してくるモノがひとつ。
トリガーだった。殆ど白しかないこの部屋で黒色の手のひらサイズのトリガーは、自分と同じぐらい異質に見えた。そしてそのトリガーを見つけた瞬間、確信した。
この部屋から出れると。まだ起きて数十分すら経っていないのに、アレルギー並に嫌いになりそうな白と、ツンと鼻につく消毒液の臭いから解放されると思った。きっとこんなトリガーの使い方をしたら怒られてしまうのだろう。でも、そんなのは痛くも痒くもない。だって、怒られるのには慣れているから。
「トリガー、オン」そうシンとした部屋で呟けば、瞬く間に自分の身体は換装されて行った。見慣れた風間隊の隊服にどうやらトリガーセットも普段のものに戻してあるらしい。カメレオンが使えたので、ラッキーだと思わず笑ってしまった。
病院の外は酷く静かだった。それこそ、病院内で年中休まずずっと稼働し続けている謎の機械がない分、外の方が静かに感じた。そりゃ、そうだろう。ネイバーが三門市を襲ってきて多分、そこまで日が経っていないはずだ。それなのに、こんな夜中に歩き回っているなんてその人間の神経を疑ってしまう。きっと飲み屋街ですら人気はないだろう。それほどまでに、力を持たざる者にとってネイバーというものは脅威なのだ。
瓦礫と化した建物の合間合間を縫って歩いてく。別にこんな足場の悪い所を通らずとも本部にはつく。しかし、この場所が三門病院からの最短ルートなのだ。どうせ、カメレオンを使っているため他人から視認されないのだ。これぐらいは許して欲しい。
程なくして本部につき、そのままエレベーターで屋上まで上がって行った。本部に来たいと漠然と思っただけで、具体的な目的を持ってここに来たわけではない。ランク戦をしようにも、こんな夜中に人がいるはずがない。それこそ今本部にいる人間といえば、深夜のシフトに入っている部隊か、近界民侵攻の件で慌ただしく残業を重ねているだろう上層部、今日も今日とて社畜を極めていているエンジニア、少しの息抜きを兼ねて麻雀をしている見習いたくない大人たちぐらいだろう。もしかしたら、近界民侵攻で有耶無耶になったレポートを今更慌ただしく終わらせようと奮闘している馬鹿もいるかもしれない。ちなみに、それに関しては自業自得なので慈悲はない。
一度も止まることはなく、エレベーターは屋上へと向かう。ピコンと音をたてて止まったエレベーターから降り、唯一の出入口から屋上へ入ると見晴らしのいい景色が現れた。警戒地区内に建てられた本部からは澄んだ空が見える。邪魔な閑散とした明かりもなく、月明かりと疎らな星が見えた。
地面に座り込み、ただ星を眺める。本部に来たからと言って、屋上に来たからと言ってやることは無い。ただ、病室から出たかった。きっと今頃は病院内は慌ただしくなっているんじゃなかろうか。いや、まだ大丈夫かもしれない。サイドエフェクトを使えば容易に分かることだが、まだ完治出来ていないこの身体でサイドエフェクトを使う気にはなれなかった。最悪酔って吐くかもしれない。
「──本当に来たのか」
「!!!?」
不意に唯一の入口であり出口が開いた。完全に気を抜いていた。入ってきたのは無表情の風間で、やれやれと言わんばかりに首を横に振っていた。
「迅が静雅はここに来るから居てやれと言っていたからずっと待っていたものの…まさか、こうも入れ違うと面白いものだな」
「……」
「ちなみにお前のトリガーも迅の入れ知恵だ」
「……」
「何を黙り込んでいる。何か喋ればいいだろう」
「……」
「病院を抜け出したことについては怒っていない。迅が
「……」
静雅は何も言わない。ただただ、空を見つめるだけだ。隣に腰掛ける風間に目もくれることなく、静かに星を眺めていた。
「…言いたいことがあるのなら言え」
無視を決め込んだ静雅に耐えきれなくなった風間が重圧を乗せながら言った。沸点が高いように見えて実は低い男だ。その重圧を感じ取ったのか、静雅はようやく口を開いた。
「──あそこで死ねていたら俺はヒーローだったんだろうな」
果たして、その目は本当に空を映していたのだろうか?
* * *
影浦静雅は常に何かに対して憤っているように感じた。鋭い目付きをさらに釣り上げ、チッと舌打ちをする様は正しく「怒り」を表している。一体、彼は何に対して憤りを感じていたのだろう。それを静雅本人に聞いたことはなかったし、風間自身が聞いたところで理解できるとも思わなかった。
静雅の隣は居心地が良かった。怖い風貌とは裏腹に静雅は優しい男だった。迷子の子供がいたら率先して助けに行くようなやつだし、年下にはたんと甘い。自分に物欲がないからと言って自隊の後輩や弟の同僚達に沢山のものを分け与えていた。その姿はまるで自分の欲望を押し付けているようにも見えた。
時折、静雅は寂しそうな顔をする。それは風間隊の皆とわちゃわちゃしている時に一人一線を引いていた時だったり、親と兄弟が楽しそうに会話をしているのを眺めている時だったり。後輩がどうでもいいことで言い争っているのを見ている時だったり、人の首を刎ねる瞬間だったり。様々な場面でその表情を見た。それも気のせいだと勘違いしてしまうほどの一瞬である。
聞いてみたいと思っていた。しかし、それを聞くと静雅が静雅じゃなくなってしまうような気もした。だから敢えて聞いていなかった。
『風間さん。静雅さんは今…とても不安定な状態だ。何かの狭間でゆらゆらと揺れ動いている。それから助けられるのは風間さんだけだよ。ずっと静雅さんの横で見てきた風間さんだけ。…静雅さんを起こしてあげて。じゃないと、静雅さんは──居なくなっちゃう』
悲しそうな顔でそう嘆願する後輩を思い出した。言われなくても助ける、そう返した時のアイツはどれほどに破顔していただろうか。絶対、救ってね。そう言って、ひと袋置いていったぼんち揚は静雅と共に食べようと隊室に置いてある。菊地原に食べられないうちに隠しとかなくてはとふと風間は思った。
「──あそこで死ねていたら俺はヒーローだったんだろうな」
風間は頭を大きく振りかぶり──静雅のおでこに自分自身の頭を打ち付けた。ゴチィィンとぶつかる音がして、静雅が涙目で「何すんだ!!」と風間の胸ぐらを掴む。正直、トリオン体である静雅にダメージはそこまでいってない。生身である風間の方が重症だ。
「誰が死ねば良かっただって?」
風間の赤い赤い双眼はまるで死神の目のようだ。静雅はそう感じた。
「お前を助けるために仁礼は捕虜を回収しに行ったんだぞ。お前が助かって欲しいと雷蔵はわざわざ諏訪達に清潔な布を預けた。お前を助けるためにこんなにも迅は尽力していると言うのに」
「──お前自身は死にたいと、そう言っているのか」
風間の怒りに静雅は困惑していた。
だって俺は、親に見捨てられた
──本当に?
俺は何かに跳ねられて死んだ筈だ
──それはいつ?
俺に兄弟なんて居ない
──居たでしょう?
俺に友達なんて居ない
──目の前に居る彼は何?
ネイバーなんて知らない
──今まであなたが戦ってきた怪物は?
トリガーなんて知らない
──あなたが握りしめているものは?
トリオンなんて知らない
──あなたは今、生身じゃないでしょう?
俺は、俺は、俺は、俺は──
──俺は?
「落ち着け。息を吸え。そしてゆっくりと吐き出すんだ。俺の呼吸に合わせろ」
ぐるぐると視界が回る感覚がした。どうやら考えがドツボにハマったせいで静雅は息をするのを忘れていたらしい。
風間は静雅の頬を両手で掴むとこう問うた。
「俺は誰だ」
「──かざま、そうや」
「お前は誰だ」
「──かげうら…しずか」
「お前はなんの為に戦う。なんの為にその命を張ろうとした」
「…なんの、ために…」
「ああ。お前は何故ボーダーに入ろうと思った」
「……やさしかった、から。周りのみんなは、暖かくて、心地よくて、ずっと続けばいい。そう、思った。護りたいと思ったから…」
「何だ、忘れてないじゃないか」
そう嘯く風間の声色は優しい声だった。ウロウロと視線を動かせ、観念したように風間の瞳を見る静雅はまるで迷子の少年のよう。釣り上げた目尻を落とし、子供に言い聞かせるように風間は言う。
「静雅はもう独りじゃない。忘れるな。静雅の周りには俺や、菊地原、歌川、三上…それ以上に沢山の人間がお前の無事を喜んでくれている」
「……」
「勝手に居なくなろうとするな。静雅が居なくなったら俺はとてつもなく悲しい。何故なら静雅は俺の唯一無二の親友だからだ」
「ゆいいつ、むに」
「ああ。かけがえのない親友だ」
ポロポロと涙を流す静雅を風間は見ていないふりをした。いつしか、進が居なくなったらあの時に静雅がやってくれたように。
「暫くしたらランク戦でもしよう。俺もお前も、まだまだ弱い」
今度こそ煌めく星空を見ながらそう、言った。まだまだ夜は長い。
尚、病院を抜け出した静雅は瞬くスピードで連絡の行った忍田に見つかり、強制連行されたことは敢えて記述しておこうと思う。
「え゙っ、なんで風間さんおでこ腫れてるの…」
「こ、氷持ってきます!!」
「…静雅さんと喧嘩でもされました?」
「トリオン体の静雅に本気で頭突きしてやった」
「「……」」
誰かが言った。
──他人との「繋がり」がないあの子に課せられたサイドエフェクトなんて呪いよね
──だってあの子ずっとひとりじゃない、と
彼は言った。
──ひとりじゃないよ。静雅さんは大切な仲間だ。居てもらわないと困る
──それにもう、静雅さんは呪いだなんて思わない筈だ。だって静雅さんにはおれ達がいるんだから
──人はひとりじゃ生きられないんだよ。支え合ってなんぼだ
──大丈夫、もう
──おれのサイドエフェクトがそう言っている
オチについて(必ずしも反映されるとは限らない)
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宇佐美栞
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二礼光
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オチなし
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他の誰か